新しい時代の小売り業業№4

これからは、AIの普及&自動化の進展で事務や肉体労働の仕事は機械に代替化されていき、一方、集積された膨大なデータを分析したりシステムを守るセキュリティ要員は不足すると言われています。(世界経済フォーラムの推測では2025年度には8500万人の事務職が失業し、9700万人のデータ関連要員が不足)

我が国はかつて製造立国として世界経済第二位まで上り詰めましたが、もはや製造業の工場自体は海外へ移転され、或いは技術指導してきた国々に安い労働賃金で仕事そのものを奪われ、我が国に残されているものは実は僅かしかありません。製品のハードそのものは技術の日進日歩で直ぐ旧型モデルとなり、製造しても売れず値引きしてさえかつてのようには利益を企業にもたらしてはくれなくなり、結局は企業のお荷物となり海外企業に売却されてしまうことが多くなったのです。

企業はその為人員整理という経費節減策で対応してきましたが限界に近づいていたところ、今度のコロナ禍で消費者のニーズやライフスタイルは完全に変わってしまいました。コロナ禍が終われば元に戻ると言った方もいらっしゃいますが一過性で戻るだけで基本的には生活価値感は大きく変わり、ライフスタイルは千差万別へと分裂していきます。結果従来の製造業に携わる労働力や小売り業は不要となり、大量の失業者が発生するのです。

もはや時間の問題と言われるIT革命により生ずる失業者対策を政府や企業は何か考えているのでしょうか?残念ながら今の政治家や企業の経営層では無理な話でしょう。(前回参照)

2021年度の春の四半期は上場企業の1/4が最高益を獲得しました。それもほとんどがIT機器製造業です。IT機器関連を使用したコロナ関連商材や、他人と非接触の為の自家用車、家庭での閉じこもり消費に関連した商材の製造企業は軒並み黒字を計上しています。その為このまま経済界は何もせずとも経済が復活するとみているようですが、本当でしょうか?

マスク一つ国内生産できず、生活の基本商材のほ とんどを人件費が安いと思い込んでいる中国に工場を移したつけが今まさに回ってきている現実に目をつぶり、未だに中国に新規工場を造ろうとしている大企業は海外生産リスクをどう捉えているのでしょうか?安かろう悪かろうの中国製より、品質の確かな世界的に評価の高い日本製をなぜ造ろうとしないのでしょうか。従来の「中国は人件費が安い」からと思い込んでいるからに他ありません。

それよりIT技術に対応すべく人材育成に費用を掛ける時ではないのでしょうか?

コロナ禍で我が国のデジタル化は致命傷的に遅れていることが判明すると同時にデジタル化を邪魔する規制の多さに驚き、既得権益を守る勢力が如何に多いかも身につまされて知りました。上場する大企業に医師会、各業界の労働組合など既得権益の上にどっぷり漬かり変化にはなんでも反対であります。

政治も同様に国家100年の計を図る人材は居らず、野党に至っては「コロナより桜」と叫んでいたのはつい昨日のことです。どちらも世界の大きな変化を理解するどころか目を向けることさえしません。

世界ではどうでしょう。

アマゾンでは配送部門の70人をコンピュータープログラム関連の社内教育プロジェクトに参加させ、新しい知識とスキルを身に着けさせる取り組みを初め、約9か月の教育ののちに70名をソフト部門に異動させました。給与は旧来と比べ約2倍になるそうです。これは優秀な人材を外部から確保するのがコスト的にも能力的にも難しくなってきたことです。また、機械化推進によりいらなくなる要員を再教育による配置転換で首にする必要をなくすためです。

英国は「生産技能保証」制度を立ち上げました。機械に代替されてしまう食所の方をプログラマーやエンジニアに養成するため労働者の再教育資金として3800億円支出します。受講料は無料で、今から10年、50万人を目標に実施されます。米国は「米国雇用再教育」政策を打ち出し、製造業、環境分野に携わる人材を育成する無料プログラムに11兆円投入します。日本はどうでしょう。政府は勿論、現場で苦戦する企業の経営層に人材の配置転換の為の再教育を施すなどという発想は全く見当たりません。

これからは第5次、6次といった産業革命がすでに叫ばれています。第5次はビッグデータやAIによる最新バイオテクノロジーの融合によるスマートセルインダストリーが始まり、医療・工業・農業・エネルギー産業など様々な分野で活用できると期待されています。また人口問題・食糧問題・資源エネルギー問題・高齢化社会といった現在社会が直面する課題解決策になるうるとして期待されています。

更に第6次は衰退産業である第1次産業が第2次産業である加工、3次産業である流通・など生産者が直接行い、生産者が受け取る利益の向上や産業の活性化が期待されることです。これらは初めは緩やかでもあっという間に達成できる可能性を占めています。第4次産業革命の主役であるIOTやAI技術の進歩は今では予測不能なくら多岐多様に渡り、何にどの様に活用するか無限の可能性を占めているのです。

我々は否が応でもIT化の波に乗らなければなりません。それもサーフィンのように何度も何度も繰り返してやってくる波を乗りこなさなければならないのです。その為には今から準備し、直ぐにでも備えなければもはや間に合わないでしょう。

かつて上海の1年は日本の10年のスピードだ、とよく言われました。それくらい早いのだと。それは大きな間違いだったのです。上海時間こそ世界の標準で日本のスピードは世界の1/10だったという事を今こそ認識し、改革のスピードを官民挙げて邁進しなければ日本は2流国家から間違いなく3流国家、後進国へまっしぐらでしょう。

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