コロナ禍からの復興2021№13

百貨店の優位性とは?

百貨店に消費者が期待するものは「一流品で百貨店でしか買えない商品とそれにふさわしい高級なサービス・空間環境」であることは前回述べました。それは決して「効率的」とか「万人向け」といったコンセプトではあり得ません。だからと言って「金持ち専用」とか「VIP専用」が良いという意味でも無いのです。

今日の多様化した消費者はただ安いからとか高いからとかでモノの価値を判断しません。自分にとって価値があると思えば価格は二の次で、欲しいと思ったモノであれば大枚を叩いても手に入れたいと思うのです。従来の消費者と違うのは何でもかんでも流行のモノは手に入れるとか、ブランドだから欲しいといった価値観では無いと言う点であることです。

ですから消費者が百貨店に期待するのは、富裕層だから高級品だとかブランド品指向すべきという従来のマーチャンダイジングとは一線を画するものということをまず認識すべきであります。現代の消費者は全身LVは嫌味で全身UNIQLOがはダサいと知っています。しかも今日ラグジュアリーブランド品を一つも持っていない人はこの日本において稀有な存在だと言えるでしょう。人々は一般層も富裕層も共にLVもUNIQLOも日々の生活の中で上手に使い分けしているのです。

現在の消費者は自身の明確な消費に対する価値観とライフスタイルを持ち、自身の価値観に合ったものを合った時に合った場所で買いたいのです。そこには宝探しをするような、誰にでもでは無く自分だけの価値観を満たしてくれるわくわく感が不可欠なのです。

消費者はネットにはネットでの利便性や価格性、専門店では専門店ならではの限定品やヴィンテージ品などの拘り品、量販店では価格と流行のバランスなどが求められ、百貨店では百貨店でしか買えないものを求めているのです。何処ででも、ネットでも買える商品をただ平然と並べても消費者には受けないのです。でも残念ながら今の百貨店にはその要望に応えることはできません。オリジナルを創っている百貨店はほぼ皆無となってしまいました。最近はメーカー商品の一部を変更しただけの自社限定品がせきのやまだからです。

品質も百貨店に望まれているのは一般品と同じでは無く、素材や縫製、デザインなどをはじめ「流石」と言われる逸品でなければなりません。専門店で売っている商品と同じものを売っているだけでは、消費者は百貨店に来店はしません。百貨店に来店を促すには「他では手に入らない」、ことが一つの重要な点になります。「わざわざ来店しなければ手に入らない」ものでも自分の価値観と合致するものであれば消費者は間違いなく来店し、購入するでしょう。

更には「ネットで売っていない」という事もこれからは重要な要素に成ってきます。簡単に24時間、何処ででも好きなように商品を選べて購入できる現代は大変便利である一方、個を大切にする消費者にとっては自己を主張する商品を探すことが重要な課題となっています。それは単に「他人と同じは嫌」というものから「自分の欲しいもの」を徹底して追求するという欲求に消費者が変化してきたからです。それはあくまで自己主張の一環であり、自分に取り「楽」なものの選びなのです。

かつて百貨店は元来世界中にバイヤーを派遣し、世界中から珍しいものや王侯貴族に愛された銘品、大量生産できない貴重な限定品などを探し出し消費者に提供してきました。「新しい」「珍しい」「素晴らしい」「これしかない」商品は百貨店でしか買えなかったのです。百貨店には世界中にパイプがありながら現在では全く活用されているとは言えません。何故なら大量生産品を大量販売することに慣れてしまい、少量限定品を販売することを止めてしまっているからです。残念なことです。

しかしこのバイイング能力は他業種では真似のできない重要な財産であります。営々と築いた海外とのパイプは一朝一夕にできるものでは無く、他業種の追随を許すものでは無いからです。この能力を再認識して再評価することが不可欠です。これが百貨店のもつ優位性の第1です。そして消費者の「拘り」を満足させるのです

次に百貨店が優れているところとは、外商顧客をはじめとする他業種と比べて圧倒的な数を誇る優良顧客を持っていることです。カード会員は大型店で百万単位ですし、郊外店でも数十万単位で保持しています。社会的地位の高い方や高額納税者はもちろん地方の有力者で百貨店の顧客でない方は居ないと言っても過言ではありません。

これらは他業種では真似のできない指向性の一定化した顧客層です。大根からカシミアまで購入する層なのです。この顧客層は利便性や価格によって集まった層では無く、百貨店のファンとも言える層で、購買手段が多様化・便利化した現在でも百貨店を支持するコアな層なのです。しかも一過性でなく親子2世代という層もかなりいるのです。他業種では見られない層なのです。

現在AI企業は消費者の会員化に莫大な費用と時間をかけています。なぜなら会員化は宝の山だからです。AIによる消費者の個分析は、消費者の嗜好性や需要予測などを核実に当てる事ができるようになっています。従来のような大まかなクラス分析では為しえなかった正確さで予測が可能となっていきました。このデータはあらゆる企業があらゆる分野で活用できるので膨大な利益を獲得できるのです。

単にモノを販売するだけでなく、需要予測やC to C、モノ創りの方向性決定やコラボの材料とあらゆることがビジネスに想定できるのです。

しかし百貨店はこの宝の山を何ら活用してはいません。せいぜいバーゲンの案内状を送る時に使用しているぐらいですが、この顧客層の活用の仕方により百貨店は他には無い圧倒的な強みを発揮できるはずなのです。AIによる多方面からの分析により、マスで捉えず個で捉え直せば(それが可能になるのです)、この消費者が好きなもの、欲しがるものの予想がつき、その嗜好性によりベーシック商品が好きなのか、或いはシンプルなデザインを好むのか、流行はどの程度追及するのかなどの詳細ニーズが予測できるので、無駄の無いニーズ対応が可能になるのです。

ネット販売と言ってカタログを電子化しただけで喜んでいる現状では為しえない、真のAI活用でピンポイントの顧客ニーズ対応が可能となるんです。しかもネットでは買えず、わざわざ来店しないと買えない情報が個々の消費者に個々向けにカスタマライズされ送られてくるのです。その精度は現在各販売員がせっせと書かされている新作のご案内レベルとは比較にならないほど、個ニーズに合致した情報となるのです。

この二つが百貨店の他業種には真似のできない圧倒的な強みなのです。

© 2015 Coup d'etat CLUB.