コロナ禍からの復興2021 №3

AI技術の革新は加速度的に進み、従来では不可能どころか思いも付かない事が可能になりました。その結果人々の生活の便利さを広げただけでなく、社会の既成概念すら大きく変化させました。

特にネット販売の拡大は消費者の生活スタイルを一変させ、従来の価値観や小売り業の在り方も変えてしまいました。ファッションは試着しなければという人もまだまだいますが、多数のサイズや色を取り寄せ、自宅で試着し、中から欲しいものだけ残し後は返品すればよい、という新しい購入ルールが確実に拡大・定着し始めています。

結果、簡単に返品させない百貨店やブランドはもはや購入場所対象外となってしまい、それすら判らず「ネット販売」を金科玉条に戴いて、システム対応に投資もせず、カタログを電子化しただけのHPでは消費者の心は動かす事はできません。

百貨店や大型商業施設は「ネットと実店舗の融合」と称して、ネット商品の受け取り場にしたり、ネットでも店頭でも買える、ということを謳い文句にしていますが、そんな陳腐な政策で、コンビニやスーパーならいざ知らず、繁華街に位置する大型商業施設が行う施策としては陳腐です。そんな事でわざわざ高い電車賃と時間を掛けて来店はしません。

では実店舗は全く不要の存在になってしまうのでしょうか?

いや、そんな事は絶対ありません。その為には大型施設はまず集客する方法を考えねばならないのです。それも最新のAI技術を利用して、新しいマーケテイングを行い、MDを、実店舗を、販売ルールを、接客を、そして商品を一新させ、集客策を考えるべきなのです。早急に実店舗に顧客を誘導する手法を開発しなければ実店舗の存在意味は無くなってしまいます。

しかしコロナ禍で消費者は三密はおろか不要の外出を控えるためにわざわざ繁華街まで出てこないのではと思わのが一般的です。正にその考え方は消費者に浸透しています。

だからこそ、「わざわざ来店していただく必然」を実店舗は提供する事が絶対不可欠なのです。コロナ禍が終焉すれば、或いはこの状況に消費者が慣れれば消費者は戻ってくると考えている経営者が居れば、おめでたい限りです。

実店舗では商品ではなく、そこにいる販売員と話がしたくて来店する顧客や、販売員が進める商品を買えば安心という個客もたくさんいらっしゃいます。このような顧客は来店頻度も購買単価も高いのが特徴です。しかし「絶対数が少なく実店舗を維持しうる顧客数が足らない」と、ONWARDの鈴木社長は話されます。ONWARDはそれゆえ、撤退した店舗を年間数回POPUPで展開販売することにしたそうですが、実に懸命だと思います。

しかしそれだけでは、実店舗は従来のままでの存続は難しいでしょう。特に単一ブランド展開している店舗はネット販売に勝てるはずがありません。なぜなら実店舗は商品展開のアイテム数・色数・サイズ数、ブランドの全てにおいて、ネット販売で展開される物量とは比較にならないからです。

それでは、所有する全ブランドを集積させ、フルアイテム・フルサイズ・フルカラー揃えた店舗展開は可能でしょうか?ネット販売に対抗して「ネットでも、実店舗でも買える」という事はこういうことになります。しかし、郊外の大型店舗ならいざ知らず、都心や繁華街では利益の出ない店舗となるでしょう。しかし、「ショールーム」と割り切り宣伝費で運営されれば可能かもしれませんが、在庫品の処分を考えると頭の痛い問題であります。

ONWARDは今から10年前に今日が来ることを予想し、同じ商業施設にブランド毎にばらばらに店舗が展開されている不効率を解消しよう、お客様の利便性を向上させようと、全ブランドを1ブティックに集約した案を高島屋と研究を開始していました。それは一人の消費者が多様化・多層化しているという事実の下、年齢別・テイスト別・価格別等という分類では消費者を括る事はもはやできないという厳然たる事実の認識からでした。

今日これらの分類は進化した消費者を見分けるのには時代遅れの産物以外の何物でもありません。ブランドを排し、1か所にフルアイテム揃えた実店舗は販売員効率や商品製作上でも、また在庫管理面でも大変有効であるというシュミレーションが出ていましたが、実店舗全店で行うわけにはいきません。それだけの商品量を生産しても売り切る事が出来ず、SALEでも処分ができず作れば作るだけ赤字が増えるだけだからです。基本的に「マスマーケティング」ではこの顧客のニーズを把握し対応する事は出来ないのです。

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