百貨店再生への道 第10回

百貨店がネットや大量生産大量販売企業に対抗できる最大の武器は顧客からの「信用」があることです。商品を見ないで購入するネットでは商品が想像以上に粗悪やちゃちであっても「まあしょうがないか」と思いますが、百貨店で買う商品は百貨店に対する信用度が絶対で、消費者には安心感があるのです。ファッションに限らず「食品」も同様です。多少高くても安心で安全な食品はお年寄りでも若い人でも購買層はかなりあるはずです。それでも百貨店が売れないのはなぜでしょう。それは③の消費者が望むモノを提供していないことが最大の原因です。②の課題とも連動しますが、売上の効率化を追求するあまり、目先の売上確保のためにリスクを取り勝負に出ることより、前年データを基に安全な前年踏襲主義を採っているからです。しかも仕入れ先は百貨店問屋中心なのでどの百貨店も同質化してしまい、何処へ行っても、何時行っても前の年と代り映えのしない商品が店頭を飾ることになるのです。色・デザインのみならず昨今では着こなし方・コーディネートが消費者の大きな関心ごとにも関わらず、メーカー・ブランドごとに売れ筋を追求し残品を減らすために商品は同質化し、消費者の望むものと大きく乖離してしまうのです。消費者は百貨店バイヤーの何倍もの情報を収集し、何十倍もの商品をふるいにかけているのです。ここでも百貨店が選び提供する商品自体に絶対的信用を百貨店が保証するのではなく、仕入れ先がそのブランドの名に於いて保証しているにすぎません。特に食品は保存技術が進んだ事とメーカーが廃棄ロスを少なくするため体に良くない保存剤が大量に含まれているものが少なくありません。顧客は美味しそうと同時に、いやそれ以上に含有物に注意が向くのが現代なのです。百貨店のバイヤーは美味しい、美味しくないの前に顧客の健康を考え、保存剤や着色料などの有無はどうなのか、オーガニックか否か、国産か何処産か、などを最優先して確認すべきなのです。その上で旬のモノを有名産地で取れた証明を付けて販売すべきなのです。猫も杓子も「大間のマグロ」が良いからと言って冷凍ものを販売したのでは意味が無いのです。その代わり顧客に対し高い価格で販売できるのです。東京のみならず大阪や京都といった観光都市以外でも外国人に人気の街では知らない間にBIOあるいはビーガンレストランが大変多くなっています。しかし、百貨店内でBIOやビーガンレストランは1~2店程度しかありません。健康志向がこれ程強く一般化しているにも拘らず、取り入れがなされていないのは消費ニーズを読んでいないからなのです。未だに星幾つだとか、予約が取れない店だとかばかり追いかけて、「商品の本筋」を見ていないのです。最近の消費者が商材を選ぶ視点は昔と全く違うのですが、百貨店は残念ながら全く理解していません。大手メーカーはここ数年来のデフレに対抗するため価格優先で商品を造ってきました。消費者は良いものが安いことは良いことだとばかり、安いものにシフトしてきたかに見えましたが、実際は消費者は賢く、自分のライフスタイルに合った消費をし、今後は更にその傾向が強くなっていくのです。他人との同質化、流行への傾倒はどんどん減っていくことでしょう。

 

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