IT時代の新しい売り方№6

「ネットでもその場でも買える店舗」は現在多くの実店舗が試みている業態です。特にファッションに向いているとされ、多くのファッションショップが大なり小なりチャレンジしています。この方式だと現代の忙しい女性達にも、40代~50代の実際手に取り試着をしないと納得できない層にも受ける業態です。

百貨店はこの業態を指向していますが、業態の基本的構造や課題に気が付いておらず、構築にはまだまだ程遠い状況です。この業態はネット対応するためには膨大な商品データ集積機能のプラットフォームが必要で、また、ネットに負けないフルアイテム・フルサイズ・フルカラー展開の品揃えができないとわざわざ店舗に来る意味が無いのですが、それができるのはユニクロやZARAなどの大企業しか現在はできていません。

店舗はフルアイテム・フルサイズ・フルカラー展開する為には現在のような15坪や20坪では不可能で、最低でも50坪~100坪無いとちゃんとした品揃えはできません。メーカー側も単に大型化するだけでは販売員が増え、在庫が増えるため、生産数の増加や在庫管理が大変な負担になってしまいます。

そこで多数あるブランドを1つの店舗に纏める必要が出てきますが、ECの品ぞろえに対抗あるいは対応する為には大型化は不可欠であります。オンワードなどでは17のブランドを1つに纏めた新しい実験店舗を始めました。これは今から12年前に今日あることを想定した故石田専務と計画していた新ショップです。

複数のブティック展開のブランドも、マークと看板を外したら素材もデザインもほぼ同じ売れ筋に偏ってしまっている現状では、わざわざブティック展開する必要もなく、無駄に人件費と顧客を分断化しているだけという認識が石田専務と合致したため、新宿高島屋で全ONWARDブランドを紳士&婦人で1000坪展開しようとしたものでした。

これによってフルライン・フルサイズ・フルカラー展開を行い中途半端な店頭展開MDを改め、ネットでも店頭でも買える新業態を目指したものでした。これによってライフスタイルに対応すべく足らない雑貨は共同で開発し、浮いた人件費で値入率を上げ、買取化することによりONWARDのリスクを削り、販売員は売上歩合制を導入し、定価販売、上得顧客先行割引販売、一般顧客先行販売、一般バーゲンと4段階での販売計画を立て、売り切れごめんを目指し、展開商材スケジュールから投入時期変更迄、全く新業態の売り場を目指したものです

更にネットと実店舗ではネット在庫と店舗在庫のシステム連動が不可欠ですし、自由な返品システムも構築しなければネットでの販売は拡大しません。消化仕入で自社で在庫管理もできない百貨店に優先的に商品を展開するメーカーやブランドは次第に減り、自社ECサイトへ誘導するのは自明の理であります。百貨店はその点をしっかり認識するべきであります。いつまでも神輿を担がせ続ける事はもはや不可能なのです。

大丸のように場所貸し屋になるか、伊勢丹のように自社サイトを構築し格取引先を無理やり伊勢丹サイトに登壇させるか、どちらにせよ従来の中間搾取型小売業態は生き残ることはできないのです。この業態を推進する為には商品的にもユニクロなどの実用品・定番展開型かZARAのように多品種展開の売り切り御免型かどちらかになる必要が有ります。従来のブランド展開の異様に中価格・中アイテム展開では消費者は満足することは無いでしょう。

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