コロナ禍からの復興2021 №2
コロナ禍の下で潮が引くように店舗から顧客が消えた小売業の誰もが、飲食業の奮闘を横目で見ながら、「ITとリアルの融合が必要」と言います。其の具体策として「リアル店舗でネット商品の引き取り」とか「リアルで商品を見たり試着したりして、購入はネットで」とかがよく策として語られています。
しかしこんなレベルで顧客は戻るのでしょうか?答えは否です。実店舗の使い方としては実にお粗末としか言いようがありません。コンビニや近所のスーパーなら有効な策かもしれませんが、わざわざ時間とお金を使ってくる百貨店や繁華街に立地する商業施設が取るべき策では在りません。
前回話したようにIT技術で生活を便利にするだけの施策では顧客は満足しません。顧客の生き方=ニーズをより素晴らしいものにするために、顧客に対して何が必要かという視点が欠けているからです。そして来店することが「ついで」ではなく「目的」になるような施策が不可欠なのであります。リアル店舗の持つ意味合いを顧客サイドから見て意味・意義のあるものにしなければネット販売だけで全てが事足りるほど技術は進歩しています。
それでも実際に商品を見て触り感じてから買いたいという欲求は消えませんが、ただそれだけで顧客を実店舗に呼べるかというとそうではありません。何故なら店側が「わざわざ来店していただく」必然性を見出していないからです。将来は実店舗はいらなくて、全てネット販売になるかのような動きしかしていません。
ネット販売の前に完全に打つ手を見失い、誰もが「ネット販売」だけを念仏のように唱え、遅まきながらネット販売への参入を試みている状態では、先行しているネット販売業者に追いつくどころか100年以上の差がついてしまいます。今更「ネット販売」と称してカタログをネットに置き換えただけで顧客のニーズに対して何のソフトも考えず、ただただ商品を売ろうと必死なだけでは顧客の心を捉える事はできません。
ではこれからの小売業はどうしたらよいのでしょう?やるべきことは二つあります。
まず一つ目はITを来店促進の為に活用することです。ネットやIT技術で販売をするのではなく、顧客一人一人に合わせた来店促進策を行うことです。従来のように顧客を一括りにしたマーケティングではなく顧客個々に対応したマーケティングはIT技術の進歩により初めてなされるものです。従来でも外商顧客のような特別客には個別マーケティングが存在しましたが、一般消費者にも同じような対応が可能となったのです。
二つ目はモノ創りです。ただのブランド品やオリジナル品というだけではなく、徹底した消費者サイドに立ったモノ創りで、消費者の生活に潤いであったり、自信を持たせたり、安らぎであったり、信念に対する答えであったり、「ここでしか買えない私の望んだとおりのもの」がこの店なら手に入るというモノなのです。簡単にネットで手に入るモノではなくわざわざ来店すれば100%自分が満足できる商品が手に入るなら、消費者はわざわざ来店します。
次回はこの2つを詳しく考察していきます。