コロナ禍からの復興2021№12

百貨店はコロナ禍後はどうなるのでしょう

今迄百貨店は①ネット対応の遅れ②消化仕入れの依存化③消費者ニーズの読み違えを挙げて来ました。これらの対策を行う事は絶対不可欠でありますが、その前に百貨店の存在意義を考え直す必要があります。

百貨店はその成立以来高級路線が基本で、進物物や贅沢品は百貨店の独擅場でした。庶民がまだまだ低所得層が多く購買力が大きくない時代でも、「ハレの日は百貨店という」庶民の憧れでありました。百貨店に行くというと、わざわざよそ行きに着替えて行ったものです。

百貨店で売っているものは品質が良く、高いけれど安心できる商品、持っていたり身に着けているだけで他人から羨望の眼差しで見られる商品で、百貨店の包装紙は絶大な人気を誇っていました。海外の商品もいち早く取り入れ、今世界を席巻しているラグジュアリーブランドは日本の百貨店が育てたと言っても過言ではありません。※1

※1  世界を席巻したラグジュアリーの代表格であるLVは高島屋に身売りに来たことがあります。しかしビニー ル素材のバッグなど百貨店素材では無いと断ってしまい、営業応援として当時の特選売り場の課長を出向させた 経緯があります。CHANELも同じです。名誉顧問の黒田氏が今のCHANELのコンセプトやテーマカラーマークを決め安売りやバーゲンを止め、仕入れて販売していたBAGや靴をオリジナル製作に変えたのです。

取引先も、百貨店に卸す商品は他業態とは一線を画して品質の保持や差別化を自負していました専門店に卸す商品とはブランド名も素材も品質も異なるものだったんです世界的には専門店が高級品で、百貨店はスーパーより一格上くらいのレベルというのが常識ですが、日本では小売りの王者として圧倒的な品質を誇り、独特の地位を誇っておりました。「高級品は百貨店」というのが今日まで続いている消費者の認識であり、望みでもあるのです。

高度成長期までは日の出の勢いで成長を続けてきた百貨店ですが、社会の成熟期に入ると同時にスーパーや専門大店の台頭にそのシェアーを少しづつ減らし、通販や専門店、駅ビル、ファッションビルなどの急速な拡大を受け更にそのシェアーを落とし続けました。

それでも「小売りの王者」の地位は揺るがず小売りの頂点として君臨し続けましたが、だんだん進取先取りの気風は無くなり、他社との差別化を計るために積極的に自主制作したPBも辞め、消化仕入売り場を拡大して販売員も商品も持ち込ませ、百貨店は実質大きな箱の、何でもあるようで実は何も特徴の無い場所貸に成り下がっていきました。

更には売り上げ減少を食い止めようと自主的に商品開発や売場開発するのではなく、安易に集客できるUNIQLOやニトリ、果ては大型ディスカウント業種を店内に導入し始めたのです。もはや小売りの王者としての誇りは微塵も感じられず、本来は自社が行うべき集客もせず、他では買えない優良かつ高級な商品も展開せず、安易な道ばかり模索し、何処にでも売っている何処にでもある商品が軒を並べるだけの業態に落ち込んでしまったのです。

百貨店でしか買えなかった商品は失われ、何処ででも買える商品しか置かなくなり、特別感があったサービスも経費節減の為にどんどん無くなり、結果、他業態との差がなくなってしまい、百貨店はその存在意義を失ったのです。消費者はわざわざ都心まで出かけ手も仕方が無いので、地元の総合ショッピングセンターで十分満足し、百貨店では手に入らなくなった拘りがある商品のある路面の専門店で消費を増やすようになっていったのです。

それはお客様が百貨店に何を望んでいるのかという基本をすっかり忘れ去ってしまった結果です。売れているUNIQLOや家電量販店の集客力の大きい業種を店舗に導入したい気持ちはわからないでもありませんが、消費者は百貨店に何でも期待しているのではないことに気が付くべきです。UNIQLOが欲しい人は直営の大型店舗に行き、近くで便利だから百貨店に来たとしても他売り場に寄ることはもちろん無いのです。

そしてネット販売の登場です。年老いた経営層はネット販売の重要性を理解するどころか、知らないものは排除するという鉄則に則り、百貨店の対応は恐ろしいくらい遅く、その内容も通信販売の電子版くらいというお粗末な対応しか取りませんでした。各社のシステム部はその重要性を上層部や営業部に上申することを怠り、営業部はわれ関せずという態度、経営層は形だけ整えれば十分といった体でした。

今となって「ネットとリアルの融合」だとか「オムにチャンネル」だとか騒ぎ始めていますが余りにも遅きに失し、後発の異業態や全くの小売素人企業のネット販売にすら後塵を拝する状況下に甘んじています。百貨店がネット事業に本気で参入したとしても、販売している商品は既に取引先のHPで販売されており、直接そちらに行ったほうが便利なのです。

敢えて百貨店で買うとしたら、ポイントを集めるためにだけでしょう。ポイントは集客や売り上げに有効とされていますが基本は「値引き販売」なので、楽天やZOZOがやってる「ポイント何倍日」には到底太刀打ちできません。ポイントを有効活用している消費者はそこのところをよく知っており、すぐその場で欲しいという場合を除いては、百貨店で衝動買いをするという状況では無くなっているのです。

消費者は上手く百貨店とその他の業種を上手く使い分けています。そして年々百貨店で購入する必然性やメリットが薄れていくのも事実です。何故なら「百貨店でしか買えない商品、味わえないサービス」がどんどん失われており、わざわざ百貨店で買う意味が無くなっているからなのです。ところが残念ながら百貨店はこの事実に気付いていません。

口を開けば「ネット対策」と言いますが、それもヴァーチャル空間を望外なコストの上に創ったり、プラットフォームを遅まきながら創ったり、もはや100年遅い施策しか考えられていません。

何故、百貨店の優位性を再認識しないのでしょう。

コロナ禍からの復興2021№10

では私たち、零細、弱小企業はどうしたらよいのでしょう。

答えは今迄述べてきたように、人々の生活に本当に役に立つ商品を開発し、人々の生活をより便利に豊かにすることを考え、人々の求めるコトをモノを提供することです。その提供の仕方も個々の人々の嗜好やニーズに沿ったやり方で行うべきなのです。

自分の顧客をより深く知り、顧客の望むコトやモノを提供するといったごくごく当たり前で、小売りの原点へ回帰すべきなのです。売り手の身勝手な論理のままでは消費者は振り向いてはくれません。

100人居れば100人が望むモノは異なります。今迄の「大量生産大量販売で安くて良いからどんどん売る」というニーズは一部の商材でしか生き残れません。大多数は「自然や他人に優しく、必要以上に造らず持たず、無駄にすることなく再生してまた使う」リサイクル社会を望んでいるということを理解すべきです。

必要以上に資源を使い、必要以上に売りまくり、必要以上に地球を汚し、人々の価値を資産で決めることを早くやめなければなりません。今のIT関連で成功した人々は桁違いの資産を保有していますが、ZOZO〇ウンやSOFT〇ANKの社長達は一生使いきれない資産をさらに増やすためのマネーゲームに浮かれ、社会の為に使おうとはしていません。

教育財団を造っても将来の優秀な人材を囲い込むためためだけのものであったり、正月に100万円を小遣いとして猿に餌を与えるような真似をしたり、誠に品がありません。昔の金持ちは篤志家で自分の街に学校や橋を造ったり、貧困家庭の為に寮を作ったり、片親を積極的に雇ったり、いろいろな社会還元を継続的に行ってきました。

良い例は明治維新の際、身分や出自に関係なく積極的に若い世代を藩主や金持ちが支援し、その豊富な資金を基に明治維新を成し遂げたことを鑑みれば、今の金持ちは成り上がりと馬鹿にされても仕方が無いでしょう。

私達はまず自社の製品開発手法から見直し、製品を見直し、販売方法を見直し、今の消費者に望まれている商品か否か、まずそこから考え直す必要があると思います。時代に合わなければ個々どんなに売れようが意味がありません。また、売れれば良いとばかり、売り安い安価な、けれど品質がそれなりの商品では売れないでしょう。消費者は自分にとって本当に価値があるか無いか、いつの時代も嗅ぎ分けるものなのです。

そのためには新しいAIを活用した新マーケティング技術(感性メタデータマーケティング)を駆使し、本当に消費者が望んでいるものを見分け、提案し、納得できたものを生産するという新しいモノ創りを目指すべきなのです。

ただ売れれば良い、儲かれば良いといった、あるいはお客様は株主で目の前の顧客は収入を得るための道具に過ぎないといった株主至上主義はもはや消費者に受け入れられるはずがありません。18世紀の奴隷商人ではあるまいしましてや古い帝国主義でもあり得ないのは明白な事実で、企業が自社の株主の株主のためだけに利益のみを追及するというのは消費者に受け入れられるはずが無いのです。

それゆえ、ただ商品を生産・製作するのではなく、その製造過程において、地球に優しい、人々に優しい、コトに配慮することはもちろん過剰生産して無駄にすることなく、適宜適量生産を行う必要があります。AIを活用して顧客ニーズの完全把握・顧客ニーズの真髄に適合した商品製作・顧客の潜在意識にある理想のコーディネート提案などを行うことが可能なのです。

ただただ売り上げ拡大を追求するのではなく、無駄なく利益を確保するという考え方が、消費者のライフスタイル指向のニーズに合致するのです。

コロナ禍後は人を集めて販売するという古来からの販売手法がヴァーチャルの中に移行していきます。ですから零細企業と言えどもAIやネット販売は無視することはできません。それどころかヴァーチャル空間内では大企業と互角に渡り合うことができます。

人々のニーズを探るために莫大な広告料を大企業は投入しますが、その手法はもはや時代遅れです。消費者は自分のやり方で好きな商品を検索し、自分で探しに行きます。そこにはみんなが持っているとか、知っているとか行った商品だけでなく、自分の好みに合っているとか、自分しか知らないといった事がキーワードに成っているのです。

それゆえ、各メーカーは消費者ニーズに対して自社の特徴・優位性などを明確に訴えることで、「この指とまれ」とサインを出すことになるのです。さらにここでしか買えない・売っていない・予約制などであれば消費者の興味を引くことは間違いありません。各メーカーは自社製品がいかに「他社と違うか」という点をアピールすればよいのです。消費者は敏感にそのような情報を求めて来ます。

新しい感性メタデータ分析による消費者ニーズ分析は、驚くほど消費者の心の深層にあるニーズを暴いてくれます。100%満足していなくても「しょうがなく」あるいは「他に無いから」といった理由で購入していたものが「正にこれが欲しかった」という商品が提供されるのです。今迄は大企業の一等地にある大きな売り場に圧倒され、場末の片隅にある個人店舗では全く注目されなかった商品が、コンセプトさえよければ、消費者ニーズに合えば、消費者はきっと探し当ててくれるのです。

無印良品やユニクロは消費者ニーズに合致していたからこそ(価格であったり、品質であったり、デザイン流行であったり)消費者に圧倒的な支持を得たのです。その根本は消費者の臨むものをしっかり把握し、それを具現化した商品を造ったに他なりません。

これからの小売りはマス相手ではなく、自社顧客の好みやニーズを徹底して把握し、消費者の潜在的ニーズをほりおこす商品を開発すべきなのです。その為には消費者のニーズを把握するという小売りの原点を再度認識すべきなのです。過去に売れた商品や、自社の利益に貢献するといった手前勝手な理論で顧客を計ってはいけないのです

 

コロナ禍からの復興2021№11

三度目の緊急事態宣言が出されています。人々は慣れてしまい盛り場はどこへ行っても多くの人出があります。東京がダメなら埼玉や神奈川に飲みに出かけたり、子供が我慢できないからと観光地に繰り出したり完全に全体的に気が緩んでいる感じは否めません。

こんな状況下で律儀に店を閉めている店舗もあれば、もう我慢ならんとばかり罰金払っても営業をする店舗もあります。飲食業界は酒類提供自粛で壊滅的な打撃を受けています。お酒を飲む店は当然、食事の際にも酒が飲めないとなれば外食は営業しても利益が出ないでしょう。

今回自粛対象に成った大型商業施設はどうでしょう。スーパーは生活必需品ということで全店開業していますが百貨店は贅沢品を扱っているということで食品フロア以外は一部の雑貨売り場を除いて閉店を余儀なくされています。百貨店協会会長が自粛対象外にすべく必死で訴えていましたが、一般人の共感は得られず、あえなく閉店の憂き目に合っています。

こんな百貨店のコロナ対応は各社まちまちです。

三越伊勢丹は売り場全体の商品が買えるネット販売へ大きくシフトしようとしています。2021年度のネット売上目標値は350億円で業界1位ですが全売り上げの4%に過ぎません。これでは実店舗の苦戦を止めるには程遠いと思われます。大丸は場所貸し事業への転換を急ぎ、百貨店売り上げは総額の半分をきっています。しかし買収したPARCOなどは黒字ですが大金を投じた銀座SIXなどは撤退テナントが後を絶たず、撤退したテナントに隣接している店舗に売り場を拡張してもらい体裁を繕っている状況です。高島屋は東神開発を中心にした街づくりと称する開発を推進していますが、日本橋はビル一つをテナント化しただけで「街づくり」とは笑わせてくれます。それも「街づくり」の根本コンセプトが陳腐なため、ただのテナントビル化しています。

これらの大手百貨店をはじめ全ての百貨店はひたすらコロナ禍が過去るのを祈るばかりで、具体的対策を模索すらしていません。しかしよく考えてみるとコロナ禍で顧客が減ったと思い込んでいますが、コロナの前から売り上げはインバウンド頼みでそれを外すと全ての百貨店が前年割れの状態だったのです。インバウンドの恩恵を受けない地方百貨店は確かに観光客や修学旅行生によって息を繋いでいましたが、ここにきてそれすら無くなりもはや時間の問題という店舗がほとんどです。

昨年山形県の大沼が突然閉店し、百貨店の無い県が初めて誕生し大騒ぎになりましたが、これからはほとんどの県から百貨店は無くなっていくでしょう。かろうじて県庁所在地に残れば幸いでしょう。

何故百貨店はここまで衰退してしまったのでしょう。

最大の要因は時代の変化を身をもって否定したことです。私はIT革命を明治維新と同じと考えています。それは400年間も続いた生活が一朝一夕に変わるはずが無いと誰もが思い、押し寄せる時代の変革に無関心や根拠なく安心感で無視したあの時と全く持って同じだからです。武士の時代が、農民によって覆される等誰も信じていなかったのです。IT技術革新が始まった時、当時の役員はその意味を理解しようとせず、否定から入ったのです、「こんなものは一過性ですぐ終わる」と。結果対応が遅れ、プラットフォーム企業が1000億単位で投資をして技術革新を進めているのに、5億~10億レベルの投資で紙媒体をネット化しただけで「リアルとネットの融合を果たした」などと寝言を言っている有様です。AI対応、ネット対応に大きく後れを取ったことが最大の理由です。

二つ目の要因は、取引先の上に胡坐をかいて自ら努力することを忘れ、自ら汗をかき商品を探し、造り、販売することを止めてしまったことです。結果商品の良し悪し、コストから積み上げた適正価格、話題の商品などを判断することができなくなり、取引先におんぶにだっこで、ひたすら中間搾取を続けたためであります。世の中の新しい流れであるB to BやB to C、 C to C等の流れには全くついていけない時代遅れの「販売構造」に成ってしまったのです。消化仕入れでリスクは全て取引先持ちなんて、続くはずがありません。コロナ禍で取引先が苦しんでいるのに共に苦難を分かち合おうと仕入れ率を挙げたという話は一切聞きません。自分だけが良ければ取引先等いくらでもいるといったおごり以外のなにものでもありません。いずれしっぺ返しを取引先から食らうことは明らかです。これから中間搾取業態は生き残れないことは確実です。

三つめは消費者のニーズを完全に読み間違えていることです。他業種で売れているブランドがあればターゲットもグレードも違う顧客対象でも構わず導入しようとします。目先の売上確保が最優先なのです。品質が良くて安いに越したことはありませんが、消費者はファッション全般にそれを求めている訳ではないのです。消費者は「百貨店は品質は良いけど高い」と考えているのか「百貨店は高いけれど品質は良い」と考えているのかどう捉えるかによってその意味合いは大きく変わります。今の多くの百貨店マンは自分の生活水準でモノを考えるため、「安くないと売れない」という幻想に惑わされ、UNIQLOをはじめ量販家電、ニトリ、果てはドンキホーテまで招聘し集客を頼ろうとしています。しかし低価格量販店指向の顧客にはどんなに低価格志向を百貨店が行っても、百貨店のファンに成るにはハードルが高すぎるのです。地方の百貨店は競合が郊外型量販店なのでUNIQLO等の招聘も有効性があると思いますが、都心店では全く意味が無い施策です。

特にこの三つめの理由は百貨店の存在意義を問うもので、大変重要な課題であります。長年に渡り安易な消化仕入れに頼ってきた結果、現場で汗を掻きながらお客様のニーズを理解する社員が居なくなり、サラリーマン化した社員は新しいことにチャレンジして失敗することを恐れ、無難な前年踏襲主義へ陥っていったのです。結果消費者が百貨店に求めるニーズではなく世の中ではやった安価な商品や安価なブランド導入に血道をあげ、百貨店の中にユニクロや似鳥の導入すら行ったのです。顧客が百貨店とユニクロに求めるものが違うというのに!

このような理由から百貨店は顧客のニーズから急速に乖離していったのです。頼みの綱の取り引き先がモノも人も高い歩率も払えなくなり撤退を始めた結果、売場に穴が開くどころかサッカー場ができてしまっています。しかしこの期に及んでもA社がダメならB社をと、必死で消化仕入れ先を探すのが関の山となっているのです。百貨店自体では何ら手を打つことはしていないのです。消費者が百貨店に何を臨んでいるのか全く見えていないのです。

或る経営者はこれからはルイヴィトンを目指すべきだと言っています。毎シーズン毎に新作を出し常に売り場が新鮮だからこれを真似るべきだと言っています。では具体的にどうすれば良いのでしょうか。バイヤーは出張ができず、日本のファッション雑誌を見て仕入れを検討し、昨日入社した新人が10年選手のベテラン派遣販売員を前に朝礼している現状で、百貨店が浮上するとはとても思えません。この現状は現場が招いたものではなく、売り上げ不振時に人員削減、消化仕入れ化を推進させ見せかけの利益を株主に見せてきた経営層の失政の賜物です。

ではこのまま百貨店は消滅に向かって行くだけでしょうか?

コロナ禍からの復興2021№9

コロナ禍で社会の構造から人々の生活意識まで全てが一新されようとしています。しかしそれはコロナ禍が始まる前から始まっていましたが、コロナ禍のおかげで全世界の人々が一斉に気付いたと言うべきだと思います。

その要因はAIを始めとする未曽有の技術革新にあります。

従来の技術革新はハード中心の開発が基本であり、今迄も生活を一変させる社会変革を起こしてきました。内燃機関の発明、電気の発明、等により社会構造そのものを変人々の生活を豊かに変えてきました。新しいモノやコトが創造された結果、社会変革の名の下に消えゆくモノやコトが数多く発生したのは自然の摂理でありました。

人々は常に新しい技術を活用しより便利に、より快適に、より自由に生活を楽しんできました。今回もネット技術革新により従来の生活様式は一変されましたが、人々が気が付かない無限の可能性も秘めていることを感ずいていたのはごく一部のゲーマーと呼ばれるきわめて若い世代だけでした。この若い世代が新しい技術を自ら改良、拡大、連携、再構築してより便利なモノやコトを生みだし、瞬く間に一般の人々に拡がっていったスピードは誰にも予想も想像もできないことでした。

今回のIT技術革新の特徴の一つに、「無限の使い方」があり、「企業でなく個人が主役」と言う事が挙げられます。どんな時代の革新も始めはその社会を構成する支配層から否定され、社会の既得権益確保を優先されますが、今回の技術革新は一般人が主役の為、あっという間に拡散・拡大されていったのです。

しかしわが国では人権擁護を謳う一部の政治勢力が「個人情報の保護」を理由に政府機関で活用することに意義を唱え、革新技術の導入に反対したので大幅に導入や活用が遅れてしまいました。結果、未曽有の全世界同時のウィルス禍により通常では無いスピードを求められる事態に社会構造がついてこれなかったのです。未だに支援金支給が70%も滞っていたり、PCR検査が十分に行われず保健所はFAXで情報交換をしている等のため、全てが後手後手に回ってしまっています。

コロナ禍のおかげで旧態依然とした政治や旧来の大手企業は、あたふたとするばかりで何ら有効的な対策を打ち出す事が出来ないでいます。それを尻目にユニコーン企業と呼ばれる新しい技術を積極的に拡張・拡大したり、新しい発想で活用する企業は急成長し今や社会の中枢になろうとしています。

彼らは若い正義感からこれらの新技術を使い地球や人々に優しい社会を目指しています。脱炭素社会や自然エネルギー有効活用社会、無駄なものを生まないサイクル型社会等を積極的に志向しその為に技術をどんどん進化させています。それゆえ、旧型社会で花形だった企業はこの流れについていけてないのは皆様がご存知の通りです。世界のTOYOTAは車の製造企業から脱し、新しい企業としての在り方を模索していますがその他の企業や業種で転換を計画している話はついぞ聞いたことがありません。

日本を代表する大企業の日〇製作所の社長は、「リモートでは効率が下がる」として在宅勤務を廃し、再び全社員を出勤させています。またパナソ〇ックは秘密技術の漏えいが心配されるため、世界の企業が撤退している中国に新研究所を創るとしています。どちらも時代に逆行したミス判断で年老いた経営者の老害がもたらす災い以外のなにものでもありません

小売業も人々が来店ではなくネット販売でモノを買うようになり慌てて対策としてネット販売を始めていますが、ネット戦略の根本を理解しておらず、カタログ販売のデジタル版のレベルを脱してはいません。飲食業態も従来の営業体型から抜け出せず、食事時の集客集中を拡散できず、いたずらに席数を減らし効率を大きく落とし廃業に追い込まれている店舗が後を絶ちません。

一方新しい技術を積極的に活用する方法を研究する企業は、今後果てしない躍進が期待されています。新しい技術開発の中でドローンがありますが、世界の主力企業は中国です。日本には全くと言ってよいほどドローン開発企業はありません。なぜなら役所の規制で実験でドローンを飛ばせる場所が日本にはほとんど無いからです。日本ほど古い規制が脈々と続いて、技術の進化を阻んでいる国はありません。優秀な頭脳や企業はどんどん規制の無い海外へ移住するか買収されています。

アフリカでは道路事情や政治事情で荷物の配達が大変日数がかかり、コロナワクチンを配送しようにも運搬手段や冷蔵手段がなく事実上全くお手上げなのが現実だそうですが、ドローンに翼を付けた新型ドローンを開発した新興企業が、三人しかいないそうですが、航続距離も従来の30倍以上、スピードも20倍で道路の無い僻地まで迅速かつ正確に配送できるということで国連から正式に依頼を受注したそうです。結果この会社の株価は1万倍に跳ね上がったそうですが、彼らはそれを研究費に投入し、更なる開発を続けるそうです。お金が目的ではなく、人々の為になりたいと言うのが会社設立の動機だからです。

日本の企業も「企業は株主のため」などと行っている時代は終わったのです。口先だけの「顧客第一主義」など糞食らえです。これからの企業は社会のため、社員のため存在すると考える経営者が求められます。目先の利益を追求する時代は終わったのです。

コロナ禍のおかげで我が国は新技術取り入れに後れていることが図らずも露呈しました。上は政府、大企業から下は街の小売業まで。問題はこれからです。政府や大企業で頭が切り替えられない年寄りがいる処は遠からず破綻するでしょう。

では私たち、零細、弱小企業はどうしたらよいのでしょう。

コロナ禍からの復興2021№8

「安くて良い」商品が市場を席巻したせいで、巷は「低価格」だけが商品みたいな風潮が広がっています。確かに低価格でも良い商品は重要ですが、誰もが同じものを着たり持ったりしていては消費者は満足しないものです。ブランド名を付けただけで高い商品は論外ですが、多様化する消費ニーズに対応するには消費者ニーズを細かく把握すると同時に各小売業やメーカーは自社商品を再度見直し、自社のオリジナル性を磨くことが最重要課題の一つになります。安易に安価な商品創りばかりしていては、いずれ飽きられてしまいます。

これからのモノ創りは「made in japan」を徹底して追求しJapanオリジナルをブランド化すべきです。衣料はDCブランドで世界制覇をした実績がありますし、Kawaiiは世界の若い世代を魅了しました。それなのに日本ブランドは車と醤油以外の認知度は無いのが現状です。エルメスのスカーフは横浜で、シャネルの眼鏡は鯖江で、アルマーニのコートは青森で創られています。プラダのストレッチ素材は東レ製だし、ティファニーの指輪は甲府で創られていたなど世界のブランド商品は少なからずmade in japanにもかかわらずです。

日本製品は本当に良いものがあるにもかかわらず、ブランディングが下手で、宣伝も中途半端ゆえ一般への認知拡散が少ないのが最大の欠点です。百貨店で売っているものは良いものという認識は50代以上で、若い世代には全く浸透していませんし、ただ高く敷居が高く行かない消費者は増え続けています。実際、百貨店のオリジナルはほとんどなく、どこででも売っている商品がほぼ100%です。

こんな状況下では高所得者層は完全に日本製品に見切りをつけ、海外有名ブランド嗜好になるか、独自にオーダーしているのが現状です。サービスも同様です。「煩わしいから販売員は寄ってきてほしくない」という誰が調べたか判明しない謳い文句で、メーカーや小売業も人を減らし人件費を削減することを目的化し、セルフ販売が当たり前のような感があります。一方街の専門店では派遣の、商品知識が皆無と言ってよい、時給制ゆえ、ただ居るだけの販売員が多いのも事実です。要するに商品も販売員も時代に合っておらず、不要になってしまい、売れないのです。

今迄、大量生産大量販売がこの国の小売業の基本施策に長らく据え置かれてきましたが、今日、個人向けの施策は全く機能しなくなって居る事は明らかです。新・旧富裕層を捉えるためには確実に従来の商品創りから販売方法まで全てを作り変える必要があるのです。マス対応から個対応を本格的に実施しないと手遅れになってしまう事は明白です。

新しい顧客層に対応する為に、商品品や販売手法以外にも換えなくてはいけない事があります。

それは、新しいMD店舗では店頭在庫負担増になるため店間物流の整備や処分ルールの設定が重要になります。如何に効率的に商品を回転させるか、必要なものを必要な客に必要な時に届けるかが勝負だからです。販売員の顧客別接客の再教育も必要です。更には来店顧客を瞬時に把握する為に会員登録が絶対条件となりますので、初回購入あるいは入店時に顧客カードを提示瞬時に顧客データが出てくるくらいの設備投資は絶対条件でしょう。

販売員が顧客の顔を御覚えるのは重要ですが、上得意顧客以外の顔を覚えているというのは不可能に近いのです。だからAI技術の力を借りて瞬時に顧客を認識できるシステム等の近代装備が今後の店舗には不可欠であります。内装が良いだの綺麗だのはニの次三の次になり、まずは近代装備AIを装備した実店舗が早急に求められます。

個の実店舗実現の為には、初回購入時や来店時に顔写真を含んだ顧客カードを創る事が不可欠になりますが、それ相当のインセンティブが必要です。購入していただいたお客様には店のインスタグラムに掲載するとか、今週のベストコーディネート顧客には外れなしのポイント付与等が効果的かもしれません。来店しただけの顧客には顧客のコーディネートをインスタに上げるのでぜひ写真を、と言うのも効果的です。このように最初の1年間はデータ集積に邁進し、取れたデータを分析し顧客の感性ニーズを確立させていくのです。

この実店舗への転換がなされなければ、従来通りの販売員の感に頼った、或いは売らんが為の嘘に塗れた接客で、売り上げだけ上がれば良いという1回のみの当ての無い戦いが繰り返されるだけに留まってしまいます。

コロナ禍からの復興2021№7

新時代の小売業が狙うべき層があります。

一つは旧来からの富裕層です。資産を株や不動産で持ち、昔からの銘品や高級品には慣れています。生活は以外と地味で先祖からの資産を減らさない事が唯一無二の仕事であり、目立つ事を避けるきらいがあります、しかし本物を見抜く眼力は鋭く、サービスには大変厳しいものがあります。

一方、新富裕層はITや投資で若くして巨万の富を得た層です。この層は若くして立ち上げた事業を先行企業に売ったり、これから急激に伸びそうな企業に投資をしたりして、短期間であまり苦労もせず好きなことをやり稼いだ層なので、金使いが荒く、自己を主張できる事や物に惜しげもなく大金を使い目立つことが大好きです。資産は動産(株)がほとんどです。

この新旧富裕層は、片一方は目立つことなく買い物をしたく、他方は徹底した自己顕示欲を具体化してくれることが至上命題なのです。どちらの層も従来の店舗では受け入れがたく、これらの層だけをターゲットにした品揃えとサービスを提供できる実店舗が必要になってくるのです。

これらの客層を今迄の小売業は高収入層は全く相手にしてきませんでした。それはマーケティング分析がなされていなかったためであります。金持ちは全身シャネルでユニクロは着ないと思い込んでおり、ターゲットの外に位置づけしていたからに他なりません。しかし、感性メタで分析すれば同じ商品でも購入理由が判るため、今迄取り込めなかった層が見え、取り込むことが可能になるのです。

これらの顧客層対応の実店舗のコンセプトは「ここでしか買えない」になります。そして嗜好性メタは、高級・唯一無二・オーダー・品質・高機能・素材・使い心地等が挙げられますが商品だけでは駄目です。最高レベルのサービス、それも個々の顧客に合わせたサービスが必要不可欠です。

富裕層向けの商品・サービスはただの高級とか限定等では反応しません。店舗のオリジナルで最高の素材に最高の機能にデザイン、限定生産のカスタマイズ可能、家宝クラス、皇室御用達レベル、美術館レベルのモノもあれば、世界的有名デザイナー、人間国宝、新進デザイナーによるデザインや制作された商品です。

新品だけでなくアンティークやヴィンテージ品も必要です。誰にでも判りやすい一流品からマニア垂涎の的といった商品やマニア以外は見向きもしないものまで揃える必要があります。高収入層の趣味嗜好や希望に添える商品を提供するのです。

ビキューナのセーターやコート、鼈甲の眼鏡、スネークウッドの杖、海泡石のパイプ、等の最高の素材を使用した商品群は全て手創りの商品ですが、材料が手に入りにくく幻の商品と言われています。このような商品は欲しくてももはや材料が手に入らないとか、職人が廃業してしまった等の理由で簡単には手に入る商品ではありません。しかし、何処にでもある商品ではないので高額所得層のニーズは大きいのです。

コロナ禍からの復興2021№6

今後、ネットでも実店舗でもどちらでも買えるという事は、「便利」「誰でも」という点で従来の顧客層にも受け入れられるものである一方、MDの課題が大きく圧し掛かります。

MDを新しく構築するにあたり重要なのは、「感性メタ」で使われる「嗜好性」や「自慢&劣等感」を始めとする消費者のニーズを表すキーワードの選定です。従来の縦横レベルで括られる4フェイズレベルではなく、数百から数千のキーワードで選定された商品を新しい切り口で括らなければなりません

一概に「スポーティ」といっても個々の消費者が感じ取るイメージは全く違うという説明を前回しましたが、これから製作される商品は全て感性メタデータを付加して意味付けし、どこまでを「スポーティ」に含むかをマーチャンダイザーがセレクトする必要があります。

その為に新しく構築するMD担当や生産チームを組んだり、販売員組織を再編したり、販売員の評価方法を新構築したり、モノ創りから販売方法・顧客管理手法に至るまで、会社全体の組織を換える必要があります。そして全商品にメタデータを付与するという作業が待っています。

更には今あるブランド店舗を新しいMD店舗に変換するにはMD自体以外にも幾つか問題があります。まず店舗面積です。嗜好別MD店舗は大型化し広範囲から集客できる店舗になるはずです。その為今迄以上に同一商圏内に複数店舗は不必要となります。利便性を考えれば都心に、休日型にするなら郊外のSCにと複数のMD店舗が開発されなければなりませんが、今のブランド店舗総面積や総販売員数の1/10で運営は十分可能で効率化が進みます。

次はMDの発信方法です。その実店舗が何を発信しているのか単なるSNS発信だけでは十分ではありません。完全な顧客ニーズ管理の下、徹底した顧客管理が求められますので、専用の部署は不可欠になります。

同時にVMDの重要性が見直されるべきです。店舗にカメラを設置すれば顧客導線のみならず視線把握もでき、たとえ購入しなくても非購買分析ができ次回のモノ創りには大変参考になるはずです。

そして完璧な個々客の嗜好性把握と管理および分析です。これはAIを駆使して行います。同じスポーティでもベーシックよりかトレンディか購買顧客の購入理由の分析が欠かせません。次の購買に関わってくるからです。これらのデータから売れた理由や売れなかった理由、顧客の好みが何処にあるのか、などが見えてくるのです。

ここまで消費者が潜在的に嗜好するものが判り、それに対応するMDが組め、実店舗に反映されれば今迄の顧客や離れてしまった顧客、ネットのみを利用する顧客層までも取り込むことができるようになります。しかしこの「ネットでもリアルでも」買える店はわざわざ集客を図るにはまだまだ弱い部分があります。

ネットで済む部分は問題ありませんが、(何故なら、返品・取り換えが大変簡単且つ便利に行えるからです。ただし一部のネット販売は相変わらず返品させないために、難しい作業を要求しています)実店舗に来店させる為の必然性が未だ十分ではないのです。試着や手に取ってみるだけならネットで取り寄せ、気に入ったものだけを残し後は返品すれば済むのですから。やはり「わざわざ来店する」為の動機がなければ消費者は益々実店舗への来店は減り続けるでしょう。

それは顧客サイドから考えると良く理解できます。何故なら誰もが同一レベルの商品を同一レベルのサービスで望んでいる訳ではないからです。一般顧客のニーズ対応は新しいMDで新しく展開される実店舗で対応が十分ですが、従来のブランド型展開MD下ではターゲットの対象外とされた層に対する対応がなされていないからです。

コロナ禍からの復興2021№5

新しいマーケティングで顧客の詳細な感性まで把握した後は、その感性や顧客の潜在的ニーズに合った商品をどう展開するかという大きな問題が次に来ます。

従来の年齢別・収入別・テイスト別マーケティングでは今の多様化した顧客を分析する事はできず、大まかに括られた「そうであろう」顧客に「きっとこうだろう」という自己に都合の良い考えかたで作られた商品をブランド毎にブランドの都合で展開されているに過ぎないからです。

従来のブランド別展開では、使用する生地や縫製工場が一緒で、パタンナーまで共通、期初こそブランドコンセプトに則ったMD政策が取られますが、いざ商品化になると今期の売れ筋情報に大きく引きずられ、本来は違うはずのターゲットに同じような商品が提供される結果がここ数十年続いています。

こうして作られた商品はどこのブランドでも代り映えがせず、常に変わりゆく多様化した消費者のニーズに合致するはずもなく、コロナ禍以前から、安くて、簡単に返品取り換えができ、そこそこトレンドで、そこそこお洒落なユニクロやZARAに大きく商圏を奪われ続けているのです。しかもこれらブランドの形だけを真似て、販売スタイル、物流システム、サービスポリシーなど全く無視しても成功するはずは120%無いのです。

かつて無印良品が流行り始めた時、そのコンセプトの持つ凄さや支える強力なスタッフ陣を理解せず、「〇〇良品」だとか「良品××」だとか同じようなネーミングだけの商品が巷の大型スーパーや専門店に溢れかえったものですが、今や残っているものは一つとしてありません。

今迄の轍を踏まないためにもメーカーはモノ創りを一から考えなおし、形骸化してしまったブランドを一旦全部破棄し、新しい顧客感性ニーズ別のMD展開や店舗展開を構築すべきであります。新しく括られた顧客層は新しい明確なコンセプトで括らえ揃えられたた商品群で商品を選べなければなりません。

ネットでも実店舗でも買える事を前提にしたMDでは、「スポーティライフスタイル」「リラックスライフスタイル」「トレンディスタイル」等の新しい括りののMD店舗が想定されます。そこには一つのテイストで括られたMDではなく商品の持つ消費ニーズ対応要素をきちっと把握したうえで括られたMDであるべきです。

例えば「スポーティライフスタイル」には当然スポーティなデザイン・機能・素材は勿論、シャープな色柄で細く見える、着て楽、重ね着が楽、価格が適度、など幾つもの商品が持つ要素の中からどの要素で消費者が選ぶか、ある程度顧客の需要予測からポイントの高いモノを展開されるようになるでしょう。そしてこの店では決してAラインのワンピースは展開されません。

この店舗はネットでも買え実店舗でも買える為にフルサイズ・フラカラー・フルアイテムを擁する為に大型化し、ブランド別ブティック展開より確実に現顧客層を確保でき、且つ店舗を集約することにより人件費削減、売場家賃軽減のほか、関連販売やコーディネート販売の効果が期待できます。

この店舗ではただ衣料品を販売するのではなく「スポーティ」に暮らす為の関連商品も置く必要があります。スポーツの為のシューズは専門店に任せますが、お洒落な近所を歩く為のカジュアルシューズやソックス、爽やかな香りのルームフレグランス、アクセサリーや洋品小物も当然ディスプレイではなく売るための質量が展開されるでしょう。

この新しい実店舗の顧客層はこの店のファンで固定化されるのではなく、その時の気分で、あるいは潜在する感性のニーズに突き動かされて幾つかのコンセプトやMDの異なる店舗を渡り歩きます。

コロナ禍からの復興2021№4

従来のマスマーケティングでは、今の顧客ニーズを把握・対応する事は至難の業難です。ネット顧客を実店舗に呼び戻すことなど到底できません。しかし、「わざわざ来店してもらう」必然性がなければ実店舗の存在意義は残っていないのです。その必然性を生むためには以下の事が肝要になります。

一つ目は実店舗の持つ顧客各々が望むニーズを確実に正確に把握することです。その為には顧客をマスで捉えず、個々のニーズを捉えられる新しいマーケティング手法を開発・導入することです。二つ目はその新しく把握された顧客ニーズに対応し得る実店舗の新しいMD・サービスを再開発することです。

消費者個々のニーズを捉えるためには、小売業が溜め込んだが全く活用されていない膨大な顧客データを新しい手法でAIを活用し分析することが絶対条件の一つになります。消費者の欲しいモノとは従来のマーケティングでは得られない、消費者個々の「感性」※1に関するキーワードで括られ、商品に付帯されたメタデータにより提案されるものです。

※1「感性」で括られたメタデーを商品に付帯することで、買った商品からその顧客の趣味嗜好が想定できます。 購入点数が増えれば増える程精度は増します。従来の多変量解析とは比較にならない詳細さで顧客を分析可能となります。このデータを「感性メタデータ」と称します。

「スポーツ好きで、便利なSUVでよく夫婦で海へ行き、海辺のレストランでイタリアンを食べるのが好き。時々は地元の名もない食堂で地魚を食べ、帰りに道の駅へより地元名産品を探すのが好き。TPOを大事にし、カジュアルやきちっとした洋服もどちらも着こなしは上手いが、夫人は足が太いことを気にし長めの上着に普段はパンツを多用するが、お出かけはシャネルのロングジャケットにZARAのフェイクファーのショートスカートで。ご主人もユニクロのセーターにエルメスの45カレを好んで首に巻く。ホームパーティもよく開催し手料理を振舞い、皆でビオワイン比べするのが好き。実年齢は高いが、マインドは30~40歳」

こんな消費者に何を薦めるべきか?またどうやってこの消費者が何を望んでいるのか分析できるのでしょうか?

今迄の購買商品に感性メタデータを付与し、商品に付帯した感性メタデータを分析すれば、個の消費者がどうゆうモノを好み、どうゆうときに必要とし購入するか、どういゆコンプレックスを隠せる商材を基本的に望むか、どういうコーディネートをしたら冒険したコーディネートを楽しめるか、顧客の最新の趣味嗜好がAI分析で90%以上把握できるのです

従来の多変量解析の需要予測ではなく、感性メタデータAI分析では個々人の好みが商品を選択することで判別でき、同じ感性メタデータを持つ商品をべば、消費者の好みと一致する仕組みです。個々のデータを集積し、グループ化すれば商品に付帯された数十から数千までのメタデータで、似たようなメタデータで反応した消費者が違う商品を選定していたら(アイテムで)、其の商品を購入する確率が高く、販売員が推薦すれば購入する確率は格段と向上する仕組みです。

この感性メタデータを使った実店舗の品揃えは当然ブランド別ではなく、感性趣味嗜好別店舗となります。高級志向本物志向の消費者向け店舗、実用性・機能性志向消費者向け店舗、清潔志向消費者向け店舗等、感性に合わせた店舗展開することで、消費者ニーズに対応できることになります。とりあえず何でもおいているブランド店舗ではなく消費者が望んでいた商品が揃っている店舗になるのです。

販売員もこの店舗別に商品説明は勿論、コーディネート提案できるコンセルジュ化が求められ、その為の新たな接客技術の獲得が新しい課題となります。店舗もブランド別ではなく顧客嗜好別MD店舗に換えられるので、販売員は今迄以上に自分の顧客のことを知らなければなりません。そうなると給料も売上歩合制度が良いかもしれません。

コロナ禍からの復興2021 №3

AI技術の革新は加速度的に進み、従来では不可能どころか思いも付かない事が可能になりました。その結果人々の生活の便利さを広げただけでなく、社会の既成概念すら大きく変化させました。

特にネット販売の拡大は消費者の生活スタイルを一変させ、従来の価値観や小売り業の在り方も変えてしまいました。ファッションは試着しなければという人もまだまだいますが、多数のサイズや色を取り寄せ、自宅で試着し、中から欲しいものだけ残し後は返品すればよい、という新しい購入ルールが確実に拡大・定着し始めています。

結果、簡単に返品させない百貨店やブランドはもはや購入場所対象外となってしまい、それすら判らず「ネット販売」を金科玉条に戴いて、システム対応に投資もせず、カタログを電子化しただけのHPでは消費者の心は動かす事はできません。

百貨店や大型商業施設は「ネットと実店舗の融合」と称して、ネット商品の受け取り場にしたり、ネットでも店頭でも買える、ということを謳い文句にしていますが、そんな陳腐な政策で、コンビニやスーパーならいざ知らず、繁華街に位置する大型商業施設が行う施策としては陳腐です。そんな事でわざわざ高い電車賃と時間を掛けて来店はしません。

では実店舗は全く不要の存在になってしまうのでしょうか?

いや、そんな事は絶対ありません。その為には大型施設はまず集客する方法を考えねばならないのです。それも最新のAI技術を利用して、新しいマーケテイングを行い、MDを、実店舗を、販売ルールを、接客を、そして商品を一新させ、集客策を考えるべきなのです。早急に実店舗に顧客を誘導する手法を開発しなければ実店舗の存在意味は無くなってしまいます。

しかしコロナ禍で消費者は三密はおろか不要の外出を控えるためにわざわざ繁華街まで出てこないのではと思わのが一般的です。正にその考え方は消費者に浸透しています。

だからこそ、「わざわざ来店していただく必然」を実店舗は提供する事が絶対不可欠なのです。コロナ禍が終焉すれば、或いはこの状況に消費者が慣れれば消費者は戻ってくると考えている経営者が居れば、おめでたい限りです。

実店舗では商品ではなく、そこにいる販売員と話がしたくて来店する顧客や、販売員が進める商品を買えば安心という個客もたくさんいらっしゃいます。このような顧客は来店頻度も購買単価も高いのが特徴です。しかし「絶対数が少なく実店舗を維持しうる顧客数が足らない」と、ONWARDの鈴木社長は話されます。ONWARDはそれゆえ、撤退した店舗を年間数回POPUPで展開販売することにしたそうですが、実に懸命だと思います。

しかしそれだけでは、実店舗は従来のままでの存続は難しいでしょう。特に単一ブランド展開している店舗はネット販売に勝てるはずがありません。なぜなら実店舗は商品展開のアイテム数・色数・サイズ数、ブランドの全てにおいて、ネット販売で展開される物量とは比較にならないからです。

それでは、所有する全ブランドを集積させ、フルアイテム・フルサイズ・フルカラー揃えた店舗展開は可能でしょうか?ネット販売に対抗して「ネットでも、実店舗でも買える」という事はこういうことになります。しかし、郊外の大型店舗ならいざ知らず、都心や繁華街では利益の出ない店舗となるでしょう。しかし、「ショールーム」と割り切り宣伝費で運営されれば可能かもしれませんが、在庫品の処分を考えると頭の痛い問題であります。

ONWARDは今から10年前に今日が来ることを予想し、同じ商業施設にブランド毎にばらばらに店舗が展開されている不効率を解消しよう、お客様の利便性を向上させようと、全ブランドを1ブティックに集約した案を高島屋と研究を開始していました。それは一人の消費者が多様化・多層化しているという事実の下、年齢別・テイスト別・価格別等という分類では消費者を括る事はもはやできないという厳然たる事実の認識からでした。

今日これらの分類は進化した消費者を見分けるのには時代遅れの産物以外の何物でもありません。ブランドを排し、1か所にフルアイテム揃えた実店舗は販売員効率や商品製作上でも、また在庫管理面でも大変有効であるというシュミレーションが出ていましたが、実店舗全店で行うわけにはいきません。それだけの商品量を生産しても売り切る事が出来ず、SALEでも処分ができず作れば作るだけ赤字が増えるだけだからです。基本的に「マスマーケティング」ではこの顧客のニーズを把握し対応する事は出来ないのです。

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