クーデター俱楽部 2025年1月 01.27
クーデター俱楽部 1月度
議題
第1章 百貨店衰退の本質的原因
嘗て小売りは「お客様第1主義」を謳い、消費者の欲しいものを揃える為、海外の一流ブランドや今迄見たこともない商材を発掘・提供したり、普段では手に入らないものまで常備展開することにより、消費者の夢と憧れを提供してきました。サービス面でも素晴らしく快適な空間を提供し、対面接客でお客様の満足度を高め、「安心と信用」を提供していたのです。各時代毎に消費者が夢を感じる「モノ」と特別感を与える「サービス」を確実に提供してきたからこそ、消費者の支持を圧倒的を得られ小売りの頂点として君臨できたのです。
ところが現在では効率化とリスクヘッジを最優先化させ、いつの間にか「お客様第1主義」を忘れてしまったのです。百貨店は何の為に存在しているのかという原点を、「お客様の為にある」と明確に言えず、株主の為に利益を稼ぎ出すことのみ唯一の政策の原点になってしまっているのです。我々は小売サービス業であり決して貨物タンカーや大型賃貸ビルを建てる土木建設業ではなく、目の前に立ち、千円、一万円と商品を購入してくれる方々が私たちのお客様なのです。
更にIT技術の劇的向上で消費者のニーズやライフスタイルは大幅に変化しました。何時でも、何処でも、欲しいモノやコトの情報が手に入れられ、従来のMDや販売手法、サービスでは消費者のニーズを喚起できなくなってしまったのです。消費者は欲しい時に欲しいものを買うという消費の原点に立ち返り、今必要でないものには全く興味を示さず、安いから取り合えず買っておくという購入モデルは全く姿を消してしまったのです。
百貨店では「モノ」よりから「コト」寄りとよく言いますが、それは「モノ」を売るのでは無く「コト」を売るのだと言われます。しかし所詮「売る」という認識から脱却できていません。百貨店が言う「コト」とは何を指すのでしょう?「旅行」「イベントチケット」位しか思い浮かびません。しかし消費者が望む「コト」とはそんなものではありません。もっとライフスタイルの中で、日々の生活の中で、家族や友達と、自分のライフスタイルに合った空間や時間を体感することなのです。
百貨店再生の第1歩は「お客様の為に百貨店はどう役立つ事が出来るか」を定義し直し、全面的なMD改革、仕入れ方式の改善、売り方や売場展開方法、サービスの改革と新規開発、をITのあらゆる技術を駆逐し活用し、かつ今までにない活用方法まで生み出し消費者に提供・満足して頂く事なのです。
しかし残念ながらこの事を理解している百貨店は在りません。相変わらずブランドがどうのこうのといった思考しかないのです。
且つて百貨店は消費を文化と捉え、消費ニーズを牽引してきました。その為に積極的に文化や芸術、更には海外の有名品や日本では未だ知られていない優れた商品やデザイナーを紹介してきました。これらは全て消費者に対する小売業の使命と考え行ってきたのです。そこには未だ情報があまりない時代にいち早く企業の責任として消費者に情報を提供してきたのです。百貨店は利益度外視で、仏教関連の仏像展や美術関連の有名画家展や器展、はたまた駅弁大会や北海道物産展など、普段では見る事が出来ない、手に入らない、コトやモノを提供していたのですが、残念ながら今では売り上げが見込める物産展のみが存続しています。全てが売上中心主義に陥ってしまった事が原因です。
これらの文化催しや商品催しは集客に役立っていたのですが、企業として売り上げが見込めないものは「悪」とみなされ、ただ「モノ」を並べていれば売れる、立地が良いので客は黙っていても来る、といった過去の栄光に浸っているだけでは消費者に支持されるはずがありません。故に百貨店は今こそ、消費者ニーズをどう把握し、どうしたらそのニーズに対応できるのか早急に検討すべきなのです。更には顕在化していない、しかし確実にあるニーズをも把握・予測し、上層部から現場まで一丸となり理解・認識していくべき時代になったと思います。