新しい百貨店とは? 新業態の百貨店№3

2)  24時間機能を持ち、24時間展開する

  百貨店が「コミュニテーの中核になる」には百貨店が持つ空間と時間の最大限活用が不可欠です。空間は「モノ売り」から「コト寄り」に変わらなくてはなりませんが、同時に「時間」の有効活用が為されなければなりません。地方都市の課題の一つに夜間時間を過ごせる施設が極端に少ない事が挙げられます。夜間人口の減少で地方都市の夜はつまらないというのが特に若年層を中心に多く聞こえ、夜というといかがわしいイメージや不良というイメージが年配者を中心に考えてしまいがちですが、国際化の時代に「夜は寝るもの」で「人生を楽しむ」ことは悪だとする意識はもはや時代遅れです。健全化という観点からしても、百貨店が24時間営業の不夜城化すれば逆に不健全な場所は減り街の浄化にも寄与できると思います。施設がより多くの消費者から支持を得るにはそのニーズに対応すべく24時間営業を目指さねばなりません。

  例えば、百貨店の通常営業は7時には終了しますが、一等地の商店街に真っ暗闇が出現してしまいます。そこで7時以降はリアル動画販売に切り替えます。各売り場を周りその日の気に入った商品を音楽に乗せながらネット販売するのです。飲食も同様です。昼間は地元の主婦や起業家が施設を借りてランチ営業し、夜はバーや居酒屋に変身です。所謂2毛作です。ホテルの存在は不可欠でしょう。バックパッカー用のカプセル型から蚕棚型、ファミリー用にビジネスホテル型と画一ではない客室を用意し、あらゆる客層に(高級は無理)対処できバー直営のクラブを併設したり、飲食ゾーンにホテル直営のバーやスポーツバーにGバー、バイキングレストランなどがあっても良いでしょう。当然これらも2毛作です。この2毛作により起業家やアーティストは安く物件を借りられ、装置産業はそのコスト&減価償却費を安く抑えられます。でも一番大事なことはこれらにより起業家やクリエーターそして一般消費者が百貨店という施設に集うことなのです。

新しい百貨店とは ? 新業態の百貨店№2

百貨店復活の要件 

 1)地域密着型で地域コミュニケーションの中核化機能を持つこと

   百貨店は新しい商品・展開方法・販売方法を開発することにより消費文化をリードしてきました。しかし消費者のモノ離れが進む中で「ブランドAがダメならB」と、ネット時代のリアル店舗のあり方を模索するのではなく、流行を追い続けるだけの「モノを売っているだけの箱」になってしまいました。肝心の商品もネットの拡大により何処でも何時でも手に入れることができるため百貨店はわざわざ行ってその空間や時間を楽しむ施設ではなくなりました。

    こんな百貨店を復活させる要件の一つに、消費者が集い時間と空間を楽しめる施設に変ることがあります。物販以外のコトや趣味で消費者が集いコミュニケーションを活性化させ、最後にはコミュニケーションを目的に集うようにする事です。従来でも会員組織での旅行や趣味の会、知性を磨く勉強会などがありますが、もっと広い年代が自然に集まれる施設になる必要があります。公共施設や病院、保育園や学校などがあるのは当然、老人ホームや携帯ショップ、薬局にコンビニなど町中にあるものは全てあるべきでしょう。更に若い人に人気のダンススクールやお年寄りに人気のハワイアンスクール、人気のスウィートショップや飲食なども重要でしょう。ただし重厚長大な売り場ではなく消費者ニーズが変わったらすぐ入れ替えが効く簡便な展開法であることが前提です。それも何処にでもある商品や店舗ではなく、地域に根付いていることが重要です。大都会で展開されている何処にでもあるチェーン店などを展開しても、「わざわざ」来る意味合いが無く、地域密着の「ここにしかない」商品や店舗を導入することが大前提です。そしてホテルに焼き鳥屋に寿司屋、酒が飲める蕎麦屋にラーメン屋、バーやGバー、クラブがあっても良いでしょう。 違う年代、違う価値観、違う趣味が混然と一体感を満たすコミュニティーを創り出すことが今の百貨店再生の第一段階です。若い人が来ないから若い人向衣料ブランドを入れるのではなく、ラーメン屋なら老若男女誰でも集えるからです。百の商材を売った百貨店から百の価値あるコトを展開する百価店へ変わる時です。

 

新しい百貨店とは? 新業態の百貨店 №1

百貨店の苦戦が止りません。消費者ニーズの多層化、ネットの急拡大に伴う社会構造の劇的変化に付いていけないからです。百貨店は常に社会変化を見逃さず機敏にその業態を変化させ、新しい品揃え、展開方法、販売手段を開発し消費者ニーズをリードしてきました。しかし技術革新による新しい販売手段は従来の予想をはるかに超えたスピードと規模で拡大し、百貨店が手を拱いているうちに売上金額も顧客数も抜かれてしまい、差は広がる一方です。このままではインバウンドで息をついている一部の大都市百貨店以外は全て無くなる日も遠くは無いでしょう。

この状況を変えるには百貨店が再び新業態を開発しなければなりません。単なる物販機能のみの業態から時代に合った業態へ進化しなければ生き残ることはできません。では新業態化とは如何なるものなのでしょうか?単なる場所貸し化でも低価格帯メーカーの導入でもありません。その要件として①地域密着型で地域コミュニケーションの中核化機能を持つこと②24時間機能を持ち24時間展開すること③コト寄りの起点として新しい生活提案を行うことの④新しい商売を生み出すことの4点です。次にこれらの要件を1つずつ検討しましょう。