コロナ禍の後に(物販業界)№3-5

二つ目の消費動向は徹底した「こだわり消費」という点です。

消費者がネットで買う商品は「実用品」が中心で、自分の趣味としての「きちんとしたもの」はなかなかネットでは買いません。ネットで探しはしますが自分の目で見て実際に触ってから購入するのです。またこのような商品はネットで簡単に販売されておらず、販売店まで出かけていかないと手には入りにくいのです。

消費者は自分のこだわりに合った商品を、路地裏でも、地方でも、徹底して探し、買いに行くのです。その商品は価格は二の次で、自分の価値観にあえば躊躇なく購入します。このように消費者が実用品以外の消費をするときは「わざわざ、探し、買いに行く」ということが基本になります。そして商品自体もそうですが、わざわざ探しに行くこと自体が楽しいのです。

しかも商品は「デッドストック」や「ヴィンテージ」「限定品」「先行販売品」などで大量にあるものでは無く、カフェのメニューもそこでしか飲めない、食べれないものが中心になり、それゆえ、商品の良し悪しを見分ける目が消費者側に求められます。その基準は消費者自身の「こだわり」になるのです。

千駄ヶ谷の白Tシャツのみを売るFFFFFFTなどはその好例です。千駄ヶ谷の路地裏に土日しかオープンせず、しかも売っているのは真っ白い無地のTシャツだけというその店は、土日になると開店前からファンが作る行列で通行ができないくらい込み合うそうで、入店まで2時間~3時間待ちは当たり前だそうです。ネット販売は一切せず、来店顧客しか買えないのです。(先日オープンしたミヤシタテラスにオープンしましたが、空いていました)

これはカフェなどにも当てはまります。喉が渇いてコーヒーが飲みたいだけならスタバで十分ですが、ゆっくり本を見ながらお茶を楽しみたいというなら、わざわざ下町の入谷+カフェ南青山のシェアグリーンまで行くのです。入谷+カフェでは注文も取りに来ず、自分でサーバーから水を取り、自分でカウンターに注文にいき、自分で出来上がりを取りに行きますが、何時間居ようが、何を持ち込もうがまったく自由でゆったりできます。

形式はスタバと似ていますが店舗の手作り感やスタッフが考えた本日のメニューなど、採算度外視の趣味的に始めたお店が今や大人気で近所のおばちゃんから青山から毎週通ってくるアートクリエーターまで多種多彩の顧客が集い、何故か落ち着くのです。

このようなこだわりを追求すると、自分だけのモノを創ることも人気になっています。ある程度の年齢層からはかつてのように高価格帯でなくても手が届く範囲での「オーダー」が復活しています。それは三密を避けてサービス接客を受けられるという点と、自分のこだわりを満足させられるという点からです。結構若い層でも手の届く価格帯でスーツが一部の層に受けています。既製服と変わらない5万前後でオーダーが作れることは画期的でしょう。

オーダーといえばかつては紳士のスーツやワイシャツでしたが、近年、スニーカーや女性用のバッグ、更には化粧品まで登場する予定です。コーセー化粧品は個人の肌に適したオーダー化粧品を創るべくスーパーコンピューターを駆使し、ビッグデータから遺伝子工学まで応用して生産体制を整えると言っています。

また、「応援消費」というのも消費者のこだわりの一つです。消費者の生活信条に地球や環境、更には人にやさしいというのがあります。ボランティアと同じ感覚で、コロナで販売先を失った生産者の商材を買うことで応援しようという消費が結構隠れて流行っています。食材に多い意識ですが、少なくなった伝統工芸を守る職人の商材や、地方の大手ではない生鮮商品などを積極的に買い求める行為が応援消費です。

これらの商材や自分のこだわりに合致した商材なら、消費者は時間もお金もかけてわざわざ買い求めに行くのです。そして自分の消費に満足するのです。どうでもよい実用品はネットで、自分のライフスタイルにかかわる商品はこだわってわざわざ買いに行く、これがこれからの2大消費傾向です。

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