コロナ禍後の世界№6-3
実店舗の百貨店が見直すべきMDとは?
消費者にわざわざ来店していただくためには、消費者が、興味があり来店して直に触れたい、といったMD展開でなければ消費者を呼び戻すことはできません。それは一体どんなMDなのでしょう?
消費者ニーズが多様化した今日、年齢軸や収入軸、単なるテイスト軸のような今までのターゲット分析&設定では消費者の実像を把握することはできません。ライフスタイルは千差万別ですからライフスタイル別に消費者全員に対応するMDを組むこともできません。
しかし、多様化しても消費者全員に関心がある、あるいは不可欠な商品である、といった商品群を揃える必要があります。
またネットで購入できる商品やメーカーのナショナル商品を並べても消費者を呼び込むことはできません。
わざわざ来店しなければ買えないといった商品群です。
どんな階層でもテイストでもライフスタイルでも共通の切り口でMDを構築するためには、百貨店自体が得意とし、他業態が敵わない、ましてやネットでは真贋問題やメーカーが独占してなかなか買えないといった切り口の商品群です。
それは百貨店が元来得意としてきた「高級品」です。これに特化したMDを敷くことが消費者には訴えることができると思われます。どんな階層や年齢層、テイスト軸の消費者でも、誰もが欲しがる高級品でしか百貨店に「集客」させることは今や不可能となっています。
今百貨店に来店いただける消費者の興味は、制度化粧品、デパ地下、ラグジュアリーブランド、あとは北海道物産展に京都物産展くらいしかありません。どれも一般品と比べると高額商品であり、百貨店に来なければ変えない商品群であります。
言い換えれば消費者は百貨店に一般品より高額なブランド品や普段買えない老舗の味を求めていると気付きます。3足1000円の靴下や1000円のネクタイはわざわざ電車に乗って百貨店には来ないのです。コンビニか駅中のキオスクで良いのです。
残念ながら、現在の百貨店は何処ででも、当然ネットでも買える一般品が中心です。わざわざ来店しないと買えない商品はまず無いのです。
その故、国内から、海外から未だ日本未上陸や日本製ながら海外ラグジュアリーブランド製品を製造しているんメーカーや工場を探し、百貨店のオリジナル商品を製作するしか策は無いのです。まさに百貨店PBの復活です。こういうと百貨店マンは99.9%顔を顰めます。なぜならかつて百貨店は他店との差別化政策として大量のPBブランドを獲得あるいは製造した時代があり、そのほとんどが大量在庫を残し大赤字だった苦い経験があるからです。
従来はナショナルブランド製品と同レベル・同テイストで安価な上代が基本のPBか、食品などは海外有名ブランドの独占販売だけでした。結果は拡販しないのが大前提でしたから大量の在庫で失敗したのです。唯一伊勢丹のana suiだけが拡販し成功しましたが、現在は無くなってしまいました。
しかし、この度のPBは他店との差別化では無く、自社ネット販売との差別化なのです。しかも大量生産による上代を抑えた商品化と違い、少量、売り切り御免の高級品制作なのです。1000円のTシャツを1000枚売るのではなく、10万円のTシャツを10枚売ることを目指すのです。売れたらそれで終わりで追加生産はせず、次の商品展開を行うのです。
基本的には定番が主体になるでしょうか、世界的な一流デザイナーと提携するか、日本の若手デザイナーのインキュベート機能として制作するかのコンバイン型が理想でしょう。メーカーが自社サイトでも販売している商品をわざわざ店頭に並べても、消費者が喜ぶとは思えません。ましてや、ビジネスになるとは到底思えないのです。
一流の素材で一流の工場、一流のデザイナーが創る限定品。これが百貨店本来あるべき姿のMDです。セーター1枚とってもエルメスの工場でモンゴルの白カシミアの1番糸を使い、ラフシモンズがデザインしたカシミア100%500gの18ゲージのセーター、35万円なら100枚なら即完売でしょう。
シャネルの靴を作っているベネチアのBALLIN社で百貨店のオリジナルシューズ受注会を行ったり、cesare attoliniのスーツオーダー会を開催したり、世界の一流品の受注会ならマス商品と一線を画します。シューズは1足30万円、スーツは1着90万円です。上場企業の役員だけでなく投資家、医者・弁護士・政治家と従来の顧客以外でも、若く新進気鋭の上昇志向がある消費者なら必ず興味を引くアイテムです。
同時に祇園丸山の弁当を竹虎・渡辺竹清の竹籠弁当箱に入れ、一日10名様分だけ受注予約で販売したり、神楽坂懐石料理石川の席を年間で抑え販売する、など百貨店ならではの職へのこだわりも必要でしょう。フランスの一流ワインメーカーと協力し、wネームのワイン制作も良いかもしれません。1本10万でケース(24本)売りなどは好事家の収集品として人気に為るでしょう。
今一度、百貨店でなくては出来ないモノ造りが求められているのです。消費者は安くて便利で何処ででも買えるものを百貨店に求めているのではないのです。
食品からファッション、雑貨にリビング関連まで、自社開発が難しいアイテムも有ります。それらのアイテムはそのアイテムで世界一流品を取り扱えば良いのです。現在の百貨店は意外と世界の一流品を扱ってはいません。
しかし、他業種では扱えないラグジュアリーブランドから老舗といわれる個人商店。はたまた各取引先の先にある工場や工房、人間国宝から世界に誇れる職人達まで百貨店の隠れた財産として持っています。更にはどんな業種でも垂涎の的である超富裕層は、お金をいくら積んでも手に入れられるものではありません。
これらの財産を活用する事で、高くても永く使える、使い易い、デザインが素敵、な商品であれば間違いなく全ての消費者に受け入れられる事は間違いありません。
百貨店は現在消化仕入全盛で、リスク回避を唯一の目標にしています。その為用の無いバイヤーを一律、経験も、能力も、取引先との関係も、無視して削減しようとしています。全く無駄です。彼等彼女等のちからを今こそ活用すべきです。(無能な輩は要りませんが、経験無き若手はもっといりません)
百貨店経営層は今こそ「百貨店斯くあるべし」論を積極的に闘わして欲しいと思います。