コロナ禍の後に(飲食業界) №2-3

コロナ禍で消費者の生活は一変しました。飲食に関することでは会社内での飲み会は減り、家族と一緒に食事する機会や時間は増えています。自宅で料理する人も増えますが簡単に冷凍食材や半調理品食材で済ませるのではなく、ひと手間かけてよりプロの味や一流レストランの味に近いものにして行くことが流行り、ネットのレシピソフトはその味と簡単さを売りに拡大していくでしょう。家族での食事は子供と一緒にお菓子を造ったり、夫婦でワインに合うメニューをトライしたり、楽しみながら家での食事を取るようになるでしょう。ここで重要なのは消費者のニーズの多様化が拡大していることです。消費者のライフスタイルは確実に変わっていきます。

食事のスタイルは日進日歩で進化するITのおかげで想像もつかないような進化を続けるでしょうが、外食・物販に関して今までと一番違う点は、従来のように「美味しい」「トレンド」といったキーワードの他に「ゆったり空間」「子連れ可」「清潔さ」などが加わることです。これはコロナ禍の影響が基本生活の中にまで浸透してきており、当分スタンダード化するでしょう。これらに加えてコロナ禍が始まる前から変わり始めたキーワードがあります。それは従来は昨今のライフスタイルにおける健康志向の高まりを受け、食に於いても「健康」と言うキーワードは外せないものになっています。自宅に居る時間が長くなり、料理時間が増えたことにより食材に対するニーズ、それも健康に対するニーズが高まっています。それは食材に対して「人工添加物は入っているか」「輸入品はどこの国からか」「保存剤は使っているか」「養殖か」「冷凍品か冷蔵品か」といった健康に関するニーズが強くなっていくのです。従来も賞味期限は必要以上に気にされてきましたがそれ以上に「身体に悪い」事に関しては消費者は敏感になっています。多少価格は高くなっても、「自然」「無添加」であれば容認する消費者は確実に増えており、今後コロナ禍の後は加速度的に増えていくと思われます。「安い」だけの消費者ニーズ獲得は減ることはあっても増えることはありません。世界的に見ても低所得層は大量生産され身体に良くないと分かっていても「安価」なものを求めざるを得ない事実がありますが、日本の場合大多数といわれる中間所得層は、少しづづではありますが、身体に悪い食べ物は遠ざけ始めています。特に女性はダイエットと関連して「食」に関して「健康志向」は大変強いものがあります。海外では四人に一人がベジタリアンや ビーガンと言われ、無農薬の有機野菜にこだわり、動物性由来や魚はは一切口にせず大豆を中心に徹底した菜食主義中心の健康志向です。日本ではまだまだオーガニックレストランは高いですが、海外では一般的でどんな場所にでも普通にあり結構リーズナブルに食べれます。日本でも確実に増えていくと思われます。これが第二の変化です。

コロナ禍の後に (飲食業界) №2ー2

ITが進むと消費はどう変わるでしょう?消費者が家庭で料理を作るとき主婦が一番悩むのが、①何を造るか②そのためには材料は何が必要か③美味しく造るためのプロのレシピは、の3点だそうです。現在では簡単にネット検索できてしまいますが、問題は①の何を造るか毎日考えるのは結構大変なので、何らかの形で提案してもらえると大変有難いそうです。スーパーへ行っても食材は売っていますが料理の提案までは為されていません。もしスーパーの入口に季節料理や定番料理の写真とバーコードが提示されており、バーコードを読み込めば料理方法から材料の販売場所まで提示されれば買い物時間を大幅に短縮すると同時に、無駄な買い物をしなくて済むようになります。スーパーはレシピを提供する会社と提携するか、自社で掲載するかして、消費者の囲い込みを図るようになります。

現在では実際2017年に成城石井が造った「グローサラント型」店舗ではスーパーとレストランの共存店で、レストランで使用する材料は同一店舗内の成城石井で販売されており、消費者がレストランで食べて美味しかったらメニュー裏のレシピを見て食材は置かれている場所の番号が記され、商品選びも簡単に出来ると言う代物です。こうなるといちいち何を造るか、材料は何か、造り方はどうするなどの課題がいっぺんで解消されてしまい、消費者の頭を悩ますことは無くなります。昼間の間にレシピを見て食べたい料理を指定しておけば、会社帰りに予め揃っている材料セットをピックアップするだけですんでしまいます。このようなIT化がもっと進むと、外食して美味しかった料理を写真に撮りその写真の中身を分析するソフトで、材料と造り方を分析するものが出てくるでしょう。そうすれば美味しかった料理を家庭で再現できるのです。わざわざ一流レストランへ出向かなくても美味しい食事が簡単に造れるようになるでしょう。

また、食品物販では値札の①付ける②時間で書き換える作業が一大作業ですが、ITを使えばいとも簡単に作業ができます。デジタル値札です。現段階では棚用が中心ですが、投入商品の売上がデジタルで記録され、売上時間、在庫状況など一瞬にて分かります。生鮮では夕方売れ残りを無くすため価格変更を手書きで行っていますが、本文パソコン一台で全店の、あるいは一部店舗の値札を簡単に変更でき、売れ残り予防に大いに役立つと言われています。値替えは一日何度でも、値下げだけでなく値上げさえ出来てしまうのです。食材ロスを無くす意味でも急速に普及するでしょう。

飲食業界はIT化と無縁と言う方が多かったですが、今こそデジタル時代の申し子となり、その恩恵を最大限受けるべきです。

コロナ禍の後に (飲食業界) №2ー1

飲食業界はコロナ禍により想像だにしなかった①インバウンド客の消滅②混雑緩和策(3密排除)の強制③非常事態宣言による営業自粛により一般店舗は壊滅的打撃を受けました。宅配や弁当販売などの苦肉の策を採った企業も数多くありますが、利益の補填とまではいかないのが現実のようです。非常事態宣言は終焉しましたが未だコロナ禍が終焉した訳でなく、第2次感染拡大の恐れもあり通常の生活が完全に戻るにはまだかなりの時間がかかりそうというのが大方の見方だと思われます。さらにはコロナ禍が終焉した後も前のような生活が戻るかどうかは大きな疑問が残ります。何故ならコロナ前もそうであったように消費者のマインドがどんどん変化し続けており、生活のキーワードは「漫然たる消費」には向かっていないからです。

これから飲食業は物販も含めどうしたらよいのでしょうか?まず第一にITの導入による非接触型の店内営業化は不可欠です。人やグループが従来のように密接に会わないように仕切りを付けたり、個室化したりすることや、メニュー紹介および会計の電子化は避けられず、人と人が向き合うテーブルは廃止されるでしょう。そうなると入店客数は極端に制限され、従来の利益確保は難しくなります。下手をすると大規模な店内改装が必要になるかもし得ません。ロボット化も視野に入れておくべきです。物販も同様です。試食販売は対面接客しない方法を考慮しないと百貨店やスーパーでは許可にならないでしょう。初めからパックされた容器開発も必要です。今まではシズル感を出すために目の前でよそったり量ったりしていましたが、分量が分かるサンプルの用意は必須になるでしょう。売上を取るためには、①回転率を上げ客数を増やす②客単価を上げるの2方法があります。利益を取るためには①メニュー改定をして低コスト化を図る②素材ロスを無くすため共通素材のメニュー開発する③人件費の削減があります。従来ならこれらを検討して対応すれば売上も利益も十分回復したでしょう。しかし今回は残念ながらそうはなりません。何故なら先ほど述べたようにコロナ禍前のような生活には消費者は戻らないからなのです。消費者の関心は明確に変化しつつあるからです。

コロナ禍の後に №1

コロナ禍は日本人のライフスタイルに大きな影響を及ぼし、日本の社会基盤の脆弱性を露わにしました。安易な生産拠点の海外化や緊急医療体制の不十分さなどに伴う社会安全保障認識の欠如、ネット購入や宅配の急増による配送網のパンク、学校の休校により発生する広範囲での負担、事前準備もなく行われた在宅勤務やTV会議による生産性の低化、国家や自治体が本来持つべき非常時対応の法的未整備、など戦後70数年築いてきた日本型社会の制度疲労・時代不適合・欠陥が明確になったのです。特に日本は先進技術立国と思い込んでいましたが、欧米どころか東南アジアや中国と比べもIT化の遅れは決定的で、このままでは世界での競争力はおろか国内産業の基盤さえ守れなくなることは必定です。政府の施策は二転三転し、経団連は何もせず、非常時には一枚岩と思われていた日本株式会社は機能せず、かろうじて民度の高さで乗り越えつつありますが、世界的規模の災害の前では個々の企業ができる範囲は極めて限られ、上手く機能することは少ないのです。コロナ禍が完全に収束するまでに今のままでは多くの産業や企業が倒産に追い込まれることは必須であります。政府としても今後抜本的なDX化(デジタルトランスフォーメーション)を推進するでしょうが、官僚のみならず日本企業全体が古い体質化にある現状ではその進捗は遅々として進まないことは想像に難くありません。我々は自身の手で自分を守らなくてはなりません。では私たちはまず何をすべきなのでしょう?次回からこれからの「飲食」、「物販」、「コト寄り」、に分けて考えていきましょう。

 

百貨店再生への道 第10回

百貨店がネットや大量生産大量販売企業に対抗できる最大の武器は顧客からの「信用」があることです。商品を見ないで購入するネットでは商品が想像以上に粗悪やちゃちであっても「まあしょうがないか」と思いますが、百貨店で買う商品は百貨店に対する信用度が絶対で、消費者には安心感があるのです。ファッションに限らず「食品」も同様です。多少高くても安心で安全な食品はお年寄りでも若い人でも購買層はかなりあるはずです。それでも百貨店が売れないのはなぜでしょう。それは③の消費者が望むモノを提供していないことが最大の原因です。②の課題とも連動しますが、売上の効率化を追求するあまり、目先の売上確保のためにリスクを取り勝負に出ることより、前年データを基に安全な前年踏襲主義を採っているからです。しかも仕入れ先は百貨店問屋中心なのでどの百貨店も同質化してしまい、何処へ行っても、何時行っても前の年と代り映えのしない商品が店頭を飾ることになるのです。色・デザインのみならず昨今では着こなし方・コーディネートが消費者の大きな関心ごとにも関わらず、メーカー・ブランドごとに売れ筋を追求し残品を減らすために商品は同質化し、消費者の望むものと大きく乖離してしまうのです。消費者は百貨店バイヤーの何倍もの情報を収集し、何十倍もの商品をふるいにかけているのです。ここでも百貨店が選び提供する商品自体に絶対的信用を百貨店が保証するのではなく、仕入れ先がそのブランドの名に於いて保証しているにすぎません。特に食品は保存技術が進んだ事とメーカーが廃棄ロスを少なくするため体に良くない保存剤が大量に含まれているものが少なくありません。顧客は美味しそうと同時に、いやそれ以上に含有物に注意が向くのが現代なのです。百貨店のバイヤーは美味しい、美味しくないの前に顧客の健康を考え、保存剤や着色料などの有無はどうなのか、オーガニックか否か、国産か何処産か、などを最優先して確認すべきなのです。その上で旬のモノを有名産地で取れた証明を付けて販売すべきなのです。猫も杓子も「大間のマグロ」が良いからと言って冷凍ものを販売したのでは意味が無いのです。その代わり顧客に対し高い価格で販売できるのです。東京のみならず大阪や京都といった観光都市以外でも外国人に人気の街では知らない間にBIOあるいはビーガンレストランが大変多くなっています。しかし、百貨店内でBIOやビーガンレストランは1~2店程度しかありません。健康志向がこれ程強く一般化しているにも拘らず、取り入れがなされていないのは消費ニーズを読んでいないからなのです。未だに星幾つだとか、予約が取れない店だとかばかり追いかけて、「商品の本筋」を見ていないのです。最近の消費者が商材を選ぶ視点は昔と全く違うのですが、百貨店は残念ながら全く理解していません。大手メーカーはここ数年来のデフレに対抗するため価格優先で商品を造ってきました。消費者は良いものが安いことは良いことだとばかり、安いものにシフトしてきたかに見えましたが、実際は消費者は賢く、自分のライフスタイルに合った消費をし、今後は更にその傾向が強くなっていくのです。他人との同質化、流行への傾倒はどんどん減っていくことでしょう。