百貨店復権への道 第5回
百貨店がネットに対抗するためには①ネット特有の利便性を持ち、②百貨店でしか買えないPB商品を開発し ③消費者が望むリアル店舗でしか提供できないサービスを開発すること が不可欠と話してきました。わざわざ店頭に来店してもらためには、店頭でしか得られないサービスや楽しい時間や空間を楽しめてこそ初めて可能であるのです。ネットの持つ利便性を超えるサービスです。
現状の百貨店サービスは顧客からすると過剰であったり、足らなかったり、ニーズと必ずしも合致しているとは言えません。それはひとえに顧客ターゲットを大衆に合わせ、万人向けのどうでもよいサービスをサービスとして提供しているからに他なりません。それでは高度なサービスとはいったいどのようなものなのでしょう。要は消費者目線での「どうして貰えたらうれしいか」という点に尽きます。確かに値引き販売やポイント付加はうれしいものです。でもこれは百貨店に多大な利益損失をもたらしています。本当はやめたいサービスの№1でしょう。しかし他社もやっているので自社だけやめたら他社に顧客を、売上を取られてしまうという脅迫観念から抜け出られていないのです。でも値引き販売を超えるサービスは存在しないのでしょうか?消費者は本当に値引きだけを求めているのでしょうか?
アウトレットに土日に行くと歩けないくらい盛況です。消費者はモノが安く買えることに期待をしていることは間違いありません。「欲しいものが安くなっている」という事はとても重要ですがそこでは「何か安くてよいものは無いかな?」という事で「決して欲しいものが決まっていて買いに行く」というわけではないのです。今の消費者は欲しいものが有った時は迷わず、その場でタイミングを失う事無く購入するので、アウトレットでの買い物とは「買い物」の意味が違うのです。
では百貨店が提供する、あるいは百貨店に消費者が期待するサービスとは何なんでしょう?「必ず欲しいモノやコト」が手に入るという1点に尽きます。これは決して路面展開の高級ブランドが有るとか、ユニクロが店内にあるという事ではありません。プロの販売員が顧客を一目みるなり、好みや嗜好を見抜き、顧客自身ですら思いつかなかったニーズ、素敵なコーディネートや着こなし方、更にはTPOに合った靴バッグはもとよりアクセに化粧品の仕方まで提案できることを指します。顧客が望むものをいち早く見抜き、すべてにおいて完全に揃えることです。しかも外商が行っているように、完全なP to Pでなければなりません。顧客はここで販売員との会話と優雅な空間環境下での時間消費を楽しみ、結果としてモノがついてくるのです。そのためにはメーカー任せの消化仕入れなどに胡坐をかいていては成し得ません。バイヤーは現場の声、顧客自体をよく調べ、今年の流行を各顧客にどのように組み立てるか、販売員と徹底した当欄が行われるべきなのです。こうして仕入れられた商品は万人向きではなくA氏向けであったり、B氏向の発注内容が決まって行くのです。百貨店は万人向けから一定の層に向けたターゲットに舵を切る時期に来たのです。
MD的には高級路線に戻り、ユニクロやニトリとの同居をやめ、「ここでしか買えない」「今しか買えない」という他所には無い圧倒的な存在感を感じさせる「一生もの」「最新最先端」などブランド名に頼らない「モノ/コト自体」で勝負できる商品群を揃え、そのうえで上記で述べたような究極のサービスが提供されることにのみ、生存を期待できるのです。入店客を限定するので売上はたぶん6割になりますが、最終利益率では5%と現在の3倍になるでしょう。しかも現在の大型店舗は不必要になり、自前展開できる面積は既存の4割程度(しかも食料品が2割程度占有)で十分でしょう。余ったスペースは「人々が集まる場所」という前提に新型の宴会型では無いレストラン&バー型のホテルであったり、公共施設として保育所、幼稚園、床屋に医者&歯医者、靴の修理に高級洗濯&染み抜き&かけはぎなどの修理屋を売るばっかりだった反省を込めて、一生使えるモノを売るのですから導入することも必要でしょう。また、ヘアーサロンに床屋、ネールサロンに個人旅行専門サロン、金融アドバイザーなどが常駐したら面白いかもしれません。個人的にはシャンパンバーや3つ星料亭・レストランが月替わりで入ったら最高でしょう。マスを相手にする時代は終わり、少数の新富裕層をメインターゲットにライフスタイル全般を扱う店舗に生まれ変わるべきです。
いつの時代も「顧客目線」で顧客が喜び、望むことをサービスとして提供すべきなのです。