コロナ禍の後に(飲食業界) №2-4

第3の要素は、新しい売り方の拡大です。外食産業はコロナで三密を避けるために席を空ける事を余儀なくされましたが、席数を減らせば販売効率は大きく下げざるを得ません。売り上げ減をカヴァーするために弁当販売をする店舗も数多くあり、Take outはほとんどの店舗が始めました。しかしどの店舗でもこれらの方法だけでは下がった売上をカヴァーするまでには残念ながら至っていません。三密を避ける施策は新しいスタンダードとして避けて通れません。それゆえ、三密回避を前提に新しい売り方を開発せねばなりません。

ある店舗は昼の顧客集中を避けるために時間差価格を開発しました。通常12時から1時までに集中するランチ顧客を分散させるが離反させないための施策で、定価1000円のランチを午前11時から12時までは900円に、12時から1時までは1100円に1時から2時までは800円にしました。結果、従来は12時から1時までは満員でしたがそれ以外は閑散としたランチタイムが満遍なく11時から2時まで拡散して売上は従来より2割も上がったそうです。これは定価の概念を変え、三密を同時間内ではなく時間軸を広げて拡散したのす。                  またある店舗はサブスクリプションで、ランチセット1000円15食/月を12,000円で提供を導入したそうです。結果月の売上が事前に相当額確保でき、更にフリーの金額も入れれば通常月の売上をやはり超えられたそうです。このサブスクは曜日別に指定してあったのでランチ数をある程度読めるので用意する食材のロスを削減でき、売上確保もそうだが利益面で大きなメリットがあったそうです。居酒屋では夜の「ちょいと一杯」や「接待」需要が無くなる事を想定して昼飲みや昼間の定食屋を始め、家族連れや在宅者の需要喚起を図るところも出始めています。今までの常識であった一緒に働き、一緒にお昼を食べ、一緒に退社する、という考え方はきっぱり捨てて新常態を早く認知することが肝要です。

一方店舗販売を諦め、宅配専門に切り替えた店舗もあります。店舗は最低でも20坪前後掛かるため、5坪ほどの厨房のみの店舗に切り替えたのです。その代わりWeb上にタイ料理専門店、ベトナム専門店、中華専門店、カレー専門店を展開し、かなり特色の強いメニューを提供しています。売上が振るわない専門店は即Webから撤退し別の専門店を展開するのだそうです。こうすれば厨房のみで複数の店舗を展開でき、家賃コストも従業員コストも掛かりません。トレンドの料理が出ればすぐさまトレンド料理の専門店へ鞍替えでき、リスクも大して取らずに済みます。小規模資金で直ぐにでも開業できるのでスモールビジネスを目指す外食入門編としては最適でしょう。今後は同業者が数人集まって厨房も共同化する予定だそうで飲食の課題の一つである効率化も家賃面では大きく改善できる予定だそうです。

限定食数だけ販売し終えたら閉店してしまうことで話題になった牛肉丼の「伯食屋」は、その斬新な営業スタイルで話題を集眼4店舗まで拡大していましたが、コロナの影響で店舗の営業自粛後再開しても客足が戻らずこの度全店閉店となりました。その原因はやはり密な集客を基本とした、旧来からの営業モデルがベースにあったせいでどうしても集客がなければ成り立たない業態だったのです。100食を売り上げるには昼食時に集中して販売しなければならなかったからです。これは大きな教訓です。今まで集客が最大の課題でこれが達成できれば売上は自然とついてきたのです。しかし、有史以来小売りの原点である「集客」が禁止されたのですから私たちは集客しないで、顧客を分散させて売上を確保する売り方を模索しなくてはいけない時代に突入した事を肝に銘ずるべきなのです。

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