消費者ニーズの変化 が社会を変える №2 「余暇時間の拡大」

「働き方改革」「休日増加」により余暇時間は確実に増えています。大型連休や有給休暇取得も増える一方、旧来の悪弊であったサービス残業は影を潜め始め、若い世代を筆頭に会社に忠誠を尽くす滅私奉公の思想は死語になりつつあります。ネット拡大に伴い「働き方」も代わり始め、在宅勤務や成果主義型勤務なども今後は益々増えるでしょう。こうした消費者の自由になる時間は増加する一方にかかわらず、その時間を「どう使うか」という提案は残念ながら今の小売り業からは出てきません。「モノ寄りからコト寄り」と口では言いますがライフスタイルをどう提案するかという観点からの「余暇時間の有効活用提案」は皆無に近いと言わざるを得ず、相変わらず「モノ売り」の視点から一歩も出ていないのです。現在「コト」寄りというと、旅行かスポーツが主力です。しかし現在の百貨店では街を散策するための「自転車の貸し出し」もジョギングを楽しむための「レンタルロッカーやシャワー」も用意していません。百貨店主催のサイクリングやマラソン大会もありません。旅行すら大手旅行業者が販売するパックを取り次いでいるだけです。かつては「友の会」や「文化教室」などを主催し女性を中心に集客を図っていましたが、りニューアルされないまま「花嫁修業」の視点からの「お教室」に若い世代は独身・既婚を問わず満足せず集客にはなりえていないのが現状です。今こそ大手小売業者はファミリー向けや若い世代、団塊世代向けと幅広い世代を目的別ターゲット別に括り、明確な「切り口」に基づいた「コト」を提案すべきです。その結果、「モノ」が売れるのですから。流石創造集団が主催する「青山ファーマーズマーケット」は今や毎週土日に3万人もの人を集めていますし、生産者を招き「ワイン」造りの苦労話を聞きながら飲み比べをする会などは毎回数百人もの人を集めて楽しくワインの勉強をしています。このように趣味や教養としての知識を経験・体験しながら得ることができる催しに人々は集まるのです。また、無印が流石創造集団と組んで、千葉県大多喜村での里山体験ツアーなども活況を呈しています。これは家族向けに1年かけて田んぼの草むしりから田植えに収穫までを消費者に自ら行ってもらい、夜は廃校になった小学校の校庭でグランピングを体験させたり、村の醤油屋さんで醤油造りをさせたり田舎生活を満喫して貰うイベントです。これにより田んぼでの衣服や道具を無印が販売し、村は集客が図れ休耕田が生き返る等、三者とも潤う仕組みです。このような仕掛けがなぜ百貨店でできないのでしょう。答えは明確です。「事故があったらどうする」「責任は誰がとる」「前例が無い」、結果「やめよう」なのです。

消費者ニーズの変化 が社会を変える №1 「 クリーンエネルギー」

  消費者ニーズの多層化は単にモノの買い方や買いたいモノの変化だけでなく、社会そのものを変えつつあります。クリーンエネルギーは太陽光発電を筆頭に石油や石炭による大気汚染防止の切り札として期待されています。我国では民間発電買い取り価格の問題や用地買収の高コスト化などで未だ大きな前進はしていませんが、世界的にはクリーンエネルギー化の流れは止まりません。米国カリフォルニア州では新築家屋に太陽光発電設備付帯を義務付ける法律が成立し「自前エネルギー」化へ大きな一歩を踏み出しました。自国で大量の石油を算出するにも拘らず次世代を見据え政策を推進しているのです。欧州では太陽光発電に留まらず化石燃料車を全面廃止する決定がなされており、世界的規模で車は電気自動車化へ大きく舵が切られ、自動車メーカーはその開発に血道を上げています。我々の身の回りに当たり前に存在した「モノ」が大きく変貌しつつあるのです。これらは消費者が「便利より環境」を優先する意志の表れであり「消費より保護」へニーズが大きく変化した結果でもあります。

  百貨店は「クリーンエネルギー政策」を商売のネタと考えたことはありましたが、消費者のライフスタイルの柱の一つとして捉えたことは一度もありません。消費者は自分の生活信条に共感してくれる、あるいは主導してくれる人や企業を支持する時代です。百貨店は消費者をリードする役目があるはずですが迎合ばかりしています。ユニクロを初めとする低価格商品が流行れば我慢することなく低価格路線へ邁進しスーパーと競合し、インバウンドが叫ばれ始めると一斉に右に倣えをし、高級品から生活用品に売れ筋が変わると平気でドラッグストアーを導入したりします。このような態度はかつては「時代を見るに機敏」と言われましたが今では全く逆です。百貨店はもっと社会の公器として自信を持つべきです。これからの時代は「消費のみ」から「再生」がキーワードの一つになることは誰もが認めるところです。

 こうした流れの中で、百貨店をはじめ各商業施設は未だに膨大な無駄を浪費しています。一つは夏冬かかわらず使用する「冷房」があります。一般の方はご存じないですが百貨店は膨大な照明から発せられる熱を冷却するためにクーラーは年中フル稼働しているのが現状です。消費時代の象徴であった百貨店はここでも時代を見ていません。館内で使用するエネルギーを少しでも削減するために屋上のフル緑地化や建物壁面の熱反射塗料散布や太陽光パネル化を実施して自社使用電力の一部を獲得するなり、夏場には日本古来の打ち水や涼しく感じる音響効果の多用、冬場には外気導入による冷却化や中元歳暮を中心に膨大な量に上る配送業務も電気自動車に限定し行なったり、自家用商品の完全無包装化などを実践すべきなどして他企業の模範となるべき時代なのです。しかし残念ながら百貨店は未だに「経費削減」の観点からしか考えないのです。競争社会で一人先に利益が見込めない投資に踏み込むのは株主様が許さない環境下ではありますので、百貨店協会が率先して指導することが必要では無いでしょうか?ただただ政治献金していればよい時代ではないのですから。

 

 

既成概念撤廃と事実認識の重要性

  「中国は全ての面で遅れている」「日本のモノ造りは世界一の水準である」と皆さんはまだ思っていませんか?これらは少し前まで世界の常識でした。日本車は世界トップレベルの安全性と高コストパフォーマンスを誇り、SONYは世界のブランドでした。しかし現在の事実は違います。東南アジアで見かけた「Panasonic」の看板は「Samsung」に取って代られ、「SONY 」は「LG」に「SHARP」は「鴻海」になったしまいました。日産はルノー傘下ですし、TOYOTAは電気自動車で出遅れました。中国は遅れていた技術開発を世界の一流企業の下請けになることで、近年はM&Aで先進企業ごと取得し更に発展させ、ITの力を最大限活用して社会変革と経済拡大を圧倒的なスピードで推し進めています。小売りで言うとネットのアリババが1日で2兆円を売ったことは記憶に新しいことですし、日本で進化したコンビニは中国ではさらなる進化を果たし無人化が進み、現金ではなくスマホでの決済が日常的になっています。日本では新興勢力や新技術が出てくるとまず否定から入ります、「ああだからダメ・こうだから良くない」と。しかし中国は違います。貪欲に、どんなものでも「金」になりそうなものには飛びつき、自分のものにしようとするのです。消費者も正直で何に価値があるか素直に認めるのです。ラグジュアリーブランドの「偽物」があれだけ生産され消費されるのはそのブランド価値を知っているからで、実際の価値と価格を比較ているからだとも言えます。

 その中国では 時代の流れが速いとよく耳にします。「日本の10年は上海の1年」というセリフは中国のスピードの速さを表現する常套句として使われていましたが、最近は「日本の変化するスピードが遅すぎる」と認識すべき言葉であると筆者は感じています。この原因は日本のガラパゴス化と経済の流れが残念なことですが中国を軸に回り、そのスピードに日本企業がついて行けない事が最大の原因だと思います。これだけネットの発達により世界が狭くなり世界が相手でなければ生き残れない時代になったにもかかわらず、よく言えば「独自性の維持」ですが結局は時代に乗り遅れただけのことです。小売り業も当然この流れに乗れてはおりません。1000年前の雨ごいと同じでひたすら中国の団体様ご一行の来店をひたすら祈るだけです。世界を相手に生き残りを図るか、日本市場だけで静かに滅ぶのか、今日本の全ての業種が、企業がその存在意義を試されているのです。日本企業は消費者が何を望んでおり、そのライフスタイルを豊かにする為にIT技術の開発と利用を積極的に推し進める必要があり、時間はもはや残されていないのです。

 

ゴールデンウイーク

今年のGWは天候も味方して数多くの人出が各地で見られましたが、百貨店も大都市を中心に久々に活気が戻り売上も良かったようですが、各社が仕込んだ「GW用セール品・お買い得品」よりは一般常備品のほうが好調の模様です。春のベースアップや昇給の影響という声は聞こえてきません。それよりは春・初夏に欲しい商品をこのGWに買い揃えたということなのでしょう。今の消費者の「欲しいモノ」は「欲しい時」に「買う」という消費行動は完全に定着しているようです。そこには単なる価格優先でも流行優先でもなく、自己の価値やライフスタイルに合っているか否かが基本要件になっています。この流れに遅れないためにも百貨店を初め小売業は、消費者の生活をより豊かにする為にどんな情報をどのように発信するべきか、持てうる全ての資材を投入して研究すべきです。そして自社の立ち位置を明確に発信し続けることが求められます。