コロナ禍後の世界 №2

現実的な問題として、脱炭素化推進で増加する電力消費を自然エネルギーだけで賄えるのでしょうか?

地球環境に優しいとして自動車の電気化が一般の人々の大きな関心毎になっています。また、クリーンエネルギーとして太陽光発電や風力発電などに脚光が当たっています。しかし、車より圧倒的多くの二酸化炭素を排出する産業用の安定した電力供給はできるのでしょうか?

現在我が国のエネルギー自給率は11.8%世界34位で先進国35か国中下から2番目です。しかもエネルギーの87.4%を化石燃料に頼っています。この化石燃料の代わりが簡単に見つかるでしょうか?2018年度で再生エネルギーはわずか8.2%しかありません。

これを2030年までに10倍にする事は可能でしょうか?

太陽光発電は国による高額買取補助政策が2014年に廃止され、現在では地方自体による省エネハウスに対して支給されています。しかし、業務用での太陽光発電は自社向けがほとんどで、余剰電気の売電はなかなか進捗していません。

近年では太陽光発電設備設置のために森林伐採や土壌掘削などで土壌流出事故や森林崩壊などの環境にかえって悪影響があると指摘があり、今後大規模の拡大は難しい状況です。

風力発電は、海に囲まれた我が国では大陸と違い一定方向の風が常時吹くのでは無いので、発電効率がさほど良くなく、企業収支でみるとなかなか合わないようです。

地熱発電は国立公園の中が多く、調査するだけでも法的整備が今から行われなくては間に合わない状況です。潮汐力発電は発電量の増大が大きな課題で、まだまだ実用化には遠い状況です。

近年、火力発電所で使用する燃料の石炭にアンモニアを混ぜ窒素酸化物を減らす研究が進んでいます。これが実用化されれば従来の火力発電所を廃棄せずにすみ、大幅な経費増を防ぐことができます。しかしそれでも二酸化炭素の大幅削減にはならないのです。

その他に、水素エネルギーや核融合などが実験されていますが、しかし国が本腰を入れて乗り出したり、実験に膨大な開発研究費を投じたりしない限り、なかなか進捗するとは思えないのが現状です。

水素エネルギーはトヨタ自動車が世界の中で一歩先んじた技術力で頑張っていますが、水素ステーションの設置や能力の向上(蓄電池能力の向上)などまだまだ解決しなければ実用化できない問題が山積しています。しかし国家レベルの事業として行えば、水素電池は他の内燃機関への転用など(船舶用・航空機用など)、無限の可能性を秘めているのです。

これが実現すれば世界の社会構造や政治力学が激変する事は間違いありません。

現在では一番のクリーンエネルギーは原子力発電だと言われています。原発全面廃止を打ち出したドイツはエネルギーを全面的にロシアからの天然ガスに依存することを決めましたが、ロシアのクリミア侵攻やウクライナ侵攻により安全保障上大きな課題となっています。

そして2020年、フランスの原発から買電契約を結ぶと同時に、EUは原子力を基幹エネルギーと認定し、クリーンエネルギーの代表に選んでいます。これがあって初めて火力発電を止めることがスケジュール化できるのです。

原発の稼働を曖昧にしておいては我が国のエネルギー政策は、完全に行き詰まる事は火を見るより明らかです。

にも拘らず東北大震災の惨事からの脱却が政府も企業も国民もできず、感情的な原発廃止論が流布されているのです。現状で脱炭素化を行うにはいい加減な目標数値を弄ぶことではなく、海外との排出権取引に逃げるのでもなく、代替エネルギーの確保と社会基盤改革のスケジュール化を明確に行うことです。

このように目先の言葉に踊らされ、コトの本質を見極める事無く、長期に渡るヴィジョンがないまま事前の準備も不十分なうえ見切り発車をする事は国家百年の計を誤るものです。原発を含め幅広い討論を行い、国として基本政策をまとめることが最大且つ喫緊の課題であることは間違いありません。安易な脱炭素政策はは無謀なことであるという認識を、私たち一人一人が持たなければいけません。

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