コロナ禍からの復興2021 №2

コロナ禍の下で潮が引くように店舗から顧客が消えた小売業の誰もが、飲食業の奮闘を横目で見ながら、「ITとリアルの融合が必要」と言います。其の具体策として「リアル店舗でネット商品の引き取り」とか「リアルで商品を見たり試着したりして、購入はネットで」とかがよく策として語られています。

しかしこんなレベルで顧客は戻るのでしょうか?答えは否です。実店舗の使い方としては実にお粗末としか言いようがありません。コンビニや近所のスーパーなら有効な策かもしれませんが、わざわざ時間とお金を使ってくる百貨店や繁華街に立地する商業施設が取るべき策では在りません。

前回話したようにIT技術で生活を便利にするだけの施策では顧客は満足しません。顧客の生き方=ニーズをより素晴らしいものにするために、顧客に対して何が必要かという視点が欠けているからです。そして来店することが「ついで」ではなく「目的」になるような施策が不可欠なのであります。リアル店舗の持つ意味合いを顧客サイドから見て意味・意義のあるものにしなければネット販売だけで全てが事足りるほど技術は進歩しています。

それでも実際に商品を見て触り感じてから買いたいという欲求は消えませんが、ただそれだけで顧客を実店舗に呼べるかというとそうではありません。何故なら店側が「わざわざ来店していただく」必然性を見出していないからです。将来は実店舗はいらなくて、全てネット販売になるかのような動きしかしていません。

ネット販売の前に完全に打つ手を見失い、誰もが「ネット販売」だけを念仏のように唱え、遅まきながらネット販売への参入を試みている状態では、先行しているネット販売業者に追いつくどころか100年以上の差がついてしまいます。今更「ネット販売」と称してカタログをネットに置き換えただけで顧客のニーズに対して何のソフトも考えず、ただただ商品を売ろうと必死なだけでは顧客の心を捉える事はできません。

ではこれからの小売業はどうしたらよいのでしょう?やるべきことは二つあります。

まず一つ目はITを来店促進の為に活用することです。ネットやIT技術で販売をするのではなく、顧客一人一人に合わせた来店促進策を行うことです。従来のように顧客を一括りにしたマーケティングではなく顧客個々に対応したマーケティングはIT技術の進歩により初めてなされるものです。従来でも外商顧客のような特別客には個別マーケティングが存在しましたが、一般消費者にも同じような対応が可能となったのです。

二つ目はモノ創りです。ただのブランド品やオリジナル品というだけではなく、徹底した消費者サイドに立ったモノ創りで、消費者の生活に潤いであったり、自信を持たせたり、安らぎであったり、信念に対する答えであったり、「ここでしか買えない私の望んだとおりのもの」がこの店なら手に入るというモノなのです。簡単にネットで手に入るモノではなくわざわざ来店すれば100%自分が満足できる商品が手に入るなら、消費者はわざわざ来店します。

次回はこの2つを詳しく考察していきます。

コロナ禍からの復興 2021

人類が未だ嘗て経験したことが無い未曽有の大惨事であるコロナ禍は経済活動に大きな爪痕を残しました。特に「三密」を避けるということで飲食業界は大打撃です。営業時間を短縮されたり、席数を間引きしたり、配達を活用したり、持ち帰り・弁当を始めたりありとあらゆる工夫を重ね、生き残りを賭け必死に知恵を絞っています。

一方小売業は百貨店をはじめとするする大型商業施設に人が集まる物産展を中止したり、正月の福袋を事前予約制にするなどの対策しか打てていません。特にファッション業界は地方を中心に閉店の嵐を起こしており、具体的に打って出る方策はONWARDが17ブランドを集積したONWARDクローゼットを展開し、人頭効率を図っているいるぐらいであります。

結果、地方はもとより郊外店や都心店ですら商業施設にはテナントが撤退した「穴」が目立ち、条件交渉や家賃交渉等の話ばかりが耳に入ってきます。経済紙でも百貨店終焉の記事ばかり目立ち、某アナリストは三越伊勢丹が28か月、高島屋が170か月、H2Oなどは19か月の余命などと分析し、それに対し業界御意見番を自認する某氏が百貨店はまだまだ大丈夫と太鼓判を押すなどの反論が話題となっています。

しかし、一番の課題は商業施設側が「コロナが終焉したら、客足は戻ってくる」と安易な根拠無き楽観論に染まっていることです。「ネットの躍進で購入形態は色々に分散されるだろうが、飲食をはじめ消費者は商業施設には自然と戻ってくる」という趣旨であります。

果たして本当にそうでしょうか?

コロナ禍で変化したのは表面的な人々の規制された「生活」ではなく、基本的な「生き方」だからです。今までの小売業は消費者のニーズが「モノ」中心だったので対応することが可能でした。しかし今回は個々人の「生き方そのものをどうするか」という答えを求めているのです。

新常態=新生活向けの社会基盤整備用のPS環境整備やテレワーク用の自宅改装,はたまた郊外移住などの仕事をする上での対策は種々語られています。コンサルティングやセミナーは未曽有の活況を呈していますが、小売業に対しての具体的は全く語られてはいません。外から見た一般論化か、銀行家や投資家から見た、ROE(自己資本利益率)が大事だとか不動産賃貸業への展開を図れとかの総花的な意見しか見受けられません。

何故なら小売りの素人達が偉そうに何を言っても小売りの根本を理解しておらず、ましてや消費者のニーズを理解していなくては偉そうに知ったかぶりを言っても問題の根本的解決には何の役にも立ちません。小売業の問題はやはり小売業の現場が解決しなければならないのです。

そのような状況下で誰もが判る対策が在ります。それは「IT」を活用しなければ生き残れないということです。こう言うとすぐネット販売の事だと思う方が多いと思いますが、それだけではありません。ITと活用した「顧客管理策」「情報提供策」「集客策」など実店舗を生かした取り組み策がかなりあるのです。しかしネット販売ばかりに気を取られ、現在存在する実店舗の活用策へのアイデアは小売業の何処からも聞こえてきません。

しかし、ネット販売を先行するアリババやAmazon等は実店舗の優位性を良く研究しており、消費者に取りネットと実店舗をどのように活用したら一番最適かを模索しているのです。アリババは銀泰百貨店グループを、Amazonはホールフーズを買収し、ネットとリアルの融合を日本の小売業みたいに口先だけでなく実践し始めているのです。

更に消費者の生活自体を変えうるコロナ禍により、消費者のより良い生活だけではなくより良い人生までの生き方までITによりサポートしようと考えているのです。単にモノを売るだけの企業と、消費者の望む生き方までも視野に入れ支援しようとする企業の差はもはや文化を超え文明レベルに達してしまったと言えるでしょう。

IT時代の新しい売り方№7

最後に登場するのが③の「ここでしか買えない実店舗」になります。この業態はネット時代だからこそ展開できる業態です。逆説的に聞こえるかもしれませんが、簡単にネットで検索・購入できるからこそみんなが簡単に手に入るもので無いものに特定の消費者は興味を示すのです。

「他の人より先に手に入る」とか、「誰もが買えるわけではない」とか、「わざわざ行かないと買えない」とか「簡単」「誰でも」「いつでも」「どこでも」とは全く反対の、従来のマーケティングでは推し量れない消費者行動を喚起するのです。

この店舗ではネットを一切否定するのではなく、逆にネットを利用して商品の紹介は徹底して行い、先行販売や限定品、限定コラボ品やヴィンテージ商品、絶版商品などの希少価値商品の販売を行うものです。その為、MDの拘りに共感する顧客がわざわざ訪ねてくるのですが、商品数は限定されており早い者勝ちなので消費者は目を皿にして商品情報に注意を払うのです。

従来の魚屋やブランドショップやセレクトショップと違う点はまさにこの点に在ります。ネットを最大限利用して商品を徹底して紹介・売り込みを行うのです。商品自体は当然商品の持つストーリーをきちんと説明することにより、SDGを意識した商品だとか環境保護活動をしている企業の商品だとか、あるいは乳首が透けない白いTシャツだとか、ストレッチが効いてしわにならないTシャツだとか、太っていて背の低い人向きの幅はあるが竹の短いTシャツだとか、消費者個々の拘りにちゃんと答える品揃えになっているのです。

企業レベルより個人レベルで運営されることも多いので一等地に立地するより路地裏や住宅地で密かに展開されることが多く、尋ねるにはそれ相当の情報が必要になります。それも土日しか営業しないなどのスタイルが多いので、よりレアな感じが消費者ニーズを掻き立てているのです。

これとは真逆の店舗も在ります。一等地に立地し、徹底した接客を売りにした店舗です。商品は高額品を先行販売、限定販売、オーダーなどに限り、他との差別を図りますが何よりも来店しないと買えないのです。

一般的に百貨店の外商顧客やIT長者などの新富裕層がターゲットになりますが、この層は意外にもネットで簡単に注文するよりは、店頭で実際に商品に触り、素材感や縫製,造り、デザイン、サイズ、色合い等を確かめて買うのです。どんな要求にも応じて顧客満足を最大限に満たす店舗です。

顧客は店舗が己の好みを充分理解し自分の好みに合った商品を選択して紹介してくれるのですから、消費者は楽にお洒落が、それも自分だけのお洒落が、誰もがお洒落と言ってくれる商品を揃えて待っていてくれるので大変便利な店になります。何処にでも売っているブランド品ではなく、好きなブランドの自分だけのオリジナル商品や、他人が持つ半年も前に手に入れられたり、自分の好みにマイナーチェンジされた世界で1つだけの商品等が手に入るのです。

その為には店舗はあらゆる手段を使って個々の顧客の消費ニーズ傾向を把握しなければなりません。カード履歴や店舗内に設置したカメラから顧客の手に取るが買わない商品チェック(非購買履歴把握)や、興味を引く商品に付属したメタデータ把握などのITを駆使した情報収集です。それが在って初めて成り立ちます。

基本的にはマス相手ではなく特定顧客相手の高級店になります。それゆえ販売員は通常のレベルでは立ち行かず、コンセルジュレベルが必要です。顧客のライフスタイルレベルに合わせるため、ライフスタイル全般にわたる知識や最新情報やこれからのトレンド情報などハイレベルで希少な情報が求められます。ただの高級レベルでは成り立ちえません。

この2種類がわざわざ消費者が商品を求めてに消費者が来店し購入する店舗になりますが、この2種類以外にもわざわざ来店させる店舗は出てくるかもしれません。

現在はこの3種類がコロナ禍後の小売業の主力になるとみられていますが、どの業態でもネットを活用しないと存立しません。どのようにネットを活用するかが今後の一番の焦点になります。誰も考え付かなかったネットやITの使い方を編み出した者がこのレースの勝者になるでしょう。その為には物流施設や配送網、返品受け付け体制や再生体制など、販売の為の総合力が問われることは間違いありません。同時に中間搾取的な業態はもはや存続しえないでしょう、残念ながら・・・・・。

IT時代の新しい売り方№6

「ネットでもその場でも買える店舗」は現在多くの実店舗が試みている業態です。特にファッションに向いているとされ、多くのファッションショップが大なり小なりチャレンジしています。この方式だと現代の忙しい女性達にも、40代~50代の実際手に取り試着をしないと納得できない層にも受ける業態です。

百貨店はこの業態を指向していますが、業態の基本的構造や課題に気が付いておらず、構築にはまだまだ程遠い状況です。この業態はネット対応するためには膨大な商品データ集積機能のプラットフォームが必要で、また、ネットに負けないフルアイテム・フルサイズ・フルカラー展開の品揃えができないとわざわざ店舗に来る意味が無いのですが、それができるのはユニクロやZARAなどの大企業しか現在はできていません。

店舗はフルアイテム・フルサイズ・フルカラー展開する為には現在のような15坪や20坪では不可能で、最低でも50坪~100坪無いとちゃんとした品揃えはできません。メーカー側も単に大型化するだけでは販売員が増え、在庫が増えるため、生産数の増加や在庫管理が大変な負担になってしまいます。

そこで多数あるブランドを1つの店舗に纏める必要が出てきますが、ECの品ぞろえに対抗あるいは対応する為には大型化は不可欠であります。オンワードなどでは17のブランドを1つに纏めた新しい実験店舗を始めました。これは今から12年前に今日あることを想定した故石田専務と計画していた新ショップです。

複数のブティック展開のブランドも、マークと看板を外したら素材もデザインもほぼ同じ売れ筋に偏ってしまっている現状では、わざわざブティック展開する必要もなく、無駄に人件費と顧客を分断化しているだけという認識が石田専務と合致したため、新宿高島屋で全ONWARDブランドを紳士&婦人で1000坪展開しようとしたものでした。

これによってフルライン・フルサイズ・フルカラー展開を行い中途半端な店頭展開MDを改め、ネットでも店頭でも買える新業態を目指したものでした。これによってライフスタイルに対応すべく足らない雑貨は共同で開発し、浮いた人件費で値入率を上げ、買取化することによりONWARDのリスクを削り、販売員は売上歩合制を導入し、定価販売、上得顧客先行割引販売、一般顧客先行販売、一般バーゲンと4段階での販売計画を立て、売り切れごめんを目指し、展開商材スケジュールから投入時期変更迄、全く新業態の売り場を目指したものです

更にネットと実店舗ではネット在庫と店舗在庫のシステム連動が不可欠ですし、自由な返品システムも構築しなければネットでの販売は拡大しません。消化仕入で自社で在庫管理もできない百貨店に優先的に商品を展開するメーカーやブランドは次第に減り、自社ECサイトへ誘導するのは自明の理であります。百貨店はその点をしっかり認識するべきであります。いつまでも神輿を担がせ続ける事はもはや不可能なのです。

大丸のように場所貸し屋になるか、伊勢丹のように自社サイトを構築し格取引先を無理やり伊勢丹サイトに登壇させるか、どちらにせよ従来の中間搾取型小売業態は生き残ることはできないのです。この業態を推進する為には商品的にもユニクロなどの実用品・定番展開型かZARAのように多品種展開の売り切り御免型かどちらかになる必要が有ります。従来のブランド展開の異様に中価格・中アイテム展開では消費者は満足することは無いでしょう。

IT時代の新しい売り方№5

http://www.coupdetat.jp/1922/

これからの実店舗は以下の3種類に大別されるでしょう。

① ショウルーミング化店舗                                                                                                                                                           ② ネットでもその場でも買える店舗                                                                                                                                             ③ 実店舗でしか買えない店舗

①は「見せるだけ」で購入はネットで行うという店舗です。「サービスとしての小売り」をコンセプトにしたIT機器の新製品や様々な商品を「実際に体験さす」という体験型店舗になります、

店頭にはサンプルのみの展開のため在庫負担がかかりませんし、大きなスペースも必要としません。また販売員すら必要ありません。基本的には、様々な分野のブランド・企業に店舗を区画として提供するだけでなく、「店舗のサブスクリプションサービス」をしているからです。

スタートアップ企業やスモールビジネスで展開する新興企業や個人には最適の展示場となります。但し新商品の発表の場という意味合いが強い店舗で期間限定展開が肝になります。一定の認知がされれば後はSNSの出番です。

2015年に米国サンフランシスコに創業された企業で2020年夏に有楽町と新宿の2店をオープンさせましたが新しい形態のD2Cとして注目を浴びています。ITを駆使した新商品は特にメーカーの実験場としては申し分ありません。新宿店内には無人店舗でオーダージンズを購入できるサービスを提供しており、IT技術をかつようしてストレスフリーな洋服の購入体験・全く新しいブランド体験づくりに挑戦しています。

この試みは従来の「接客」の意味を全く変え、人に代わってより機能的で効果的なモノづくりとそのモノ作りの過程までが販売に不可欠で、消費者が納得して購入することまでを、「販売員」ではなく「体験」することで納得させるという人類史上画期的な「売り方」であります。今後どこまで消費者が使いこなすか,あるいはこの販売システムについてこれるか大変興味をそそられるところであります。

また、渋谷PARCOにオープンした「βOOSTER STUDIO by campfire」もものを売らない店であります。こちらはクラウドファンディングを通じて誕生したプロダクトや、リテールストアに展開前のプロダクトをなどを展示するショールームであります。リテールストアへの販路拡大に向けたテストマーケティングや新商品開発サポートを目的としたショップです。

天井にはカメラを設置して来店者を解析し、展示製品に関心を寄せた人数や属性、店舗内の行動パターンや回遊でデータを出店者に素早くフィードバックし、「仮説検証」や「市場ニーズへの迅速な対応」などの製品開発をサポートするのが目的なショップで、購入は運営するクラウドファンディンぐのサイトから購入する形態を取っています。

どちらの店舗も従来の無人員販売店舗とは異なり、店舗の存在意義が明確に異なる店舗として注目されます。すくなくとも次世代の若き消費者がどのように反応するか見守りたいです。

IT時代の新しい売り方№4

40代・50代の彼女達が現在の実店舗で満足できない理由の第一は、実店舗にフルアイテム・フルサイズ・フルカラーが揃えられていないからです。

取り寄せで買うくらいならネットで買ったほうが早いからです。わざわざ実店舗に行っても購入したい商品が揃っていないのでは行く価値がまずありません。

大手ファッションメーカーのONWARDは試着中心で購入はネットという専門店を開発します。「ONWARD・クローゼット」は郊外のSCに50数店舗展開されますが、現状の婦人服17ブランドを一堂に会し、其のブランドサンプル品のみを置き、購入はネットでもその場でも可能(一部サイズ・カラー・アイテム取り寄せ?)になるそうです。

ただかなりの大型店にならなければ全アイテム・全サイズ・全カラーを展開できないため、郊外では採算が合っても都心の家賃が高い場所ではなかなか効果測定が難しそうです。

この方式だと余計な在庫生産や展開をしないで済むため生産効率は大幅に向上します。百貨店商材が中心なので試着ができ、触って見て確認できることはミセス層には安心でき、大変良いアイデアだと思います。

第二に販売員の「売らんかな」という姿勢です

サイズが合わなくても「お似合いです」は無いだろう,馬鹿にするな!が消費者の声です。商品に関する知識も充分教育されているとは思えません。

「消費者が欲しがる商品が無ければ似たような代替品を売れ」というのが小売販売の基礎として教わることなのですから。 現在は販売員より消費者のほうがより知識も多く、色々なブランドを横断的に見ているので、自社ブランドしかみていない販売員では情報面で勝てません。

それゆえ、コーディネートやTPOなどの深い専門的なアドヴァイスをできるような販売員育成が不可欠になってくるのです。もっと言えば其の商品を着て、何処へ,誰と、いつ、何をしに行くかわかればそれに関するすべてにアドヴァイスができるコンセルジュとしての販売員が求められるのです。

かつて消費者は、第一段階に何を買うか、第二段階に何処で買うか、第三段階で誰から買うかと、消費傾向を変えてきました。そして今正に第四段階でどんな人から買うかという段階に入ったのです。

なぜなら買い物に費やす時間より自分のライフスタイルを豊かにしてくれるコトやモノに時間もお金も割きたいのですから。もはや買い物は最優先課題では無くなっているのです。 ではどうしたら一番消費にお金を使うこの年代層を取り込めばよいのでしょう。

第三に店舗がブランド別になっている割には同じ生地、同じデザインでタグを変えても全く分からない商品が多すぎるため、消費者としてはコーディネートの為にはいくつかのブランドの実店舗を渡り歩く必要が有り、現代の女性たちには受けないのです。

先ほど述べたONWARDの実験店は17ブランドを集合させる店舗なのでこの点は解消されるでしょうが、意外と同じような商品が多く、かえって消費者は戸惑ってしまうかもしれませんね。

実際今後中高年層はネット販売に傾斜していくでしょうが、サイズ確認は勿論、高額品や素材が気になる商品などは実店舗で試着をしたいという欲求は無くならないと思われます。それゆえ今後はネットでも実店舗でも買える店というのが主力になるでしょう。

しかし、すべてがそうなるとは思えません。実用品や消耗品は充分ネットで、ちょっと高級品はネットで見て実店舗で、あるいは其の逆という流れが主流にはなるでしょうが、店が無い地方や高級高額品が欲しい場合はネットだけで消費者は満足できるのでしょうか?特に新富裕層や旧来からの年齢層が高い富裕層は実店舗での商品を自分で確認してからでないと購入しない傾向が出始めています。

では実店舗はどうなっていくのでしょう?あるいはどうあるべきなのでしょう

IT時代の新しい売り方№3

今までネットにあまり慣れ親しんでいなかった中高年層は今回のコロナ禍でずいぶんネット販売に親しみ、一般品までも買うようになってきました。特に40代~50代の主婦層がネット販売に流れた事は大きな転換点で、これから益々増加し、ネット販売に拒否感を持つ層はいなくなるでしょう。そうなると実店舗の存在意味は全くなくなってしまいます。そうなる前に実店舗に顧客を引き留める策が必要なのです。

今年の夏にb8ta(ベータ)が日本に上陸しました。これは店舗では販売せず、観て触るだけの為だけの出店なのです。ネット販売プラットフォームの実店舗判と言いましょうか、ネットで話題の商品だったり、ネット上では目立たないが面白い商品だったり、兎に角商品をアピールだけする為に実展開する店舗なのです。 <これだと商品展開業者は店全部を借りなくてすみ、展開点数や使用面積に応じて家賃をはらえばよいので、新製品をPRしたり、マニアックな商品を展開するにはもってこいであります。

新しい意味合いのショールーミングです。混雑し膨張し区別がつかなくなり埋もれた商品を発掘するのに最適なツールがエクセレントショールーミーングだったという訳です。新しい実店舗の活用実験店舗策です。

現在、実店舗はこのような使い方しかされず、一般小売業にとっては人件費や家賃が掛かる厄介者扱いが現状です。では実店舗への消費者誘導はいかに行えるのでしょうか?  今や若い40代50代の女性達はほとんどが共働きで収入が有るため、余暇に対して積極的に行動しています。仕事をしている分、休日は羽目を外して好きなことをしたいという願望に男女の区別は在りません。必需品や消耗品はネットで十分で、自分の趣味に合うモノや友人たちと会うためにはお洒落をしていきます。

2万から5万前後の出費に対してはそこそこモノの価値感が分かるので、自分の目で見て触って素材を確かめ、試着して着心地を楽しみたいのです。自分の好みも分かっているので出向く店も在る程度決まっています。このような客層迄ネット販売に追いやる必要は何もないはずです。

しかし現状の実店舗では彼女たちは満足していません

IT時代の新しい売り方 №2

今、小売業は百貨店から街の豆腐屋に至る迄、ネット販売に血道を挙げています。ある者は自社専用の、ある者は専業のプラットフォームを使い、生き残りにはこれしかないとばかり全勢力をつぎ込んでいます。

それも膨大なシステム開発費用払ってオリジナルプラットフォームを創るか、登録料やシステム利用料、はたまた課金システム利用料に倉庫使用料など莫大な経費を払い、幾ら売っても儲からないにもかかわらずです。

今や国内だけで十数万のネット販売サイトが存在すると言われています。正に百花繚乱、大混戦状態といえるでしょう。この混戦から抜け出るために、商品の更新頻度を上げたり、展開商品数を増やしたり、自社社員に商品をコーディネートさせ自ら登場させたり、検索機能に工夫を凝らしたり、掲載商品の写真写りに凝ったり、各社各様に工夫を凝らしています。

しかし、各社共、大事な事を忘れています。ネットでの販売に血道を上げすぎて「実店舗への顧客誘導を全く忘れてしまっている」ことです。

店舗を持たない企業や個人はしかたありませんが、実店舗を持つ企業はネットでの販売しか頭に無く、全くその実店舗活用策を検討しておらず撤退か縮小しか考えていないのです。縮小均衡だけでは一定限度を超えたらモノを創ることも、仕入れることも難しくなり、結局倒産しか無いのは事例を挙げるのにきりがありません。

よく実店舗の商品をネット販売で買える事をうたっている企業があります。ネットで観て実店舗で実物に触り納得してからネットで買うというものですが、高級品やラグジュアリーブランドなら実際に商品を観て触って、衣料なら試着し、納得してから買いたいものです。価格がネットの方が安いなら家に帰ってからネット注文もあり得るでしょうが、高級品、ましてやブランド品はネット販売はおろかセール価格で販売する事は一般顧客向けではまずあり得ないことです。。(一部のFarfatchやBUYMAなどの海外ブランドを安価で提供するサイトなら別ですが。)わざわざ実店舗に来店させその後ネットで買わせるというのは無駄というより、あり得ないことです。

ボリュウム品や消耗品なら見なくてもネットで十分消費者は購入しますが、一般品はどうでしょう?

一時ショールーミングと言う言葉が流行りました。店舗はショールームで購入はネットでという意味です。衣料品等はサイズや色目の問題があるので十分あり得るはなしでしたが、消費者の半分は更に進み、商品を全サイズ、全色取り寄せ自宅でゆっくり試し、要るものだけを残して要らないものは全部返品する事が日常化しています。しかし半分の人はやはり商品を直接見たり、試してみないと買わない層です。この層をネット販売に追いやって良いものでしょうか?

この層は今回のコロナ禍でずいぶんネット販売に親しみ、一般品までも買うようになってきました。特に40代~50代の主婦層がネット販売に流れた事は大きな転換点で、これから益々増加し、ネット販売に拒否感を持つ層はいなくなるでしょう。そうなると実店舗の存在意味は全くなくなってしまいます。

IT時代の新しい売り方 №1

コロナ禍でネット販売は大盛況、リアル店舗は全滅の憂き目にあっています。100年続いた老舗だろうと一等地に立つお洒落な商業ビルだろうと人が来なければモノは売れません。世界に名だたる観光地浅草や銀座などインバウンドで絶好調だった観光地は無人化しています。老人ホーム化していた病院もガラガラです。

一方、広い公園や海岸などイメージ的に空気感染が少ないと思われるエリアには人々が集中化しており、狭い空間やエリアを避ける傾向はまだまだ続きそうです。

このように有史以来、「モノを売る為には人を集めることがまず大前提」だった小売業は右往左往状態から全く抜け出る方策を見つけ出してはいません。こんな状況下のリアル店舗の不調を尻目に絶好調なのがネット販売です。

コロナ禍前でもネット販売は若者を中心に若い顧客層を完全に取り込み奇跡的な急成長を続けていましたが、コロナ禍によりその成長幅を大幅に増やしました。

今までネット販売を利用しなかった主婦層や50代サラリーマン層まで今やネットでの買い物は当たり前になったのです。その結果、大手小売りは当然、大手メーカーから零細企業まで、のみならず個人に至るまであらゆる企業や個人が「ネットでモノを売れ」とばかりで参入しています。高級食材からプロ用DIYグッズ、ファション衣料・雑貨、家電製品からブランド品まで、果ては薬から家まで、売っていないモノはありません。

小売業を生業とする専業は目の色を変えて今更のように「ネット販売!」と声高に叫び、消化仕入品=メーカーからの借り物=何処でも売っている商材を必死で売ろうとしています。

このようなメーカー商品はメーカー自身のHPでも、色々なネットサイトでも、あるいはメーカーの実店舗でも販売しているので、わざわざ小売業(百貨店やスーパー、専門店)のネット販売サイトを訪ねる事はせず、消費者は直接メーカーのHPへ行ってしまうのです。

それにもかかわらず小売業はネット販売さえすれば無限の売上が手に入ると信じ切っていますが、ネット販売自体が競合同士の激しさに晒され、実際小売業で儲かっている企業は少ないと言われています

儲かっているのはプラットフォーム企業と配送業者だけです。後発組は特にネット販売プラットフォームに乗せれば売れて儲かると勘違いしている企業は誠に多いのです。

当然、競合の熾烈なネット販売でも消費者が買い易い品揃えや、見せ方、売り方があるはずです。検索したら一番最初に自社商品が出てくるようにしたり、「いいね」の評判を増えるようにしたり、徹底したマーケティングにより選定されたハッシュタグをつけたり、インフルエンサーを多数雇ったり色々な仕掛けが考えられます。

最近の流行はファッションで言えばメーカーや小売店舗の社員が自らコーディネートを写真に撮り、HPにアップすることです。食品で言えば産地の漁協や農協直送や農家や漁師の直販です。

売上獲得のため配送の問題も大きな要素になっています。一つは料金の問題。折角欲しい商品を易く買えたのに配送料が高くては意味がなくなってしまいます。二つ目は配送までの日数があります。Amazonが即日無料配送で市場を席巻し後日翌日湯量配送に変えた時には、日本勢は太刀打ちできなくなっていたものです。現在は注文後3日以内に配送できないと次回からの注文は激減するそうです。

更に大きな課題として返品処理の問題があります。実店舗で購入したモノを返品するにはレシート確認や痂疲の有無,使用済みか未使用かなど煩い条件が有りますが、ネット販売ではファッションではサイズ、食品では鮮度など実際に見ないと分からないモノは返品を前提とした納返品システムを持たないとなかなか売れません。

今どきの消費者は平気で色・サイズを多数取り寄せ自宅で試着し、気に行ったもの以外は返品することが当たり前なのです。食品も冷凍冷蔵品は勿論のこと生鮮食材でも気に入らなければ返品する時代なのです。販売者によっては「返品不可」を前提に商品掲載するところも在りますが、人気は無いようです。

その返品された商品を再度販売できるように箱や包装を再生できる時間をどれだけ短縮できるかが、商品ロス削減や売上貢献に大きく左右します。とかくネット販売では売れれば良しとばかり、関連経費や商品回転率、利益率などは二の次になる傾向が有りますが、在庫になっているよりは試着でも何でも動いている方が良いとする企業は売上がダントツのようでありますし、今まで再生再配送まで3日掛かっていたのを30分に縮める目標を掲げているそうです。

ネット販売はその技術的進歩が日進日歩で、自ら大きな投資を必要とするプラットフォーム企業になることは今更愚の骨頂でありますが(伊勢丹は3百数十億円掛けて構築しましたが)これから小売業はどうやってネット販売を始めとする進化し続けるIT技術を利用していけばよいのでしょう。

コロナ禍の後に(物販業界)№3-6

昨今、コロナ禍で延期になっていた大規模商業施設の開店が相次いで行われています。大抵がホテルやオフィスを併設しており大型化しています。

これらの施設の特徴は二種類に分けられます。一つは従来型商業施設で、導線をまっすぐに通し、見やすく、広々とし、有名ブランドを誘致し、ビルの格を上げようとするものです。少し前ではCOREDO室町テラス、渋谷スクランブルスクエア、渋谷フクラス、ウィズ原宿などで、従来型の商業施設で全くもって面白くも何ともありません。

話題の新ブランド導入とか人気のパン屋導入など小手先だけで、何処にでもある店が並び、わざわざそこへ出向いてまで買う必然性が皆無です。喫茶にしても当たり前の有名店舗が並び目新しいものは何処にもありません。一度行けば飽きてしまう施設達です。

これらの施設の商業施設はオフィスやホテルの付属でしかなく、人々が集うための場所であったり、わざわざ来たくなるような環境の施設ではありません。建築家が己の自我を目一杯、これでもかこれでもかと押し付けてくるためだけの、無機質で硬質、100年後も残るような美的空間を誇るものでもなく、家賃が取れればそれでいいだけのつまらない箱であります。入居している店舗が赤字でも家主はオフィスやホテルの賃料収入だけで十分元が取れる仕組みになっており、家賃が払えなくなった店子は入れ替えれば済むことなのです。

このような商業施設は消費者の動向やニーズを全く理解せず、一方的な効率的収益性と豪華さだけを売りにしているだけで、あっという間に飽きられてしまうことは目に見えています。取りあえず開店時に話題の店が数店入っていればよく、あとはオフィスの従業員向けの飲食店が残れば十分なのです。あれだけ猫も杓子も騒ぎ、乱立し、先を争って導入したタピオカ店はわずか数か月で影も形も残っていません。同様に今はやっている店舗はいずれ流行が去ればお役御免となり、大型チェーン店の集合店ばかりになり、何処も同じようなビルになり、話題にすら上らなくなるのです。

一方、MD的にも環境的にも面白いのが渋谷PARCOと渋谷ミヤシタパークです。両施設とも今の消費者をよく理解していて、従来型のただ店舗を並べるのではなく、「わざわざ」「探す」楽しさを提供してくれています。

前回述べたように消費者が出かけるのは渋谷や新宿、銀座と決まったビルへ行くだけの街から、横丁、路地裏などの何か宝探しのようなわくわく感を感じさせる場所を求めているのです。下町がここ数年大ブームなのも、繁華街にはない路地裏や横丁そして、そこにしかない古い店を捜し歩く魅力を感じているからなのです。銀座の裏コリドー街や日比谷URAROJI、などは今後新しい人の流れを創ることでしょう。

渋谷PARCOのB1にはそんな裏路地の横丁が創られており、消費者の好奇心を掻き立てています。居酒屋にイタリアン、甘味屋に占い師、寿司屋に立ち食いてんぷらや、レコード屋にゲイバーまであり、驚かされます。1回行っただけではその魅力を全部は味わえず、何度も足を運んでしまいます。また、完成してから1年近くたちますが未だに色褪せず、集客力を誇っています。特に屋上に設けられた流石創造集団のイベント広場は、毎週代わりで創作意欲旺盛だが発表の場がないクリエーターのイベントや、青空一のファーマーズマーケットやらいつ行っても何かしら行われており、楽しい場所になっています。

ミヤシタパークも飲食街とは別に1Fに渋谷横丁として全国からのB~C級グルメを揃えていて大変楽しい場所になっています。三密等どこ吹く風で、狭い通路にぎゅうぎゅう詰めの店内、しかも店舗の括りがあいまいで何処からどこまでが同じ店なのか区別がつかなくて、お祭りの屋台で食べている感じです。

一方物販階は多数の飲食を店舗間に挟み込み、全館飲食階の有様です。千駄ヶ谷の路地裏にある白いTシャツだけを売るFFFFFFTなど入っていましたが、わざわざ探しに来るマニアは一人もおらず、閑散としていました。やはりわざわざ感がないと一般人には理解できないMDなのかも知れません。

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