コロナ禍からの復興2021№6
今後、ネットでも実店舗でもどちらでも買えるという事は、「便利」「誰でも」という点で従来の顧客層にも受け入れられるものである一方、MDの課題が大きく圧し掛かります。
MDを新しく構築するにあたり重要なのは、「感性メタ」で使われる「嗜好性」や「自慢&劣等感」を始めとする消費者のニーズを表すキーワードの選定です。従来の縦横レベルで括られる4フェイズレベルではなく、数百から数千のキーワードで選定された商品を新しい切り口で括らなければなりません。
一概に「スポーティ」といっても個々の消費者が感じ取るイメージは全く違うという説明を前回しましたが、これから製作される商品は全て感性メタデータを付加して意味付けし、どこまでを「スポーティ」に含むかをマーチャンダイザーがセレクトする必要があります。
その為に新しく構築するMD担当や生産チームを組んだり、販売員組織を再編したり、販売員の評価方法を新構築したり、モノ創りから販売方法・顧客管理手法に至るまで、会社全体の組織を換える必要があります。そして全商品にメタデータを付与するという作業が待っています。
更には今あるブランド店舗を新しいMD店舗に変換するにはMD自体以外にも幾つか問題があります。まず店舗面積です。嗜好別MD店舗は大型化し広範囲から集客できる店舗になるはずです。その為今迄以上に同一商圏内に複数店舗は不必要となります。利便性を考えれば都心に、休日型にするなら郊外のSCにと複数のMD店舗が開発されなければなりませんが、今のブランド店舗総面積や総販売員数の1/10で運営は十分可能で効率化が進みます。
次はMDの発信方法です。その実店舗が何を発信しているのか単なるSNS発信だけでは十分ではありません。完全な顧客ニーズ管理の下、徹底した顧客管理が求められますので、専用の部署は不可欠になります。
同時にVMDの重要性が見直されるべきです。店舗にカメラを設置すれば顧客導線のみならず視線把握もでき、たとえ購入しなくても非購買分析ができ次回のモノ創りには大変参考になるはずです。
そして完璧な個々客の嗜好性把握と管理および分析です。これはAIを駆使して行います。同じスポーティでもベーシックよりかトレンディか購買顧客の購入理由の分析が欠かせません。次の購買に関わってくるからです。これらのデータから売れた理由や売れなかった理由、顧客の好みが何処にあるのか、などが見えてくるのです。
ここまで消費者が潜在的に嗜好するものが判り、それに対応するMDが組め、実店舗に反映されれば今迄の顧客や離れてしまった顧客、ネットのみを利用する顧客層までも取り込むことができるようになります。しかしこの「ネットでもリアルでも」買える店はわざわざ集客を図るにはまだまだ弱い部分があります。
ネットで済む部分は問題ありませんが、(何故なら、返品・取り換えが大変簡単且つ便利に行えるからです。ただし一部のネット販売は相変わらず返品させないために、難しい作業を要求しています)実店舗に来店させる為の必然性が未だ十分ではないのです。試着や手に取ってみるだけならネットで取り寄せ、気に入ったものだけを残し後は返品すれば済むのですから。やはり「わざわざ来店する」為の動機がなければ消費者は益々実店舗への来店は減り続けるでしょう。
それは顧客サイドから考えると良く理解できます。何故なら誰もが同一レベルの商品を同一レベルのサービスで望んでいる訳ではないからです。一般顧客のニーズ対応は新しいMDで新しく展開される実店舗で対応が十分ですが、従来のブランド型展開MD下ではターゲットの対象外とされた層に対する対応がなされていないからです。