IT時代の新しい売り方 №2

今、小売業は百貨店から街の豆腐屋に至る迄、ネット販売に血道を挙げています。ある者は自社専用の、ある者は専業のプラットフォームを使い、生き残りにはこれしかないとばかり全勢力をつぎ込んでいます。

それも膨大なシステム開発費用払ってオリジナルプラットフォームを創るか、登録料やシステム利用料、はたまた課金システム利用料に倉庫使用料など莫大な経費を払い、幾ら売っても儲からないにもかかわらずです。

今や国内だけで十数万のネット販売サイトが存在すると言われています。正に百花繚乱、大混戦状態といえるでしょう。この混戦から抜け出るために、商品の更新頻度を上げたり、展開商品数を増やしたり、自社社員に商品をコーディネートさせ自ら登場させたり、検索機能に工夫を凝らしたり、掲載商品の写真写りに凝ったり、各社各様に工夫を凝らしています。

しかし、各社共、大事な事を忘れています。ネットでの販売に血道を上げすぎて「実店舗への顧客誘導を全く忘れてしまっている」ことです。

店舗を持たない企業や個人はしかたありませんが、実店舗を持つ企業はネットでの販売しか頭に無く、全くその実店舗活用策を検討しておらず撤退か縮小しか考えていないのです。縮小均衡だけでは一定限度を超えたらモノを創ることも、仕入れることも難しくなり、結局倒産しか無いのは事例を挙げるのにきりがありません。

よく実店舗の商品をネット販売で買える事をうたっている企業があります。ネットで観て実店舗で実物に触り納得してからネットで買うというものですが、高級品やラグジュアリーブランドなら実際に商品を観て触って、衣料なら試着し、納得してから買いたいものです。価格がネットの方が安いなら家に帰ってからネット注文もあり得るでしょうが、高級品、ましてやブランド品はネット販売はおろかセール価格で販売する事は一般顧客向けではまずあり得ないことです。。(一部のFarfatchやBUYMAなどの海外ブランドを安価で提供するサイトなら別ですが。)わざわざ実店舗に来店させその後ネットで買わせるというのは無駄というより、あり得ないことです。

ボリュウム品や消耗品なら見なくてもネットで十分消費者は購入しますが、一般品はどうでしょう?

一時ショールーミングと言う言葉が流行りました。店舗はショールームで購入はネットでという意味です。衣料品等はサイズや色目の問題があるので十分あり得るはなしでしたが、消費者の半分は更に進み、商品を全サイズ、全色取り寄せ自宅でゆっくり試し、要るものだけを残して要らないものは全部返品する事が日常化しています。しかし半分の人はやはり商品を直接見たり、試してみないと買わない層です。この層をネット販売に追いやって良いものでしょうか?

この層は今回のコロナ禍でずいぶんネット販売に親しみ、一般品までも買うようになってきました。特に40代~50代の主婦層がネット販売に流れた事は大きな転換点で、これから益々増加し、ネット販売に拒否感を持つ層はいなくなるでしょう。そうなると実店舗の存在意味は全くなくなってしまいます。

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