再生なるか、百貨店№5

米国のリアル店舗閉鎖が止まりません。GAPが200店舗、トイザらスは倒産の危機だそうです。原因はただ一つ、「ネットの拡大にリアル店が追い詰められている」という事です。

ネット利用の最大理由は「休みの日に買い物で時間を潰すのはもったいない」という時間消費に対する要望が一番なのだそうです。日本でも男性は大方同じ意見かもしれません。しかし、「女性は違うのでは」と思いませんか?働いているキャリアはそうでも「大多数の女性は買い物に行くのは好き」だと日本の小売業関係者は考えています。しかし今や日本の女性の就業率は71.8%(25歳~54歳)も有るのです。買い物に時間を費やすなら、美容やダイエットなど自分磨きに時間もお金も掛けるという傾向は従来の比では無いのです。ネット創成期には「試着ができない」「色やイメージが写真では判らない」「送料など取られ安くない」などとネット販売の荒探しが既存小売業者の常識でした。しかし消費者はそれらの意見をものともせず、ネットの持つ利便性に飛びついたのです。「ネットは若い人だけ」という希望的偏見もまだまだ多くありますが、60歳代以上のネット利用率は70%を超えているのです。若い世代より却って多いくらいなのです。

しかし、GAPもトイザらスもリアル店舗だけでなくネット販売も当然行っています。それでもリアル店舗が苦戦しているのです。日本の小売業でもリアル店舗主体営業でネット販売が100億円を超えているのは数社ほどしかありません。それは何故なのでしょう。それはよく言われる「ネットとリアルの融合に失敗」している状況だからです。ネットとリアルの融合は残念ながら世界的にみても上手くいっていないのが現実です。むやみにネット販売を立ち上げてもリアル店舗への送客が難しいという事です。ネットとリアルン融合はリアル店舗では急務です。百貨店も駅ビルも、専門店もショッピングセンターも抜本的対策を講じている、あるいは検討しているところは残念ながらありません。一部の企業でリアルとネットの融合を研究してはいますが、未だ実効が上がっているとは聞いていません。今こそ真剣にネットを研究すべきです。

 

再生なるか、百貨店№4

HPフランスが主催する展示会「rooms」へ行ってきました。「rooms」のクリエーターの目でふるいが掛けられているとはいえ、どれも個性豊かな若いクリエーター達の熱い思いのこもった商品が沢山展示されていました。展示の方法も路地のような曲がりくねった500メートルもの距離を、いつの間にか歩かされてしまいますが少しも疲れもせず,飽きもしないのです。百貨店のような大分類・中分類・小分類といった括り方ではなく、ある程度同類での括りはあるものの、基本的にはテイストで括られ、自分の趣味に合うゾーンでは熱心に、違うゾーンでは興味本位に、とても楽しく回ってしまうのです。所々に設置されたカフェや休憩所も的を得た配置で、とても考えられています。商品を売り込むクリエーター達も、真剣な眼差しで熱く語ります。百貨店が忘れてしまった「小売りの原点」を見たような気がしました。大手のイベント会社が企画する「本格的」展示会と一線を画し、手作り感満載の、緩い空気の中で、だけれど一生懸命商品を説明する熱気がひしひしと伝わる「rooms」展示会は楽しいのです。その空間も時間も素敵なのです!伊勢丹の大西前社長が「百貨店の従来の分類で展開された売り場はつまらない」と話していた事を思い出しました。今の百貨店は全てが「効率」というキーワードで判断されており、そこには「消費者」という意識は存在していないのです。消費者が「つまらない」と思っても百貨店にとり効率が良いと判断されれば、それが正解とされるのです。結果、どれだけのつまらない「正解」が積みあがっているでしょう。「rooms」展示会を見て、本来は百貨店がやるべき若いクリエーター発掘の役割を強く感じました。次の世代を担うクリエーター発掘の役割です。しかも百貨店には「売り場」があります。若いクリエーターが自分の商品を消費者に見て貰え、その実力を試せる場所があるのです。販売はクリエーター自らが行えばよいのです。かつて新宿高島屋にはこのような「クリエーター発掘ゾーン」がありました。クリエーターは勿論、消費者からも大変支持されたゾーンでした。週替わりで若い才能が展開され、消費者とクリエーターの対話もはずみにんきがありましたが、「効率」が悪いと店長次第で直ぐに閉鎖されてしまいました。百貨店は客商売です。ですから「お客様第一主義」でなければなりません。しかし、お客様第一主義というのはお客様の望むことを実現することは勿論、お客様に常に新しい情報を提供し続けることも不可欠なことなのです。それは決して楽ではなく「効率的」な行為ではありません。でも百貨店は消費文化のリーダーとして時代の先端を常に走り、より良い生活を消費者に提示し続けなければいけないのです。企業ですから利潤を追求するのは当たり前ですが、消費者に利益を還元することなく自社で独占しようとするだけでは時代に合わないということを認識すべきです。

百貨店が再生するためには、真剣にすべてを見直す時期に入っているのです。目先の改善では生き残れないのです。