IT時代の新しい売り方№3

今までネットにあまり慣れ親しんでいなかった中高年層は今回のコロナ禍でずいぶんネット販売に親しみ、一般品までも買うようになってきました。特に40代~50代の主婦層がネット販売に流れた事は大きな転換点で、これから益々増加し、ネット販売に拒否感を持つ層はいなくなるでしょう。そうなると実店舗の存在意味は全くなくなってしまいます。そうなる前に実店舗に顧客を引き留める策が必要なのです。

今年の夏にb8ta(ベータ)が日本に上陸しました。これは店舗では販売せず、観て触るだけの為だけの出店なのです。ネット販売プラットフォームの実店舗判と言いましょうか、ネットで話題の商品だったり、ネット上では目立たないが面白い商品だったり、兎に角商品をアピールだけする為に実展開する店舗なのです。 <これだと商品展開業者は店全部を借りなくてすみ、展開点数や使用面積に応じて家賃をはらえばよいので、新製品をPRしたり、マニアックな商品を展開するにはもってこいであります。

新しい意味合いのショールーミングです。混雑し膨張し区別がつかなくなり埋もれた商品を発掘するのに最適なツールがエクセレントショールーミーングだったという訳です。新しい実店舗の活用実験店舗策です。

現在、実店舗はこのような使い方しかされず、一般小売業にとっては人件費や家賃が掛かる厄介者扱いが現状です。では実店舗への消費者誘導はいかに行えるのでしょうか?  今や若い40代50代の女性達はほとんどが共働きで収入が有るため、余暇に対して積極的に行動しています。仕事をしている分、休日は羽目を外して好きなことをしたいという願望に男女の区別は在りません。必需品や消耗品はネットで十分で、自分の趣味に合うモノや友人たちと会うためにはお洒落をしていきます。

2万から5万前後の出費に対してはそこそこモノの価値感が分かるので、自分の目で見て触って素材を確かめ、試着して着心地を楽しみたいのです。自分の好みも分かっているので出向く店も在る程度決まっています。このような客層迄ネット販売に追いやる必要は何もないはずです。

しかし現状の実店舗では彼女たちは満足していません

IT時代の新しい売り方 №2

今、小売業は百貨店から街の豆腐屋に至る迄、ネット販売に血道を挙げています。ある者は自社専用の、ある者は専業のプラットフォームを使い、生き残りにはこれしかないとばかり全勢力をつぎ込んでいます。

それも膨大なシステム開発費用払ってオリジナルプラットフォームを創るか、登録料やシステム利用料、はたまた課金システム利用料に倉庫使用料など莫大な経費を払い、幾ら売っても儲からないにもかかわらずです。

今や国内だけで十数万のネット販売サイトが存在すると言われています。正に百花繚乱、大混戦状態といえるでしょう。この混戦から抜け出るために、商品の更新頻度を上げたり、展開商品数を増やしたり、自社社員に商品をコーディネートさせ自ら登場させたり、検索機能に工夫を凝らしたり、掲載商品の写真写りに凝ったり、各社各様に工夫を凝らしています。

しかし、各社共、大事な事を忘れています。ネットでの販売に血道を上げすぎて「実店舗への顧客誘導を全く忘れてしまっている」ことです。

店舗を持たない企業や個人はしかたありませんが、実店舗を持つ企業はネットでの販売しか頭に無く、全くその実店舗活用策を検討しておらず撤退か縮小しか考えていないのです。縮小均衡だけでは一定限度を超えたらモノを創ることも、仕入れることも難しくなり、結局倒産しか無いのは事例を挙げるのにきりがありません。

よく実店舗の商品をネット販売で買える事をうたっている企業があります。ネットで観て実店舗で実物に触り納得してからネットで買うというものですが、高級品やラグジュアリーブランドなら実際に商品を観て触って、衣料なら試着し、納得してから買いたいものです。価格がネットの方が安いなら家に帰ってからネット注文もあり得るでしょうが、高級品、ましてやブランド品はネット販売はおろかセール価格で販売する事は一般顧客向けではまずあり得ないことです。。(一部のFarfatchやBUYMAなどの海外ブランドを安価で提供するサイトなら別ですが。)わざわざ実店舗に来店させその後ネットで買わせるというのは無駄というより、あり得ないことです。

ボリュウム品や消耗品なら見なくてもネットで十分消費者は購入しますが、一般品はどうでしょう?

一時ショールーミングと言う言葉が流行りました。店舗はショールームで購入はネットでという意味です。衣料品等はサイズや色目の問題があるので十分あり得るはなしでしたが、消費者の半分は更に進み、商品を全サイズ、全色取り寄せ自宅でゆっくり試し、要るものだけを残して要らないものは全部返品する事が日常化しています。しかし半分の人はやはり商品を直接見たり、試してみないと買わない層です。この層をネット販売に追いやって良いものでしょうか?

この層は今回のコロナ禍でずいぶんネット販売に親しみ、一般品までも買うようになってきました。特に40代~50代の主婦層がネット販売に流れた事は大きな転換点で、これから益々増加し、ネット販売に拒否感を持つ層はいなくなるでしょう。そうなると実店舗の存在意味は全くなくなってしまいます。

IT時代の新しい売り方 №1

コロナ禍でネット販売は大盛況、リアル店舗は全滅の憂き目にあっています。100年続いた老舗だろうと一等地に立つお洒落な商業ビルだろうと人が来なければモノは売れません。世界に名だたる観光地浅草や銀座などインバウンドで絶好調だった観光地は無人化しています。老人ホーム化していた病院もガラガラです。

一方、広い公園や海岸などイメージ的に空気感染が少ないと思われるエリアには人々が集中化しており、狭い空間やエリアを避ける傾向はまだまだ続きそうです。

このように有史以来、「モノを売る為には人を集めることがまず大前提」だった小売業は右往左往状態から全く抜け出る方策を見つけ出してはいません。こんな状況下のリアル店舗の不調を尻目に絶好調なのがネット販売です。

コロナ禍前でもネット販売は若者を中心に若い顧客層を完全に取り込み奇跡的な急成長を続けていましたが、コロナ禍によりその成長幅を大幅に増やしました。

今までネット販売を利用しなかった主婦層や50代サラリーマン層まで今やネットでの買い物は当たり前になったのです。その結果、大手小売りは当然、大手メーカーから零細企業まで、のみならず個人に至るまであらゆる企業や個人が「ネットでモノを売れ」とばかりで参入しています。高級食材からプロ用DIYグッズ、ファション衣料・雑貨、家電製品からブランド品まで、果ては薬から家まで、売っていないモノはありません。

小売業を生業とする専業は目の色を変えて今更のように「ネット販売!」と声高に叫び、消化仕入品=メーカーからの借り物=何処でも売っている商材を必死で売ろうとしています。

このようなメーカー商品はメーカー自身のHPでも、色々なネットサイトでも、あるいはメーカーの実店舗でも販売しているので、わざわざ小売業(百貨店やスーパー、専門店)のネット販売サイトを訪ねる事はせず、消費者は直接メーカーのHPへ行ってしまうのです。

それにもかかわらず小売業はネット販売さえすれば無限の売上が手に入ると信じ切っていますが、ネット販売自体が競合同士の激しさに晒され、実際小売業で儲かっている企業は少ないと言われています

儲かっているのはプラットフォーム企業と配送業者だけです。後発組は特にネット販売プラットフォームに乗せれば売れて儲かると勘違いしている企業は誠に多いのです。

当然、競合の熾烈なネット販売でも消費者が買い易い品揃えや、見せ方、売り方があるはずです。検索したら一番最初に自社商品が出てくるようにしたり、「いいね」の評判を増えるようにしたり、徹底したマーケティングにより選定されたハッシュタグをつけたり、インフルエンサーを多数雇ったり色々な仕掛けが考えられます。

最近の流行はファッションで言えばメーカーや小売店舗の社員が自らコーディネートを写真に撮り、HPにアップすることです。食品で言えば産地の漁協や農協直送や農家や漁師の直販です。

売上獲得のため配送の問題も大きな要素になっています。一つは料金の問題。折角欲しい商品を易く買えたのに配送料が高くては意味がなくなってしまいます。二つ目は配送までの日数があります。Amazonが即日無料配送で市場を席巻し後日翌日湯量配送に変えた時には、日本勢は太刀打ちできなくなっていたものです。現在は注文後3日以内に配送できないと次回からの注文は激減するそうです。

更に大きな課題として返品処理の問題があります。実店舗で購入したモノを返品するにはレシート確認や痂疲の有無,使用済みか未使用かなど煩い条件が有りますが、ネット販売ではファッションではサイズ、食品では鮮度など実際に見ないと分からないモノは返品を前提とした納返品システムを持たないとなかなか売れません。

今どきの消費者は平気で色・サイズを多数取り寄せ自宅で試着し、気に行ったもの以外は返品することが当たり前なのです。食品も冷凍冷蔵品は勿論のこと生鮮食材でも気に入らなければ返品する時代なのです。販売者によっては「返品不可」を前提に商品掲載するところも在りますが、人気は無いようです。

その返品された商品を再度販売できるように箱や包装を再生できる時間をどれだけ短縮できるかが、商品ロス削減や売上貢献に大きく左右します。とかくネット販売では売れれば良しとばかり、関連経費や商品回転率、利益率などは二の次になる傾向が有りますが、在庫になっているよりは試着でも何でも動いている方が良いとする企業は売上がダントツのようでありますし、今まで再生再配送まで3日掛かっていたのを30分に縮める目標を掲げているそうです。

ネット販売はその技術的進歩が日進日歩で、自ら大きな投資を必要とするプラットフォーム企業になることは今更愚の骨頂でありますが(伊勢丹は3百数十億円掛けて構築しましたが)これから小売業はどうやってネット販売を始めとする進化し続けるIT技術を利用していけばよいのでしょう。