コロナ禍の後に(物販業界)№3-6

昨今、コロナ禍で延期になっていた大規模商業施設の開店が相次いで行われています。大抵がホテルやオフィスを併設しており大型化しています。

これらの施設の特徴は二種類に分けられます。一つは従来型商業施設で、導線をまっすぐに通し、見やすく、広々とし、有名ブランドを誘致し、ビルの格を上げようとするものです。少し前ではCOREDO室町テラス、渋谷スクランブルスクエア、渋谷フクラス、ウィズ原宿などで、従来型の商業施設で全くもって面白くも何ともありません。

話題の新ブランド導入とか人気のパン屋導入など小手先だけで、何処にでもある店が並び、わざわざそこへ出向いてまで買う必然性が皆無です。喫茶にしても当たり前の有名店舗が並び目新しいものは何処にもありません。一度行けば飽きてしまう施設達です。

これらの施設の商業施設はオフィスやホテルの付属でしかなく、人々が集うための場所であったり、わざわざ来たくなるような環境の施設ではありません。建築家が己の自我を目一杯、これでもかこれでもかと押し付けてくるためだけの、無機質で硬質、100年後も残るような美的空間を誇るものでもなく、家賃が取れればそれでいいだけのつまらない箱であります。入居している店舗が赤字でも家主はオフィスやホテルの賃料収入だけで十分元が取れる仕組みになっており、家賃が払えなくなった店子は入れ替えれば済むことなのです。

このような商業施設は消費者の動向やニーズを全く理解せず、一方的な効率的収益性と豪華さだけを売りにしているだけで、あっという間に飽きられてしまうことは目に見えています。取りあえず開店時に話題の店が数店入っていればよく、あとはオフィスの従業員向けの飲食店が残れば十分なのです。あれだけ猫も杓子も騒ぎ、乱立し、先を争って導入したタピオカ店はわずか数か月で影も形も残っていません。同様に今はやっている店舗はいずれ流行が去ればお役御免となり、大型チェーン店の集合店ばかりになり、何処も同じようなビルになり、話題にすら上らなくなるのです。

一方、MD的にも環境的にも面白いのが渋谷PARCOと渋谷ミヤシタパークです。両施設とも今の消費者をよく理解していて、従来型のただ店舗を並べるのではなく、「わざわざ」「探す」楽しさを提供してくれています。

前回述べたように消費者が出かけるのは渋谷や新宿、銀座と決まったビルへ行くだけの街から、横丁、路地裏などの何か宝探しのようなわくわく感を感じさせる場所を求めているのです。下町がここ数年大ブームなのも、繁華街にはない路地裏や横丁そして、そこにしかない古い店を捜し歩く魅力を感じているからなのです。銀座の裏コリドー街や日比谷URAROJI、などは今後新しい人の流れを創ることでしょう。

渋谷PARCOのB1にはそんな裏路地の横丁が創られており、消費者の好奇心を掻き立てています。居酒屋にイタリアン、甘味屋に占い師、寿司屋に立ち食いてんぷらや、レコード屋にゲイバーまであり、驚かされます。1回行っただけではその魅力を全部は味わえず、何度も足を運んでしまいます。また、完成してから1年近くたちますが未だに色褪せず、集客力を誇っています。特に屋上に設けられた流石創造集団のイベント広場は、毎週代わりで創作意欲旺盛だが発表の場がないクリエーターのイベントや、青空一のファーマーズマーケットやらいつ行っても何かしら行われており、楽しい場所になっています。

ミヤシタパークも飲食街とは別に1Fに渋谷横丁として全国からのB~C級グルメを揃えていて大変楽しい場所になっています。三密等どこ吹く風で、狭い通路にぎゅうぎゅう詰めの店内、しかも店舗の括りがあいまいで何処からどこまでが同じ店なのか区別がつかなくて、お祭りの屋台で食べている感じです。

一方物販階は多数の飲食を店舗間に挟み込み、全館飲食階の有様です。千駄ヶ谷の路地裏にある白いTシャツだけを売るFFFFFFTなど入っていましたが、わざわざ探しに来るマニアは一人もおらず、閑散としていました。やはりわざわざ感がないと一般人には理解できないMDなのかも知れません。

コロナ禍の後に(物販業界)№3-5

二つ目の消費動向は徹底した「こだわり消費」という点です。

消費者がネットで買う商品は「実用品」が中心で、自分の趣味としての「きちんとしたもの」はなかなかネットでは買いません。ネットで探しはしますが自分の目で見て実際に触ってから購入するのです。またこのような商品はネットで簡単に販売されておらず、販売店まで出かけていかないと手には入りにくいのです。

消費者は自分のこだわりに合った商品を、路地裏でも、地方でも、徹底して探し、買いに行くのです。その商品は価格は二の次で、自分の価値観にあえば躊躇なく購入します。このように消費者が実用品以外の消費をするときは「わざわざ、探し、買いに行く」ということが基本になります。そして商品自体もそうですが、わざわざ探しに行くこと自体が楽しいのです。

しかも商品は「デッドストック」や「ヴィンテージ」「限定品」「先行販売品」などで大量にあるものでは無く、カフェのメニューもそこでしか飲めない、食べれないものが中心になり、それゆえ、商品の良し悪しを見分ける目が消費者側に求められます。その基準は消費者自身の「こだわり」になるのです。

千駄ヶ谷の白Tシャツのみを売るFFFFFFTなどはその好例です。千駄ヶ谷の路地裏に土日しかオープンせず、しかも売っているのは真っ白い無地のTシャツだけというその店は、土日になると開店前からファンが作る行列で通行ができないくらい込み合うそうで、入店まで2時間~3時間待ちは当たり前だそうです。ネット販売は一切せず、来店顧客しか買えないのです。(先日オープンしたミヤシタテラスにオープンしましたが、空いていました)

これはカフェなどにも当てはまります。喉が渇いてコーヒーが飲みたいだけならスタバで十分ですが、ゆっくり本を見ながらお茶を楽しみたいというなら、わざわざ下町の入谷+カフェ南青山のシェアグリーンまで行くのです。入谷+カフェでは注文も取りに来ず、自分でサーバーから水を取り、自分でカウンターに注文にいき、自分で出来上がりを取りに行きますが、何時間居ようが、何を持ち込もうがまったく自由でゆったりできます。

形式はスタバと似ていますが店舗の手作り感やスタッフが考えた本日のメニューなど、採算度外視の趣味的に始めたお店が今や大人気で近所のおばちゃんから青山から毎週通ってくるアートクリエーターまで多種多彩の顧客が集い、何故か落ち着くのです。

このようなこだわりを追求すると、自分だけのモノを創ることも人気になっています。ある程度の年齢層からはかつてのように高価格帯でなくても手が届く範囲での「オーダー」が復活しています。それは三密を避けてサービス接客を受けられるという点と、自分のこだわりを満足させられるという点からです。結構若い層でも手の届く価格帯でスーツが一部の層に受けています。既製服と変わらない5万前後でオーダーが作れることは画期的でしょう。

オーダーといえばかつては紳士のスーツやワイシャツでしたが、近年、スニーカーや女性用のバッグ、更には化粧品まで登場する予定です。コーセー化粧品は個人の肌に適したオーダー化粧品を創るべくスーパーコンピューターを駆使し、ビッグデータから遺伝子工学まで応用して生産体制を整えると言っています。

また、「応援消費」というのも消費者のこだわりの一つです。消費者の生活信条に地球や環境、更には人にやさしいというのがあります。ボランティアと同じ感覚で、コロナで販売先を失った生産者の商材を買うことで応援しようという消費が結構隠れて流行っています。食材に多い意識ですが、少なくなった伝統工芸を守る職人の商材や、地方の大手ではない生鮮商品などを積極的に買い求める行為が応援消費です。

これらの商材や自分のこだわりに合致した商材なら、消費者は時間もお金もかけてわざわざ買い求めに行くのです。そして自分の消費に満足するのです。どうでもよい実用品はネットで、自分のライフスタイルにかかわる商品はこだわってわざわざ買いに行く、これがこれからの2大消費傾向です。

コロナ禍の後に(物販業界)№3-4

コロナ禍後の消費動向は大きく2つあります。

コロナ禍の前から消費者は商品選定基準に「地球にやさしい」「環境にやさしい」などを選び始め、更には必要以上にモノを待たないため「断捨離」を始め、最後にはモノを持つこと自体を見直し必要な時に必要な分だけ使えればよいという「シェアー」という概念が生まれたのです。基本的には合理主義と環境問題を合わせた「新・ライフスタイル」のhttp://創造でした。

この流れを一挙に推し進めたのがコロナ禍です。在宅ワークや三密防止などのおかげで消費者は自宅に留まることが多くなり、結果、今までの生活全般を見直すことになったのです。家の中の不必要なものを整理したり、家族との時間を楽しんだり、主婦はパートタイム業務を家で行えるようになったり、会社一辺倒の生活を自宅での効率的業務スタイルに変えることになったのです。

スーツは不要になり、清潔なカジュアルスタイルが一般化し、外出は運動靴になったのです。今までネット販売に馴染みが薄かった主婦層もネットの便利さや機能性に一挙にはまりこみ、外出が自由になった今でもネットでの生活用品購入を楽しむ状になりました。モノを買う楽しみから探す楽しみを覚えたのです。

結果、一つ目の消費動向は「必要なものを買うためのネット利用から、探す楽しみのためのネット利用」が消費者の間に年代を問わず広まったことです。モノを買うために広まった検索機能は、あらゆる範囲にその範囲を広げ消費者に提供していることにあらゆる層の消費者が気が付いたのです。

今では台風予想からコロナの発生地、バーゲンの先行告知、すいてる病院の場所など、欲しい情報検索は無限に使われています。生活の中に完全に根を下したネット昨日はその膨大なメガデータを駆使した予測情報=これから何が流行るか、それは幾らで、何色で、どんなデザインで、値引き販売しているのは何処で、といった情報検索からモノを購入するようになることです。

現在ではなく近未来の予想は消費行動にどう影響するかは全く予測がつかない時代になるでしょう。なぜなら、100人いれば100人が欲しいものが違い、その違うものが買えるようになるからです。消費者は益々ネット検索を利用して自分の好みを探し、欲しいモノを手に入れるようになるでしょう。