コロナ禍後の世界 №3
このコロナ禍がもたらした大きな災いの一つに人流の阻害があります。
グローバル化した現代において「人の流れが止まる」という想像だにできなかった事態は、各方面に多大な損害を与えました。このことは今まで経験したことのない自由な往来のできないという不自由さのみならず、経済ダメージは、観光客であるインバウンド顧客激減による損失と同時に、仕事で、特に労働力として来日する人々さえ来日できなくなっているという隠れた大きな問題を孕んでいるのです。
コロナ禍による人流制限により観光業のみならず、農業や建設業、製造業に商業全般に至るまで大きな影響を受けてしまいました。営業時間を縮小せざるを得なかった飲食業は、酒類の提供時間も限定されたので全滅に近い状況でした。物流業は仕事は増えて元来からの人手不足でパンク状態です。観光・旅行業は言わずもがな全滅です。オリンピック景気を当て込み、増産されたホテルは廃業・倒産が後を絶ちません。タクシー業界も同様です。
コロナ禍前からインバウンド客頼みであった小売り・流通業界は完全に息の根を止められ、特に地方では閉店ラッシュが続いており、もはやニュースにすらなりません。
やはりコロナ禍前から海外労働者に頼っていた農家では、「実習生」と称する季節臨時労働力が海外から入国できず農作物の収穫に支障をきたしたり来年の作付ができずにいて、単に今年だけの問題に留まらない大変な状況下にあります。また同じように海外労働者に頼っている工場では、労働力が確保できないために稼働率を大幅に落としたり、注文を断らざるを得ない事態に陥っています。どちらも零細・家族経営の小規模経営が厳しいようです。
臨時労働力である、技能実習生・特定活動者・資格外活動者は2017年で外国人労働力127万人の内、45%強の58万人居ました。2019年では外国人労働力は165万人に増加しているので約75万にと推定される臨時労働力が日本から失われた計算です。
注: 技能実習生 (農業・工業・流通などの分野で日本の技術・技能を実習にて習得を目的とした労働力) : 特定活動者(看護師・建設労働者などの資格獲得を目的の労働力) :資格外活動者(留学生のアルバイト・1週28時間以内)
我が国では、政府も民間もコロナ禍が終焉すれば以前のようにインバウンド客さえ戻ればこの国は大丈夫とばかり、のほほんとしています。しかし、本当に大丈夫でしょうか?いやそれ以前にコロナ禍前に戻るのでしょうか?
コロナ禍は大打撃を我が国に与えましたが、IT化の絶望的な遅れ、既得権益層のいかに多いこと、中途半端な労働力確保政策、などが露呈したことは多いなる成果でしょう。人流の抑制で滞った経済はIT化の推進で大きく修正できるどころか、先進国で一番遅れているIT化を一挙に進める良い機会でもあります。それは既得権益層が牛耳っている古いやり方、時代遅れの無駄だらけのやり方を粉砕し、新時代に合った効率的経営をもたらしてくれるはずです。
長時間満員電車に乗る痛勤や、膨大な紙の資料を読むだけの会議、ハンコを貰えず滞る資料、こういった非効率こそ日本企業の生産性の低さの根源ではないでしょうか? メールで送付すれば全て終わってしまう資料、事前にその資料を読み、会議では質問と決定するだけにすればほとんどの会議は1時間以内で終わるでしょう。リモートにすれば1時間もかけて体力を消耗する必要もなく、共稼ぎの方は子供の預け先に悩んだり費用をかける必要もなくなり、家族で過ごす時間が増え、人間らしい生活が送れるはずです。これこそ新しい資本主義の在り方で、株主優先主義の古い考えのトップの居る企業とは一線を画して企業評価も上がるというものです。
また、頑なに拒み続けている移民政策も、難民想定ではなくちゃんとした技量保持者から段階的にでも良いですし、国立の技能訓練支援を行い育てても良いです。来日の為の費用一式や母国での日本語教育、妻帯者帯同者向けの宿泊施設の運営など国」地方時自体がやれば優秀な労働力が大量に安定的に確保できることは、コロナ禍のような非常事態に落ちいても健全に機能するはずです。
今回はコロナ禍という天災?人災?により起こされた人流制限ですが、我が国では先進国で例を見ない少子化が進んみ、また都市への集中化により地方では65歳以上の高齢層が50%以上取り残された限界集落は、20,372か所に上がっており、過疎地域の集落の32%を超えました。このままほっとけば消滅することはほぼ確実という2618か所も存在してます。
圧倒的なスピードで進む少子化や高齢化に対処するには、我が国の事情に合った新・移民政策を打ち出すことと、時代に合ったサービスの開発やITを理解できない40歳から上の世代に対してIT再教育を施し、不足するIT人材の補充として活性化させるなどを行い、地方に在住しても職が得られるような、根本的な社会構造から社会機能、それを動かす人々の価値観などを変える必要が不可欠です。まずは国家は明確な移民政策を提示するべきです。
IT技術を駆使すれば、地方の過疎地域ですら都会と同じサービスを受けられ、仕事も同じくできるはずです。その為には何度も言いましたが、政治の毅然とした方向性の提示と財界による具体策と実施スケジュールの明示が不可欠なのです。単に選挙向けの人気取りで現金をばら撒いているだけでは、政治として失格どころか、論外なのです。
逆に都会より無人の自動運転バスやパソコンによる遠隔診療、毎回病院へ行かなくても貰える処方箋、全国に存在する郵便局を活性化した過疎地域の見守り業務、など制度として地方から活用できることは山ほどあるはずです。
それは新しいビジネスの仕組みだけではなく、新しく危機管理という概念を考慮に入れた社会の仕組みを考えたものでなければなりません。そして人流がなければ商売にならない業種や業態は安全を基準として早急にデジタル化やロボット化など人的作業を代替できるIT技術を取り入れる必要があります。
スーパーマーケットやコンビニなど、サービスより商品価格や利便性を売りにする業種は今でもIT技術導入による人的コストの削減に余念がありませんが、接客サービスを売りにしてきた百貨店は如何したらよいのでしょうか?遅まきながらネット販売へ我先にと雪崩を打つようにシフトすべしと声高に叫び、なりふり構わずホームページ制作に勤しんでいます。しかし、果たしてこの政策は正解なのでしょうか?
そして、コロナ禍が終われば元の世界が戻るのでしょうか?