コロナ禍の後に(物販業界)№3-2

リアル店舗が復活するためにはまずネットの利点を取り入れ、かつ店頭でしか得られないモノやサービスを提供することに尽きます。この観点からMDや店舗展開環境から見直す必要があると思います。

まずそのためにはファッションで言うとワンブランドをフルスペックで展開できるだけの店舗面積が必要になります。

現状日本の店舗は効率を追求するあまり15坪~30坪が標準サイズですが最低でもその5倍150坪は最低必要になってきます。

そうなると同一ビル内にブランドごとの店舗を複数展開するより一つの大きな店舗に集約したほうが顧客ニーズに対応しやすいことになります。

同一ブランドでなく複数ブランドを展開するのであれば、MDをしっかり組直しコーディネートできるようにするべきです。

最近は同じ会社内でも事業部・あるいはブランドが違うと同じ素材でデザインもほぼ同じ商品がブランド名と価格が違うだけで出てくるケースが多くなっています。

これでは自社で食い合うだけで在庫が増えるだけの結果となりがちです。もう一度自社ブランドのMD展開戦略を見直す必要があります。ただでさえブランドポジショニングが不明確になっており消費者は戸惑うことが多くなっています。

特に新規のブランドは目立たせようと身分不相応なショップを造りたがりますが、最初は良くても2~3年目にはブランドの独自性が失せ、他のブランド同様売れ筋ラインに走るのが現状です。

デザイナーの力がまだまだ未熟な部分と、採算を取るよう上層部からの圧力のせいでどうしてもオリジナリティ-が失われ他ブランドと似たり寄ったりになってしまうのは企業の体質と体制が悪いのです。

大型化ショップの中に新人&新ブランドコーナーとしてラック2本分を展開することから始めるのが妥当でしょう。きちんと自社の主力商品群、新人・新ブランドデビュー場所、定番商品群、季節アイテム群のようにショップ内が誰でも分かるようにVMDで括られれば、うるさい販売員がいなくても消費者は十分商品を見れて検討できると思います。

百貨店の場合特に上記の例が顕著でありますが、各ブランドごとの大きさ=品揃えでの地域一番店を占める必要があります。複数のブランド毎に20坪で展開すると5ブランドもあれば5×5=25人販売員は必要ですが、まとめて150坪になれば販売員は7人いれば十分です。

300坪前後でも9人~10人いれば効率的に運営できます。売上は下がるでしょうが、利益は人件費の分を引けば従来より確実に上がります。ショップの大型化はこのように人件費の削減化という要素も大きいのです。

店舗の大型化はZARAやH&Mが先行して展開していますが大きければ大きいほど効率は良いようです。ちなみにZARAの標準店舗は500坪だそうですが消費者は目的商品以外にも、「何か無いかな」と本来の買い物の楽しみ方を楽しんでいるようです。ちなみに販売効率を上げるため、接客要員はおらず、商品整理係が居るだけです。

コロナ禍の後に(物販業界)№3-1

店頭販売が振るいません。外出禁止による自粛・閉店影響は大きく、家庭内に留まる時間が増えたせいで家庭用品・食材は増加しましたが、それ以外は全体で5割以上へこんでいるのが現状です。

「良くて安い」代名詞だったファッションのZARAやユニクロでさえ店頭販売は振るわず、世界規模で閉店や倒産が始まっています。こんな状況下でネット販売が好調です。当然人々が自宅に籠っているのですから買い物はネットに頼らざるを得ませんが、今までネットに不慣れであった高年齢層も今回を機会にネットに慣れしたんだ人も多かったと思います。

「こんな状況だからネット販売が好調なのは当たり前」という声をよく聞きます。果たしてそうでしょうか?

ネット販売はコロナ禍前から好調にに推移しており、コロナ禍はその後押しになった位でしかないと思われます。若年層を中心に買い物はネットが当たり前の層は若干買い物が増えたかな、ぐらいの感じだと言われます。

それはコロナ禍後は収入の減少が想定されるので今まで以上に無駄なものは避け、必要な家の中のモノを買うぐらいだということなのでしょう。

一方あまりネット購入をしていなかった50歳代の主婦層がネット販売売上に寄与したということは十分想定されます。これまで若年層ほどは全面的にネットに依存したライフスタイルにはなってはいませんでしたが、家庭用品を始めとして外出できない憂さ晴らしをネットで購入することに嵌った主婦層は多いということは容易に想像できます。

この主婦層は、安い価格帯はネット購入で問題ありませんが、中・高級価格帯ではやはり店頭売り場で現物を見て触って素材や機能を十分調べて納得して購入するというスタイルは今後も続くと思われますが、どんな推移を示すのか今後データ分析が必要です。

ネット販売が急成長した理由に時間の制約や場所の制約なく商品が購入でき、基本的に商品を見て納得できなければ返品自由、価格も定価以外に複数存在し自分のニーズにあった価格で購入できる、といった点があります。買いたい物や新製品など検索機能で簡単に探せる事も時間を大切にする消費者に受けてきた点でもあります。

今回これらの利点の他に新しい機能が特に付け加わったということは無いのですが、在宅で時間がある程度使える環境下に消費者があったことを考えると、ゆっくり商品を探せたという点が大きく関与したのではないでしょうか。

フルアイテム・フルサイズ・フルカラーが揃っていて全部見れるということはリアル店舗店頭では不可能です。どうしても売れ筋商品を中心に展開し、効率を追求せざるを得ないのです。

そこには消費者が欲しいものと店側が売りたいものと差が出てしまい、結果消費者の支持を得られない事が多々あるのではないでしょうか。店頭販売を嫌う消費者の各種アンケートを見る限り、店が嫌な理由に「販売員が煩わしい」「品ぞろえが十分でない」「色・サイズが無い」というのが上位3位です。これを見る限り店頭が売れない理由に「品ぞろえ=フルライン・フルカラー・フルサイズ」が無い事が十分想定されます。

コロナ禍の後に(飲食業界) №2-4

第3の要素は、新しい売り方の拡大です。外食産業はコロナで三密を避けるために席を空ける事を余儀なくされましたが、席数を減らせば販売効率は大きく下げざるを得ません。売り上げ減をカヴァーするために弁当販売をする店舗も数多くあり、Take outはほとんどの店舗が始めました。しかしどの店舗でもこれらの方法だけでは下がった売上をカヴァーするまでには残念ながら至っていません。三密を避ける施策は新しいスタンダードとして避けて通れません。それゆえ、三密回避を前提に新しい売り方を開発せねばなりません。

ある店舗は昼の顧客集中を避けるために時間差価格を開発しました。通常12時から1時までに集中するランチ顧客を分散させるが離反させないための施策で、定価1000円のランチを午前11時から12時までは900円に、12時から1時までは1100円に1時から2時までは800円にしました。結果、従来は12時から1時までは満員でしたがそれ以外は閑散としたランチタイムが満遍なく11時から2時まで拡散して売上は従来より2割も上がったそうです。これは定価の概念を変え、三密を同時間内ではなく時間軸を広げて拡散したのす。                  またある店舗はサブスクリプションで、ランチセット1000円15食/月を12,000円で提供を導入したそうです。結果月の売上が事前に相当額確保でき、更にフリーの金額も入れれば通常月の売上をやはり超えられたそうです。このサブスクは曜日別に指定してあったのでランチ数をある程度読めるので用意する食材のロスを削減でき、売上確保もそうだが利益面で大きなメリットがあったそうです。居酒屋では夜の「ちょいと一杯」や「接待」需要が無くなる事を想定して昼飲みや昼間の定食屋を始め、家族連れや在宅者の需要喚起を図るところも出始めています。今までの常識であった一緒に働き、一緒にお昼を食べ、一緒に退社する、という考え方はきっぱり捨てて新常態を早く認知することが肝要です。

一方店舗販売を諦め、宅配専門に切り替えた店舗もあります。店舗は最低でも20坪前後掛かるため、5坪ほどの厨房のみの店舗に切り替えたのです。その代わりWeb上にタイ料理専門店、ベトナム専門店、中華専門店、カレー専門店を展開し、かなり特色の強いメニューを提供しています。売上が振るわない専門店は即Webから撤退し別の専門店を展開するのだそうです。こうすれば厨房のみで複数の店舗を展開でき、家賃コストも従業員コストも掛かりません。トレンドの料理が出ればすぐさまトレンド料理の専門店へ鞍替えでき、リスクも大して取らずに済みます。小規模資金で直ぐにでも開業できるのでスモールビジネスを目指す外食入門編としては最適でしょう。今後は同業者が数人集まって厨房も共同化する予定だそうで飲食の課題の一つである効率化も家賃面では大きく改善できる予定だそうです。

限定食数だけ販売し終えたら閉店してしまうことで話題になった牛肉丼の「伯食屋」は、その斬新な営業スタイルで話題を集眼4店舗まで拡大していましたが、コロナの影響で店舗の営業自粛後再開しても客足が戻らずこの度全店閉店となりました。その原因はやはり密な集客を基本とした、旧来からの営業モデルがベースにあったせいでどうしても集客がなければ成り立たない業態だったのです。100食を売り上げるには昼食時に集中して販売しなければならなかったからです。これは大きな教訓です。今まで集客が最大の課題でこれが達成できれば売上は自然とついてきたのです。しかし、有史以来小売りの原点である「集客」が禁止されたのですから私たちは集客しないで、顧客を分散させて売上を確保する売り方を模索しなくてはいけない時代に突入した事を肝に銘ずるべきなのです。