シン・百貨店 第1章 第1項

百貨店の不調が止まりません。

新聞ではこの夏、百貨店は前年比二桁の伸びを取り戻したと発表され、株価も高値を付けています。しかし、残念ながら夏の復調は一過性の状況で、根本的な解決からは程遠いのが現実です。夏の売上回復はこの9月には急速に萎み、苦戦を強いられており、コロナ禍前の8割レベルにしか戻ってはいません。

「コロナ禍のせいで観光客が減ったことが売上減の最大要因なので、コロナ化が終焉すれば観光客が戻りまた爆買いで売り上げは急速回復する」と百貨店関係者はよく言いますが、本当にそうなのでしょうか?百貨店は観光客の爆買いに頼れば生き残れるのでしょうか?

コロナ禍前は中国人を始めとする観光客増加による爆買いが大きな売り上げ要素となり、どの百貨店もインバウンド客誘致に血道をあげていました。確かにその購買力は凄まじく爆買いは日本経済を動かしました。しかし、その恩恵を受けたのは大都市部の百貨店のみで、地方都市の百貨店は全くその恩恵を受けてはいませんでした。百貨店業界全体が受けたわけではないのです。

ですからコロナ禍で観光客が減り、爆買いがなくなったから百貨店が不調というのは必ずしも正しくはありません。爆買いが始まる前から百貨店の日本人消費者離れは著しく、売り上げはじり貧だったのです。その窮状を救ったのが天の恵みであった「爆買い」だったのです。それ故、根本的な売り上げ減少の原因分析とその対策は為されないまま、不振原因は「インバウンドの消滅」と一言で片付け、根本的な対策は何もしないまま全てをコロナ禍のせいにし、改革を怠り、雨乞いをするかのように爆買いの復活を祈るばかりでは復活は程遠いとしか言いようがありません。

このような理由で爆買いだけを待ち望んでいる百貨店に本当の復活があると考えるのは難しいでしょう。しかも観光客が戻っても従来のような爆買いが戻るという保証はどこにも無いのです。それより不調の原因を明確に把握し、確実にその対策を講ずることが今こそ必要な事なのです。もう一度日本人消費者のニーズを掴み、売り上げの主体を日本人に戻さない限り百貨店という業態は存続しえないのです。其の為には百貨店という業態を見直し、22世紀まで残りうる百貨店に進化させていかねばなりません。今の延長線上に未来は無いのです。

でもコロナ禍前、なぜ百貨店の存在意義が薄れ、消費者に支持されなくなってしまったのでしょうか?

ネット販売という新業態が売上を奪ったせいでしょうか?確かにこれは明治維新に匹敵する社会変革を、特に小売業にもたらしました。これまでも小売りの王者だった百貨店に対し、スーパーやGMSなどの強豪の出現があったり、専門大店は百貨店から取り扱いアイテムを多数奪っていったり、通販やTVショッピングは幅広い層の消費者に支持されており、各業態の売上高は未だに伸張し続けています。しかもネット販売はこれらの出現インパクトとは比較にならない程の影響力を持っています。これらの他の小売業態はコロナ禍でも売り上げを伸ばしたり、Ⅴ字回復したりしていますが百貨店だけが回復しないのです。それは一概にインバウンドのせいだとは言い切れません。インバウンドが始まる前からの凋落傾向だからです。

では何故百貨店の凋落は止まらないのでしょうか?

かつて百貨店の強みは、➀ワンストップショッピング ②新しいもの・トレンドのもの・ここでしか手に入らないものが揃っている ③ここで買えば安心、といったものがありました。しかし、消費者のニーズ多様化につれ、その買い方や買う場所・買い方に大きな変化が現れて百貨店の優位性は崩れていってしまいました。その最大の要因は消費ニーズに対応できなかったのではありません。しなかったからです。残念ながら長きに亘った王者の地位に慣れ親しみすぎ、自ら時代を感じ、動こうとはしなかったのです。汗をかこうとせず、安易な消化仕入れへ商売の軸足を移していったのです。※1

※1 筆者が百貨店へ入社した時代は、消化仕入れが10%を超えたら危険だと言われていました。現在では90数%が消化仕入れです。結果、取引先の売り場と化し、品揃えは取引先が売りたいモノ一辺倒になってしまい、どの百貨店へ行っても店頭にある商品は同一化してしまったのです。

現在の消費者はネット情報社会の進展につれ大きく変化しました。結果、百貨店でなければ手に入らない商品はもはやなく、何処ででも買える商品のみを扱っている業態では消費者を満足させ、集客させることは叶わないのです。

百貨店凋落の大きな要因は以下の3点が挙げられます。

➀ 消費者ニーズ変化に対応する遅れ   : 消費者の趣味嗜好・ライフスタイルの変化やSGDS・環境問題などへの未対応

② 業態の時代変化に対応する遅れ    : ネット時代の新しい店舗役割構築と消費者対応策(揃え方・見せ方・売り方)開発

③ AI技術が変える社会変化に対応への遅れ: AIを活用した新・marketing戦略構築と個人ニーズ対応

小売業は、時代毎に変化する消費者の価値観やライフスタイルに合わせて情報提供や商品提供することが必須のビジネスです。そのためのマーケティングを怠り、最新の情報データを収集・分析をせず、顧客ニーズを読まずに安易な前年踏襲の品揃え・商品展開方法・売り方では消費者が離れていくのは必然です。

ましてや、拙書(お客様、閉店です)でも書きましたが、多層化する消費者のニーズに対応するには新しい業態として百貨店を再構築することが不可欠です。その為には百貨店がかつての進取先取りの精神を取り戻し、時代の最先端の技術を活用して消費者ニーズに対応するのみならず、消費喚起を誘えるような新しい小売業を創業するべきなのです。

次回から百貨店が生まれ変わる策を提案したいと思います。

コロナ化後の世界 №6-6

地方百貨店はどうやって生き残るべきでしょうか?

前前回に百貨店の目指すべきMDは高級化路線しかないと言いましたが、地方百貨店にも同じことが言えるのでしょうか?残念ながら同じではありません。地方でも百貨店は高度成長期やネットがない時代に消費者の上昇指向ニーズを一手に引き受けていました。都会でしか買えない商材や大手メーカーの商品をきちんと品揃えし、非日常を具現化して圧倒的支持を得ていたのです。

しかし今日、大都会の百貨店でさえネット販売に押され、消費者ニーズ&ライフスタイルの変化に翻弄され、従来のMDでは立ち行かなくなっているのです。絶対的消費者数が少ない地方では百貨店がもはや大手メーカー店舗が存立しうるだけの売り上げを維持できず、赤字拡大傾向から脱却できる見込みがない中では全国区的な大手メーカー商材を展開するのは不可能です。ラグジュアリーブランドのような高級品は売上だけでなくイメージ戦略に合わない地域には出店しませんし、国産高級品も在庫に成り易く経営を圧迫するでしょう。そこで高級品はその売り方を研究し、外商顧客中心の販売スタイルで展開すべきでしょう。

現在地方百貨店を視察に行きますと、フロアーのあちらこちらにブランドや大手メーカーが撤退した空き地が目立ち、その場所を埋めるべくちぐはぐな感が否めない、アイテムもテイストも全く違う商材がPOP・UPショップとしてだらだら展開されているのが目につきます。もはやMDがどうとかいう以前になってしまっています。取り合えず何でもよいから場所埋めをしとこうという結果でしょう。

ネット全盛時代にどうMDを組むかという課題は、A社が駄目ならB社を入れるといったことではありません。消費者ニーズ変化にどう対応すべきか、という基本的課題を解決すべきで、その結果どう館全体に集客するか、フロアー全体を構成するか、そのパーツとして具体的売り場展開策を検討すべきなのです。30年全盛を誇った商業施設としての役割、特にブランド別ブティック型売り場展開はもはや消費者の支持は得られず、百貨店側からしても面積効率を悪化させる元凶となり、改装経費も膨大になるので新しい売り場展開策を模索すべき時代になっています。

それ故、MDを組む前に実店舗の役割を明確にしておく必要があります。

従来のようにただ商品を並べても消費者は戻ってきません。それよりもう一度地元消費者が必要と思う施設として、大型店舗を活用するべきであります。百貨店は施設としては駐車場から食堂まで展開しています。飲食を新規開業しようすると莫大な経費が掛かる厨房陽が要りませんし、POPUPやイベント展開に必要な催場もあります。あとは地元に何を提供したら、消費者が集まってこれるかというこの一転に尽きます。

百貨店は大抵旧市街の一等地に立地しており、周囲はシャッター通り化しています。ちょっと離れたロードサイドには大型専門大店が軒を連ねており、各店舗の大きさと品揃えには到底勝てません。百貨店としての規模はあってもアイテム毎では到底彼らの敵ではありません。彼らに対抗するにはやはり百貨店でしか売っていない商材と、ワンストップの利便性を提供するしかありません。

時代はモノからコトへと大きく消費者ニーズを大きく変えてしまい、単に物販の店舗を集積しても消費者は呼び戻せません。ロードサイドの大型専門店や総合スーパーも決して楽な状況ではないのです。コンビニやネット販売の拡大で、「便利」というキーワードは大型商業施設からは消えてしまい、消費者は違う他の価値を求めてそれら施設へ行っているのです。残念ながら百貨店はその他の価値観から漏れてしまい、消費者のターゲットから大きく外れてしまった結果が今日なのです。

それをもう一度消費者ニーズの価値ある存在として受け入れてもらうにはどうすべきなのでしょう?

それには消費者がわざわざ来店してくれるコンテンツを店舗に積み込むことです。例えば、郵便局や銀行などの公共事業。病院に歯医者、保育園に塾、ジムやカラオケ、老人ホームやマンションがあっても良いかもしれません。更に食堂では昼間は起業したい地元主婦や若手による専門店(弁当や・ラーメン屋・焼肉屋・蕎麦屋・寿司屋/てんぷらや)。夜はクラブにバーに変化する二毛作業態化を図ります。何しろ地方都市の中核に返り咲く商品ではないMDを組むのです。

4か月に1回の外商フェアーでは普段扱えない高級品を、ファッションフェアーでは大手メーカーのPOPUP展開を、物産展や商品催しを常に展開して集客を図ることが百貨店の一番の業務になります。食品は思い切って成城石井のフランチャイズになるコトも良いかもしれません。地方に成城石井が展開できたら大型スーパーにでさえ対抗できます。制度化粧品は百貨店の独占です。地元のクリエーターの消費jjは積極的に取り上げ、ふるさと納税対象商品になるよう支援するのも手です。

百貨店のOGやOBは日給1000円の義勇兵として、店舗周辺の清掃や児童や老人の送迎バス運転、老人ホーム巡回などを行い、地元活性化を助けます。何しろ、お殿様と言われた百貨店が立ち上がり汗をかく姿を消費者に見せることが重要なのです。これなくしてMDは始まりません。地方百貨店は「街おこし」と一体になり、地域商店街や街全体の活性化の大きな役割を担うという発想が不可欠なのです。

しかし百貨店は従来の百貨店としての存続は計画してはいけません。もう百貨店形態では成立せず、存立しえないからです。あくまで地域の中核施設として、消費者が望むライフスタイル全般のニーズに対応すべき施設に転換するかが最大の問題なのです。商業施設から集合施設へ転換をすることが不可欠なのです。

地方百貨店の存続は、実店舗とネット販売との連動が不可欠になります。特に上手くネット販売を実店舗と組み合わせることが重要です。何故なら消費者が望むものすべてを店頭に揃えても、全部売れる保証はなく、衣料など特に色・サイズのあるものはどんなに売れても必ず残るものが出ることと、売れるまで時間がかかるという点です。店頭回転率は恐ろしく悪く、商材は販売チャンスを失してしまうことが多いということです。取引先は、買取以外の消化仕入れや委託仕入れでは商品を寝かすことになり、残れば在庫負担が重くのしかかります。

これを解消するのがネット販売になります。在庫はメーカー在庫を利用し、売れたらメーカーから納品しても直送しても良い、新しい売り方を研究すべきです。店頭にはフルカラー・フルサイズではなく、サンプルのみの展開で試着をして貰い、欲しければお取り寄せという方式です。この方式だと、メーカーの負担も少なく済むし、百貨店もブランド商品を維持できます。

この時店舗はブランドごとのブティック方式ではなく、メーカーの全ブランドを一か所に集め展開する方法か、テイスト毎にブランドやメーカーの垣根を越えて一緒に展開する方法が現実的でしょう。更に撤退してしまったメーカーには年4回、季節ごとに全ブランドを集めたPOPUP展開を要請します。季節商材を期間を決めて販売することにより、メーカー側も在庫を回すことができ、ロス削減になります。

実際オンワード樫山では撤退した百貨店で年3回のPOPUPショップを展開し、1年分の売り上げを超える売り上げをたった6週間でたたき出しております。経費が掛からない分確実に利益が出ており、新しい売り方として注目を集めています。

商品はネットでは全国展開商品と地域限定地元メーカー商品を掲載し、幅広い地元層に対応します。実店舗では通常ネットで販売していない地元商材と食材が中心になるでしょう。

地方百貨店は地元の郊外型総合ショッピングセンターと競合しても、ロードサイドの専門店と競合しても残念ながら勝てません。それよりわざわざ来店させる集客策を、MD面や宣伝面で徹底して研究するほうが重要です。現在ロードサイドに在ったかつての物流倉庫を専門店に貸し出したり、駐車場を完全賃貸しにしたり、自前の戦略なしで細々と生きている百貨店ばかりです。企業再生ブラーカーに頼り最後の資金を騙し取られたり、社員を減らすことばかりで一切打って出る施策を持たない経営層ばかりです。

こんな状況下になっても危機感すら持っていない経営層は想像以上に多いです。経営層も社員も自社だけは絶対つぶれないと思っている百貨店は多いです。でもそんなことはありません。閉店は目の前に迫っているのです。

 

コロナ禍後の世界 №6-5

百貨店の採るべきネット販売MDとは

ネット販売の急速な拡大の裏には、利便性向上の為の飽くなき技術革新の進歩があります。検索機能から受注・返品機能、そして物流・配送機能、更には商品管理や追跡機能と、複数にわたる業界の連携と膨大な投資による拡大意欲がネット販売の隆盛を支えているのです。

百貨店は実店舗の再構築と同時にネット販売にも本格的に参入すべきですが、今から百貨店が自主でネット販売を強化するといっても、システムも商品も現状レベルでは出遅れ感は否めず、規模・機能・商品の厚み&奥行きで先行企業から100年は遅れています。通販カタログのデジタル化や実店舗の宣伝版レベルのネット販売では新聞掲載広告の置き換えにすぎません。

新規に巻き返すにはまず新しい技術を理解でき、その機能で何をすべきかを発想できる人員が不可欠になります。現在ではネット技術者は揃いつつありますが、ネット戦略を構築でき、百貨店のネット販売はどうあるべきかという指針を出せる上層部が必要です。IT用語すら理解できず、否定から入り、投資も小出しで田舎の温泉旅館みたいな継ぎはぎのシステムを開発させた経営者は要りません。従来のシステム部では対応できません。新規に中途採用で人員を募集すべきです。まずはIT時代に相応しい陣容を整えるべきです。

では体制が整ったとして、百貨店がやるべきネット販売のMD戦略は如何あるべきでしょう?

実店舗では高級品MDを取るべきですが、ネット販売ではどうあるべきでしょう。ネットでの高級品は難しいものがあります。やはり手に取り素材や機能、サイズ感や素材感を実感しないと高級品は難しいからです。だからと言ってメーカーから仕入れた何処ででも買える一般商材でよいのでしょうか?それは違います。実店舗と同様、百貨店のネット販売でも他業種や他業態と同じものでは顧客がわざわざHPに来るとは思えません。やはり百貨店ならではの商品が求められるでしょう。同時に百貨店の強みであるギフト商材も展開する必要があります。

現状多くの百貨店ネット販売にみられる通信販売商材や、既存カタログ商材をデジタル化するだけでは全く意味がありません。基本的にはいわゆる百貨店品質を維持したオリジナル商材が不可欠でしょう。実店舗のPB商材より価格的に求めやすい定番商材と、どこよりも早い新商材、埋もれて世に出ていない高品質商材、職人技が光る手作り商材などや、販売拠点やルートを持てずに販売機会がないけれど機能やデザインが優れている商材、などを百貨店バイヤーが世界や国内から探し出し、販売するのが百貨店らしいネットMDです。百貨店はこのような埋もれている才能を発掘し、紹介するインキュベート機能=パトロンであることが不可欠なのです。

そのためには長い耳を持つ必要があります。常に新しい消費者の動きや消費者ニーズ、街の片隅で随時発生する新しい商品開発や、ネット上で話題になるコトやモノの情報や動向を常に最先端で捉えたり、夜のニュースで紹介された商材を翌日には店頭で紹介したり、一方で常日頃こんな商材があれば良いなあ、といった商材を開発したり、消費者の意見を常にリサーチ&収集することが不可欠になります。

方法はAIを使ったメタデータ収集と分析が必要になります。従来のような顧客アンケートでは無く、ネットの視聴履歴や検索記録、既存メディア情報や広告反応データなどあらゆる生活全般情報からのメタデータが必要であり有効です。これらの膨大なデータをどのように分析し、活用するかがこれからの企業の実力になり、圧倒的差がついてくるでしょう。

バイヤーはメーカーの新製品を導入するだけの業務から、自ら消費者ニーズに対応しうる商材をあらゆる手段を駆使して探し出したり、メーカーや消費者とコラボして開発したり、消費者ニーズの深堀を行うことが求められます。開発した商品は買取を基本とし、詳細なスケジュールを持った販売計画に則って展開されます。商品は潤沢に用意されるというよりは売り切りごめんを基本に、常に新製品が投入されるようスケジュール化されねばなりません。いつでも買える商品は必ず在庫として残りますし、バーゲンに価格変更しても消費者はもはや踊らないからです。

一方百貨店が得意とするGIFT商材も定番メーカーだけでなく、切り口を変えた展開が求められます。よい例が食べログが展開している「秘書の選んだ手土産」というのがあります。一流企業の秘書が、役員が持っていくための手土産を選んだという代物ですが、百貨店が得意とする誰もが知っている老舗ではなく、最近人気だとか、若い子に人気、デザインがかわいい、体に良い、だとか若い世代の秘書目線で選定された商品群で非常に面白いものがあります。百貨店のバイヤーがまず知らない隠れた名店やヒット商品があるのです。

何処にでもある、誰もが知っている、という発想から「秘書」という特定の、一種憧れの職業の人が選んだという安心感に支えられ、誰もが興味を引くのです。このようなMDの切り口はネット上では広範囲の消費者に支持を受け易く、実効も大きいものがあります。これに続くMDの切り口があればネット上での販売に大きく貢献することは間違いありません。

一時、有名ブロガーが発信する商材が圧倒的人気を誇ったことがあります。最初これは歌手や有名人の着ているものがヒットしたり、食べているものが人気になったりするのと似ていました。しかし直ぐにブロガーが行うコーディネートや着こなしに人気が集まっていることが判明し、独自のセンスやライフスタイルが「ウリ」になっていたのです。そこで一部の百貨店やメーカーはこぞってブロガーを活用しましたが、それは正解でした。しかし、現在では一程度期間が過ぎると新しいコトやモノの発信が減り、人気ブロガーも少なくなっています。

やはり消費者の身近な感覚で受けたけれど、常に新しいものを提案し続けることは難しかったと言えるのでしょうか。百貨店のバイヤーはこれらの経験から、自身の感性や情報網に磨きをかけ、本来のバイヤー業務を遂行すべきです。先輩から引き継いだ大手取引先におんぶで抱っこの仕入れ姿勢では生き残れません。ここいらで目を覚まし、自分の足で歩くときです。

優秀なバイヤーが育ってもそれだけではネット販売は成功しません。ネットでは価格の他、返品や交換のやり易さや、サイズ表示・機能表示の見易さ、商品の探しやすさなどの機能は当然必要です。在庫管理だけでもリアル在庫が把握できなくては販売などできませんし、返品・交換商品は直ぐに再生できる体制を自社内に持つ必要があります。従来のようにいちいち取引先に戻していては時間ロスが大きく、販売機会を逃す危険が増大します。百貨店はこれらの新体制を早急に組むと同時に、遅れを挽回するために今までにない機能を取り入れ、消費者にアピールする必要があります。しかも百貨店サービスとして修理・保管などの他業種では無いサービス機能や、他業種でも未だできていないサービス機能も付加する必要があります。

それは消費者の趣味嗜好を完全に把握できる機能です。ネットでは検索した商品を履歴としてデータ把握ができる機能が可能で、音楽業界が盛んに活用している機能です。リコメンド機能と言いますが、消費者が検索した複数の音楽をデータ化し、消費者のききたい音楽の傾向、あるいはアーティストの曲をAIが判断して消費者にSNSで推薦してくる機能です。

この進化版が㈱ソケットと㈱ノーマジーンの共同開発の「感性メタデータ」機能になります。これは商品に数千の感性/感覚表現メタデータが付加され、複数検索された結果の共通項目から消費者の趣味嗜好さらにはコンプレックスまで判断する優れものです。この機能を使うと消費者本人も自覚していなかった消費者の隠れたニーズまで高精度で判断でき、その結果消費者のニーズに合致した商品をリコメンドできるという仕組みです。消費者が検索中にリコメンドが可能なので、検索中にヒットする可能性が飛躍的に拡大します。実験では売上が2桁の伸びをしたそうです。

これは一つの例で、このような新機能ソフトは毎日開発されており、この機能をどう使うかが販売側の能力になってくるのです。

ここでは感性メタデータがポイントになってきますが、流行商品も当然販売するので、年3回、NY、PARIS、MILANOからその季節のキーワードを取り入れて流行にも対応でき、常にシステムソフトが更新できるようになっているそうです。

後発の百貨店がネット販売に参入するにはこのような新しいソフトや機能を谷先駆けて導入し、消費者の利便性やニーズに素早く対応・提案できることが不可欠になってくるでしょう。

他には無い商品・サービス・機能がなければ百貨店がこれから参入しても勝てないでしょう。

コロナ禍後の世界No.6-4

百貨店の採るべき新しいMDとは?

百貨店が高額品を販売するためにはMDの変更だけでは足りません。徹底したサービスの再構築・高度化が必要です。

1000円のTシャツを売るのではなく10万円のTシャツを売るのですから、ハンガーで什器にブル下げているのではなくきちんとディスプレイされ商品は引き出しの棚の中にきちんと畳まれて保管されていなければなりません。販売員がきちんと製品説明・商品説明、トレンドコーディネート・ベーシックコーディネートが説明できなければなりません。洗濯の注意から保管の注意など多岐に渡るお客様の関心毎には適格に且つ確実にお答えする体制と販売員教育が不可欠になってきます。決してメーカーからの派遣社員ではできない、百貨店ならではの接客技術を磨く必要があるのです。

一番の接客力は商品知識です。製品知識とは異なり、商品のトレンド性やコーディネート情報、今年流の着こなし、顧客の感性や好みに合わせた提案などが商品知識の根幹を成します。製品知識は素材や洗濯情報、お手入れ方法、保管方法など製品に関する情報になります。

同じ商品でも顧客の年齢・テイスト・使用目的・趣味嗜好などで勧め方は異なります。どの顧客に対しても同じ接客や通り一遍の接客では顧客は満足させられません。近年の百貨店売上低迷の一因はこの接客にあったと私は視ています。マニュアル通りの接客ではネットで商品情報を完璧に頭に叩き込んだ消費者には敵いません。マニュアルから一歩も二歩も進んだ接客が為されなければ、専門店の商品好きの販売員やオタッキーな販売員には敵わないのです。ブロガーのコーディネート力には敵わないのです。

更に最近ないがしろにされているVMD(ヴィジュアル・マーチャン・ダイニング)が重要になってきます。新しい時代の新しい顧客層=新富裕層や、オーセンティックでベーシックなライフスタイルを好む富裕層、には各々に対して店側がきちんと提案しなければ商品価値が十分には伝わりません。売り場で展開している全商品にスポットライトを当て、品番や売り場単位を超えたライフスタイルやスタイリングで見せていくことが求められています。そのためには只のディスプレイでは顧客の興味を引き付けることは難しく、色々の情報を瞬時に伝えられるVMDを販売員はきちっと理解の上、計画的に展開スケジュールを組んで実施されるべきなのです。

このような自社販売員を育てるべく、全日空のCAにお辞儀の仕方を学んだり、言葉使いを学んだりせず、自社教育をしっかりと人事部にお願いしたいです。百貨店は全日空のお手本になった企業にもかかわらず、本末転倒し、教育を放棄した人事部などリストラされるべきです。顧客に対して決して友達言葉など許されるはずも無く、私服などもってのほか、きちんと制服に身を包んだ正社員が※2接客をすべきなのです。教育を全く為されず、新入社員から販売員管理ばかりやらされている百貨店の社員は販売員としては現状最低レベルといっても決して過言ではないでしょう。優秀な販売員を中途採用したり、給与制度に売上インセンティブを付けたり、ともかく優秀な販売員確保が急務です。

また、販売の為の環境整備も不可欠です。現在百貨店で高級というとブティック形態が主流です。しかし、街中の個店をそのまま持ち込んだような店舗はもう飽きました。それより、フロア全体を一つのラグジュアリーな壁の無い圧迫感ない回遊性の高い空間に設え、高級家具什器や広い試着室、ゆったり展開された展示什器で、消費者はゆっくりソファーに座りながらお茶を飲みながら販売員が運んでくる商材をゆっくり吟味する、といった環境が必要でしょう。ニューヨークのバーグドルフやロンドンのセルフリッジなどを研究するべきです。

仕入れ先の言いなりに3年に一度、300万円/坪も掛けて内装を一新するなんて馬鹿な事は早々止めるべきです。ラグジュアリーブランドはただでさえ百貨店の優良顧客名簿を横取りし、望外に儲かっているにもかかわらず条件を毎年悪化させ、店舗の至近距離に大型店舗を展開させ、百貨店内店舗はストック場位の位置づけに貶めています。それでも対抗しうる自社オリジナル高額ブランドを持たない百貨店は屈辱的に従わざるを得ないのが現状です。早急にラグジュアリーブランドを凌ぐ高級品開発を行うべき理由がここにもあります。

効率追求型の狭い空間に什器や商品を詰め込んだ売場展開は、あくまでも売場主義で顧客主義ではありませんし、消費者はそんな場所で商品知識も製品知識もない販売員から物を買いたくはないのです。ましてや、今後狙う顧客は自分のライフスタイルに合った「何か良いもの」を探しに来られるのです。決して「良くて安い」商品を探しに来るのではありません。価格ではなく、自分の趣味嗜好や興味を十二分に満足させてくれる商品であることが最重要なのです。何しろアイテム毎に世界の一流品で売場が満たされているのです。どの商品も主役でなければなりません。そして売場はそれら商品が映える場所でなければならないのです。

百貨店は今までの中間プライス戦略を捨て、高いがそれなりの価値がある商材の発掘及び生産を行うべきだと説いてきました。何処にでもある、何処ででも買える、皆が持ってる、といった商品を販売していてはいけません。百貨店が販売するには何の価値もないのです。同じ館内にユニクロやZARAも要りません。一般服も服飾雑貨も要りません。必要なのは世界から選りすぐってきた商品のみです。同時に次世代に羽ばたくデザイナーや工房、職人などの作品や商品をインキュベートすることも大事です。館内に嘗てあったような美術画廊やサザビーズのような高級オークションが在ってもよいですし、今一度自社ターゲット戦略、MD戦略、販促戦略、などを再構築すべきなのです。

これからは営業部やMDなどの真価が問われる時代です。頭の古く固い役員層の言いなりでは生き残ることはできません。今までの成功体験ややり方では全く通用しなくなることを自覚しなければなりません。今こそ目覚めるときです。

コロナ禍後の世界№6-3

実店舗の百貨店が見直すべきMDとは?

消費者にわざわざ来店していただくためには、消費者が、興味があり来店して直に触れたい、といったMD展開でなければ消費者を呼び戻すことはできません。それは一体どんなMDなのでしょう?

消費者ニーズが多様化した今日、年齢軸や収入軸、単なるテイスト軸のような今までのターゲット分析&設定では消費者の実像を把握することはできません。ライフスタイルは千差万別ですからライフスタイル別に消費者全員に対応するMDを組むこともできません。

しかし、多様化しても消費者全員に関心がある、あるいは不可欠な商品である、といった商品群を揃える必要があります。

またネットで購入できる商品やメーカーのナショナル商品を並べても消費者を呼び込むことはできません。

わざわざ来店しなければ買えないといった商品群です。

どんな階層でもテイストでもライフスタイルでも共通の切り口でMDを構築するためには、百貨店自体が得意とし、他業態が敵わない、ましてやネットでは真贋問題やメーカーが独占してなかなか買えないといった切り口の商品群です。

それは百貨店が元来得意としてきた「高級品」です。これに特化したMDを敷くことが消費者には訴えることができると思われます。どんな階層や年齢層、テイスト軸の消費者でも、誰もが欲しがる高級品でしか百貨店に「集客」させることは今や不可能となっています。

今百貨店に来店いただける消費者の興味は、制度化粧品、デパ地下、ラグジュアリーブランド、あとは北海道物産展に京都物産展くらいしかありません。どれも一般品と比べると高額商品であり、百貨店に来なければ変えない商品群であります。

言い換えれば消費者は百貨店に一般品より高額なブランド品や普段買えない老舗の味を求めていると気付きます。3足1000円の靴下や1000円のネクタイはわざわざ電車に乗って百貨店には来ないのです。コンビニか駅中のキオスクで良いのです。

残念ながら、現在の百貨店は何処ででも、当然ネットでも買える一般品が中心です。わざわざ来店しないと買えない商品はまず無いのです。

その故、国内から、海外から未だ日本未上陸や日本製ながら海外ラグジュアリーブランド製品を製造しているんメーカーや工場を探し、百貨店のオリジナル商品を製作するしか策は無いのです。まさに百貨店PBの復活です。こういうと百貨店マンは99.9%顔を顰めます。なぜならかつて百貨店は他店との差別化政策として大量のPBブランドを獲得あるいは製造した時代があり、そのほとんどが大量在庫を残し大赤字だった苦い経験があるからです。

従来はナショナルブランド製品と同レベル・同テイストで安価な上代が基本のPBか、食品などは海外有名ブランドの独占販売だけでした。結果は拡販しないのが大前提でしたから大量の在庫で失敗したのです。唯一伊勢丹のana suiだけが拡販し成功しましたが、現在は無くなってしまいました。

しかし、この度のPBは他店との差別化では無く、自社ネット販売との差別化なのです。しかも大量生産による上代を抑えた商品化と違い、少量、売り切り御免の高級品制作なのです。1000円のTシャツを1000枚売るのではなく、10万円のTシャツを10枚売ることを目指すのです。売れたらそれで終わりで追加生産はせず、次の商品展開を行うのです。

基本的には定番が主体になるでしょうか、世界的な一流デザイナーと提携するか、日本の若手デザイナーのインキュベート機能として制作するかのコンバイン型が理想でしょう。メーカーが自社サイトでも販売している商品をわざわざ店頭に並べても、消費者が喜ぶとは思えません。ましてや、ビジネスになるとは到底思えないのです。

一流の素材で一流の工場、一流のデザイナーが創る限定品。これが百貨店本来あるべき姿のMDです。セーター1枚とってもエルメスの工場でモンゴルの白カシミアの1番糸を使い、ラフシモンズがデザインしたカシミア100%500gの18ゲージのセーター、35万円なら100枚なら即完売でしょう。

シャネルの靴を作っているベネチアのBALLIN社で百貨店のオリジナルシューズ受注会を行ったり、cesare attoliniのスーツオーダー会を開催したり、世界の一流品の受注会ならマス商品と一線を画します。シューズは1足30万円、スーツは1着90万円です。上場企業の役員だけでなく投資家、医者・弁護士・政治家と従来の顧客以外でも、若く新進気鋭の上昇志向がある消費者なら必ず興味を引くアイテムです。

同時に祇園丸山の弁当を竹虎・渡辺竹清の竹籠弁当箱に入れ、一日10名様分だけ受注予約で販売したり、神楽坂懐石料理石川の席を年間で抑え販売する、など百貨店ならではの職へのこだわりも必要でしょう。フランスの一流ワインメーカーと協力し、wネームのワイン制作も良いかもしれません。1本10万でケース(24本)売りなどは好事家の収集品として人気に為るでしょう。

今一度、百貨店でなくては出来ないモノ造りが求められているのです。消費者は安くて便利で何処ででも買えるものを百貨店に求めているのではないのです。

食品からファッション、雑貨にリビング関連まで、自社開発が難しいアイテムも有ります。それらのアイテムはそのアイテムで世界一流品を取り扱えば良いのです。現在の百貨店は意外と世界の一流品を扱ってはいません。

しかし、他業種では扱えないラグジュアリーブランドから老舗といわれる個人商店。はたまた各取引先の先にある工場や工房、人間国宝から世界に誇れる職人達まで百貨店の隠れた財産として持っています。更にはどんな業種でも垂涎の的である超富裕層は、お金をいくら積んでも手に入れられるものではありません。

これらの財産を活用する事で、高くても永く使える、使い易い、デザインが素敵、な商品であれば間違いなく全ての消費者に受け入れられる事は間違いありません。

百貨店は現在消化仕入全盛で、リスク回避を唯一の目標にしています。その為用の無いバイヤーを一律、経験も、能力も、取引先との関係も、無視して削減しようとしています。全く無駄です。彼等彼女等のちからを今こそ活用すべきです。(無能な輩は要りませんが、経験無き若手はもっといりません)

百貨店経営層は今こそ「百貨店斯くあるべし」論を積極的に闘わして欲しいと思います。

コロナ禍後の世界№6-2

コロナ禍後の百貨店はどう立て直していけばよいのでしょう?

コロナ禍が終焉しても一般消費者の購買は今まで以上にネットに移って行くでしょう。コロナ禍下で百貨店の主顧客層であった中年層はネットの利便性を充分知り、そのショッピングの楽しみ方も広く理解されたからです。

また、メーカーは百貨店に店舗を構えても百貨店自体の集客力が激減し集客できない現状下で、従来型店舗=15坪・販売員5名・商品在庫2000万円・売上200万円/月では全くの赤字になっています。そしてコロナ禍を口実に、従来ではとてもできなかった百貨店内不採算店舗(数百店舗~千数百店舗)の整理を一挙にこの2年間で断行してきました。 その結果、百貨店の実店舗ではフロアー丸々空いてしまったり、虫食い状態は当たり前の状況で、さらに客足が百貨店から遠のく要因になっています。特に地方の消費者は相次ぐ百貨店の破綻や商業施設の閉鎖で買いに行く場所を失い、必要に迫られネット販売に頼らざるを得ない状況下に置かれたことも大きな要因です。

百貨店では、大手メーカーがどんどん不採算店や不採算ブランドを整理してしまい一流がだめなら一流半、それでもだめなら二流でも売り場が埋まればよいとばかり、無節操に条件さえよければどんどん取引先を取り換え、結果MDは魅力を低下し続けてしまい、結果消費者が離れていく悪循環に入りつつあります。食品のみが集客と売上をかろうじて守っていますが、集客の低下を理由に他移転をチラつかされ、百貨店の利益率はどんどん下げられています。

また少しでも売り場から利益を出そうと場所貸し化=賃貸化も試していますが、華々しくデビューした超一等地の銀座SIXでさえ高い賃料に見合わず撤退するブランドが後を絶ちません。場所貸し化が成功するはずの都心の一等地ですらこの有様ですから、地方のシャッター通りに位置する百貨店ではなおさら立ち行くはずがありません。

こんな状況下なので、ネット販売へのシフトとか強化とか掛け声ばかりが威勢良く聞こえてきますが、その実態は通販事業カタログをデジタル化したくらいのレベルで、賞味期限の長い食品ギフトを展開するレベルか、取引先HPへリンクを張るぐらいが関の山です。伊勢丹が300数十億円かけて仮想空間へ出店をしましたがゲーマー向けでとてもショッピングの実用性はまだまだです。

メーカーも同様で、ネットを理解している役員があまりにも少なく、いても従来のシステム管理担当で新しいネット販売戦略やソフトの活用までは全く手つかずの状況です。大手のソフト会社は法外な料金でここぞとばかり同じシステムをあちらこちらに売りまくっており、百貨店やメーカーはいい餌食になっています。

そして百貨店もメーカーも戦略的なネット販売を構築する前にバラバラと開発してしまった顧客システムや商品管理システム、在庫管理システムなどの一本化に四苦八苦状態で、とてもネット先行のファストファッション各社には追いつくどころか、新しいシステム導入を進め、実店舗との連動を済ませたユニクロやZARAの背中すら見えないのが現実です。ましてや需要予測による生産体制構築や顧客の検索記録から消費ニーズを予測するレコメンド機能、在庫移動管理など次世代ソフトの活用策はユニクロより100年遅れているのが現状です。

百貨店はネットの有効性や可能性に本当に気付いているのでしょうか?

ネット販売を行うためのシステム構築や受注システムに連動した在庫管理、配送管理など相当額の投資が必要になるのです。販売の仕組みを作る上で重要なことの一つに在庫をメーカー管理か、さもなくば百貨店管理か、というのがあります。メーカーは自社HPで販売できれば利益率が良くなるので売れ筋商品を百貨店在庫にはしたくないのです。百貨店はそれを防ぐためと売れてから商品移動をしていては消費者に届くまで時間がかかりすぎるので在庫を自社管理下にしたいのです。このような現実を前に経営層はネットの全貌を理解しておらず、システム担当は膨大な費用の申請に尻込みし、雀の涙ほどの予算でできることのみをせっせと行い、結果継ぎはぎだらけで運用しにくく且つ新しいニーズには対応できない無用の長物だけが残る羽目になるのです。

それより重要なのは百貨店がネット時代の実店舗とネット販売の両方をどうしていきたいのか、という戦略が全く組まれておらず、ただ対処療法的に「売上を増やす」目先の戦術に無駄な資金と時間を投資しているだけという点です。本来なら「消費者はこれからどういう購入スタイルを採るのか」「自社の実店舗とネット販売の強みと弱みはなにか」といったマーケティングの大原則すら行われていなかったり、理解していなかったり、戦うための準備が全くできていません。まずは新時代消費に向けて、現在の新しい技術やノウハウを理解し、自社の顧客が何を望んでいるかを確実に把握し、そしてはじめてその対応策を戦略レベル・戦術レベルに落とし、タイムテーブルを組み実現させていくことが不可欠になってくるのです。

現在の百貨店最大の課題は実店舗でもネットでも「集客」です。

1億円の指輪を買い求めるお客様から3足1,000円の靴下を買いに来るお客様まであらゆる階層のあらゆるニーズに対応すべく今までMDを構成してきました。その中でもちょっと高級、大衆向けなどの差はありましたが、概して中産階級といわれた大多数のお客様のニーズ対応を主眼としてきました。

そして常に時代の人気ブランドやアイテムなどの商品を提供してきましたが、消費者のライフスタイルの多様化や社会環境の変化で消費に対するニーズや傾向は時代の変化とともに大きく変わりました。消費のチャンネルが多様化し、小売りの業種業態も増え、購入手段が画期的に選べる時代に、3足1000円の靴下をわざわざ買いに来る消費者は最早いなくなったのです。良いものが安くなったからといって百貨店の期末バーゲン目当てに来る時代は既に終わっているのです。 同時にあらゆる顧客に満足を提供する時代も既に終わっているのです。

私は前から「消費者ニーズの多層化」を話しています。※1   消費者は高級品なブランド品も買えば安価なユニクロも買うといういくつかの顔を持っているのです。ですから、従来のマーケティングの富裕層だとか一般層だとかの収入分けや、カジュアルだのエレガンスだのテイスト分けの売り場展開も消費者は気に入らないのです。ましてや年齢分けなどは消費者を愚弄している以外の何物でもありません。

それよりは、消費者のライフスタイルや趣味嗜好にあった商品を提供するべきなのです。全身シャネルも全身ユニクロもダサいと知っていて、自分なりのファッションを楽しんでいるのです。自分よりファッションセンスの良い友達やプロの販売員の言うことは神の言葉のように盲信しますが、昨日まで大根を売っていて今日は衣料に派遣されてきたなどというノンプロの言葉など鼻にも引掛けないのです。

百貨店に消費者を呼び戻すためには、今一度百貨店のMDを見直すことです。ターゲットを見直すことです。

次回はそのMDについて話をしたいと思います。

※1拙書 「お客様、閉店です」繊研新聞社刊

コロナ禍後の世界 №6-1

コロナ禍で苦戦した小売業は今後どうなるでしょう?

小売業は一部の業種を除いてコロナ禍による人流抑制で売り上げが減少したかのような錯覚がありますが、コロナ禍前から大きく販売は落ち込んでいたのです。 原因は新たな新興勢力であるファストファッション、それも革命的な販売手法であるネット販売を強力に推進してきた、ユニクロ、ZARA、H&Mなどの低価格多品種型メーカーの価格競争に同じ低価格路線を選んだ無謀さ、店頭販売での売上獲得に固執し、口先だけのネット販売でほとんど真剣にネットビジネスを研究・検討してこなかったことなどが挙げられます。

しかし一番の原因は消費者のニーズを読み間違え、新しい時代に対応するモノ創りや販売手法を全く開発せず、国内の重要が減っても、インバウンドがあれば何ら問題はないと、自ら革新しなかったことが最大の原因です。

コロナ禍のせいにされてきた売上不振は、実はそれが根本的な原因では無く、不振をより鮮明にしただけのことで、実はもっと深い処に原因はあったのです。ですからコロナ禍が終焉しても、この業績不振は簡単に取り戻すことはできないのです。コロナ禍が終息すればまた元のようにインバウンドが復活し、経済が良くなるという方は多いです。確かに経済的には良いでしょうが、コロナ禍前のようなインバウンドのみに執着した売上構成は危険そのものといえるでしょう。インバウンド客を狙ったビジネスモデルが成立するのは一部の観光地と大都市のみで、地方やインバウンド客の興味を引くことは難しいでしょう。

従来衣料品は大量生産・大量販売が基本で、どんなに売れても色・サイズのバランスで必ず売れ残りが出るのです。それでも常備3割、セール3割、残品廃棄でも35%もの利益が出ていたのですが、ファストファッションが進出してきてから上代が大幅に低下したこと、セールが売れなくなったことで一挙に収支が悪化したのです。

消費者が断捨離とか環境に優しいとか、健康に気を遣うといった新しい消費動機で購買を決め、単に流行を追うだけの生活とは一線を画すように為ったことをメーカーは理解できませんでした。消費者はとりあえず安いから買うのではなく、安くても必要なければ買わない、という変化を小売業者やメーカーは認識できていませんでした

更には自分だけの為でなくもっと広い視野で家族や友達、地域や地球環境問題にまで関心を寄せ、健康に気を配り、出世より家族と一緒に入る時間を大切にし、他人との比較を人生や幸福の尺度にするのではなく、自分の生き方や信念、価値観に基づいた生活を送りたいと考えているなどとは全く理解していなかったのです。  

消費者は、化学素材、不当労働、子供労働、無駄、といったキーワードにも敏感になり商材や生産工程にまで気にし始めています。動物虐待や絶滅危機素材などは徹底して排除は当たり前になりました。毛皮よりフェイク、プラスティックボタンより貝ボタン、人工着色より天然染料などがモノ創りの基本になります。

消費者は買い方もネットがベースに為りました。消費者は試着しないと買わない、手に取って確認しないと買わない、販売員から勧められ安心する、などと言い,ネット販売に消極的な百貨店マンは良く見かけますがそれは間違いです。ネットのほうが商品量も色もサイズもフルラインで見えるのですから。しかも百貨店をはじめ実店舗販売の小売業は返品を嫌がります。サイズ交換や色交換もわざわざメーカーから取り寄せなければできないのですから、無理はないですが消費者からすれば不便極まりないですし、ネットの返品に慣れた消費者からすれば、時代遅れのサービス欠如にしか映りません。

ネット志向の小売店やメーカーは簡単に返品・交換をできるようシステムや配送体制を粛々と整備してきました。コロナ禍で普段ネットを利用しない年配客までネットに慣れ親しんだ結果、今や何の抵抗も無くネット購入を行っています。特に近所に店舗が無い地方ではなおさらその便利さに嵌っています。

それ故従来の実店舗でしか販売できない小売りは当然つぶれます。またネットで販売している商品を店頭で販売してもあまり意味がありません。わざわざ来店する意味が無いからです。ネットで販売する商材を仕入れても、メーカーのHPを見た方が掲載商品の幅も奥行きもサービスも圧倒的に多いからです。

百貨店の中にユニクロやZARAなどを導入しているケースを良く見受けますが、家賃収入以外は何の効果もありません。百貨店は集客効果を期待していますが、ユニクロやZARAに来店する消費者はそれだけで帰って行ってしまうからです。しかも不動産化は一旦景気が悪くなるとテナントは簡単に撤退してしまいます。

安易な場所貸し化ができる実店舗は大都市以外では無理ですから、安易に不動産業に業態を変えてしまうことは如何なものでしょう。コロナ禍では代表的な不動産化であった銀座sixや家賃化した百貨店各店舗は大苦戦しました。集客できない店舗ではテナントはいとも簡単に撤退してしまうからです。今や日本橋や新宿、渋谷といった伊藤地に立地する百貨店ですら空き地が目立つようになっています。

日本橋高島屋には減ったといえ未だ600人からの正社員、400人のパート社員、率を落とす原因の派遣社員が1500名ほど勤務しています。一方二子玉川を運営するデベロッパーの東神開発は全員で50名足らずです。デベロッパーですから完全家賃収入です。結果、百貨店は不動産化しても多数の余剰人員を抱えているので利益は人件費に採られてしまい利益は出にくい構造なのです。

そんな訳で各百貨店は必至で人員削減に邁進して入るのですが、どの業界も同じように優秀な社員は早々に自社に見切りをつけますが、ダメな社員ほど会社にしがみ付き、生産性は急速に落ちていくのです。しかも消化仕入※1のせいでバイイングする必要がなくなった為、バイヤーや熟練社員から首切りが行われます。結果、経験も能力も無い若手が派遣社員やパート社員の上で采配を振るうのですから、顧客サービスも糞もあったものでは無くなってしまうのです。

ではどうすべきなのでしょう?百貨店などは、実店舗をどのように活用させるべきなのでしょう?次回はこのテーマでお話します。 

コロナ禍後の世界 №5

コロナ禍が終焉すれば、世界は元どうりと考える人は10数%、ある程度しか戻らないが40数%、戻らないが40数%で大多数の人が元の世界には戻れないと考えています。(2022.01.26日経新聞)

大多数の人はこの2年間のコロナ禍生活で既成の価値観や常識、生活の基本が根底から変わりました。ある人は家族との生活を、ある人は人生を、ある人は仕事自体の将来性を考えたことでしょう。

結局どの人も今まで当たり前と考えていた生活自体を見つめ直す結果となったことは間違いありません。

今まで、より便利に、より安価に、より快適に、と進化してきた文明はいつの間にか地球環境を汚し、自然を破壊し、人生の価値基準を金儲けだけにしてしまいました。

結果、物質的には豊かな社会に為りましたが、そのために本来不必要な犠牲を多大に払っている事にコロナ禍は気付かせてくれる大きな機会となりました。

他人事であった二酸化炭素排出問題や海洋汚染問題が身近な生活に直結していることを、コロナ禍で時間に余裕ができた人々は否が応でも考え始め、世界が一丸となり脱炭素化へと大きく舵を切り、今までの産業基盤を大きく変更せざるを得ない状況に為り始めています。

利便性を求めるあまり、地球規模での環境汚染を引き起こしている事にようやく目を向ける結果となったのです。

同時にIT技術の急激な進化も社会基盤の抜本的変化を促しています。新しい技術は産業構造のみならず、単なる技術の枠を超えて生活自体の変化を推し進めています。単純に便利というのではなく、機能を利用する事により時間的、空間的に無限の広がりを与えてくれるという点では、利用しない手はありません。

今まで通販利用が主体だったネット活用策は「リモート」の普及で生活をさらに一変させました。通勤しないで仕事をするなんて誰も思いもよらなかったと思います。

一部の企業で行っていたTV会議レベルではない一般会議や業務推進が、画面を通して普通に行われることは、どれだけ効率良く、また、ストレスなく、働けるか考えるだけでワクワクします。

一方で効率のみを追求した産業構造では、危機管理という認識が無いことも判明した結果、流通における危険性という課題が大きく持ち上がっています。

企業は利益最優先で、全ての日用品を始めとするほとんどの産業が、人件費が安い(と思い込んでいる)中国に生産基地を移すか仕入れをしていたため、バブル崩壊時のトイレットペーパーが街から一斉に消えた状況を再現してしまったからです。

日本人は喉元過ぎれば何とやらで、生活に不可欠な基本商品が自国で生産されていないということに全く危機感がありませんでした。

何かあれば輸入が止まるという事にバブル崩壊で嫌というほど経験しているにもかかわらず、特に医療・衛生商品は生活に密着しているにもかかわらず、全く危機感を持っていませんでした。これが衣料なら影響はありませんが、エネルギーだったらどうなるでしょう?

それどころかウィルス対策の薬の開発ができないという現状に愕然としたものです。ウィルス薬開発は非常に資金が掛かるので、目先の利益しか見ない我が国の経営体質がそれを許してはいなかったのです。

誰もが医療分野は間違いなく一流国家と自負していたのに、保健所が未だFAXだとか、製薬会社が自社開発機能を放棄し、儲けの大きい特許の切れたジェネリック薬販売に血道をあげているとは知らなかったでは済まないのです。

噂からトイレットペーパーや消毒液、マスクにおむつまであっという間に流通から消えてしまい、必要なものが買えないという苦痛を人々は実感し、危機対策が政府任せではいけないことにも気が付きました。一流と思っていた経済が実は二流以下だったこともばれてしまいました。

特に経団連は今回の危機に対して何ら構成企業に対して明確な方針の打ち出し一つせず、ただおろおろしていただけでした。さらには日立の社長などは「リモートは効率が悪いから全員元の通勤体制に戻す」とまで言ったほど、先どころか時代が全く読めていない状況でした。国がリードする体制になく、企業も同じということはかなりショックな事です。

現在コロナの抗原検査キットが品薄で手に入らない状況が続いています(2022.01.27現在)。政府が買い取り保証を行いやっと企業も重い腰を上げ増産体制に向かっていますが、休日を返上しての24時間体制を採った企業は皆無であります。

急に人員体制が取れないとか、マスクの時と同じで生産ラインを増やしても、いずれ落ち着いたら過剰生産化してしまうのでライン増設はしないというのが企業の本音であります。企業は常に冷静に利益の事しか考えないものです。

一般の人もコロナに罹ったらしいという疑いなくして検査しても制度が悪く、陰性になった人が実は陽性という事実が30%もあるという情報を知らず、やみくもに検査して安心してるのが現状です。結果、本当に必要な病院や検査場に検査キットが不足するという事態すら招いているのです。

コロナ初期に、小池都知事や二階幹事長がコロナ禍の元凶の中国にマスクや防護服を配って、悦に入っていましたが、すぐに国内でマスクが不足し大問題に為りました。当の中国では日本向けのマスク工場を接収して潤沢に在庫があるといのに・・・・。選挙向けのアピールをしたパフォーマンスの責任は結局庶民が割を食ったのです。

今回のコロナ禍に関してはマスコミの責任も大きいものがあります。人流抑制ばかりを取り上げ、規制に背くものは悪とのキャンペーン一辺倒でした。飲食業をはじめとする人流が途絶えることで生活が成り立たない事業者が出始めると、今度は一転、画一的な政策ではいけないと手の平を返します。検査することが最重要で、検査数を増やせ増やせと煽り、検査数が増えた結果感染者数が増加した結果病床が逼迫すると今度は一般病棟での治療ができないと煽ります。基本は重傷者を最優先すべきなのに、画一的視点でしかものを見ないのがマスコミです。

問題はコロナ専門対応病院の医療が逼迫しているのは、単にベッド数ではなく、医師や看護師の不足が根本問題なのです。しかし、一般の病院に居る医師たちは全くコロナ医療に関係しておらず、何ら協力体制に組み込まれてはいないのです。医師会は補助金だけ取り、なんらこの2年間医療総動員体制を組もうとはしてこなかったのです。

このように、政治以外の民間諸団体は政治と違ってきちんと対応してくれるものだと私たち一般人はなんとなく思っていましたが、既得権益を守ることが目的の時代遅れの団体では時代に対応できないことが次第に一般人にも気付くように為ってきています。

こんな日本がコロナ禍が終焉すれば元に戻ると考えている人は、既得権益側の人か、よっぽどの〇〇でしょう。

今回のコロナ禍が終焉した時、私たちは政治や経済が二流あるいは三流で、機能不全に陥っている事を忘れてはいけません。どうも私たちは喉元過ぎればなんとやらで忘れてしまう傾向が強いですが、今回ばかりはしっかり今後の日本の方向性をきちんと見守らなくては本当の3流国になる日は遠くありません。

コロナ禍後の世界 №4

最近、面白い記事を読みました。

「IT化が進捗すると工場のロボット化が進み、人々は職を失うという従来の説は間違っているのではないか」

というものです。実際、IT化を進捗させロボット化を推進してきた企業の業績が上がり、結果業容拡大のため人員を増加させたという調査結果があるそうです。

コロナ下でも利益を増やした企業は軒並み人員増だったそうです(2022.01.26日経新聞)。思わず耳を疑う説でしたが、読み進めるうちに「そうかも」と思い始めました。

私たちは工場での生産ロボット化と一般事務の効率化を、ともすると同じ基準で論じてきました。

日本の大手企業は勿論のこと、中小企業でも効率化のための技術開発=ロボット化はかなりのレベルで進んでいるのです。大量生産の手段としてのロボット化から、人手よりもより正確でロスの無い生産体制としてロボット化は世界水準より上だといえるでしょう。

その他にも現在手仕事で作業されている業種も沢山ありますが、機械化=ロボット化を導入すれば効率化が間違いなく図れるものは数多くあるはずです。

スーパーやコンビニなどのレジは間違いなく機械化されるでしょうし、薬品検査などの手作業も効率良くなるはずです。衣料の縫製もいずれ全自動化は可能でしょう。

しかし、手作業で仕事を進めている企業の多くは零細・中小企業でロボット化の設備投資にはなかなか難しいものがあるのも事実です。

農家などでは農耕器具のロボット化やロボット管理の全天候型ハウスがもっと普及すれば生産性は飛躍的に伸びることは間違いありませんが、初期投資が大きく、後継者問題や生産量と価格のバランスなど様々な問題があり、なかなか進捗しないのです。

町工場では機械を導入しても、その機会をメンテする人材不足や機会を動かす労働力不足が通年化しており、やはり新型機械の導入がためらわれているのが現実です。

しかし、ロボット導入化で他社では真似のできない製品や、精度が安定して高い商品を生み出せる企業では業績はどんな時でも右肩上がりなのです。

このように導入までは数々の問題が存在し、簡単にロボット化というのは一部の大企業でしか無理と思われています。しかし、現在曲がりなりにも機械化=ロボット化が進んでいる業種は、①足らない労働力を補う②効率化による生産性向上を目的に確実に改革を進めているのです。故に、ロボット化で効率良く生産性が向上すれば、企業の利益は確実に増え、結果企業は業容拡大に走るというのは十分理解できます。

その為に政府がロボット導入支援基金などを創設し、積極的にロボット化を国策として推進すれば、日本の製造業は世界を相手にまだ十分対抗できる製品力と価格を持つことができると思われます。

そうしてみると日本の企業で一番生産性が低く、ロボット導入化が遅れているのは後方部門や営業部門として、人が中心に活動する部署だと気付きます。

我が国のどの企業も働かない40~50代を多く抱え、働き世代の30代の足を引っ張っています。

高度成長期のように、企業が必ず毎年拡大していく時期ならば必ず昇級でき、仕事もどんどん上級に自然となっていきましたが、安定成長期に入った現在では、自分で新しい仕事を積極的に見つけ、自ら学習して新しい技術やノウハウを培っていくという人材以外は取り残され、企業のお荷物になるのは必然といえるでしょう。

彼らは革新的なことをやって失敗することを極端に恐れ、今まで通りに業務を進めることがベストと考える結果、新しいチャレンジはことごとくこの中間管理職レベルで潰され、従来通りの、効率化より慣れた手仕事を好むのです。

この状況下では会社と組合が一体となり、くだらない労使協定などを結んで安穏としている余裕などあるはずがありません。

IT時代の意味と意義、可能性と新しい使い方やビジネス化の種が山ほど埋もれているにもかかわらず、始めから拒否反応を起こし、若い世代にどんどん仕事を奪われ、企業内で居場所がなくなっているのです。

今こそ、PCを使いこなすための教育や、ITの基礎理論や新技術教育を行い、無駄な人員を有効活用させる為の行動を起こすべき時なのです。

どんな企業でも無駄に遊ばせておく余裕はないのです。特にIT業界は新しいソフトや技術が日進日歩で進むので、基礎から応用まで専門知識が求められます。再教育を拒んだり、成績が悪い人材はそれなりの部署に降下させるのもしょうがないことです。とても高級を払い続けることはできないからです。

故に、企業から所謂中間管理職を除き、手作業を機械化すれば今までの人員の1/3以下で業務は支障なく遂行るのではないでしょうか。また、減点制度ではなく加点主義で企業を運営したら、生産性は間違いなく上がるのではないでしょうか。

企業はよく「減点主義でなく加点主義」だといいますがPDCAを見ても加点主義で運営されてる企業は殆どないのが日本の現状ではないでしょうか。それは、やはり中間管理職がきちんと部下の仕事を見ておらず、自身の職務を全うしてないからに他ありません。

上から指示が出ると企業は人員削減を行いますが、あくまで数字合わせで人員を削るのではなく移動させるだけで、会社全体でみると人員削減はできていないのです。それどころか却って人員削減された部署は契約社員や派遣社員などを入れ、結果増員になっているケースは数多く見受けられる実情です。

リモートワークが増えると困るのはまさにこの中間管理職層です。リモートに反対するのは決まってこの層で「管理ができない」という言い訳を言います

「目の前に座っているだけで仕事をしていると安心し、目の前に居ないとさぼっているに違いない」と考えるのでしょう。その為、仕事の仕方も従来のやり方ではなく成果型でないと管理などできるはずが無いのです。

今までのように昼間はパソコンで遊んでいて、終業間際になると「さあ、残業だあ」と張り切る自分の姿を投影しているからに他なりません。明確に仕事を与えられないのは上司の責任範囲なのです。

IT化はいろいろな問題を私たちに投げかけてきます。今までのやり方、考え方といったものは当然、仕事自体の組み上げ方、終了期限の設定、評価項目の設定など従来にない項目を検討・設定していかねばなりません。今までのようなやってもやらなくても変わらないような仕事内容や進め方は、無くさなければなりません。これは日本型経営を根底から考え直す良い機会だと捉えるべきです。

コロナ禍後の世界 №3

このコロナ禍がもたらした大きな災いの一つに人流の阻害があります。

グローバル化した現代において「人の流れが止まる」という想像だにできなかった事態は、各方面に多大な損害を与えました。このことは今まで経験したことのない自由な往来のできないという不自由さのみならず、経済ダメージは、観光客であるインバウンド顧客激減による損失と同時に、仕事で、特に労働力として来日する人々さえ来日できなくなっているという隠れた大きな問題を孕んでいるのです。

コロナ禍による人流制限により観光業のみならず、農業や建設業、製造業に商業全般に至るまで大きな影響を受けてしまいました。営業時間を縮小せざるを得なかった飲食業は、酒類の提供時間も限定されたので全滅に近い状況でした。物流業は仕事は増えて元来からの人手不足でパンク状態です。観光・旅行業は言わずもがな全滅です。オリンピック景気を当て込み、増産されたホテルは廃業・倒産が後を絶ちません。タクシー業界も同様です。

コロナ禍前からインバウンド客頼みであった小売り・流通業界は完全に息の根を止められ、特に地方では閉店ラッシュが続いており、もはやニュースにすらなりません。

やはりコロナ禍前から海外労働者に頼っていた農家では、「実習生」と称する季節臨時労働力が海外から入国できず農作物の収穫に支障をきたしたり来年の作付ができずにいて、単に今年だけの問題に留まらない大変な状況下にあります。また同じように海外労働者に頼っている工場では、労働力が確保できないために稼働率を大幅に落としたり、注文を断らざるを得ない事態に陥っています。どちらも零細・家族経営の小規模経営が厳しいようです。

臨時労働力である、技能実習生・特定活動者・資格外活動者は2017年で外国人労働力127万人の内、45%強の58万人居ました。2019年では外国人労働力は165万人に増加しているので約75万にと推定される臨時労働力が日本から失われた計算です。

注: 技能実習生 (農業・工業・流通などの分野で日本の技術・技能を実習にて習得を目的とした労働力)  : 特定活動者(看護師・建設労働者などの資格獲得を目的の労働力) :資格外活動者(留学生のアルバイト・1週28時間以内)

我が国では、政府も民間もコロナ禍が終焉すれば以前のようにインバウンド客さえ戻ればこの国は大丈夫とばかり、のほほんとしています。しかし、本当に大丈夫でしょうか?いやそれ以前にコロナ禍前に戻るのでしょうか?

コロナ禍は大打撃を我が国に与えましたが、IT化の絶望的な遅れ既得権益層のいかに多いこと中途半端な労働力確保政策、などが露呈したことは多いなる成果でしょう。人流の抑制で滞った経済はIT化の推進で大きく修正できるどころか、先進国で一番遅れているIT化を一挙に進める良い機会でもあります。それは既得権益層が牛耳っている古いやり方、時代遅れの無駄だらけのやり方を粉砕し、新時代に合った効率的経営をもたらしてくれるはずです。

長時間満員電車に乗る痛勤や、膨大な紙の資料を読むだけの会議、ハンコを貰えず滞る資料、こういった非効率こそ日本企業の生産性の低さの根源ではないでしょうか? メールで送付すれば全て終わってしまう資料、事前にその資料を読み、会議では質問と決定するだけにすればほとんどの会議は1時間以内で終わるでしょう。リモートにすれば1時間もかけて体力を消耗する必要もなく、共稼ぎの方は子供の預け先に悩んだり費用をかける必要もなくなり、家族で過ごす時間が増え、人間らしい生活が送れるはずです。これこそ新しい資本主義の在り方で、株主優先主義の古い考えのトップの居る企業とは一線を画して企業評価も上がるというものです。

また、頑なに拒み続けている移民政策も、難民想定ではなくちゃんとした技量保持者から段階的にでも良いですし、国立の技能訓練支援を行い育てても良いです。来日の為の費用一式や母国での日本語教育、妻帯者帯同者向けの宿泊施設の運営など国」地方時自体がやれば優秀な労働力が大量に安定的に確保できることは、コロナ禍のような非常事態に落ちいても健全に機能するはずです。

今回はコロナ禍という天災?人災?により起こされた人流制限ですが、我が国では先進国で例を見ない少子化が進んみ、また都市への集中化により地方では65歳以上の高齢層が50%以上取り残された限界集落は、20,372か所に上がっており、過疎地域の集落の32%を超えました。このままほっとけば消滅することはほぼ確実という2618か所も存在してます。

圧倒的なスピードで進む少子化や高齢化に対処するには、我が国の事情に合った新・移民政策を打ち出すことと、時代に合ったサービスの開発やITを理解できない40歳から上の世代に対してIT再教育を施し、不足するIT人材の補充として活性化させるなどを行い、地方に在住しても職が得られるような、根本的な社会構造から社会機能、それを動かす人々の価値観などを変える必要が不可欠です。まずは国家は明確な移民政策を提示するべきです。

IT技術を駆使すれば、地方の過疎地域ですら都会と同じサービスを受けられ、仕事も同じくできるはずです。その為には何度も言いましたが、政治の毅然とした方向性の提示と財界による具体策と実施スケジュールの明示が不可欠なのです。単に選挙向けの人気取りで現金をばら撒いているだけでは、政治として失格どころか、論外なのです。

逆に都会より無人の自動運転バスやパソコンによる遠隔診療、毎回病院へ行かなくても貰える処方箋、全国に存在する郵便局を活性化した過疎地域の見守り業務、など制度として地方から活用できることは山ほどあるはずです。

それは新しいビジネスの仕組みだけではなく、新しく危機管理という概念を考慮に入れた社会の仕組みを考えたものでなければなりません。そして人流がなければ商売にならない業種や業態は安全を基準として早急にデジタル化やロボット化など人的作業を代替できるIT技術を取り入れる必要があります。

スーパーマーケットやコンビニなど、サービスより商品価格や利便性を売りにする業種は今でもIT技術導入による人的コストの削減に余念がありませんが、接客サービスを売りにしてきた百貨店は如何したらよいのでしょうか?遅まきながらネット販売へ我先にと雪崩を打つようにシフトすべしと声高に叫び、なりふり構わずホームページ制作に勤しんでいます。しかし、果たしてこの政策は正解なのでしょうか?

そして、コロナ禍が終われば元の世界が戻るのでしょうか?

© 2015 Coup d'etat CLUB.