何処へ行くのか、百貨店№3
日本の百貨店のみならず、米国でも百貨店業態は大苦戦中です。メーシーズは100店舗閉店しニーマンマーカスも65店舗を閉店しています。JCペニーは130店舗を、それでも経営は苦しく今年更なる閉店が噂されています。不振要因は何なのでしょう。日米とも最大の外的要因はネット販売の拡大ですが、内的要因は自己改革の遅れです。自社の顧客に対して全く新規商品を提案することなく、買い物に対する利便性を追求することもせず、新しいサービスも開発せず、顧客のニーズも把握しようとせず、ひたすら前年実績主義で乗り切れると信じて、「何もしなければ嵐は去る」とばかりに時代を読もうとしなかった「つけ」が廻ってきたのです。かつての「定価制度」「ワンストップショッピング機能」「輸入ブランドの紹介」など、今日の消費活動の基礎は全てと言ってよいほど百貨店が創り上げてきたものです。しかし、ここ30年、新機軸の商品もサービスも生み出せてはいないのです。売り場展開も単品集積売場からブランドブティック化した後の顧客のライフスタイル指向に対応しうる売場開発はできていません。ましてはネットに対応できる新規の売場開発など全く手つかずの状況です。機械化したのはレジだけで相変わらず人海戦術の販売手法から脱却できていません。「高級化が百貨店の生き残りの路線」でボリュームからの脱却も叫ばれていますが、現在高級化を推し進めている百貨店はありません。むしろ場所貸しにより生き残ろうとする機運のほうが、マスコミの勉強不足と相まって強いくらいです。
米国の百貨店はカナダの投資会社「ハドソン ベイ」が触手を伸ばしていますが、百貨店としての価値では無く、保有する店舗の資産価値を狙ってのことです。土地と建物の資産価値のみを見越してバラバラにして売るのが基本的ヤリ方ですので、サックスもバーグドルフも別の業種へ変更してしまい、「百貨店」が米国から無くなってしまうかもしれません。現に欧州ではほとんどの国で百貨店は消滅しております。
こう思うと伊勢丹の大西社長の失脚は大きな痛手です。百貨店で唯一、「百貨店として生き残ろう」と努力していた大西社長を失ったことは百貨店業界全体の計り知れない損失です。