緩い時代 2

いつの間にか僕らの周りには、中華料理をはじめ所謂西洋料理(仏蘭西・伊太利・独逸・英吉利・亜米利加)は勿論のこと、印度料理にモロッコ料理、レバノンをはじめとする中東料理、ギリシャ料理に露西亜料理、チリ料理にブラジル料理など数えきれない国々の料理がいとも簡単に食べられます。それも少しの違和感もなくシュラスコを食べ、ラム酒を飲み、平気で食卓にキムチが登場するのです。今から50数年前、狸穴のアントニオでピザの食べ方が判らず、気取ってフォークとナイフを頼んだ事が昨日のように思い出されます。日本の国民性はどんなものでも飲み込み、それを日本流にアレンジさせ進化させてきました。食しかり、車しかり、衣料しかり、文化を貪欲に吸収してきた伝統があります。ちょっと前に何気なく「日本初登場」したものが、あっという間に生活に溶け込み、100年まえからあったように人々は思っています。 渋谷に新しいホテルがオープンしました。従来のホテルはどちらかというと、ステータス嗜好が強く、気取ったイメージが強いものでした。若い世代には単に旅行や出張で寝るだけの場所といったイメージでしょう。米国では若い世代が気軽にホテルを楽しんでいます。仕事終わりに仲間で一杯飲むのは、お洒落なデザイナーホテルのバーが主流です。カジュアルだけどトレンディ、ドレスコードは『お洒落』なら何でもOKです。今までのホテルと比べるととても入りやすく居やすい空間で、かつ、楽しいのです。 今度の「TRUNK」は正にNYのホテルそのもので、正面を入るとそこは大きなオープンバーでカウンターで飲み物を買い、勝手に空いているソファに座り、何時間でも過ごせます。ホテルの広場は外から自由に出入りができ、かってにソファでママ友達がお喋りに華を咲かせ、子供達はかってに走り回っています。ホテルというよりは近所のオープンスペースといった感じです。此処に在るのは自由な空間と時間です。スタッフはとても親切でホテル顧客でない一般人に押付がましさは微塵も在りません。こんな場所にサラリーマンが仕事の打合せをしていたりモデルが日光浴してたり、学生カップルが宿題をしてたり、とっても不思議な空間でした。でも少し居るだけで、とても気持ちいい、馴染める空間でした。これからこんなホテルが増えてくるでしょう!消費者は進化し続けています。  

緩い時代

流石創造集団を率いる黒崎さんの黒崎節を久し振りに聴いてきました。 利益追求のみが目的で金持を目指し、組織の中であくせく競争に身を削り、企業の言いなりで出世をする人生を我々世代は過ごしてきました。効率を追求する余り、一見無駄と見える事は全て切り捨て、ふと気が付くと大事なモノを見失ったり、必要以上の金や物に埋もれて身動き出来ない自分に気づくのです。人と比較する事でしか自分の幸せを理解できず、足ることを知りません。我々は家族の大事さを忘れ、人を愛する事を忘れ、自然の風よりクーラーを求め、川に足を浸すよりプールを好み、手作りより大量生産の無味乾燥な品を求めています。 しかし、競争ではなく協力する方が、必要以上のモノに囲まれるより愛着ある一つを大事にする方が、車を飛ばして流行のレストランで高いブランドワインを飲むより自転車で近所の公園でお弁当を食べる方が、よほどカッコいいという時代が始まっているのです。組織に所属しないと不安な人より、たった一人でも自由に楽しめる人の方が素敵な時代が来たのです。 黒崎さんは30数年前から自由に生きていらっしゃいました。好きだから、綺麗だから、楽しいから、無理に人に合わせる事をせず、自然に自分の心に従ってやって来ました。それを黒崎さんは『ただ緩~く生きてきただけ』と仰います。なんて素敵なのでしょう!今、黒崎さんの生き方に共鳴する人は爆発的に増えています。黒崎さんが主宰する原宿コムーン246は若い人で溢れています。ファーマーズマーケットは原宿の新しい名物です。そこには年齢も姓別も国籍すらも有りません。あるのは緩~い自由な空気だけです。消費者は変わったのです!小売り業界の皆さん。一度お訪ね下さい。貴方の常識と価値観が変わりますから!

ネット販売

最近百貨店の良い話が全く聞こえて来ない中、ネット販売の好調さばかり喧伝され、その本質を見ないままネット販売に参入する企業が増加している今日、ほとんどが『採算度外視』で実験段階から脱しきれていません。1日に1兆7千億売るアリババの『独身の日』はネット販売の象徴として日本でもよく知られていますが、その4割、一説では半分が返品されている実態は全く報道されていません。ネット販売は過当競争時代に早くも突入し、よほどコンテンツが良くないと売上げは取れません。個人がフリーマーケットで販売するレベルなら構いませんが、企業が利潤目的で行うには一工夫も二工夫も必要です。小売り各社はプラットフォーム企業だけが一人勝ちの状況から早く脱し、ネットを活用した小売りビジネスを確立すべきです❗

若き改革者

ONWARDホールディングス馬場副社長と久しぶりに会食をしました。馬場さんは若きエリートぶりに焦点が当たりがちですが、その人柄の良さが彼の最大の魅力です。ONWARD樫山の社長に若くして就任した時も、現場からの発想をすることが自分の役割ときちっと認識して、大企業樫山の中でも数少ない現場派、『モノ造り大好き』という珍しい役員でした。これからは従来発想のモノ造りが通用しないばかりか、消費者思考をどれだけ深く、広く、早く読み、それに対応すべくあらゆる事を新しい思想の下に新しいやり方で対応し得なければ、消費者から受け入れて貰えない、という意見で大いに盛り上りました。伊勢丹大西社長無き跡、業界最後の現場派です。是非このまま頑張って下さい。