新しい時代の小売り業№3

サラリーマン化した、変化を嫌う社会   ( 続き)

今回のIT革命がもたらす意味と意義と可能性を理解し、自社に活用しようとした企業は大規模企業になればなるほど少ないような気がします。その最大の原因は日本の経営層に在ります。

IT技術の革命的進歩は単なる作業の効率化だけではなく、まさにSDGsを実現させる為の有力な手段そのものであり、働き方の改革による人々の幸せの追及や、地球環境への負荷削減、価値観の多様化への許容性拡大、など社会の在り方を大きく変える力を持っており、人々は「今まさに社会は変わらなくてはならない」と認識しています。LGBTQに対する意識やモノ寄りからコトよりなど人々の意識はコロナ禍前から少しづつ変わってきていました。しかし、既存企業の経営層は残念ながら変わってきているとは言えないのが現状です。

今迄我が国は経済一流、政治は三流と言われてきました。世界第二の経済大国へ成長し、日本の生産品は世界を席巻していたからです。それに比べ政治は腐敗しきった与党に無能な野党が万年青年のごとく青臭いカビの生えた教条主義とわいろで成り立っていたからです。現在我が国の製品で世界を席巻しているものは漫画とゲームしかありません。それすら中国や新興国のユニコーン企業には直ぐにも抜かれそうです。

日本の成長はひとえに国民の勤勉性や有能な官僚組織に支えられてきたものです。しかし今回のIT革命の進捗スピードはそれらの能力を遥に超えているのです。従来の延長線上の改革レベルでは到底世界の変化スピードに付いてゆけず、新しい技術を開発・運用するにはあまりにも過去の栄光に縋った前年踏襲主義で、所謂サラリーマン化した社会では到底改革スピードは周回遅れ以上の差が世界とできてしまっているのです。

日本の経営層がIT革命の本質を理解していないのは戦後の完全なガラパゴス的進化を是とし、今更革命的変化などに興味を持たず前年踏襲主義が最良とばかりに官僚はもちろん経済界全体を席巻しているからです。国境や時間の概念を根本から変えてしまったITの無限の可能性に気付けば今日のような対応で満足しているはずが在りません。

口先だけのDXではなく、急速に変化したマーケット状況や消費者ニーズ、ITを活用した全く新しい物流体制に生産技術、従来のマス対応ではなく完全な個対応の時代に自社がどうするべきか経営層が勉強すべきなのです。しかし経営層は未知のノウハウや今迄の経験が生かせないことに対しては否定から入ります。新技術をシステム部が提案してもITの何たるかすら理解していない経営層は、会議で「娘に聞いたが君が言っていることは未来はそうなるということで現在では無い」などと平気で言うのです。そして部下の意見を封じることで自身の存在意義が示されたと悦に入るのです。

まず経営層は日本型の年功序列型社会の総合職として経験を積んだだけで、専門分野を持たず、英語も喋れず、ましてや近年経営層で一番重要な要素と言われている「規範的判断力」不足に陥っている人が大部分であります。長年米国経済界が提唱した「企業は株主の為に存在する」という悪しき資本主義の「金儲け」しか見えない=「株主資本主義」の奴隷でしかないのです。

その米国経済界が株主資本主義からの決別を宣言し、「ステークホルダー資本主義」=従業員や地域社会などの利益を尊重した事業運営主義に取り組むと高らかに新時代の消費者のニーズを読んだ声明を日本の財界は全く無視したのでした。結果、世界は大きく環境問題を初めとするSDGsへ大きく舵をきったにも関わらず、我が国の経済界は口先だけのSDGsやDXを、その中身が何かも理解していないにもかかわらず騒いでいるのが現実です。

独逸では経営層の45%が、米国では62%が専門分野での博士号やMBAを取得しており、世界に目を向け日々自社の自社の存在意義と使命を考えています。日本ではたった6%しか専門領域に知識をもった経営層は存在していません。「お客様第一主義」を掲げる企業は多いですがほとんどが嘘です。どうやって顧客満足を得るかなど真剣に健闘している企業を私は知りません。

全ての日本衰退原因は企業の問題意識と情報収集の意識の差に表れているのです。それは企業のトップ達が如何に時代の変化を読めていないかによります。60代、70代が企業を引っ張っていける時代では無いのです。明治維新は20代、30代の若者達が時代を敏感に感じ取り、大局的に国の在り方を考えた結果成しえたものです。今回の技術革新はまさに令和維新と言えるレベルの変革を行わなければ生き残れないのです。その認識が果たしてどれだけの人々が持っているでしょうか。

今日、大手企業は急速に業績を回復し未曽有の利益を生んでいます。経団連としては何にもしなくても良かった、と胸をなで下ろしていることでしょう。しかし、パンデミックによる世界的規模の経済破綻が今後無いとは言えません。パンデミック以外でもIT機器普及による世界的規模でのハッキングテロやサイバーテロが世界経済にダメージを与える可能性は大きいものが在ります。それ以上に第3次世界大戦はサイバー戦争で、ロシアや北朝鮮はすでに実戦状態に入っていると言えます。自社のネット防衛は十分ですか?もはや企業のトップは他人任せにしては自社を守ることはできません。

新しい時代の小売り業№2

二つ目の弱点は、既存の各種行政組織や上場企業が時代の大きな変化を読めず、かつ自分達の既得権を守るために変化を嫌い、業界毎や地域毎に多数の「規制」を敷き新しいことに前向きに取り組まない、社長から新入社員までサラリーマン化していることです。

ITの技術革新は第4次産業革命として社会を根幹から変える力を持っています。独逸が「インダストリー4.0」としてIOT普及を国家プロジェクトとして2011年に発表されたのが始まりでした。この10年で産業界のコンピューター化による効率生産化、品質の安定化や向上、改善も大幅に進化しました。社会は生活の利便性だけでなく生活様式を一変させ、新規に登場する企業と時代に対応できず消えていく企業が明確化しました。

これからは更にビッグデータやAIによる最新バイオテクノロジーの融合により、医療・工業・農業・エネルギー産業など様々な分野で活用できると期待されています。また人口問題・食糧問題・資源エネルギー問題・高齢化社会といった現在社会が直面する課題解決策になるうるとして期待されています。

このテクノロジーの最大の効果は、地球環境を保全し貧しい隣人を恒常的に援助し自立することを促し、人々が皆安全に楽しく暮らせる社会を皆で創っていこうという気運を技術面で協力に後押しすることができるという点です。これからの社会のキーワードである脱炭素化やSGDsはこれらのIT技術無くしては成しえないことなのです。SDGsを企業の旗印に掲げるには今あるITテクノロジーを十分理解して、自社にどの様に活用できるか考えなければなりません。それがまず第一歩なのです。

しかし、技術は進化してもそれを使う人間が変化に付いていけなければ全く意味が在りません。今回のコロナ禍では三密を避ける為にリモートが初めて導入されましたが、一部上場企業の日本を代表する大企業の社長が「リモートは効率を下げる」として廃止し、全社員出社に戻したそうです。そこにはSGDsの意味を全く理解していない経営者の姿が見えてきます。

単にコロナ禍中での生産性維持を従来通りのやり方で維持しようとすることは、戦前の日本の精神論そのものです。満員電車で通勤させ、万が一にも職場にコロナウィルスを持ち込みクラスターが発生した時のリスクを考えなかったのでしょうか?それより災い転じて福となすとばかりリモートを積極的に取り入れ、将来の働き方改革をテストし、本社ビル維持費や通勤費更には業務の新しい評価制度導入や新しい個人予算の組み方の研究などに繋げようとは思わなかったのでしょうか?

医師会は自粛を強制しながらこの2年間、緊急時の医療体制構築を怠ってきました。既存の病院施設に責任の全てを押し付け、「残りのベッド数がどうのこうの」しか言いません。一般診療が崩壊すると脅しておきながら、リモート初診は医師の収入減になるからと頑なに反対しています。薬剤師や歯科医師による接種に対しても、医師の問診が不可欠故見た目ない方針を出し、同時大規模接種を妨害しました。また、看護師免許を持ちながら家庭に埋もれている方々を再度臨時的に再雇用する制度を立ち上げ、人手の足らない病院や大規模接種会場に派遣するなどの対策は考慮しなかったのでしょうか?これも臨時収入より所得税が上回るからと実施されませんでした。

大量の外国人をオリンピックで見込んでいたタクシー業界は、人の代わりに荷物を運ぼうと希望したら運送業界の規制の前に敢無く計画は頓挫しました。結局は運送業界保護の為の各種「規制」の壁が立ちはだかったのです。在宅が増えた結果、宅配業務が大幅に増え、人手が足らず配送が大幅に遅れているにも拘らず、既得権益団体は大きく改革の前に立ちふさがったのです。

また経営者団体である経団連は今回のコロナ禍に企業としてどう政府に協力するのか、あるいは独自の対策をだすのか、そのどちらもしませんでした。リモートするのに端末が無い、或いは安全性に問題がある、などの場合に緊急対策として産業界全体での対応策を提案すらしていないのです。人流を避ける為に各社のリモート率発表や在宅勤務率などを毎週発表することさえしません。中小・零細企業は実際出社しなければ業種は沢山あります。しかし大手は交代出社でも十分企業として回っていった筈です。零細企業にも補助金支給以外に共同で使えるクラウド提供を行うとか、共有ソフトを提供するとか、何かできたはずなのですが、やはり業界TOPがITに対する知識や認識が無ければどうしようもないのです。

またリモートは家庭環境でのPCでは秘密保持上問題があるという意見が多数ありました。今迄その問題が放置されていたのは家庭での業務遂行が想定外だっただけではありません。自社のネットワークの安全対策が不十分だという認識が企業上層部に無かったからです。何処でも、何時でも、誰からでもアクセスでき、自由にデータや情報を取れるメリットと、秘密データや情報を全く外部から取りこめてしまう危険性を真剣に検討してこなかったつけが回ってきたとも言えるでしょう。これも企業のシステム担当がシステム担当役員に説明しても理解されないからだと、かつて言っていたことを思い出します。

新しい時代の小売り業№1

コロナ禍により判明した日本社会の弱点が3つあります。

一つ目はデジタル化の世界的流れから全く取り残されていたこと。二つ目は政治家を初め上場企業のトップが時代の流れを読めず変化を嫌い前年実績主義を重んじるサラリーマン国家に成り下がり果てていたこと。三つ目は世界一の製造業国家というのは幻影であったことの三つです。

一つ目のデジタル化社会への社会構造の変換は順調かつ速やかに行われているものと一般庶民は思っていた筈です。今やどの家庭にもPCは存在し、スマートフォンの普及率は9割を超えているからです。完全なる生活必需品であり、無くてはならない存在だからです。旧来のTVよりNet配信を、地図よりgooglマップを、shopping行くよりAmazonのほうが便利でお買い得、というように生活のいたる所でIT化が入り込んでいるからです。

しかしそこには大きな落とし穴が在りました。それは行政です。

民間はとっくにIT化にどっぷり漬かっていましたが、行政はそうではなかったのです。予算の壁?いやそうではありません。縦割り行政の悪弊が大きく表れた結果です。各省庁のデジタル化推進を横断して調整・進捗させる部署が無いため、各省庁、各組織、各機関、各部門、毎に勝手な機器導入やソフト開発を行ったために各機関が連携を取り速やかに今回のような危機対処が取れないのです。

データ化された名簿をメールで送信しても、それをプリントアウトして各担当に配布するなどといった行為は日常茶飯事に行われ、そもそも全ての資料がデータ化されていない為、全ての作業が手作業で行われる羽目になったのです。結果、ワクチンの適正配布計画もできず、飲食や物販、観光業など休業させるだけさせておいて、補助金などは半年近い遅れでの支給といった状況です。

選挙目当ての小池都知事などは毎日TVに出演し自粛要請ばかりバカの一つ覚えで言いますが、それと対に報告されるべき補助金については一言も発言しません。補助金配布作業は一から申請に対して手作業で行っており、実際に補助金が下りるまで早くて三か月、遅いところは六か月などというところもあります。補助金なしに営業中止を求める事は零細・中小企業にとり死ねという事と同義語なのです。やるべきことをやらず国民に我慢を強いるだけの無能な政治家や官僚はいりません。

また大衆受けを狙った一部政党の一律同額補助金配布は三ちゃん商業には利益をもたらし、従業員を一人でも抱えた企業はもはや青息吐息の状態が続いています。これもきちんと行政が企業内容や情報を把握していれば、例えば納税金額に応じて補償金を出すとか、社員数に応じて出すとかできたはずです。

これも正規社員を少なくして非正規社員を増やし賃金効率を上げようとする経営者の厭らしさが垣間見れます。同時に既存利益を守ろうとする労働組合が非正規社員や実習生の受け入れを拒否し、あらゆる規制を敷いているという側面もあり、これは第二の項目で詳しく話したいと思います。

要するに行政は企業の個別データも、個人データもばらばらでしか所有せず、それも法律的に個人情報保護の下、無制限に野放しされており、今回のような非常事態に対欧ができないでいたのです。個人の自由を貴ぶ米国でさえ社会保障番号で、他国は身分証明書で個人を管理しています。わが国だけができていないのが現実です。政府がかつて推進しようとした「マイ№制度」は野党やマスゴミの「人権侵害だ」という公共性を無視した独特の自己論理の前に頓挫し、結果、今回のような事態には全くその機能を発揮することができませんでした。

その根本問題はIT時代に個人情報をどう扱うか、「誰が、どこの範囲まで利用可能か」といった基本問題の検討が成されずただ作業にPCを導入しさえすればデジタル化という認識しか無い政治家や行政の責任であります。個人情報保護と公共性の保護という最大の課題は、デジタル化社会対応の為に如何に効率よくデータを収集し、クラウドで連結し、検索しやすくするかという機能とルールの確立と、個人データの保護をどこの機関がどこまでどの様に規制するかという事を透明性を持った法律に明確化することです。特に行政では組織を横断した基本法の策定が望まれます。

世界の国々では政府が率先してこの新時代の革命的技術をどう使うか、そのためのルールをどう創るか、という大きな視点で研究しています。世界が時間と空間の壁が取り払われたので国家の管理という今迄の概念では企業や個人を把握することができなくなるからです。特に税金という国家収入面で大きな影響が在るからです。GAFAをはじめ国家をしのぐ力を持ち、何処の国に所属しているか不明な巨大企業が出現し始めたからです。

それはこれらの大企業の資金源が世界中の人々の行動データであることから、一国家が当該企業の経済活動を規制できなくなっているからです。そのため、個人データをどの様に管理し、どの様に利用させるかが国家の大きな関心毎になっているのです。中共のように国家が企業が集めたデータを全て把握できるよう法律を制定する動きも出始めています。こうなるともはや経済活動を超え、思想統制する可能となる国家統制が可能となってきます。

だからこそ、個人データはどう扱われるべきか、腫れ物を触るように伸長に、だけれど早急に法的整備を図る必要が在るのです。もはやPCを導入すればデジタル化などというレベルでは世界から取り残されるどころか、巨大企業に食い物にされることは目に見えているのです。

コロナ禍からの復興2021№19

先進国の中で日本の労働賃金は低いと言われてきました。狭い国土で一つの仕事を皆で分け合うために低賃金が定着したのです。問屋制度はその代表例で、生産者から消費者に直接商品を流せばよいのに敢えて中間に位置し搾取する業態は日本ならではのものです。総合商社などはその究極の形かもしれません。同じようにメーカーに場所貸しで利益を取っている百貨店は世界中から無くなり、残っているのは日本と米国の一部くらいになってしまいました。

ネット販売拡大が生産者と消費者の直接売買を可能とする時代となり、これからもっと隆盛になることは間違いありません。何処でも何時でも買える商材はいちいち中間集積業者に頼らずとも消費者は直接商品を選び購入できるのです。消費者の生活様式は大きく変わるはずです。そして直接商品を配送する為にドローンやウーバーを初めとする新規配送形態の業種が更に伸びていくでしょう。

しかし生活が一変する可能性を占めた新しい技術と、その技術を活用して企業中心だった今迄の働き方を改革するDXを企業が真剣に取り組む為には最大の弊害になるのが既得権益を守るために造られた各種「規制」です。デジタル化の最大の障害はこの「規制」です。この規制は利益追求のためには消費者も社員も利益確保のために存在するという間違った資本主義を信奉する経営者や、利権で楽して利益を追求する一部の既得権者ががっちり守っているのです。

現在、タクシーは物だけを運ぶ事は規制されできません。(コロナ禍下では期間限定の例外規定で許可)      ネット販売が自家需で増加し配送業種は人で不足で汲々なのにタクシーは乗車客がおらず乗務員は無駄に休まされており、企業は政府から補償金を血税から取っているのが現状です。モノを運べれば多少でも利益になるにもかかわらず、ウィンウィンなのに規制の壁がそれを妨げています。

ドローンも国内で飛ばせる場所が規制の壁でほとんど無く、やむなく中国に会社を移すユニコーン企業もあります。自動運転技術も実験する許可が国内では下りず、中国などに大きく後れを取る原因になっています。また、PCで遠隔医療を行えれば過疎地や移動手段が少ない地方に取り大きなメリットになるのですが、初診は医者と対面診療でなければならないという既得権者保護のための規制の壁があります。

このようにDXを推進しようとすると、実に数多くの「規制」でほとんど実行できないことに気が付くでしょう。日本の経営層は低賃金で社員をこき使うことばかり考えず、真剣に社員や非正規雇用の方々の幸せを考え、積極的に政府に規制解除を求める事が不可欠です。既得権を持つ組織は速やかに改変・解散し、新時代の組織に生まれ変わらせなければ日本は生き残ることはできないでしょう。

癌は古い体質の老害経営層とサラリーマン化した官僚組織です。昨今、官邸主導で規制を撤廃する動きがあることは非常に重要な良いことです。官僚や既得権益組織の抵抗が想像されますが、是非ここは徹底して排除し、新しいデジタル社会を早急に構築できるよう頑張ってもらいたいものです。そして役員は30歳でも良いではありませんか。

明治維新は20歳代、30歳代の若者が中心いなって成し遂げた偉業です。400年続いた侍の時代崩壊を誰が想像したことでしょう。今こそ社会を新技術によって変革する時です。令和維新断行は今です。

コロナ禍からの復興2021№18

コロナ禍後の社会はデジタル化、とりわけDXが重要と言われていますが具体的に企業は何をするのでしょう?

「DX=デジタルトランスメーション」とは「企業を取り巻く市場環境のデジタル化に対応するため、企業が行うあらゆる経済活動やそれを構成するビジネスモデル、並びに組織・文化・制度といった企業そのものを変革していく一連の取り組みである」と言われています。

これにより企業はデジタル技術を積極的に導入しよりスピーディに、効率的に仕事を進めようとしていますが、目先のデジタル化では決して上手くいきません。今迄も機械化による効率化と称してさんざん行ってきたレベルだからです。このDXには忘れられがちですが根本理念があります。それは「デジタル技術が全ての人々の生活を、あらゆる方向でより良い方向に変化させる」ことを目的にすることです。

これは決して企業が利益を拡大させるための施策では無く、全ての人々がより良い生活を送れるためのものなので、機械化や効率化による人員削減策では無いことを肝に銘ずるべきです。ともすると経営層は利益最優先の考え方をしますが、目の前のお客様や自社で働く社員が楽しく喜んでもらう事が全ての発想の根本に在るべきで、決して株主ん為に働く等という間違った思想は資本主義的悪の最たるものであることを認識すべきです。※1

※1  2019年8月米経済団体ビジネス・ラウンドテーブルで団体会長のJPモルガンのCEOが株主最優先ではなく、顧客、従業員、取引先、地域社会、株主といった全ての利害関係者の利益に配慮し、長期的に企業価値向上に取り組むと声明を出したこと。当該団体は1997年には「企業は株主のために存在する」という企業統治原則を発表している。

このDXの根本思想を日本の経営者は理解しているとは思えません。何をどうしてよいのやら右往左往状態です。今迄利益追求こそが株主に対する義務だとばかり米国を盲信してきた経営者達は、自社の社員の幸福だとか社会貢献などは適当にお茶を濁していれば良い問題だったからです。

そんな中で日本商工会議所会頭は政府が労働最低賃金を28円引き上げを決めたことに対し「勝手に決めるな!」と激怒した会見を行いました。少し前は日立の社長が「リモートは効率が低下するので全員出社すべし」とテレワークを全面廃止するなど、時代を全く理解していない経営者が数多くいます。というよりほとんどの上場企業の役員は時代が大きく変化し、令和維新と言えるくらいの変革期に在るという事を理解してはいないのが事実ではないでしょうか?

コロナ禍で芽生えたリモートは世界中で国境を越えて仕事を発注する動きが加速しています。一つは自国の労働者の賃金を低いままに抑えるためではなく、働き手が渡航中止や帰国を余儀なくされても事業を継続できるようにするためです。もう一つは優秀な人材を確保するため世界に会社を開放しているのです。そのため、優秀でかつ国内より安い人件費で人材を確保することが可能になっています。

対して仕事もしない、できない社員を高賃金で組合の言うなりに雇うより、高給でも即戦力になる人材を世界中から求める、という仕事の進め方が技術の進歩で可能になったのです。にもかかわらず、いったん就職したら組合の保護下に既得権とばかり、「遅れず、休まず、働かず」という役人に代表されるサラリーマン化が身体中に染みた職員を抱えていることのメリットはもはや無いという事を経営層は肝に銘ずることです。

組合や官僚は生涯雇用制度の権益の下、春闘などという時代遅れの賃上げ闘争では無く、社員のスキルアップのための社会人大学への積極的派遣や、社内教育機会を充実させ企業としての競争力を人的能力に求めていく時代になったことを理解すべきです。もはや年齢差も国境も言葉の壁すら無いのです。

もはや技術の進化は国境すら超越し、ビジネスを新の意味で国際化させているのです。それに気付けない経営者や組合はもはや存在意義はありません。これからは利益至上主義の悪しき資本主義ではなく、地球環境に優しく人々に心地よい社会を創設するためにAIを初めとする新技術を有効に活用し、より便利により分かり易い社会を目指すべきでしょう。目先の既得権益を守るだけの時代は終わったのです。

コロナ禍からの復興2021№17

コロナ禍後に消費者はどう変わるのでしょう。

SDGsやDXという文字が新聞を開けば躍っています。SDGsやDXを行わない企業には株主は投資せず、金融機関も資金提供をしないと言っています。地球の環境問題や、脱炭素に貢献しない企業には社会は背を向けるとばかり、既存企業をはじめ新興企業はこの言葉を金科玉条に資金を集めています。

消費者も「何か地球や自分達の環境に貢献したい」と多少価格が高くても自然素材が材料の商品を購入したり、製造過程で二酸化炭素を排出しない方法で造られた商材を選んでいます。所謂「市民」化で欧州では意識の高い独逸や仏蘭西の市民階層=中産階級は早くからこの行動を取っていました。自分達の世界は自分達で守るという意識です。

日本の消費者は2極化で貧困層が増加していると言われますが、教育水準や生活水準は他国のどれよりも高いものがあり、欧米諸国に負けない社会意識の高さがあります。今迄の主価値観であった「皆と一緒」が良いとされた時代は終わり、自己表現や自分の求める価値を追求するライフスタイル型生活が若い世代を中心に徐々に伸長しつつあります。

結果、コロナ禍により消費者は今迄以上に自分のライフスタイルについて明確な意思を持つでしょう。テレワークや週一出勤、時短勤務体系、などを今迄は絵空事で会社も組合も消費者も真剣に考えてこなかった事柄が現実に起こり、実際デジタル化技術が圧倒的に進歩しているにもかかわらず、我が国では古い頭の官僚の前年主義と、意味の無い春闘だけで1年過ごす労働貴族の組合幹部、メール一つ打てない上場企業の役員と国会議員達の前にデジタルどころか、効率化とは人員削減と同義語でしか捉えられていない現状に消費者そっぽを向くでしょう。

一流国と信じて疑わなかった日本がデジタルでは完全に世界に、いやアジアからでも後れを取っている現実をまざまざ見せつけられた消費者は、それでもなおコロナ禍が過ぎれば社会は元に戻ると信じているこれら百害あって一利なしの旧社会の上級構成員が牛耳る実態を目のあたりにし、「企業や国は信用ならず、自分のことは自分で守るしか無い」と少ない給料を貯蓄に回してきたことは決して無駄ではなかったと確信するに至っています。

マイ№制度は個人情報の漏洩だからと抵抗する一部外国籍の訳の分からない人権擁護派と称する輩や、何もしないで組合員の会費で飲み食いしている形骸化した各種組合幹部たち、テレワークでは作業効率が下がるとして在宅勤務を拝して全員出社に切り替えた一部上場企業の超名門企業社長、など新しいデジタル社会には不要な連中が蔓延る社会はとてもとても国際社会で生き残ることはできません。

消費者達は自己のライフスタイルを確立し、一度しか無い人生をどうやって過ごすか、を全ての根幹に据え、自己の考えと相容れぬものは毅然として切り捨てていくことでしょう。断捨離から始まった無用なモノを持たない生活は、自分に理解の無い会社まで切り捨てようとしているのです。

もはや収入の多寡が生活の中心では無くなりつつあります。確かにお金は大事で1円でも多く貰いたいのは事実ですが、そのために2時間も満員電車に揺られ、無駄な残業を強いられ、休日まで接待に駆り出されるような会社に全く未練は無いのです。それより家族と一緒の時間を大切にしたり、自分の趣味の時間を取ったり、夫婦の会話を楽しみにしたり、自分の人生を自分で切り開くことに生きがいを感じていくのです。

良い学校に入り、良い企業に就職し、順々に出世していき、運が良ければ役職に就ける。そのためには家庭も自分も時間も生活も全て犠牲にする今迄の生活に消費者が戻りたいと思うはずがありません。そんな生活モデルは誰も望まないのです。

しかし、老害とも言える高齢者の経営層はこの事実を認めようとはしません。利害関係が強い組合幹部も外国の影響下にある所謂特権階級もこの事実を認め、積極的に社会構造を変えようとはしないのです。だいたい、日本の企業で一体どれくらいが本当にSDGsを理解し、DXを実行しようとしているでしょう?大多数の企業TOPは言葉遊びでお茶を濁そうとしているだけです。

かつてネットが出始めたころ、その意味も意義も可能性も理解できなかった老害たちは、寄ってたかって導入を妨害したものです。自分達が知らないものは怖いのです。今回も同じことです。

コロナ禍からの復興2021№16

コロナ禍が収まればまた元の生活が戻ってくるのでしょうか?

コロナ禍が終息すればまた元の生活が戻ってくるという経済評論家や経営者は数多くいます。人々は今迄以上に触れ合いを求め街に出るためより活性化するという人さえいます。しかしそれは本当でしょうか?

確かに経済は復活し消費も堅調に戻るでしょう。でもその中身が違う事に気付かねばなりません。コロナ禍による経済の世界的停滞は確かにその通りですが、我が国の経済はコロナ禍前から低下し始めていたことを忘れてはなりません。デフレ経済が定着し、モノの価格は低く抑えられていたどころか年々下がっていたかもしれません。実際、2011年度から消費者物価指数はほとんどの品目で前年を切り続けていました。

衣料分野でもUNIQLOによる価格破壊やZARAやH&Mによるファストファッションが急成長を果たし、旧大手は全面的に売り上げを落とし続けていました。ホテル業界もアパホテルや東横インなどのビジネスホテル系が出張族以外にも一般旅行客を囲い込み最安値は¥2,980まで出現したほどです。

消費者は「地球に優しい」「断捨離」「環境保護に協力」などでゴミ掃除のボランティアや余計なモノを持たない生活が主流になりつつあり、「モノ寄りからコト寄り」へ消費が大きくシフトし始めていた矢先にコロナ禍が始まったのです。銀座で豪遊するより家族でキャンプに行き、家族の時間を大切にする、貯金を叩いて全身ブランド品に身を包むより、無名のブランドの商品を上手にコーディネートする、など他人と同一で或ることに安心するのではなく、自分のライフスタイルをきちんと持ちそれを楽しむことが素敵な時代と認識しだしたのです。

消費者はコロナ禍後は我慢していた消費欲が一挙に爆発するでしょうが、あくまで一過性で直ぐに自分のライフスタイルを取り戻すでしょう。そうなった時に小売り各社の対策は万全なのでしょうか?コロナ禍前では「安くなければ売れない」とばかりに低価格競争のみが生き残る唯一の戦略とバカの一つ覚えに価格を下げ続けた結果、利益率は低下し、在庫は膨らみ売り上げのみを予算化していたほとんどの企業が赤字に転落し復活を果たせずにいたことを思い出すべきでしょう。

コロナ禍の下、来るべく時代に対応すべくAI活用策や顧客データ活用策、新しい販売方法の開発に全く新しいMDの構築、新規販売戦略・宣伝戦略・SNS活用戦略などを研究開発したでしょうか?売上予算の他に新規顧客獲得予算、来店頻度向上、購買点数増加、購買単価向上などの策を検討かつ実用化させたでしょうか

口を開けばネットとリアルの融合と100年前の念仏を唱えるだけの経営層はもはやコロナ禍後の新時代には対応できません。総退陣して30歳、40歳代の若手を起用すべきです。メール一つ十分使いこなせない役員はもはや退任してもらい、若い技能と情報、それに知識を持った世代が次の時代を切り開くべきなのです。

そのためには組織の在り方、会議の在り方、個人目標を明確にした人事制度、情報共有の仕組み、販売員の技量&収入大幅増加による生産性の圧倒的向上、新PB戦略構築による利益額の大幅向上、リアルとネットの棲み分け戦略=来店しないと買えない仕組みの構築などが不可欠なのです。

しかし残念なことに来るべき時代に対応すべく必死で顧客ニーズに対応を考えている企業はほとんど無いと言えるでしょう。特に現在の一部上場企業で経営層が60歳代の企業は生き残れないでしょう。生き残れるのは自社の顧客ニーズにどうやったら対応できるか現場から経営層まで一丸となり危機感を持ち、皆でアイデアを出し、残り少ない経営資源をどの分野にどう振り分けるか真剣に検討し、そのために新しい技術やAI機能を積極的に取り入れ自己改革を行った企業だけです。

日本の企業のほとんどはSGDsを理解せず、消費者の志向を理解せず、目先の売上確保に目の色を変えるだけなのです。その原因は社長から新入社員までラリーマン化し、新しい試みを行って失敗するより安全な前年踏襲主義に陥っているから他なりません。

コロナ禍後に確実に訪れるデジタル化社会において、消費者は何を求め、何を指向するかAIを使った確実なマーケティング手法を開発して顧客データの活用を積極的に行うしか無いのです。目先のSNS活用策だとか価格戦略ではもはや手遅れなのです。この事実に経営層は一刻も気付いて貰いたいですし、社員は上に意見具申すべきなのです。

コロナ禍からの復興2021№15

今迄コロナ禍の影響と対策をいろいろと分析してきましたが、肝心の消費者はどう変わるでしょう?

昨今K字回復と言う言葉をよく目にしますが、これは経済が落ち込みから回復する際、業績を伸ばす勢力と落ち込みが拡大する勢力に二極化される要素を表す用語であります。「K」の右上に伸びる線は強い企業を右下に下がる線は弱い企業を表していますが、製造業は右肩上がりで非製造業は右肩下がりが現状です。

しかし長期的にみるとどうでしょう?製造業は増々機械化が進捗し、現場での所謂工員は減り、AIのプロミングや新しいソフトを開発する要員のみが求められるようになります。工員は熟練工のみが求められ、新卒ではなく中途採用で即戦力が求められるようになります。現在は有効求人倍率が製造業では1倍を遥に超えていますが、このまま増加し続ける事は無いでしょう。

一方非製造業、特に運送業を除いては人員余りが続いています。飲食業では人員が足らないといわれますがそれはアルバイトや非正規社員パート社員が足らないということで、正社員が足らないということではありません。配送業ではネット販売の急速な拡大に伴い配送員が足らないのが現状ですが、これすら新しい配送手段、ドローンや配送ロボット、などの新しい技術が開発されることによりとってかわることは間違いありません。

製造業では今迄のメンバーシップ型雇用からジョブ型が進捗すると思われ、逆に非製造業ではメンバーシップ型希望が若者を中心に拡大しています。仕事がこのように変わると人気職種もも大きく変わり、現在の一部上場企業が将来に存続するという事はこのままでは大変難しいことに成るでしょう。なぜなら生涯勤めて総合職になるより、自分のやりたい職務の専門職なり、スキルを高めるために転職を繰り返す欧米型がこれからの社会に合っているからです。

コロナ禍で判明したように遅れているデジタル化社会が進捗すれば間違いなく社会構造が変化し、同時に生活自体が大きく変わっていきます。今迄当たり前であった既成概念は通用しなくなり、仕事の中身もやり方も全く違ものに成るからです。消費者の生活は確実に大きく変化します。コロナ禍後に元のように消費者が単純に戻ってくるというのは誤った幻想以外の何物でもありません。

k字回復した結果の新富裕層は豊富な資産を投資に回し、より資産を増やす事が容易になります。一方K字回復の低収入層は子供の教育費や家賃ローンなどに追われ、一億総中流化の夢は儚く過去りスラム化が始まります。こうなると一部の富裕層と多数の低所得層に別れた消費者対応が必要になります。

しかしどちらの層もコロナ禍を経験したのでいざという時の蓄えを増やす事が基本の生活意識に成ります。コロナ禍まえから少しづつ育まれていた地球にやさしいとか無駄なものは持たないなどの思想をより生活に密着させたライフスタイルです。富裕層も貧困層も自分にあったライフスタイルを楽しむようになるでしょう。

SGDsは確実に消費者に定着し、無駄な消費や環境に悪い消費は完全に否定され、所有することより共有することの便利さと重要性が消費価値の中心になるでしょう。結果、高額品を身に着ける事が「素敵」ではなく社会に自分なりにできることで貢献している人が「素敵」な人に成るのです

結果、消費は大きく変わります。必要以上にモノを持つことは不要でありダサいことであり、必要な時に必要なものをリースして家族や友人たちと地球に優しく、地球の恵みを遊べる人がかっこよい社会に成るのです。自分の趣味や好みを明確に楽しむ生活が大変重要になります。

残業したり休日出勤したり、接待ゴルフで家を空けたりするライフスタイルは大変ダサいものになります。逆に家族との時間を優先し、仕事より家庭人としての生活を主に考える消費者が一般化します。趣味や家族を通して養った人間関係は会社と通じて培った人間関係よりよほど為になり、新しい人間関係の環は消費者の生活を更に豊かなものに変えてくれます。

これから世界と競争していくには先進国で圧倒的に低い生産性を上げねばなりません。往復3時間もかかる通勤時間や残業が当たり前の労働意識、結果主義ではなく前年主義では新しいことは生まれません。給料の安さもわが国特有で生産性の上がらない要因の一つということに気付いている企業はありませんし、組合も企業となれ合いでもはや存在意義はありません。春闘など問題外です。

コロナ禍を経験して消費者はその意識をどんどん変えています。あとは企業がそれに対応できるか否かが重要になってくるのです。

 

 

 

コロナ禍からの復興2021№14

百貨店の優位性として「経験豊富なバイイング力」「圧倒的多数の優良顧客保持」を挙げました。更にはネット販売はせず、来店しないと買えない販売手法導入」ということも提案しました。

百貨店はこの70数年一般大衆相手にその売り上げを進捗させてきました。高級品販売と言うと一部の富裕層相手と思いがちですが、一般消費者がCHNELも買い、UNIQLOも買うという話を前回しました。ですから決して富裕層のみを狙った業態に変更するのではないということを再度念を押したいと思います。

更に都心店では高級品を買う顧客数が多いので成立するが、地方店では高級品を買う絶対客数が少ないので高級志向は成立しないという意見もありますが、今離れてしまっている顧客をどう取り戻すかという問題で、顧客数の絶対数は決して少ない訳ではありません。顧客を引き留めるのはMDなのです。地方店では競合化しているスーパーやロードサイド店達とどうMDで差別を計るかが課題で、百貨店でしか買えない商品が展開されれば必ず消費者は戻ってきます。

富裕層でも一般層でも「高級品」を買いたいと思った時に必ず来店する店に現在の店舗を創り直す事は大変重要であります。現在のような何処でもネットでも買える商品が、それも衣料中心のMDでは現在の消費者のライフスタイルを満たすことができないのです。

地方の百貨店ではまず消費者をどう呼び戻すかが最大の課題でありますが、物販機能だけの施設としての百貨店では存続することは難しいです。物販機能は来なければ手に入らない商品MDを組み、それ以外に消費者の生活に無くてはならない機能を導入させることが必要です。

病院、歯医者、保育所、屋上公園、金物屋にクリーニング屋、靴&バッグ及び衣料の修理屋、染み抜きや、着付屋、旅行センターに御用聞き屋、などなど高齢化社会対応や使い捨て対応に積極的に応じることでSGDs対応を果たす事が消費文化の担い手である百貨店の責務でもあるのです。

そして百貨店再生に大変重要なのが販売力の強化です。

現在の販売員は派遣されてきた取引先の販売員がほとんどで自社販売員はまず存在していません。せいぜい売り場では案内係かレジ要因です。派遣社員にしても自社製品の商品知識や製品知識はほとんど無く、お客様の意向にうなずくだけの販売が主です。あとは在庫運搬くらいしか仕事をしていません。

主導権はすべて素人の消費者に委ねられ、販売員はただ立っているだけの存在に成り下がっていますが、本来は販売すべき商品情報、これはどんな特徴長があるのか、どんな意図の下創られたのか、どんな拘りやストーリー性を持っているのか、今年のトレンドとの関わり具合は、などの情報と、素材や材料、縫製の特徴、きたらどんな感じか、何と合うのか、何と合わないのか、などの製品特徴情報はきちんと把握させるべきであります。

更には昨今のSGDsとの関係やトレーサビリティ、製造現場状況、などの知識も不可欠な時代であります。これらを完全に把握したうえで、新しいマーケティング手法で得た個人情報を基に何を進めたらよいか瞬時にシュミレーションできるスキルが販売員には求められます。在庫状況などはいちいち席を外すことなくAIで検索し、専門の品出し要員が試着場まで運んで来れば無駄な作業は無くなります。

最高のサービスとは、消費者のニーズを確実に読み、ニーズに合った適切な商品を、いち早く提供することです。環境は豪華にこしたことはありません。工事現場の便所並みの狭い試着室や、きちんと座れるところが無い場所での靴の試着などは論外であります。売り場をこれでもかと商品で詰め込むやり方では全く意味がありません。

消費者は来店に向けて販売員を指名し予約する形式は如何でしょう。待つことなく、自分の好みを十二分に把握した販売員が用意する商品に期待して出かけるだけでよいのです。事前に要望を話しておけば完璧です。

販売員の評価は売上高だけでなく、顧客の来店頻度や購買点数、新客獲得率などが加えられるべきです。一人の正販売員に補助要員を付け、正販売員が休みでも補助がきちんとフォローできる体制は必要です。

コロナ禍からの復興2021№13

百貨店の優位性とは?

百貨店に消費者が期待するものは「一流品で百貨店でしか買えない商品とそれにふさわしい高級なサービス・空間環境」であることは前回述べました。それは決して「効率的」とか「万人向け」といったコンセプトではあり得ません。だからと言って「金持ち専用」とか「VIP専用」が良いという意味でも無いのです。

今日の多様化した消費者はただ安いからとか高いからとかでモノの価値を判断しません。自分にとって価値があると思えば価格は二の次で、欲しいと思ったモノであれば大枚を叩いても手に入れたいと思うのです。従来の消費者と違うのは何でもかんでも流行のモノは手に入れるとか、ブランドだから欲しいといった価値観では無いと言う点であることです。

ですから消費者が百貨店に期待するのは、富裕層だから高級品だとかブランド品指向すべきという従来のマーチャンダイジングとは一線を画するものということをまず認識すべきであります。現代の消費者は全身LVは嫌味で全身UNIQLOがはダサいと知っています。しかも今日ラグジュアリーブランド品を一つも持っていない人はこの日本において稀有な存在だと言えるでしょう。人々は一般層も富裕層も共にLVもUNIQLOも日々の生活の中で上手に使い分けしているのです。

現在の消費者は自身の明確な消費に対する価値観とライフスタイルを持ち、自身の価値観に合ったものを合った時に合った場所で買いたいのです。そこには宝探しをするような、誰にでもでは無く自分だけの価値観を満たしてくれるわくわく感が不可欠なのです。

消費者はネットにはネットでの利便性や価格性、専門店では専門店ならではの限定品やヴィンテージ品などの拘り品、量販店では価格と流行のバランスなどが求められ、百貨店では百貨店でしか買えないものを求めているのです。何処ででも、ネットでも買える商品をただ平然と並べても消費者には受けないのです。でも残念ながら今の百貨店にはその要望に応えることはできません。オリジナルを創っている百貨店はほぼ皆無となってしまいました。最近はメーカー商品の一部を変更しただけの自社限定品がせきのやまだからです。

品質も百貨店に望まれているのは一般品と同じでは無く、素材や縫製、デザインなどをはじめ「流石」と言われる逸品でなければなりません。専門店で売っている商品と同じものを売っているだけでは、消費者は百貨店に来店はしません。百貨店に来店を促すには「他では手に入らない」、ことが一つの重要な点になります。「わざわざ来店しなければ手に入らない」ものでも自分の価値観と合致するものであれば消費者は間違いなく来店し、購入するでしょう。

更には「ネットで売っていない」という事もこれからは重要な要素に成ってきます。簡単に24時間、何処ででも好きなように商品を選べて購入できる現代は大変便利である一方、個を大切にする消費者にとっては自己を主張する商品を探すことが重要な課題となっています。それは単に「他人と同じは嫌」というものから「自分の欲しいもの」を徹底して追求するという欲求に消費者が変化してきたからです。それはあくまで自己主張の一環であり、自分に取り「楽」なものの選びなのです。

かつて百貨店は元来世界中にバイヤーを派遣し、世界中から珍しいものや王侯貴族に愛された銘品、大量生産できない貴重な限定品などを探し出し消費者に提供してきました。「新しい」「珍しい」「素晴らしい」「これしかない」商品は百貨店でしか買えなかったのです。百貨店には世界中にパイプがありながら現在では全く活用されているとは言えません。何故なら大量生産品を大量販売することに慣れてしまい、少量限定品を販売することを止めてしまっているからです。残念なことです。

しかしこのバイイング能力は他業種では真似のできない重要な財産であります。営々と築いた海外とのパイプは一朝一夕にできるものでは無く、他業種の追随を許すものでは無いからです。この能力を再認識して再評価することが不可欠です。これが百貨店のもつ優位性の第1です。そして消費者の「拘り」を満足させるのです

次に百貨店が優れているところとは、外商顧客をはじめとする他業種と比べて圧倒的な数を誇る優良顧客を持っていることです。カード会員は大型店で百万単位ですし、郊外店でも数十万単位で保持しています。社会的地位の高い方や高額納税者はもちろん地方の有力者で百貨店の顧客でない方は居ないと言っても過言ではありません。

これらは他業種では真似のできない指向性の一定化した顧客層です。大根からカシミアまで購入する層なのです。この顧客層は利便性や価格によって集まった層では無く、百貨店のファンとも言える層で、購買手段が多様化・便利化した現在でも百貨店を支持するコアな層なのです。しかも一過性でなく親子2世代という層もかなりいるのです。他業種では見られない層なのです。

現在AI企業は消費者の会員化に莫大な費用と時間をかけています。なぜなら会員化は宝の山だからです。AIによる消費者の個分析は、消費者の嗜好性や需要予測などを核実に当てる事ができるようになっています。従来のような大まかなクラス分析では為しえなかった正確さで予測が可能となっていきました。このデータはあらゆる企業があらゆる分野で活用できるので膨大な利益を獲得できるのです。

単にモノを販売するだけでなく、需要予測やC to C、モノ創りの方向性決定やコラボの材料とあらゆることがビジネスに想定できるのです。

しかし百貨店はこの宝の山を何ら活用してはいません。せいぜいバーゲンの案内状を送る時に使用しているぐらいですが、この顧客層の活用の仕方により百貨店は他には無い圧倒的な強みを発揮できるはずなのです。AIによる多方面からの分析により、マスで捉えず個で捉え直せば(それが可能になるのです)、この消費者が好きなもの、欲しがるものの予想がつき、その嗜好性によりベーシック商品が好きなのか、或いはシンプルなデザインを好むのか、流行はどの程度追及するのかなどの詳細ニーズが予測できるので、無駄の無いニーズ対応が可能になるのです。

ネット販売と言ってカタログを電子化しただけで喜んでいる現状では為しえない、真のAI活用でピンポイントの顧客ニーズ対応が可能となるんです。しかもネットでは買えず、わざわざ来店しないと買えない情報が個々の消費者に個々向けにカスタマライズされ送られてくるのです。その精度は現在各販売員がせっせと書かされている新作のご案内レベルとは比較にならないほど、個ニーズに合致した情報となるのです。

この二つが百貨店の他業種には真似のできない圧倒的な強みなのです。

© 2015 Coup d'etat CLUB.