謹賀新年
消費者のニーズ変化は加速度的に進み、小売業の苦戦は止まることをしりません。新しい小売業態であるネットは拡大の一途を続け、日々その機能を広げ新しいビジネスモデルを更新しています。今後どの様な機能で消費者の生活を改善していくのか想像もつきません。これからは靴屋は靴を、服屋は服を作るだけでは生き残れず、その卸先も売り方も時代に合ったものに変えていかねばならないのです。今年も対策を皆さんと共にに考えてゆきたいと思います。
閑散とするクリスマスの米国百貨店
消費者のニーズ変化は加速度的に進み、小売業の苦戦は止まることをしりません。新しい小売業態であるネットは拡大の一途を続け、日々その機能を広げ新しいビジネスモデルを更新しています。今後どの様な機能で消費者の生活を改善していくのか想像もつきません。これからは靴屋は靴を、服屋は服を作るだけでは生き残れず、その卸先も売り方も時代に合ったものに変えていかねばならないのです。今年も対策を皆さんと共にに考えてゆきたいと思います。
閑散とするクリスマスの米国百貨店
SAKSはかきいれ時にも関わらずメインフロア1Fが改装中で顧客も全館まばらです。一方最高級店のバーグドルフグッドマンは本来の顧客以外の、中国人、韓国人やラテン系で賑わっています。
カジュアルな業態化があらゆる場所で進んでいます。ホテル、カフェ、レストラン、ブティックですら「接客」が変わっています。落ち着いた空間で自由に過ごし、用があれば呼ぶと言うスタイルがあらゆる業界で進行しており、従来のオーセンティックな接客は極一部のホテルにしか見受けられません。「緩い時代」です。
一番消費が盛り上がるはずのNYクリスマス商戦をリポートします。感謝祭のブラックサタディから一部の店舗は待ちかねたようにバーゲンに突入するのですが、街は意外に平静を保っています。米国経済の未曾有の好況を反映してラグジュアリーを初め割引率も30%~が主体で嘗てのような70%OFFみたいな投げ売りは見当たりませんが、店内の客足は土曜日でも疎らです。ネットへのシフトは想像以上です。土日でも客足は疎らで寂しい限りです。込んだのはバーゲン初日だけでした。
11月11日、中国で始まった「独身の日」のネット販売が止まりません。今年は何と3兆5千億の売上で、楽天1年分の売上より多いそうです。この成功要因は3つあります。一つ目は、小規模小売り業者が販売場所としてネットに集中したこと。二つ目は
物流が未発達の中国で、ネット販売業が独自に流通網を重視し、囲いこんできたこと。三つ目は贋札が氾濫していた国内で、ネット決済は信用度が現金より高く、便利だったこと、があげられます。
しかし、本当の理由はアリババが周政府と手を結び、政府のネット戦略の一翼を担っているからです。
来年度もこの勢いは止まらないでしょう。
5) 新しい商売を生み出すこと
今迄の商売とは「形あるものを造りあるいは仕入れ、それを販売する」ことでした。昨今は「モノよりコト」寄りとばかりに「コト」を販売する指向が大変強くなっています。しかし問題はその「コト」とは何かという点です。コト=体験がもてはやされ、旅行やイベント参加などが消費者の興味をそそっておりますが、これらは従来から旅行業の業務そのものとして在ったもので今更珍しいものではなく、今更百貨店が取り立てて取り扱う商品ではありません。
百貨店が現在持っている最大の財産は膨大な数の顧客数ですがこの顧客を使った新しいビジネスが次世代の主役になります。①は顧客の膨大な買い物データです。カード顧客は属性が判明しているので、AIにより属性別の購買予測が立ちます。このデータはメーカーにとり莫大な価値を生みます。色・サイズ別の販売予測は商品生産に無駄を無くし、投入時期すら予測可能にします。②は来店顧客の着ている衣料から次の流行予測も可能です。これは来店顧客の写真分析データが売り物になるのです。これらはメーカーが次に何を造るべきかの基礎データになるからです。③はディスプレーからの顧客情報データです。顧客はDPの何に興味を惹かれ、何が購買決定要因か、はたまた非購買要因は何か、DPに仕込んだカメラにより顧客目線の分析から、そして色・サイズ・価格の何処に興味が一番あるかの分析ができます。これらの各種データは百貨店の大きな販売商品になるのです。百貨店はこれらの顧客のライフスタイル全般の購買履歴を確保できます。これによりファッションから食まで「個」の行動パターンが予測できるのです。
百貨店はこのように膨大な買い物の記録及びこれからの予測が大きな商品になりますが、さらにデータの定性化を図るため、顧客の固定化をいままで以上に図る必要があります。そのためには顧客が各販売員のファンになってもらうことが一番の近道であります。何処にでも売っている商品は何処で買っても同じであり、差別化の為には販売員から得られるアドバイスやライフスタイル情報、商品関連知識などを総合的に、ある時は暇つぶしに付き合ってくれ貴重な時間を惜しげもなく費やしてくれる理解者である販売員が百貨店にとり顧客の次に重要な財産になってくるのです。そのために、現在人事部が放棄してしまった販売員教育を再度開始しなければならず、それも急務と言えるでしょう。
今迄の商売と全く違った商売の概念がすぐ目の前に迫っているのです。
3) コト寄りの拠点として新しい生活提案を行うこと
百貨店は今迄の物販施設としての機能だけでは生き残れません。場所貸し化やブランドを詰め込んだ形でも、SC化でも専門特化型でもごく一部の百貨店しか生き残れません。消費者は「モノを買う」ためだけにはわざわざ時間とお金をかけて買い物にはもはや来ません。「今この瞬間」だけしか味わえないコトや「此処でしか買えない」か「此処で買うのが好き」といった「此処」でしか楽しめないコトが集積され、時間と空間が自分の好みで展開されている場所にしか興味が無いからです。「何処でも」「何時でも」買える「場所」や「モノ」には時間を費やす暇は無く「たまたま」ではなく「わざわざ」求めなければ得られないもの、イベントなどの一過性ではなく、日常的に提供され消費者自身の生活の糧になるべき「コト」が望まれるのです。そういった意味で教養や知識を身に着けられる「学習」であったり気の置けない仲間が集うカフェレストランで過ごす「時間」であったり、多種多様の「コト」の集合体に進化をしなければなりません。もっと身近に言えば「料理教室付きあるいはレストラン付きの食品売り場」や「修理・お直しは勿論パーソナルコーディネーターとお茶を飲みながらファッション談義ができる衣料品売り場」などが当たり前になるのです。そうでなく単にモノを販売するだけの施設ではネットにかなうはずが無いのですから。
「電話帳」で有名な米国小売大手のシアーズが倒産しました。ネット台頭に伴う消費者の買い物スタイルの変化について行けなかった事が原因だそうです。かつてシアーズは消費の拡大に伴い店舗が無いエリア向けに「電話帳」と渾名されるほど分厚いカタログで生活全般に渡る商材を販売し急速に伸びた企業です。その後リアル店舗を郊外型ショッピングモールに展開し、廉価な商品と幅広い品揃えを中心に消費者の支持を集めてきました。米国消費の拡大に併せて拡大してきたシアーズは時代のニーズに対応して伸びたといえます。しかし、創業125年たち、会社が硬直化し時代の変化に乗り切れなくなり今回の結果を迎えました。シアーズだけでなく米国の小売りはアマゾンをはじめとするネットの台頭に顧客を奪われ続けています。今年だけでもリミテッド、トイザらスなどの大手企業から靴のナインウェスト、健康サプリのビタミンワールドなど数多くの企業がその歴史に幕を閉じました。どの企業も消費者ニーズを確実に掴み伸びてきた企業です。しかし企業努力のスピードを上回る速さでネット拡大に伴い消費者の購買手法やニーズそのものが変化してきたのです。消費者は正直です。自身のニーズに合ったものしか求めません。今迄は商品自体が良ければ問題はありませんでした。今は価格や品質は勿論、手元に届くまでのスピードやサイズ交換の利便性、24時間可能な購買時と時間やスピードなどの利便性が求められます。今迄の配送時間・コストや商品交換の手間、色・サイズの在庫状況と取り寄せ状況など既存の体制では全く対応できないのです。今迄の勝ち組は早急に商売の「仕組み」改革に取り組まねばなりませんが、日本の小売り大手はどこまで真剣に向き合っているのでしょうか?残念ながら真摯に対応を図っているどころか、検討すらされていないのが現実です。
2) 24時間機能を持ち、24時間展開する
百貨店が「コミュニテーの中核になる」には百貨店が持つ空間と時間の最大限活用が不可欠です。空間は「モノ売り」から「コト寄り」に変わらなくてはなりませんが、同時に「時間」の有効活用が為されなければなりません。地方都市の課題の一つに夜間時間を過ごせる施設が極端に少ない事が挙げられます。夜間人口の減少で地方都市の夜はつまらないというのが特に若年層を中心に多く聞こえ、夜というといかがわしいイメージや不良というイメージが年配者を中心に考えてしまいがちですが、国際化の時代に「夜は寝るもの」で「人生を楽しむ」ことは悪だとする意識はもはや時代遅れです。健全化という観点からしても、百貨店が24時間営業の不夜城化すれば逆に不健全な場所は減り街の浄化にも寄与できると思います。施設がより多くの消費者から支持を得るにはそのニーズに対応すべく24時間営業を目指さねばなりません。
例えば、百貨店の通常営業は7時には終了しますが、一等地の商店街に真っ暗闇が出現してしまいます。そこで7時以降はリアル動画販売に切り替えます。各売り場を周りその日の気に入った商品を音楽に乗せながらネット販売するのです。飲食も同様です。昼間は地元の主婦や起業家が施設を借りてランチ営業し、夜はバーや居酒屋に変身です。所謂2毛作です。ホテルの存在は不可欠でしょう。バックパッカー用のカプセル型から蚕棚型、ファミリー用にビジネスホテル型と画一ではない客室を用意し、あらゆる客層に(高級は無理)対処できバー直営のクラブを併設したり、飲食ゾーンにホテル直営のバーやスポーツバーにGバー、バイキングレストランなどがあっても良いでしょう。当然これらも2毛作です。この2毛作により起業家やアーティストは安く物件を借りられ、装置産業はそのコスト&減価償却費を安く抑えられます。でも一番大事なことはこれらにより起業家やクリエーターそして一般消費者が百貨店という施設に集うことなのです。
百貨店復活の要件
1)地域密着型で地域コミュニケーションの中核化機能を持つこと
百貨店は新しい商品・展開方法・販売方法を開発することにより消費文化をリードしてきました。しかし消費者のモノ離れが進む中で「ブランドAがダメならB」と、ネット時代のリアル店舗のあり方を模索するのではなく、流行を追い続けるだけの「モノを売っているだけの箱」になってしまいました。肝心の商品もネットの拡大により何処でも何時でも手に入れることができるため百貨店はわざわざ行ってその空間や時間を楽しむ施設ではなくなりました。
こんな百貨店を復活させる要件の一つに、消費者が集い時間と空間を楽しめる施設に変ることがあります。物販以外のコトや趣味で消費者が集いコミュニケーションを活性化させ、最後にはコミュニケーションを目的に集うようにする事です。従来でも会員組織での旅行や趣味の会、知性を磨く勉強会などがありますが、もっと広い年代が自然に集まれる施設になる必要があります。公共施設や病院、保育園や学校などがあるのは当然、老人ホームや携帯ショップ、薬局にコンビニなど町中にあるものは全てあるべきでしょう。更に若い人に人気のダンススクールやお年寄りに人気のハワイアンスクール、人気のスウィートショップや飲食なども重要でしょう。ただし重厚長大な売り場ではなく消費者ニーズが変わったらすぐ入れ替えが効く簡便な展開法であることが前提です。それも何処にでもある商品や店舗ではなく、地域に根付いていることが重要です。大都会で展開されている何処にでもあるチェーン店などを展開しても、「わざわざ」来る意味合いが無く、地域密着の「ここにしかない」商品や店舗を導入することが大前提です。そしてホテルに焼き鳥屋に寿司屋、酒が飲める蕎麦屋にラーメン屋、バーやGバー、クラブがあっても良いでしょう。 違う年代、違う価値観、違う趣味が混然と一体感を満たすコミュニティーを創り出すことが今の百貨店再生の第一段階です。若い人が来ないから若い人向衣料ブランドを入れるのではなく、ラーメン屋なら老若男女誰でも集えるからです。百の商材を売った百貨店から百の価値あるコトを展開する百価店へ変わる時です。