コロナ禍後の世界 №1
コロナ禍終焉の気配がなかなか見えない年明けとなりました。
コロナは想像以上の混乱を世界中に引き起こし、特に我が国ではIT化の遅れによる社会基盤の脆弱性を露呈させる結果となりました。複層する情報の一本化の遅れや繋がらないシステムの互換化の遅れ、コロナ対策を指示する司令塔の不在、行政縦割りの弊害、利益追求のみに硬直した柔軟性に欠ける既成団体や企業組織など、今回我が国のITレベルはコロナ禍に全く対応できなかったのです。
しかし、我が国のIT化が政府を中心にこれ程まで遅れているとは国民の誰一人思っていなかった中で、世界の先進国から完全に遅れていることに初めて気付けたことは良かったことかもしれません。ただ政府をはじめ財界が一丸となってIT化に邁進しなければ、遠からず三流国家に成り下がると判っていながら、コロナ禍が始まり早2年経つにも拘らず、社会を上げてのIT化は進んでいるようには見えないことは大いに心配の種であります。
これはひとえに政治や経済界のリーダー達が、今迄の制度や価値観に縛られ、自由な発想ができないどころか、IT化の真の意味を理解せず、いや、IT化を活用するどころかその可能性すら判らず、ただただ既得権益確保に固執しているからに他なりません。医師会のデジタル診療拒否や、財界の根拠のない在宅勤務非効率化論、一部政治家のマイナンバー制度反対、など各種の利権団体は国民の幸福より自分たちの利益を優先させているのです。
既得権益のカベを乗り越えてコロナ禍で判明した社会基盤の整備遅れを取り戻すことは大変なことです。
行政各機関のばらばらな運営ソフトを統一するだけで調整難航が予想されますし、デジタル機器の使い方から再教育しなければ、現場ではかえって業務が停滞する危険すら発生するでしょう。今後は小学生からデジタル教育を始めなければ、国民全員が「ゲームはするけれど、仕事では使えない人材化」する事態が危惧されます。パソコンを使えない大臣などは論外なのです。
IT化は単に機器をデジタル化すれば良いという話ではなく、働き方や生きがいなど、新しいへ価値観への変化を実現する一大社会変革の大いなる目標を掲げ、その実現のために社会や企業がどう変わるべきかを考え、その改革手段としてのIT技術導入という思想であるべきです。その道筋をきちんと政治が提示し、国策として実行することが求められます。日本の課題である生産性の低さや意思決定の遅さなどは、IT化推進で改善できるからです。満員電車での通勤や残業が当たり前の働き方はおかしいと気付くべきです。
現在、新聞にSDGsやDX講習会の全面広告が載らない日はないくらい、あらゆる企業でSDGsやDXが課題とされていますが、その意味や目的を理解している政治家や経営者は少ないと言えます。「クリーンエネルギー」「脱炭素化」「環境に優しい」「社会貢献」などの謳い文句は耳障りは良いですが、何をどうやって実行するかは真剣に政治・財界が一体となり検討されるべき課題であるのです。しかし、この地球温暖化に端を発する課題は、資本主義社会の新しいネタとして何千兆円もの仕事を生む卵だという側面を持っていることを見逃してはいけません。
新しい地球規模でのインフラ整備、今回特に政府だけでなく民間企業や個人レベルまで巻き込んだインフラの整備には、我々個人の生活に直結した影響があります。生活全般にわたる電子化やIOTの為には全てを新しく揃える必要があります。車は充電施設の拡充、自然エネルギーは新たな送電線網、農業では天候に左右されない屋内農地と管理するコンピューター制御システム導入、光回線の拡充、脱炭素のエースである水素発電インフラ整備、核融合炉の研究、など数限りがありません。これらを導入するには数百兆円規模の投資が必要になります。ですから欧米主導の「脱炭素」の流れに簡単に乗っては危ないのです。
安易な脱炭素化は大変な混乱を社会に引き起こす結果と為りかねません。
海洋汚染の元凶と目されているペットボトルですが、誰もがポイ捨てを止め完全なリサイクルをしなければいけない事は十分理解していますが、遅々としてリサイクルが生産量を上回るまでには進まず、お手上げという状況ですが、もしペットボトルの使用を完全に禁止したら皆さんは唯々諾々と従うでしょうか?一旦手に入れた便利さはそう簡単に手放すことができないのが人の常です。
また、電気自動車の推進ですが、製造工程の変化で余剰する人員の問題など、社会構造変革が必須になる事態に明確なヴィジョンや対策を政府や財界が持ち合わせていないことが最大の問題です。エンジンがモーターに置き換わる事で、トヨタ一社で300万人近い人員整理が必要になり、地域経済は完全に崩壊してしまいます。これらの受け皿や再教育に取る再就職斡旋は国家レベルで行わないと、対処できる問題ではないのです。脱炭素化を否定する人は居ませんが、その難しさを認識し、警鐘を鳴らしている財界人は豊田社長だけのようです。
現在中国が電気自動車では先進国家と言われています。その実態はインフラ整備が地方都市では全く追いついておらず、全く普及していない状況だそうです。先日余剰電気自動車を日本に販売したいという相談を受けましたが、ハンドルは左で走行距離も150キロ、とてもタクシーなど業務用では使える代物ではありませんでした。もともとヒットラーの国民車「フォルクスワーゲン」構想を見習ったものでしたが、ガソリンと違って電機は運べないので、充電設備の構築という基本的概念が欠如していたとしか思えない状態です。
更に、増加する電力消費を自然エネルギーだけで賄えるのでしょうか?