謹賀新年

2017年は素晴らしい晴天の下始まりました。各百貨店の初売りも福袋を中心に好スタートを切ったようです。

しかし、取り巻く環境は予断を赦しません。単なる経済状況だけの問題ではないからです。百貨店の業務構造が時代に会わなくなっている事からくる『歪み』が、消費者との距離をより一層拡げているからです。結果、対処療法では遺憾ともし難い状況に陥ってしまっています。今年こそ、今までの経験や感に頼った営業ではなく、時代に合った営業手法を研究開発する時代にしてください、時間は余り残されていません。

本年が、小売業に関わる全ての人にとり、良い年になりますよう祈念致します。

2017年 元旦 クーデター倶楽部議長 内野幸夫

伊勢丹の挑戦


伊勢丹PB商品の『靴』が海外進出だそうです。かつては他社との差別化政策で他社に卸すなど論外でした。一時期はほとんどの大手百貨店をはじめ地方百貨店や総合スーパーまでPB商品花盛りでしたが、現在まて残っているのは食品スーパーPB位で、百貨店系はほぼ全滅状況です。

なぜなら百貨店の店舗数で売れる量はたか知れており、拡販をしない限り採算が取れるまでの数量が販売できず、結局数年経つと中止されてしまうからです。多くの百貨店はあらゆるアイテムでPBを作っては撤退を繰返し、最後には諦め撤退していったのです。現在では自主の売場も無く、売るための自社販売員も持たず、モノを作れるバイヤーも居ないためPBを作る事は不可能になってしまいました。そんな中、伊勢丹は地道にデザイン企画から生産管理まで自社で行える体制を整備し、少しづつ経験とノウハウを蓄積し、始めてから10年を経て海外にその販路を求め進出するまでに成長したのです、現在では10万足生産するまでになったのです。『なんだ、たった10万足か』と言う声が聴こえてきそうです。しかし、マスコミも同業他社も実際無責任な評論だけて、10万足の持つ本当の意味を理解していません。特にメーカーや百貨店のマスコミ向け先行バーゲンで7~9割引でしか買わない連中は、モノを作り出す難しさや苦労など全く理解しようともせず、海外ラグジュアリーしか認めようとしないのです。そこで、『伊勢丹はポップアップしかしない』『靴PBは安物』としか評価できないのです。現場では、お客様の声を徹底して集め、従来の常識と違い、幅の小さい2Eや1Eが求められている事や歩きやすいヒール開発を行い、単なるNBとデザイン違いでしかない、見掛けだけのPBとは全く異なるPBを開発しているのです。

百貨店は12月23.24.25日は久しぶりに絶好調で12月予算をクリアしたと思われます。そして、血の滲む思いでPBに再挑戦している伊勢丹の海外進出が本年最後の報告で、少し気が軽くなりました。『百貨店はまだまだやれる』と。

皆様、良いお年を!

杉浦社長、ご苦労様でした。

三陽商会杉浦社長が退任を発表なさいました。バーバリーから転換したマッキントッシュが売上を達成できず、会社が赤字化した事へのケジメをつけられたと、巷では言われています。しかし、昨今の小売り市場の状況を見るにバーバリー無き後、杉浦社長が取られた施策は決して間違ったものではありませんでした。バーバリーに代わる主力ブランドに自社ブランドを立てる策もあったでしようが、残念ながら売上、知名度共に期待できるものが無かったのが事実です。マッキントッシュ以外の海外ブランドを検討しても、そこそこ知名度があり、売上が期待出来るブランドはやはり見当たりません。やはり、実績があり、期待できたのはマッキントッシュしかないのです。杉浦社長はたった一人で全国行脚を行い、バーバリーからマッキントッシュへの転換を各百貨店にお願いし、99㌫の完全移行に成功したのです。杉浦社長でなければ出来えない事でした。

しかし、結果は振るいませんでした。要因はいくつか挙げれます。全ブランドが低迷するほど、戦後ファッションの大きな曲がり角に差し掛かっており、バーバリーとて苦戦を免れない状況下にあり、転換ブランドが大きく羽ばたくムード化では無かった事。宣伝に多額の資金を投入したが、従来の紙媒体主力で、顧客層が使いこなすネットへの宣伝が弱く、マッキントッシュを認知させられなかった事。主力販売先の百貨店が極度の不振に見舞われている事。マッキントッシュが強いメンズ市場が全く売れていない事。等、幾つかの原因が重なった事が真相だと思います。上場会社ですから社長の責任といわれたらそうですが、いつも前向きで明るい杉浦社長の退任は業界にとり、大きな損失だと思います。成績不振で席を追われるなら、もっと早く席を退くべき人は沢山居そうです。

杉浦社長、長い間大変ご苦労様でした!

お客様、閉店です

クーデター倶楽部議長の内野が、現在の百貨店不調の根本原因を解りやすく解説した本を上程しました。単なる経済状況の低調に原因を求めるのではなく、百貨店の体質及び構造にその原因を求めています。戦後70年続いた大量生産、大量販売が、多層化した消費ニーズに対応出来なくなっている、と分析しています。

クーデター倶楽部での講義をより深堀した内容で、多方面から分析を行っています。

是非、御一読下さいませ。

アマゾンの挑戦

アマゾンが試験運用中の、入金不要のコンビニが話題になっています。前回紹介したボタンによる追加発注システムに次いで発表されました。入口でスマホをかざし、個人認証さえすれば、後は商品を選んで持ち帰るだけ。後はスマホ内アプリで課金してくれるだけ。日本のコンビニも負けていません。買い物かごに自動計算端末が付いていて、所定場所に乗せると自動計算の上、自動で包装迄してくれるというものです。

このように、消費者の利便性追究がどんどん進行するなか、百貨店のサービスが問われます!

アマゾンの攻撃

アマゾンが食品や日用品を簡単に注文できる小型端末を販売開始した。冷蔵庫や戸棚に設置し、飲料や洗剤が切れたらボタンを押すだけで注文出来てしまうそうだ。「買う物が決まっている日用品のショッピングが不要」になる可能性を秘め、スーパーやドラッグストアには脅威となりうる。ネット技術の進化は止まる事を知らず、消費者の生活は便利になる一方である。

かって、アドレスを打ち込まなければホーム頁へ辿り着けなかった時代に、ボタンを押すだけでホーム頁に辿り着ける夢を見たが、現在ではそれ以上の速さで進んでいる。消費者のニーズを汲み取るのは既成概念に凝り固まったプロの小売業ではなく、単純に「これがあったら便利だろう」というより消費者の目線で考えている素人達の方が現実を認識している。

大手のメーカーは百貨店や総合GMSに見切りを付け、新しい商圏を開拓しだしているようだ。

販売員の教育

11月24日付け日経新聞夕刊のコ「あすへの話題」

非常に考えさせられる文章です。私が百貨店に入社した時の教育では、正にこのような接客を教わりました。当時の顧客は目まぐるしく変化する社会や生活に対しての溢れる情報に追い付いて行けず、その道のプロのアドバイスや情報に頼っていました。時代は進み、顧客は当時と比較にならない規模の情報に曝されており、やはりプロのアドバイスを求めています。当時と異なるのは、顧客がある程度自分の好みを自覚しており、流行に左右される事なく、ライフスタイルに関する情報を望んでいる点です。しかし、販売員の接客レベルは50年前なのです。多くの百貨店は 複雑化したポイント制度やレジ操作教育ばかりで肝心の接客方法は教えていないのが現実です。

今こそ顧客のニーズにきちっと対応できる販売員育成をするべきです。

大西社長の挑戦

百貨店各社の中間決算が発表されましたが、何処も苦戦を強いられており、冬物商戦の苦戦も響いて良い話は全く聞こえて来ません。そんな中でも百貨店業界の旗手である三越伊勢丹へのマスコミの論調が厳しくなっています。

マスコミの論調は、「爆買い頼みで策が無さすぎで、そのツケが回って来ている」という単純なものです。これは全く表面しか見ていない3流記事でしかありません。経済記者が良く使う経営改善策のリストラや店舗縮小、営業施策のリニューアルのどれか以外は百貨店の根本を理解していない事の表れです。小論でも度々取り上げましたが、販売員売上歩合制導入や自主MD商品開発の積極的推進、海外進出へ向けた着実な布石、国内新顧客層掘り起こしへの挑戦など、他社が全く手をこまねいている事を果敢に挑戦しています。これらは直ぐに目を出すものではなく、将来への種蒔きです。今やらないと遅きに失するものばかりです。これ等を評価せず、目先ばかり対応する事しか評価出来ない我が国の流通マスコミは3流です。

頑張れ、大西社長。

苦戦

日経新聞第一面(10月27日)に三越伊勢丹が2017年3月期予想を、営業利益2割減と報じています。中国観光客の爆買い減少やネット通販拡大影響、優待割引のポイントへの変更等の諸条件が重なった事が要因と分析しています。同紙にはH2Oがやはり11%減益と報じています。又「関西スーパー」と資本業務提携し、食品スーパー強化を図り、他業態化推進を目指すそうです。

また、銀座松坂屋跡地の大型複合施設の概要も発表されていますが、テナント紹介ではなく、設備や屋上庭園等に説明が割かれており、物販施設のイメージは極めて薄い紹介記事になってます。

翌日の記事では「百貨店苦境突出」の記事が大きく紙面に踊っています。

これ等の記事に反撃する内容は三越伊勢丹と東急百貨店の東南アジアで日本商品売場を展開した位しか見かけません。東南アジアへの進出は効果的な戦略だと思いますが、肝心なのは国内での徹底したMD改革と顧客戦略開発です。

寂しい限りの百貨店・・・・・・・・頑張れ???

孤軍奮闘

三越伊勢丹が日通、JTBと訪日顧客取り込みのための新会社を設立するそうです。苦戦する百貨店業界において、唯一社、集客からMD再編、海外へ再出店など果敢にチャレンジしています。全部が上手く行くとは限りませんが、小売の形体、ルールに新時代に合った形を必死で模索しています。イセタンミラーに始まったこの一連のチャレンジは形だけを猿真似する他百貨店の追随を許しません。

同日の日経新聞に「BAROQUE  JAPAN」の新規上場に伴う株式募集が、眩しく眼に飛び込んで来ました。他のアパレルを尻目に、国内外で絶好調な数少ない勝ち組であります。この会社の凄さは会議ばかりで一向に物事が進まない大企業病の他社と違い、一旦方向性を上層部が認めたら、後は全て現場の自主性で運営されていくことです。最新ブランドの「AEVES」もデザイナーの堀海斗氏の伸び伸びと創られたデザインがとても時代の先を進んで、とても素敵です。

凋落する旧勢力と台頭する新勢力が、業種業態を超え、新たな小売の創造に向かって混沌とした時代を迎えた今、時代の流れから目が離せません。

AEVES2016 コレクション 堀 海斗氏

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