コロナ禍からの復興2021№5

新しいマーケティングで顧客の詳細な感性まで把握した後は、その感性や顧客の潜在的ニーズに合った商品をどう展開するかという大きな問題が次に来ます。

従来の年齢別・収入別・テイスト別マーケティングでは今の多様化した顧客を分析する事はできず、大まかに括られた「そうであろう」顧客に「きっとこうだろう」という自己に都合の良い考えかたで作られた商品をブランド毎にブランドの都合で展開されているに過ぎないからです。

従来のブランド別展開では、使用する生地や縫製工場が一緒で、パタンナーまで共通、期初こそブランドコンセプトに則ったMD政策が取られますが、いざ商品化になると今期の売れ筋情報に大きく引きずられ、本来は違うはずのターゲットに同じような商品が提供される結果がここ数十年続いています。

こうして作られた商品はどこのブランドでも代り映えがせず、常に変わりゆく多様化した消費者のニーズに合致するはずもなく、コロナ禍以前から、安くて、簡単に返品取り換えができ、そこそこトレンドで、そこそこお洒落なユニクロやZARAに大きく商圏を奪われ続けているのです。しかもこれらブランドの形だけを真似て、販売スタイル、物流システム、サービスポリシーなど全く無視しても成功するはずは120%無いのです。

かつて無印良品が流行り始めた時、そのコンセプトの持つ凄さや支える強力なスタッフ陣を理解せず、「〇〇良品」だとか「良品××」だとか同じようなネーミングだけの商品が巷の大型スーパーや専門店に溢れかえったものですが、今や残っているものは一つとしてありません。

今迄の轍を踏まないためにもメーカーはモノ創りを一から考えなおし、形骸化してしまったブランドを一旦全部破棄し、新しい顧客感性ニーズ別のMD展開や店舗展開を構築すべきであります。新しく括られた顧客層は新しい明確なコンセプトで括らえ揃えられたた商品群で商品を選べなければなりません。

ネットでも実店舗でも買える事を前提にしたMDでは、「スポーティライフスタイル」「リラックスライフスタイル」「トレンディスタイル」等の新しい括りののMD店舗が想定されます。そこには一つのテイストで括られたMDではなく商品の持つ消費ニーズ対応要素をきちっと把握したうえで括られたMDであるべきです。

例えば「スポーティライフスタイル」には当然スポーティなデザイン・機能・素材は勿論、シャープな色柄で細く見える、着て楽、重ね着が楽、価格が適度、など幾つもの商品が持つ要素の中からどの要素で消費者が選ぶか、ある程度顧客の需要予測からポイントの高いモノを展開されるようになるでしょう。そしてこの店では決してAラインのワンピースは展開されません。

この店舗はネットでも買え実店舗でも買える為にフルサイズ・フラカラー・フルアイテムを擁する為に大型化し、ブランド別ブティック展開より確実に現顧客層を確保でき、且つ店舗を集約することにより人件費削減、売場家賃軽減のほか、関連販売やコーディネート販売の効果が期待できます。

この店舗ではただ衣料品を販売するのではなく「スポーティ」に暮らす為の関連商品も置く必要があります。スポーツの為のシューズは専門店に任せますが、お洒落な近所を歩く為のカジュアルシューズやソックス、爽やかな香りのルームフレグランス、アクセサリーや洋品小物も当然ディスプレイではなく売るための質量が展開されるでしょう。

この新しい実店舗の顧客層はこの店のファンで固定化されるのではなく、その時の気分で、あるいは潜在する感性のニーズに突き動かされて幾つかのコンセプトやMDの異なる店舗を渡り歩きます。

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