再生なるか、百貨店№6 「地方百貨店の哀愁」

地方百貨店の現状

百貨店の中でも、地方・郊外型百貨店は特に苦しい状況下にあります。ネットや消費者ニーズの変化という大都市と共通の敵以外に、立地の地盤沈下という地方店ならではの要因が存在するのです。地方百貨店は地域の一等立地と言われた場所に存立していました。駅前であったり地域最大の商店街の中であったり商業の中心地にです。しかし、1969年日本初の郊外型ショッピングセンターである「二子玉川高島屋ショッピングセンター」が開業してから80年代にはあらゆる業種がいわゆる「ロードサイド」に出店し、人々のモータリゼーション化やライフスタイルの変化と呼応して爆発的に拡大しました。結果従来の一等地であった駅前や旧商店街は軒並み客を取られ衰退し始めたのです。80年代後半にはロードサイド店に対抗しきれず閉店する個人店舗が続出し、「シャッター通り」と呼ばれる閉店した商店が続く商店街が数多くでました。産業構造の変化で第2次産業の衰退や人口減少などが地方都市を襲い、または2000年の大規模小売店舗法改正により大型のショッピングセンターや総合スーパーが矢継ぎ早に郊外立地に大型店で出店できるようになり、駅前や旧商店街から完全に消費者はいなくなっていきました。消費者のニーズに対応できる立地は郊外に完全に移ってしまったのです。

このような状況下では、百貨店単独で生き残りを図る事はもはや不可能で、エリア全体でどう郊外ショッピングエリアに対抗するかという、いわゆる「町興し」発想が求められます。地元商店街はもとより行政や産業全体でどう集客するか、どう地域を活性化するか、地域エリアの将来像を描いて初めて対策が可能になると思います。郊外ショッピングエリアが活性化しているのは時代の必然であります。車社会に無料で広い駐車場があり、品揃えも大型店舗なのでアイテム別では百貨店のそれと比較になりません。衣料であればフルライン・フルカラー・フルサイズが揃い、雑貨であればあらゆる種類を揃えられるからです。この強力なエリアに対抗するには新たなMDとソフトが必要です。MDは都市型業種・業態が大前提です。それもファッションではなくライフスタイル全般を扱う業種が望ましいです。なぜなら郊外の巨大総合スーパーやショッピングセンター、ロードサイドに対抗するには彼らと同じか似たようなMDでは意味が無いからです。それ故、例えばドン・キホーテや無印良品、ビックロなど都会で人気の大型MD展開が可能なブランドを百貨店内に地域一番店のMD規模でて展開するのです。ヤングからキャリアまで幅広い年齢層が集客できます。ただそれだけではうまくいきません。何故なら「点」での開発では集客はできないのです。それは今の消費者が目的買い以外の消費行動は「時間や空間」消費だからです。目的買い消費は「ワンストップショッピング」で「如何に短時間で目的の商品を手に入れるか」が大きな要素になりますが、「時間や空間」消費はモノを買う為の行動では無いからです。「駅前の百貨店に都会で人気のドンキが入ったって。見に行かない」という購買5段階理論の「注意・興味」がそそられるのは昔も今も同じです。ただそれが一つの点では消費者はすぐ他の場所へ移動してしまいます。

次回へ続く