コロナ禍からの復興 2021

人類が未だ嘗て経験したことが無い未曽有の大惨事であるコロナ禍は経済活動に大きな爪痕を残しました。特に「三密」を避けるということで飲食業界は大打撃です。営業時間を短縮されたり、席数を間引きしたり、配達を活用したり、持ち帰り・弁当を始めたりありとあらゆる工夫を重ね、生き残りを賭け必死に知恵を絞っています。

一方小売業は百貨店をはじめとするする大型商業施設に人が集まる物産展を中止したり、正月の福袋を事前予約制にするなどの対策しか打てていません。特にファッション業界は地方を中心に閉店の嵐を起こしており、具体的に打って出る方策はONWARDが17ブランドを集積したONWARDクローゼットを展開し、人頭効率を図っているいるぐらいであります。

結果、地方はもとより郊外店や都心店ですら商業施設にはテナントが撤退した「穴」が目立ち、条件交渉や家賃交渉等の話ばかりが耳に入ってきます。経済紙でも百貨店終焉の記事ばかり目立ち、某アナリストは三越伊勢丹が28か月、高島屋が170か月、H2Oなどは19か月の余命などと分析し、それに対し業界御意見番を自認する某氏が百貨店はまだまだ大丈夫と太鼓判を押すなどの反論が話題となっています。

しかし、一番の課題は商業施設側が「コロナが終焉したら、客足は戻ってくる」と安易な根拠無き楽観論に染まっていることです。「ネットの躍進で購入形態は色々に分散されるだろうが、飲食をはじめ消費者は商業施設には自然と戻ってくる」という趣旨であります。

果たして本当にそうでしょうか?

コロナ禍で変化したのは表面的な人々の規制された「生活」ではなく、基本的な「生き方」だからです。今までの小売業は消費者のニーズが「モノ」中心だったので対応することが可能でした。しかし今回は個々人の「生き方そのものをどうするか」という答えを求めているのです。

新常態=新生活向けの社会基盤整備用のPS環境整備やテレワーク用の自宅改装,はたまた郊外移住などの仕事をする上での対策は種々語られています。コンサルティングやセミナーは未曽有の活況を呈していますが、小売業に対しての具体的は全く語られてはいません。外から見た一般論化か、銀行家や投資家から見た、ROE(自己資本利益率)が大事だとか不動産賃貸業への展開を図れとかの総花的な意見しか見受けられません。

何故なら小売りの素人達が偉そうに何を言っても小売りの根本を理解しておらず、ましてや消費者のニーズを理解していなくては偉そうに知ったかぶりを言っても問題の根本的解決には何の役にも立ちません。小売業の問題はやはり小売業の現場が解決しなければならないのです。

そのような状況下で誰もが判る対策が在ります。それは「IT」を活用しなければ生き残れないということです。こう言うとすぐネット販売の事だと思う方が多いと思いますが、それだけではありません。ITと活用した「顧客管理策」「情報提供策」「集客策」など実店舗を生かした取り組み策がかなりあるのです。しかしネット販売ばかりに気を取られ、現在存在する実店舗の活用策へのアイデアは小売業の何処からも聞こえてきません。

しかし、ネット販売を先行するアリババやAmazon等は実店舗の優位性を良く研究しており、消費者に取りネットと実店舗をどのように活用したら一番最適かを模索しているのです。アリババは銀泰百貨店グループを、Amazonはホールフーズを買収し、ネットとリアルの融合を日本の小売業みたいに口先だけでなく実践し始めているのです。

更に消費者の生活自体を変えうるコロナ禍により、消費者のより良い生活だけではなくより良い人生までの生き方までITによりサポートしようと考えているのです。単にモノを売るだけの企業と、消費者の望む生き方までも視野に入れ支援しようとする企業の差はもはや文化を超え文明レベルに達してしまったと言えるでしょう。

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