アリババの挑戦

6月に日本のバッグブランド「サマンサ・タバサ」が中国アリババが運営する「天猫国際」へ出店代行する「チャイナエクスプレス」に参加しました。このサービスは中国本土に拠点や倉庫(在庫商品)を持たない企業も迅速に中国国内の「天猫」モールに出店できる為、国境を跨いで商品の国際展開を容易にするものです。今迄も米国のe-bayやamazonのように世界中を相手に商品を販売する国際企業はありましたが、中国は関税の仕組みや国内物流の信頼性に問題があり、また中国政府の外貨持ち出し規制など外国には解りにくい国内事情を抱えているため、なかなか日本企業が中国のe-mallに出店する事が難しい現実がありました。そして今回「サマンサ・・・」の参加により、日本企業の進出を促そうと満を持してのモーレツな売り込みの結果であります。今日本は中国人の爆買いに小売業者はウハウハですが、ごく近い将来、日本商品を日本のe-mallから直接中国本土の消費者が買い物をすることになるのです。中国人が自国の商品や販売員の信用問題から日本で本物を購入するという事実は広く知られていますが、中国本土に居ながら日本の現在爆買いの恩恵を受けれていないe-mallの商品を直接来日せず買う事ができれば小売業の勢力地図は大きく変化する事でしょう。決済機能も例の銀聨カードのネット決済が中国政府の認可を取ったことは意外と知られていません。中国政府は外国、特に日本に外貨が落ちる事を歓迎してはいないので、間違いなく国内需要喚起を図るためにも爆買いを抑える方向へ向かわせるため、e-mall関連の規制を外しているのです。今後はこの国際物流推進を政府が後押しし、中国国内経済活性化に向かわせるのです。日本の小売は爆買いに頼ってばかりいないで、早急に消費者ニーズ把握とその対応策を実施すべきでしょう。

ドイツのブランド力

池上彰の「未来世紀ジパング」で、独逸の「ブランド力」の話がありました。車のBMWアウディ、メルセデスの3社の高級車売上台数は180万台、160万台、160万台に対して我がトヨタは59万台と桁違いであります。ブランド力の差は何でしょうか?池上は「発想の差」をまず挙げていました。「独逸は高くても良いものは理解されれば売れる」という信念があり、日本は「良くて安いものが売れる」という考え方の差が一番根底にあるという説明でした。更にその裏付けに「マイスター制度」を挙げました。国家があらゆる職種に権威付けをしていて、その認証が無いものはモノが造れなかったり、売ることができなかったりする法的規制があるのです。よく言われる例えですが、日本の場合まず電卓を叩きコストから計算するが、独逸はまず壊れない事を第一義にモノの良さを追求するというものですが、正に戦後70年間、日本はこの例えに在るような考え方が全ての基本発想でした。その結果、日本の製造業は「コスト競争」のみが全ての目的かしてしまい、「良いものは高くても売れる」という発想は育ちませんでした。そして日本は世界でも有数の「ブランド好き」国民にも係らず、日本製のブランド化を怠ってきたのです。作る方も買う方も日本人は「良くて、安い」が合言葉になったのです。他方世界では「良いものは高い」という認識の下、ブランド化が当たり前のように押し進められ、消費者は当然のように価値と価格のバランスを十分理解したうえで消費を行ってきたのです。そのせいで「日本製品は安いけれど品質が良い」と世界的に認知されたことは自慢できる事ではありますが、逆に「安くなければ売れない」という自縛に陥ってしまった事も事実です。3.11以降特にデフレ状況下に経済が置かれてからは尚更「価格指向」が強まったことは記憶に新しい事ですが、此処へ来て急速にその意識が「無意識」のうちに変わり始めています。消費者自身もはっきりとは気が付いていないかもしれませんが、明らかに消費者のモノを視て、評価する基準が変わり始めた事は間違いありません。経済状況が好転し始めたからでは無く高機能商品が、そして本物が売れ始めたのです。消費者はやっと「本物」の良認め始めたのです。「本物」とはコストを優先した商品では無く、長く使用に耐え、飽きが来ないデザインを併せ持つ製品のことを言います。

今後変化し始めた消費者の「認識」を詳しく分析していきたいと思います。

ノームコア

7月12日付 日経新聞 コラム春秋
「ノームコア」の話が載っています。消費者が変わりつつあり、個性を求める人々は脱ファッションに向かっていると指摘しています。私がクーデター倶楽部で話している内容そのもののコラムです。流行に踊らされる人より、もっと自分の人生の意味や意義を追及した生活を送りたいと考える人々は確実に増え続け、それはもはや止める事は不可能な段階にまで進んで、今後も益々拡大し続ける間違いありません。
人々は初めは模倣から入っても、次第に自分の世界を志向するものです。
消費者は確実に変わりつつあります。
時代が変わるから消費者が変わるのか、消費者が変わるから時代が変わるのか、現代は両者が絡み合って相互に影響仕合ながら共に変化をしていると思います。

時代が変わる!

大手の戦線縮小が止まりません。

大量出店による面の確保による顧客の囲い込みを推進してきた大手アパレルが大きく舵を切り、戦線縮小が始まりました。ワールドやTSIを筆頭にセレクト大手も出店戦略を大きく見直しに入っています。UAも話題だった高速道路PAの店舗を閉鎖したり、クロスカンパニーが「全社員制度」を廃止したり、各社体制の立て直しを必死で模索しています。一方消費ニーズの多様化に合わせるようにファッション企業が飲食に進出したり、雑貨部門を独立強化したり、各社各様の対策を行っています。

これは百貨店と同様、消費者ニーズの多様化・多層化に従来の「ファッション」だけではもはや対応しきれない事の表れだと思われます。元来、時代を敏感に読み、時代の消費ニーズ対応が上手く、消費者ニーズをリードしてきたセレクト系までが消費者ニーズ把握に課題を残すような事態になったことは、ゆゆしき問題であります。嘗ては百貨店の次はブランドが、ブランドの次は専門大店が、そして専門店がといったように時代を牽引する業種が表れていましたが、現在ではこれといった業態は出現してはいません。敢えて言うならユニクロのみが一人勝ちの感がありますが、ちょっと特殊な領域に思えます。果たして次に時代を牽引する業態は出るのでしょうか?今のところ単なるファッション業態ではなく、複合業態、例えば喫茶や書店、花屋やリビング雑貨等を一緒に展開しているライフスタイル提案型のみが気を吐いていると思います。例えば代官山の蔦屋などは、本屋を中心に雑貨・喫茶・DVDにCD、レストランに眼鏡屋にカメラ屋、ペットショップと完全に空間と時間を楽しむライフスタイル型になっており、常に人で溢れています。効率を追求したせせこましいMD展開では成し得ない贅沢な空間、今後のMD展開は「大きさ」が重要な要素になるような気がしています。集積された商品群が薀蓄を、storyを語るにはそれなりの「ボリューム」が無いと消費者のマインドには訴えられないような気がします。

これから消費者ニーズを各社どの様に捉え、どの様に対応していくのか興味津々です。

スタイリスト&ブロガー人気の理由

ここ3~4年、スタイリストやブロガーがファッションの中心で従来のプロであるバイヤーの存在意義が薄れていました。ショーのフロントローはバイヤーでなくブロガーですし、新規ブランドの立ち上げは必ずスタイリスト中心で行われています。それは何故でしょう?答えは明快です!前回の定例会でお話したように、「バイヤーがその商品知識と経験で選んだ商品自体より、どの様な組み合わせ

=コーディネートをしたら今風なのかという情報と提案そのも」を消費者が望んでいるという事なのであります。ですからモノづくりをなさる皆様には「こんなに安くて良いのに何故売れないのだろう?」と不思議に思うのです。現代は商品自体の良し悪しではなく、自分のライフスタイルを充実させるための商品や情報こそ消費者が求めているという事を認識すべきです。単品集積で「さあどうぞ!何でもありますよ」という品揃えは全く意味のない提案でしかありません。メーカーの皆様には「誰にでも」ではなく、明確にわかるターゲットを設定し(年齢やグレード軸では無く、ライフスタイル軸で)「この指とまれ」と自社製品に興味を示した消費者にその商品のコーディネートや使用シチュエーションを明確に提案すべく直営店をもつべきであります。今後はSPA型メーカーのみが小売業の覇者になりうるでしょう!自ら制作して自ら販売するを早急に確保し得ず、もはや集客力の落ちた百貨店にだけ依存していたのでは生き残れないでしょう。

オンワードの大転換

昨日、オンワード樫山が大型家電量販のラオックスと全面提携して合弁会社を起し、来日中国人顧客専門のブランドを立ち上げると発表がありました。家電ばかりでなく、「MADE IN JAPAN」製品の衣料を手掛ける事により、ラオックスは他の免税店との差別化を図り、オンワードはラオックスが中国本土で持つネット通販網での販売を期待しているとの事でした。

ここで重要なのは免税店が爆買い中国人向けにニーズの高い「日本製衣料」を独自で開発しようという点と、業界最大手のオンワードが既存ブランドでなく新規ブランドを百貨店以外のディスカウンターと組んで作成するという2点であります。かねてから日本製衣料はニーズが高く、皆が「売れる」と判断している商材でありました。しかし、何処の百貨店も免税店と組んで売ろうという発想は全く持っていませんでした。

盲点でありました。百貨店はまだまだ「座して顧客を待つという発想からぬけていない」のだなとつくづく実感させられました。更にオンワードも中国本土での百貨店内展開は全滅と言って好いほど不調です。それが中国国内での戦略をラオックスという同盟軍を得て、ネット販売という強力な販路を得た訳ですから、今後中国本でで大いに巻き返しが期待できるわけです。

今度の提携は、1+1が3の代表例でしょう。時代に向かっていく意思を持った企業同士が手を携えるのは、同種で傷を舐め合う提携とは根本的に全く異なるものです。百貨店の方は良く目を空けて時代を視てください。これから景気が良くなっても、売上が単純に伸びるとは思わないでください。消費者ニーズは多様化し、消費者マインドは多層化してます。ただ座して「いらっしゃい」と叫んでいても消費者は来ません。時代に合った商材を、時代に合った組み合わせで、時代に合った売り方で行わなければモノは売れません。それも単品では無く、商品のコーディネートによるトレンド表現やスタイル提案ができなければ売れません。特定ターゲットに的を絞りそのターゲットのニーズを徹底して分析し、先回りして提案することのみが、小売りがメーカーが生き残る道です

クリント展示会

カットものとカシミアでは他では真似のできない独特の味わいがあるブランドです。ミセス市場の数少ない貴重なブランドです。

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今秋はカシミア100%のカジュアルニットが一押しです!

トモロウランドがリスティアを買収

佐々木社長の㈱トモロウランドが高下社長の㈱リスティアを買収しました。セレクトショップがセレクトショップを買収するのは大変珍しいです。今回の買収目的はリスティアが持つ約100に上る海外ブランドの販売権が目的だと思われます。トモロウも且つて海外ブランドショップを3店舗ほど展開したが上手くいかず、独占ブランドはジャンポールノットぐらいしか無く、次の手を探していたと思われます。

現在セレクトショップでラグジュアリーブランドを展開している企業は幾つかありますが、オーナーの感性とブランドからの信頼性がなければ成り立ちません。顧客の顔が全て判っていないとバイイングに無駄が発生してしまい、単価が高いだけに償却分が大きく利益額にマイナスに影響してしまいます。マスターゲットやフリーターゲットの店舗では成立しにくいのがラグジュアリーブティックなのです。故に残念ながら「雇われバイヤー」では良いバイイングはなかなか難しく、オーナー兼バイヤーのショップだけが継続できており、それも店頭だけの販売ではなかなか維持し難く、独占ブランドを幾つか所持し、卸しを兼ねて販売していくことが重要になってくるのです。これらのブティックはファッションの最先端を自身のリスクで突っ走っていくので、並大抵の努力では継続できません。百貨店のセレクトが上手くいかない原因の一つがここに在ります。

セレクトも此処へ来て生き残りを掛けた競争が激化しています。消費者のニーズが多層化し、頭から爪先まで同一ブランドで着飾ることが決してかっこよい時代では無くなった今、セレクトショップが提案するブランドやコーディネートに顧客は、その着こなしやコーディネートに時代を感じるのです。その為優秀なバイヤーを育成するには時間が掛かるので、引き抜くか会社ごと買ってしまうのが一番効率が良いという事なのでしょう。

高島屋リビングDVの挑戦

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高島屋のリビングは伝統的にその商品集積力で圧倒的な支持がありましたが、時代の変化の波に乗り遅れ、効率追求型のギフト売り場化
していました。それが今回、満を持した方向展開に踏み切り、ライフスタイル型編集ショップへの脱却を目指しました。特選洋食器等を
縮小し、自家需要喚起の「和」を強化し更に一部食品まで導入した実験店舗です。目先の売上に拘らず、じっくり育てていってほしいと
思います。

蔦や家電

二子玉川の蔦や家電を視てきました。売上目的というより、ファミリーターゲットのライフスタイル店舗への挑戦に思えます。大人からヤングまで、スタバで買った珈琲を持ち込み、2~3時間喫茶店代わりに、お洒落な空間と時間を楽しんでいます。売上は全く駄目と販売員も諦め顔です。今後此の形態がどの様にビジネスとして成り立つ様に進化するか楽しみです。

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28万円のドイツ製洗濯機から720円の万歩計まであり。

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子供の遊び場を併設する絵本売場

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