2020年 百貨店復権に向けて

新年あけましておめでとうございます。

クーデター倶楽部では本年、百貨店の再生・復権に向けて現状の課題を明らかにし、その具体的対策を皆様と検討していきたいと思います。更に百貨店と街の関わり合いの中で、地方都市の再生にも言及していきたいと思います。

百貨店不調要因 №3 「サラリーマン化」

「血気盛ん、勇猛果敢」そんな社員は見かけなくなりました。どっちを向いても「目立たず、休まず、働かず」と、かつての公務員のような社員ばかりになっています。新しい取引先や商品を他社に先駆けて発掘・導入し、消費をリードしようとする人は皆無で、「失敗したら大変」とばかり新しいチャレンジは会社全体で厳禁なのです。先輩達が発掘した取引先で、継続的に展開している定番商品を、前年同様展開する、ことが至上命題なのです。せいぜい他社が展開していて人気が有り売上も取れるコトやモノの実績を確認してから導入するというのが関の山なのです。業界全体をリードしてやろうという侍は討ち死にし、可もなく不可もなしという「サラリーマン」のみが生き残っているのです。

百貨店不調要因 №2 「会議」

百貨店不調要因の二つ目に「会議」があります。一つ目に述べたように上層部はなかなか決断をしません。会議では事前に用意された以上の資料を要求します。スタッフは使われるか判らない膨大な資料を毎回用意せざるを得ず、しかも会議のための事前会議すら行われることになるのです。百貨店の生産性が極端に低いのは無駄な会議が多いことに原因があると思われます。更に会議で議論されるべき内容が提出されることはまれで、資料の説明や報告が主力で、参加者は目の前に配られた資料を延々と読むだけの時間になるのです。これでは会議では無く報告会です。更に悪いことに参加者は質問することも無く、ひたすら無言で会議の流れがどちらに流れるかを読み、多勢につくべく、自分の意見はまず発表しません。そして不毛な会議は結論も不明確なまま終了し、決議はのちに上層部へ個別で持ち回られ、社長の意向に沿って、反対無く、密かに何処かで決まっていくのです。

百貨店不調要因 №1 「決断」

百貨店不調原因があれこれ言われていますが、不調原因の一つに上層部の「決断の無さ」が挙げられます。百貨店は「今までにない」「此処しかない」といった商品やサービスの提供が消費ニーズ対応に不可欠でありますが、新しいコトやモノの導入の決定の際に最大の障害となるのが「上層部の決断の無さ、遅さ」があります。スピードが求められる時代にこれは致命傷です。今の日本企業大手全体が同病に病んでいると思われます。

 

新たな挑戦

日本のモノ造りが不調です。原因として一つ目は海外メーカーが追い付け追い越せで技術力を身につけ、低価格で競争に挑んできたこと。二つ目は日本のお家芸ともいえる改善による商品進化が限界に達しており、新機軸の技術開発が不可欠になっているにもかかわらず開発が遅れていること。三つめは消費者および企業からの要求に応えることができず、データ改ざんや検査自体を甘くして性能が向上したかのような嘘をついてきたこと、が挙げられます。では何故このような事態に陥ってしまったのでしょう。

かつて日本の物造りはその品質の良さで世界を制覇しましたが、その品質とは「実用に供するに最高の」という意味合いが強く、そこには残念ながらデザイン性や装飾性はあまり含まれてはいません。日本のモノ造りは昔も今も世界最高水準であることは間違いがありませんが海外から見ると「安いけれど良い」商品だったのです。その為必死で安いけれど機能が満載であったり、新技術がでると直ぐにより進化したバージョンを出したりしてその地位を維持してきたのですが、AIの発達によりハードはソフトの開発スピードに追い付かなくなってしまったのです。結果、新機能のハードは出しても出してもすぐ時代遅れとなり、多くの企業が新製品開発に疲れてしまったのです。この状況を打破するには方法があるのでしょうか。答えはあります。それは「デザイン」です。人々は商品に機能を求めている以上にその「デザイン」によって選択する場合が多々あります。そしてデザインが良いとその特徴から「ブランド」化しやすくなり、最終的には価格も通るようになり、価格競争からの脱却が見込めるようになります。そうなると市場も国内に限定されることなく世界を相手にターゲット化でき、日本製品が再び世界に飛躍するでしょう。現在マツダが「マツダデザイン」と称してデザインのオリジナリティを追求し始めていますが、完全なオリジナルデザインを完成させるにはあと数年掛かるでしょう。期待しています。

 

世界で静かな革命が進行中

リモートワーク、有休教育制度、副業OKなど働き方改革に伴い私達の生活が大きく変わる革命が進行中です。単に労働時間削減ではなく生活自体に大きな影響を及ぼす「働き方改革」は社会自体の在り方すら変えてしまう「革命」的パワーを秘めています。人口減少や高度成長により労働人口が減り補完として急拡大してきた共稼ぎは今や完全に定着し社会生活の在り方を大きく変えてきましたが、消費者価値観の変化に伴い収入を求めるだけでなくやりたいことをやる為に時間を必要とするといった、自分の望む生活に合致した働き方を選ぶようになってきました。更に男女の仕事の境界線も無くなりつつあり、従来男の領域と言われた肉体労働系や夜間業務にまで女性の進出は当たり前になり、一方育メンで男性が育児休暇を取ることも普通になっています。IT技術が更に進めば会社中心の社会生活が、自分中心の生活に間違いなく変わってくるでしょう。収入より時間、出世より趣味が生活の中で重要な位置を占めてくる傾向は増々増加するでしょう。

世界が相手に №3

最後はデザインの世界基準への到達です。

日本の商品の海外向けと言うと決まって出てくるのが日本製生地を使った着物デザインです。岡山のデニムを使った着物とか、着物をリメイクしたドレスとかですが、視点が完全に間違っています。海外が評価しているのはあくまで生地に対する評価であり、その生地を使った古びたデザインの着物紛いや見飽きた普通のドレスではないのです。そんな安易な発想では到底世界に評価されるレベルではないのです。日本人が安易に欧米発祥の洋服を真似たデザインを発信しても受け入れられる筈がありません。これから私達が目指すべきものは世界に通用する「デザイン」です。車からファッションまで日本製品は必ずと言ってよいほど海外製品の模倣があります。機能や性能は素晴らしくてもデザインでの独自性が無ければ世界では通用しないのです。結果日本製品は評価を受けても「低価格の割には性能が良い」というボリュームゾーンでしか認知されません。韓国製の日本製品を真似た更に安い商品が出てくると簡単にシェアーを食われてしまい、中国と東南アジアでしか日本製品は認知されていないのです。あのユニクロや無印でさえ欧米では利益が出るほどは進出できていません。世界に通用する「デザイン」で商品を企画しないと世界から取り残されるでしょう。

世界が相手に №2

2つ目は「大量生産大量販売」を止めることです。消費ニーズが多層化した現在、従来の大量生産による在庫を保持して大量に売るという方程式は市場に合いません。今までは定価販売後のバーゲンでそこそこ売れたので一定量生産しても利益も確保でき商品も処分できましたが、定価で販売できなかったものはほとんどバーゲンでも売れないからです。低価格化が定着した現在、価格販売ですら利益が出しにくくなっているのですからバーゲンで売れても利益はほとんど出ず、ましてやバーゲンでも売れなくては丸々赤字化してしまいます。結局定価販売できる量を確実に見越し、百貨店をはじめ今までは認められなかった「売り切り御免」方式に変更せざるを得ないのです。そのため、店頭投入時期や量などを見直し、早期早期に次商品を投入し売り抜ける、商品がなければ敢えて売り場に無理に商品を投入しないやり方を採用すべきなのです

世界が相手に №1

日本のモノ造りレベルの高さは世界的に定評があり、高い技術力や丁寧な仕事に絶対的な信用を得ています。しかし戦後70数年経ち、日本のモノ作りが曲がり角に来ています。理由の一つは日本型組織=会社に制度疲労が起きていることです。成功体験に裏付けられた前年踏襲主義が時代の急速な変化に対応できず、対処療法的な組織変更や業務変更ではピラミッド型日本社会を時代に遅れず動かすことができなくなっているのです。時代対応のスピード感が全く足らないといえるでしょう。それゆえ、データ改ざんやねつ造が多発し、商品に対する信用を著しく毀損してしまったのです。二つ目は消費者意識が大きく変化してモノへの価値観が多様化し、従来型の大量生産大量消費は立ち行かなくなったのです。更に価格は抑えられ品質は向上させねばならず、今までのモノ造りでのコストカットや販売経費削減は限界まで来ており利益を確保することは到底難しくなっているのです。ではこれからのモノ造りはどうすればよいのでしょう?

方法は2つあります。1つ目は日本国内市場だけを見るのではなく、初めから国際市場で戦うことを想定したモノ造りに変わっていくことです。現在ではあくまで国内向け商品の海外向け改良版でしかなく、それも低価格路線でしかありません。日本の高い技術に見合った価格設定は残念ながら全くありません。その原因は「デザイン力」の不足にあると断言できます。どうしても日本の特徴を出そうとすると伝統的な「和」を出すのが常套手段で、「現代」の日本を前面に出したモノは全くありません。確かに琳派は人気ですが、草間彌生のほうが圧倒的な広範囲な層に支持されているのです。要は世界共通ニーズに対応するデザインを入れるのです。車からファッションまで、欧米の真似では欧米はもとより東南アジアでも支持されるはずがありません。憧れの日本でしか造れない高レベルのモノ造りに日本感性で独自のデザインを以て、世界市場に打って出るのです。初めから世界を相手にするには事前のマーケティングは欠かせず、生産量の設定から販売スケジュール、国別の価格設定、投入時期から宣伝戦略まで気の遠くなる作業がありますが、世界企業は既にやっている作業に過ぎません。今からでも全ての業種で行うべきです。

NY事情2019冬

米国の景気は悪くないと言われてましたが、確かにNYには例年以上のおのぼりさんが多く驚きました。それ以上に驚いたのはSAKSでもバーグドルフでも高額品の衣料を買っているスペイン語を喋る人々の多さです。かつて、バーグドルフやSAKSのラグジュアリー衣料でヒスパニックの人を見かける事なぞ無かったので大変驚きました。中国人と韓国人も多いです。中国人は家族連れ、韓国人は若いカップルかグループが圧倒的です。ラグジュアリーショップは両国に占領されたかのようですが、年末に中国でトラブったD&Gはがらがらでした。

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