11月11日

この日を「独身の日」と判る人は日本でも多いでしょう。2009年から中国アリババグループが開始したバーゲンは今や世界規模に発展し、今年は1日で2兆9千億円売り上げたそうです。この売上は全て電子取引で行われ、中国はコンビニでパン一つ買うのも電子決済が当たり前の社会になりました。「日本の10年が中国では1年」と言われて久しいですが、インフラが全く無かったに等しい中国では新時代のインフラであるネットをいち早く取り入れ、あれよあれよという間に時代の先端技術開発からそれを使いこなすノウハウまで世界トップクラスに踊れ出たのです。それこそが中国経済の原動力と成ったといっても決して過言ではありません。そして日本は完全に置いてきぼりを食らっています。新しい技術や仕組みがが出ると日本では必ず「ああだからダメ、こうだからダメ」という否定文化=ガラパゴス保守化が大手企業に蔓延っています。新しい未知なるモノへの拒否感です。チャレンジ精神の欠如とか保身とか言われますが、自分が理解できないものは全て否定するという「大人社会」の規範があと数年で全く価値を失う時代になっているのです。産業革命や明治維新をはるかに凌駕する時代の革新です。このような時代に百貨店は変えてはいけないものを変え、変えなくてはいけないものを必死で守っている気がしてなりません。キャッシュレスの時代を見据えて銀行は利用価値の減ったATMを削減し始めています。配送各社は新しい配送システムを模索しています。こんな時代に百貨店は効率化一辺倒で自社カードのサービスを削ったり、配送費有料化へ動いたり、時代の波と真逆へ走っています。このままでは本当に百貨店はダメになるでしょう。まるでお役所みたいですから・・・・・

再生なるか、百貨店№8「地方百貨店の哀愁」2

地方百貨店再生にはいくつかの基本要件があります。第1に自社だけの再生ではなく地域再生を基本理念とする。第2に地場産業をはじめ若いクリエーターや既存商店のインキュベーター機能や再生の為のMD構築を手助けする。第3に物販のみでなくライフスタイル型MDで「空間・時間」を楽しめるMDを構築し、百貨店を核に地域を回遊できる案を組む。第4に地元の消費者のみならず、遠方からの消費者を呼び込めるMD構築、の4点です。これらの実行のために「街づくり」の青写真から創らねばなりません。百貨店を核にどのような街の回遊策を構築するかが大きなポイントです。街の再生には、離れてしまった若年層やキャリア層、若い子育て層を呼び戻すことが重要です。そのためにはシャッター通りに今風のパン屋、専門特化のコーヒー店、地産地消の肉屋・魚屋、地元特産品を使った雑貨屋などの小売店が必要です。これらの業種は地元にこだわらず、都会からの誘致も考えるべきでしょう。海外のブランドでも構いません。ただ便利なだけの商店街ではなく、わざわざ来たくなる店舗集積が必要です。従来通りの店舗展開では何ら解決策にはなり得ません。店舗は地元の古民家や古い土蔵・蔵などがあれば最高です。無ければ移築することも視野に入れる必要があります。また、意外性も必要です。シャッターが下りる前の店舗が布団屋さんだったら、内装や什器はそのままにカフェにしても良いですし、布団記事を使ったバッグやなどでも面白いと思います。そして新しい展開の為には広く若手クリエーターを誘致しては如何でしょうか。お金がなくて店舗が持てない若いクリエーター達に廉価な家賃かあるいは期間限定無料で貸し出し、出店を促すのです。更には若いクリエーター達の創業を手伝う共同店舗や作業場も不可欠です。地場産業のショウルーム機能も要るでしょう。イベントも必要です。従来あった地域のお祭りは今まで以上に拡大する必要がありますが、地元だけでなく遠方の消費者も参加できるものにすることが不可欠です。特に踊りは各地の「連」を招聘すると同時に複数の地元連結成も必要でしょう。東京・阿佐ヶ谷の「阿波踊り」や原宿の「スーパーよさこい」などの地方版を作り上げる事です。よく地方では出身者あるいは出身者の創った空想のスターをモチーフに銅像や物販をしていますが、単に銅像があるだけでは地域回遊はしません。地域回遊のイメージは東京の下町です。しかし、浅草や谷根千は簡単にはなれません。狙うべきは台東区が長年地道に行ってきた街造り手法です。衰退した商店街に立派な箱ものを作るのではなく、これから伸びゆく若手クリエーターを優遇誘致することにより、新しい血を導入して活性化を推進しようとする政策です。廃校になった小学校を創作の場として安く開放したりイベントの拠点にしたりして育て、その若者達がが、少しづつ路地裏や商店街の裏手の寂れた場所に店舗を出し、創作から根を地元におろし始めている動きです。台東区は駅の高架下にクリエーターの販売拠点を整備し、若いクリエーターが自分の作品や手作り商品を販売するスペースを提供しており、近隣のアメ横に来る消費者を誘導して大賑わいです。また浅草雷門から歩いて3分ですが、全くの旧住宅街であった寿4丁目エリアや蔵前にニューヨークにありそうなバーや洒落た靴屋さん、チョコレート屋や自分のオリジナルが創って貰える文房具屋などが新たに店を構えたりして、休日には地図を持った人々で大賑わいになっています。これは浅草雷門を拠点に人々が街を回遊して、一種の宝探し気分で店探しを楽しんでいるのです。歩き疲れたら倉庫を改装したゆるーい時代の空気を感じさせてくれる最新のカフェがあったり、おなかがすいたら老舗のお蕎麦屋さんが何気なく在ったりそれは楽しいエリアに変化しています。戦後すぐ始めたパン屋は変わらない事を売りに2週間前からの予約が無ければ変えないほどの盛況です。このように大手の綺麗で新しい高層ビルを建てる街作りではなく、今迄あるモノを活用して、新たに若い人の生活の場を創成・導入することと、地場の産業を合わせる事で新しい街を創る試みです。

この他に、地元の産業の育成・紹介が街造りの大きな要素になります。食で言えば地元のお菓子や名産品などの手造り感を、工場や工房・作業場などを見学しながら買えるとか、モノ造り体験ができるとか、消費者の参加意識をくすぐる展開が不可欠です。その際奇をてらった商品の必要はなく、身の回りの生活に普通にあるモノを販売するするだけでよいのです。ただ、従来の店舗で従来のように販売するだけでは集客は難しいので、包装紙を買えるとか店頭や什器にVMDを取り入れるとか、食であれば出来立て感やシズル感を、工業製品であれば種類の豊富さであったり、若手クリエーターとのコラボ商品であったり、ファッションであれば地域特性のあるコーディネートであったり、その場でしか手に入らないことや特別感を感じさせる演出が求められます。特に従来の商店街だけでなく、昔ながらの住宅街でもあれば、その古いつくりの家を改造してノスタルジックな新商店街を作れたら最高です。千葉県佐野市や長野県上田市の「新しい街」など、岐阜県飛騨高山の「古い街通り」ほどでなくても十分集客要素になるのです。新しい街造りに必要なのは、時代が必要としている=消費者が望んでいる空間と時間を感じさせてくれる街なのです。そのためにシャッターが下りた旧商店街の店舗はそれこそ、若いクリエーター達の手造り感満載の緩い空気が漂うショップに安価で貸し出すことが必要です。いまはやりの民泊もよいでしょう。なにせ広域から地域の空間と時間を楽しみに来れるモノやイベントが必要なのです。それには当然日本のみならず、インバウンドも視野に入れるべきなのです。特に「食」の集積は人気を博すでしょう。手焼きせんべいの体験政策や、大根掘りやキュウリもぎなど都会人や外国人には新鮮な体験になるでしょう。

このような街造りの拠点である百貨店は重要なポジションです。しかし今までのようなただ物販のみを主体とした店造りでは全くその存在価値は見出せません。次号に続く。