クーデター倶楽部 2025年2月  02.15

クーデター俱楽部 2月度

議題

第2章    百貨店は誰の為に、何の為に存在するのか

当然ながら「お客様第1主義で、消費者のライフスタイルを豊かにし、非日常を感じられるスペースであること」と説明してきました。しかし時代毎に消費者の望むMDやサービス、買い方は大きく変化し、特にITの進化により消費者のライフスタイルは劇的変化を遂げていますし、今後もたゆみない変化を続けることでしょう。その為に絶えず消費者のニーズを捉え続ける必要があります。

それは単に「モノ」を売るだけの企業から形を変え、「コト」まで提案し「常に人々が集える・足を運びたくなる」必然性があり且つ地域一番の集客性がある企業を目指すということなのです。これがライフスタイル百貨店です。ライフスタイル百貨店は現在在るサービス業のあらゆる形態・種類を包含し、消費者のニーズに対応しうるもので、百貨店が唯一生き残る手段です。更に重要な要素は此処に来ないと味わえない、体験できない、買えないといった要素をキチンと揃えられているという事です。「コト」を体験できる施設とは現在ではなかなか出会う事が出来ません。一時期テナントとしてエステサロンなどの導入が流行った時期がありましたが、色々な問題から定着しませんでした。故に消費者が常に集いたくなる施設は何かという問いを常に考え、常に変化させていかなくてはならないのです。

現在は子育てを支援する形で郊外のGMS等では、子供が体験できるIT施設(リトルプラネット・マイジム等)やママ友がゆったりベビーカーと一緒に食事がとれるレストラン(100本のスプーン・おもちゃ等)が導入され、従来のフードコートでは味わえない・体験できない「コト」寄りのテナントが大幅に進出し始めています。百貨店では新規顧客が取れないとよく言いますが、新規顧客のニーズを把握していないだけなのです。パンが流行れば正面玄関に導入すれば良い等と、安易なMDでは決して新規顧客は定着せず、一過性の消費者が少々集まるだけでそこでそのパンを食べれたりお茶を飲めたりするスペースが無ければ、「モノ」を売るテナントの誘致でしかないので、いずれ廃れ、また違うテナントを誘致すればよいというショッピングセンター的発想でしかありません。消費ニーズが「寛ぎ」や「ゆっくり」な時間と空間を求めているからです。

ライフスタイル型百貨店では「モノ」の販売と「コト」の体験が同一場所で行える事が最重要な点です。その為には小型テナントを集積するのではなく、ある程度効率を落としても余裕のあるテナントやショップが不可欠になるのです。現在のように安易な消費仕入先で埋め尽くし、結果他店と同質化してしまうより、自社のオリジナル性が担保され消費者のニーズに対応できるのです。

しかし何処にも無い「コト」や「モノ」を提供することは言うに易しで実際は大変難しい問題です。それこそどんな売場創りが、フロアー創りが必要か共有できるコンセプトが大事になります。既存の「コト」と「モノ」をミックスした売場はある程度開発可能性は大きいですが、「モノ」自体の開発は心機一転してバイヤーに本領発揮してもらわねばなりません。其の基本はPB商材開発にたどり着きます。従来のPBはメーカーの売れ筋を大量買取を条件に自社タグネームを付けることでそれっぽくしていました。結果、多量の売れ残しを発生させ、各社在庫倒れとなりPBは廃れました。目的として他社との差別化を謳ってはいましたが、実際は低価格大量販売による売り上げの拡大が目的でした。

しかし今回のPBはお客様の為のPBです。現代では価格最優先ではありません。それはスーパーに任せ百貨店は「本物」をキーワードに定番からトレンドまでを製作する必要が有ります。バイヤーは本物を提供する為に再教育される必要があります。消化仕入れになれたバイヤーは実質何の役にも立たないからです。食品からファッション、おもちゃや家具まで全部ではなくともその中心にはPB商材が必要になってくるのです。それは自社のネームを冠する為、最高の「モノ」でなければなりません。

以上の結果、「モノ」と「コト」とそのMIXが、PB商品を加える事により消費者ニーズに強く響く事になるのです。

更にお客様第一主義を貫くためには上記のように新業態売場やフロアーが不可欠ですが、その消費ニーズを常に捉えるには「現在のお客様ニーズの把握と分析」が不可欠になります。かつて百貨店にはマーケティング部というのがどの企業にも在りましたが、現在はたぶん皆無でしょう。所謂市場調査では消費者のライフスタイルやその傾向まではデータが取れ、目先のMD対策はできても中長期の業態としてMD・サービス・施設などの新しく時代合った企業への変革提案などは無理で、役員クラスがその情報を何にどう活用すべきかを理解していなければ、ただの数字でしかありません。

百貨店は顧客情報を山ほど持っていましたし、現在でも数十万から数百万までの顧客データは待っています。カード顧客です。しかしそのデータは「モノ」を買った記録でしかありません。将来の購買予測やライフスタイル分析までは全く行われていません。このデータを何の目的に使うか、その為に他のデータとどう掛け合わせて欲しいデータを得るかなどの基本的目的が無かったのです。それ故これからのマーケット分析はITを活用し「何のデータを・どうやって・何のために」収集分析するかが不可決になります。そして消費者ニーズに対応する為、わざわざ時間と費用を掛けても来店したくなる施設開発が求められるのです。

上記を踏まえ、百貨店の存在意義は「他業態では実現できない消費者の潜在ニーズを把握し、そのライフスタイルを満足させる時間と空間を提案且つ提供する。MDはオリジナル或いは他社とコラボした他所では手に入らない商材を中心に、消費者の生活ご褒美品を提供する」。これにより「わざわざ来店する」「一ランク上のご褒美品」「此処でしか買えない・体験&体感できない」業態へと進化でき、激化するサービス業の中で生き残る事ができるのです。

クーデター俱楽部 2025年1月  01.27

クーデター俱楽部 1月度

議題

第1章 百貨店衰退の本質的原因

嘗て小売りは「お客様第1主義」を謳い、消費者の欲しいものを揃える為、海外の一流ブランドや今迄見たこともない商材を発掘・提供したり、普段では手に入らないものまで常備展開することにより、消費者の夢と憧れを提供してきました。サービス面でも素晴らしく快適な空間を提供し、対面接客でお客様の満足度を高め、「安心と信用」を提供していたのです。各時代毎に消費者が夢を感じる「モノ」と特別感を与える「サービス」を確実に提供してきたからこそ、消費者の支持を圧倒的を得られ小売りの頂点として君臨できたのです。

ところが現在では効率化とリスクヘッジを最優先化させ、いつの間にか「お客様第1主義」を忘れてしまったのです。百貨店は何の為に存在しているのかという原点を、「お客様の為にある」と明確に言えず、株主の為に利益を稼ぎ出すことのみ唯一の政策の原点になってしまっているのです。我々は小売サービス業であり決して貨物タンカーや大型賃貸ビルを建てる土木建設業はなく、目の前に立ち、千円、一万円と商品を購入してくれる方々が私たちのお客様なのです。

更にIT技術の劇的向上で消費者のニーズやライフスタイルは大幅に変化しました。何時でも、何処でも、欲しいモノやコトの情報が手に入れられ、従来のMDや販売手法、サービスでは消費者のニーズを喚起できなくなってしまったのです。消費者は欲しい時に欲しいものを買うという消費の原点に立ち返り、今必要でないものには全く興味を示さず、安いから取り合えず買っておくという購入モデルは全く姿を消してしまったのです。

百貨店では「モノ」よりから「コト」寄りとよく言いますが、それは「モノ」を売るのでは無く「コト」を売るのだと言われます。しかし所詮「売る」という認識から脱却できていません。百貨店が言う「コト」とは何を指すのでしょう?「旅行」「イベントチケット」位しか思い浮かびません。しかし消費者が望む「コト」とはそんなものではありません。もっとライフスタイルの中で、日々の生活の中で、家族や友達と、自分のライフスタイルに合った空間や時間を体感することなのです。

百貨店再生の第1歩はお客様の為に百貨店はどう役立つ事が出来るか」を定義し直し、全面的なMD改革、仕入れ方式の改善、売り方や売場展開方法、サービスの改革と新規開発、をITのあらゆる技術を駆逐し活用し、かつ今までにない活用方法まで生み出し消費者に提供・満足して頂く事なのです。

しかし残念ながらこの事を理解している百貨店は在りません。相変わらずブランドがどうのこうのといった思考しかないのです。

且つて百貨店は消費を文化と捉え、消費ニーズを牽引してきました。その為に積極的に文化や芸術、更には海外の有名品や日本では未だ知られていない優れた商品やデザイナーを紹介してきました。これらは全て消費者に対する小売業の使命と考え行ってきたのです。そこには未だ情報があまりない時代にいち早く企業の責任として消費者に情報を提供してきたのです。百貨店は利益度外視で、仏教関連の仏像展や美術関連の有名画家展や器展、はたまた駅弁大会や北海道物産展など、普段では見る事が出来ない、手に入らない、コトやモノを提供していたのですが、残念ながら今では売り上げが見込める物産展のみが存続しています。全てが売上中心主義に陥ってしまった事が原因です。

これらの文化催しや商品催しは集客に役立っていたのですが、企業として売り上げが見込めないものは「悪」とみなされ、ただ「モノ」を並べていれば売れる、立地が良いので客は黙っていても来る、といった過去の栄光に浸っているだけでは消費者に支持されるはずがありません。故に百貨店は今こそ、消費者ニーズをどう把握し、どうしたらそのニーズに対応できるのか早急に検討すべきなのです。更には顕在化していない、しかし確実にあるニーズをも把握・予測し、上層部から現場まで一丸となり理解・認識していくべき時代になったと思います。