コロナ禍後の世界 №5

コロナ禍が終焉すれば、世界は元どうりと考える人は10数%、ある程度しか戻らないが40数%、戻らないが40数%で大多数の人が元の世界には戻れないと考えています。(2022.01.26日経新聞)

大多数の人はこの2年間のコロナ禍生活で既成の価値観や常識、生活の基本が根底から変わりました。ある人は家族との生活を、ある人は人生を、ある人は仕事自体の将来性を考えたことでしょう。

結局どの人も今まで当たり前と考えていた生活自体を見つめ直す結果となったことは間違いありません。

今まで、より便利に、より安価に、より快適に、と進化してきた文明はいつの間にか地球環境を汚し、自然を破壊し、人生の価値基準を金儲けだけにしてしまいました。

結果、物質的には豊かな社会に為りましたが、そのために本来不必要な犠牲を多大に払っている事にコロナ禍は気付かせてくれる大きな機会となりました。

他人事であった二酸化炭素排出問題や海洋汚染問題が身近な生活に直結していることを、コロナ禍で時間に余裕ができた人々は否が応でも考え始め、世界が一丸となり脱炭素化へと大きく舵を切り、今までの産業基盤を大きく変更せざるを得ない状況に為り始めています。

利便性を求めるあまり、地球規模での環境汚染を引き起こしている事にようやく目を向ける結果となったのです。

同時にIT技術の急激な進化も社会基盤の抜本的変化を促しています。新しい技術は産業構造のみならず、単なる技術の枠を超えて生活自体の変化を推し進めています。単純に便利というのではなく、機能を利用する事により時間的、空間的に無限の広がりを与えてくれるという点では、利用しない手はありません。

今まで通販利用が主体だったネット活用策は「リモート」の普及で生活をさらに一変させました。通勤しないで仕事をするなんて誰も思いもよらなかったと思います。

一部の企業で行っていたTV会議レベルではない一般会議や業務推進が、画面を通して普通に行われることは、どれだけ効率良く、また、ストレスなく、働けるか考えるだけでワクワクします。

一方で効率のみを追求した産業構造では、危機管理という認識が無いことも判明した結果、流通における危険性という課題が大きく持ち上がっています。

企業は利益最優先で、全ての日用品を始めとするほとんどの産業が、人件費が安い(と思い込んでいる)中国に生産基地を移すか仕入れをしていたため、バブル崩壊時のトイレットペーパーが街から一斉に消えた状況を再現してしまったからです。

日本人は喉元過ぎれば何とやらで、生活に不可欠な基本商品が自国で生産されていないということに全く危機感がありませんでした。

何かあれば輸入が止まるという事にバブル崩壊で嫌というほど経験しているにもかかわらず、特に医療・衛生商品は生活に密着しているにもかかわらず、全く危機感を持っていませんでした。これが衣料なら影響はありませんが、エネルギーだったらどうなるでしょう?

それどころかウィルス対策の薬の開発ができないという現状に愕然としたものです。ウィルス薬開発は非常に資金が掛かるので、目先の利益しか見ない我が国の経営体質がそれを許してはいなかったのです。

誰もが医療分野は間違いなく一流国家と自負していたのに、保健所が未だFAXだとか、製薬会社が自社開発機能を放棄し、儲けの大きい特許の切れたジェネリック薬販売に血道をあげているとは知らなかったでは済まないのです。

噂からトイレットペーパーや消毒液、マスクにおむつまであっという間に流通から消えてしまい、必要なものが買えないという苦痛を人々は実感し、危機対策が政府任せではいけないことにも気が付きました。一流と思っていた経済が実は二流以下だったこともばれてしまいました。

特に経団連は今回の危機に対して何ら構成企業に対して明確な方針の打ち出し一つせず、ただおろおろしていただけでした。さらには日立の社長などは「リモートは効率が悪いから全員元の通勤体制に戻す」とまで言ったほど、先どころか時代が全く読めていない状況でした。国がリードする体制になく、企業も同じということはかなりショックな事です。

現在コロナの抗原検査キットが品薄で手に入らない状況が続いています(2022.01.27現在)。政府が買い取り保証を行いやっと企業も重い腰を上げ増産体制に向かっていますが、休日を返上しての24時間体制を採った企業は皆無であります。

急に人員体制が取れないとか、マスクの時と同じで生産ラインを増やしても、いずれ落ち着いたら過剰生産化してしまうのでライン増設はしないというのが企業の本音であります。企業は常に冷静に利益の事しか考えないものです。

一般の人もコロナに罹ったらしいという疑いなくして検査しても制度が悪く、陰性になった人が実は陽性という事実が30%もあるという情報を知らず、やみくもに検査して安心してるのが現状です。結果、本当に必要な病院や検査場に検査キットが不足するという事態すら招いているのです。

コロナ初期に、小池都知事や二階幹事長がコロナ禍の元凶の中国にマスクや防護服を配って、悦に入っていましたが、すぐに国内でマスクが不足し大問題に為りました。当の中国では日本向けのマスク工場を接収して潤沢に在庫があるといのに・・・・。選挙向けのアピールをしたパフォーマンスの責任は結局庶民が割を食ったのです。

今回のコロナ禍に関してはマスコミの責任も大きいものがあります。人流抑制ばかりを取り上げ、規制に背くものは悪とのキャンペーン一辺倒でした。飲食業をはじめとする人流が途絶えることで生活が成り立たない事業者が出始めると、今度は一転、画一的な政策ではいけないと手の平を返します。検査することが最重要で、検査数を増やせ増やせと煽り、検査数が増えた結果感染者数が増加した結果病床が逼迫すると今度は一般病棟での治療ができないと煽ります。基本は重傷者を最優先すべきなのに、画一的視点でしかものを見ないのがマスコミです。

問題はコロナ専門対応病院の医療が逼迫しているのは、単にベッド数ではなく、医師や看護師の不足が根本問題なのです。しかし、一般の病院に居る医師たちは全くコロナ医療に関係しておらず、何ら協力体制に組み込まれてはいないのです。医師会は補助金だけ取り、なんらこの2年間医療総動員体制を組もうとはしてこなかったのです。

このように、政治以外の民間諸団体は政治と違ってきちんと対応してくれるものだと私たち一般人はなんとなく思っていましたが、既得権益を守ることが目的の時代遅れの団体では時代に対応できないことが次第に一般人にも気付くように為ってきています。

こんな日本がコロナ禍が終焉すれば元に戻ると考えている人は、既得権益側の人か、よっぽどの〇〇でしょう。

今回のコロナ禍が終焉した時、私たちは政治や経済が二流あるいは三流で、機能不全に陥っている事を忘れてはいけません。どうも私たちは喉元過ぎればなんとやらで忘れてしまう傾向が強いですが、今回ばかりはしっかり今後の日本の方向性をきちんと見守らなくては本当の3流国になる日は遠くありません。

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