コロナ禍でネット販売は大盛況、リアル店舗は全滅の憂き目にあっています。100年続いた老舗だろうと一等地に立つお洒落な商業ビルだろうと人が来なければモノは売れません。世界に名だたる観光地浅草や銀座などインバウンドで絶好調だった観光地は無人化しています。老人ホーム化していた病院もガラガラです。
一方、広い公園や海岸などイメージ的に空気感染が少ないと思われるエリアには人々が集中化しており、狭い空間やエリアを避ける傾向はまだまだ続きそうです。
このように有史以来、「モノを売る為には人を集めることがまず大前提」だった小売業は右往左往状態から全く抜け出る方策を見つけ出してはいません。こんな状況下のリアル店舗の不調を尻目に絶好調なのがネット販売です。
コロナ禍前でもネット販売は若者を中心に若い顧客層を完全に取り込み奇跡的な急成長を続けていましたが、コロナ禍によりその成長幅を大幅に増やしました。
今までネット販売を利用しなかった主婦層や50代サラリーマン層まで今やネットでの買い物は当たり前になったのです。その結果、大手小売りは当然、大手メーカーから零細企業まで、のみならず個人に至るまであらゆる企業や個人が「ネットでモノを売れ」とばかりで参入しています。高級食材からプロ用DIYグッズ、ファション衣料・雑貨、家電製品からブランド品まで、果ては薬から家まで、売っていないモノはありません。
小売業を生業とする専業は目の色を変えて今更のように「ネット販売!」と声高に叫び、消化仕入品=メーカーからの借り物=何処でも売っている商材を必死で売ろうとしています。
このようなメーカー商品はメーカー自身のHPでも、色々なネットサイトでも、あるいはメーカーの実店舗でも販売しているので、わざわざ小売業(百貨店やスーパー、専門店)のネット販売サイトを訪ねる事はせず、消費者は直接メーカーのHPへ行ってしまうのです。
それにもかかわらず小売業はネット販売さえすれば無限の売上が手に入ると信じ切っていますが、ネット販売自体が競合同士の激しさに晒され、実際小売業で儲かっている企業は少ないと言われています。
儲かっているのはプラットフォーム企業と配送業者だけです。後発組は特にネット販売プラットフォームに乗せれば売れて儲かると勘違いしている企業は誠に多いのです。
当然、競合の熾烈なネット販売でも消費者が買い易い品揃えや、見せ方、売り方があるはずです。検索したら一番最初に自社商品が出てくるようにしたり、「いいね」の評判を増えるようにしたり、徹底したマーケティングにより選定されたハッシュタグをつけたり、インフルエンサーを多数雇ったり色々な仕掛けが考えられます。
最近の流行はファッションで言えばメーカーや小売店舗の社員が自らコーディネートを写真に撮り、HPにアップすることです。食品で言えば産地の漁協や農協直送や農家や漁師の直販です。
売上獲得のため配送の問題も大きな要素になっています。一つは料金の問題。折角欲しい商品を易く買えたのに配送料が高くては意味がなくなってしまいます。二つ目は配送までの日数があります。Amazonが即日無料配送で市場を席巻し後日翌日湯量配送に変えた時には、日本勢は太刀打ちできなくなっていたものです。現在は注文後3日以内に配送できないと次回からの注文は激減するそうです。
更に大きな課題として返品処理の問題があります。実店舗で購入したモノを返品するにはレシート確認や痂疲の有無,使用済みか未使用かなど煩い条件が有りますが、ネット販売ではファッションではサイズ、食品では鮮度など実際に見ないと分からないモノは返品を前提とした納返品システムを持たないとなかなか売れません。
今どきの消費者は平気で色・サイズを多数取り寄せ自宅で試着し、気に行ったもの以外は返品することが当たり前なのです。食品も冷凍冷蔵品は勿論のこと生鮮食材でも気に入らなければ返品する時代なのです。販売者によっては「返品不可」を前提に商品掲載するところも在りますが、人気は無いようです。
その返品された商品を再度販売できるように箱や包装を再生できる時間をどれだけ短縮できるかが、商品ロス削減や売上貢献に大きく左右します。とかくネット販売では売れれば良しとばかり、関連経費や商品回転率、利益率などは二の次になる傾向が有りますが、在庫になっているよりは試着でも何でも動いている方が良いとする企業は売上がダントツのようでありますし、今まで再生再配送まで3日掛かっていたのを30分に縮める目標を掲げているそうです。
ネット販売はその技術的進歩が日進日歩で、自ら大きな投資を必要とするプラットフォーム企業になることは今更愚の骨頂でありますが(伊勢丹は3百数十億円掛けて構築しましたが)これから小売業はどうやってネット販売を始めとする進化し続けるIT技術を利用していけばよいのでしょう。