コロナ禍後の世界 №6-1

コロナ禍で苦戦した小売業は今後どうなるでしょう?

小売業は一部の業種を除いてコロナ禍による人流抑制で売り上げが減少したかのような錯覚がありますが、コロナ禍前から大きく販売は落ち込んでいたのです。 原因は新たな新興勢力であるファストファッション、それも革命的な販売手法であるネット販売を強力に推進してきた、ユニクロ、ZARA、H&Mなどの低価格多品種型メーカーの価格競争に同じ低価格路線を選んだ無謀さ、店頭販売での売上獲得に固執し、口先だけのネット販売でほとんど真剣にネットビジネスを研究・検討してこなかったことなどが挙げられます。

しかし一番の原因は消費者のニーズを読み間違え、新しい時代に対応するモノ創りや販売手法を全く開発せず、国内の重要が減っても、インバウンドがあれば何ら問題はないと、自ら革新しなかったことが最大の原因です。

コロナ禍のせいにされてきた売上不振は、実はそれが根本的な原因では無く、不振をより鮮明にしただけのことで、実はもっと深い処に原因はあったのです。ですからコロナ禍が終焉しても、この業績不振は簡単に取り戻すことはできないのです。コロナ禍が終息すればまた元のようにインバウンドが復活し、経済が良くなるという方は多いです。確かに経済的には良いでしょうが、コロナ禍前のようなインバウンドのみに執着した売上構成は危険そのものといえるでしょう。インバウンド客を狙ったビジネスモデルが成立するのは一部の観光地と大都市のみで、地方やインバウンド客の興味を引くことは難しいでしょう。

従来衣料品は大量生産・大量販売が基本で、どんなに売れても色・サイズのバランスで必ず売れ残りが出るのです。それでも常備3割、セール3割、残品廃棄でも35%もの利益が出ていたのですが、ファストファッションが進出してきてから上代が大幅に低下したこと、セールが売れなくなったことで一挙に収支が悪化したのです。

消費者が断捨離とか環境に優しいとか、健康に気を遣うといった新しい消費動機で購買を決め、単に流行を追うだけの生活とは一線を画すように為ったことをメーカーは理解できませんでした。消費者はとりあえず安いから買うのではなく、安くても必要なければ買わない、という変化を小売業者やメーカーは認識できていませんでした

更には自分だけの為でなくもっと広い視野で家族や友達、地域や地球環境問題にまで関心を寄せ、健康に気を配り、出世より家族と一緒に入る時間を大切にし、他人との比較を人生や幸福の尺度にするのではなく、自分の生き方や信念、価値観に基づいた生活を送りたいと考えているなどとは全く理解していなかったのです。  

消費者は、化学素材、不当労働、子供労働、無駄、といったキーワードにも敏感になり商材や生産工程にまで気にし始めています。動物虐待や絶滅危機素材などは徹底して排除は当たり前になりました。毛皮よりフェイク、プラスティックボタンより貝ボタン、人工着色より天然染料などがモノ創りの基本になります。

消費者は買い方もネットがベースに為りました。消費者は試着しないと買わない、手に取って確認しないと買わない、販売員から勧められ安心する、などと言い,ネット販売に消極的な百貨店マンは良く見かけますがそれは間違いです。ネットのほうが商品量も色もサイズもフルラインで見えるのですから。しかも百貨店をはじめ実店舗販売の小売業は返品を嫌がります。サイズ交換や色交換もわざわざメーカーから取り寄せなければできないのですから、無理はないですが消費者からすれば不便極まりないですし、ネットの返品に慣れた消費者からすれば、時代遅れのサービス欠如にしか映りません。

ネット志向の小売店やメーカーは簡単に返品・交換をできるようシステムや配送体制を粛々と整備してきました。コロナ禍で普段ネットを利用しない年配客までネットに慣れ親しんだ結果、今や何の抵抗も無くネット購入を行っています。特に近所に店舗が無い地方ではなおさらその便利さに嵌っています。

それ故従来の実店舗でしか販売できない小売りは当然つぶれます。またネットで販売している商品を店頭で販売してもあまり意味がありません。わざわざ来店する意味が無いからです。ネットで販売する商材を仕入れても、メーカーのHPを見た方が掲載商品の幅も奥行きもサービスも圧倒的に多いからです。

百貨店の中にユニクロやZARAなどを導入しているケースを良く見受けますが、家賃収入以外は何の効果もありません。百貨店は集客効果を期待していますが、ユニクロやZARAに来店する消費者はそれだけで帰って行ってしまうからです。しかも不動産化は一旦景気が悪くなるとテナントは簡単に撤退してしまいます。

安易な場所貸し化ができる実店舗は大都市以外では無理ですから、安易に不動産業に業態を変えてしまうことは如何なものでしょう。コロナ禍では代表的な不動産化であった銀座sixや家賃化した百貨店各店舗は大苦戦しました。集客できない店舗ではテナントはいとも簡単に撤退してしまうからです。今や日本橋や新宿、渋谷といった伊藤地に立地する百貨店ですら空き地が目立つようになっています。

日本橋高島屋には減ったといえ未だ600人からの正社員、400人のパート社員、率を落とす原因の派遣社員が1500名ほど勤務しています。一方二子玉川を運営するデベロッパーの東神開発は全員で50名足らずです。デベロッパーですから完全家賃収入です。結果、百貨店は不動産化しても多数の余剰人員を抱えているので利益は人件費に採られてしまい利益は出にくい構造なのです。

そんな訳で各百貨店は必至で人員削減に邁進して入るのですが、どの業界も同じように優秀な社員は早々に自社に見切りをつけますが、ダメな社員ほど会社にしがみ付き、生産性は急速に落ちていくのです。しかも消化仕入※1のせいでバイイングする必要がなくなった為、バイヤーや熟練社員から首切りが行われます。結果、経験も能力も無い若手が派遣社員やパート社員の上で采配を振るうのですから、顧客サービスも糞もあったものでは無くなってしまうのです。

ではどうすべきなのでしょう?百貨店などは、実店舗をどのように活用させるべきなのでしょう?次回はこのテーマでお話します。 

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