新しい時代の小売り業№3
サラリーマン化した、変化を嫌う社会 ( 続き)
今回のIT革命がもたらす意味と意義と可能性を理解し、自社に活用しようとした企業は大規模企業になればなるほど少ないような気がします。その最大の原因は日本の経営層に在ります。
IT技術の革命的進歩は単なる作業の効率化だけではなく、まさにSDGsを実現させる為の有力な手段そのものであり、働き方の改革による人々の幸せの追及や、地球環境への負荷削減、価値観の多様化への許容性拡大、など社会の在り方を大きく変える力を持っており、人々は「今まさに社会は変わらなくてはならない」と認識しています。LGBTQに対する意識やモノ寄りからコトよりなど人々の意識はコロナ禍前から少しづつ変わってきていました。しかし、既存企業の経営層は残念ながら変わってきているとは言えないのが現状です。
今迄我が国は経済一流、政治は三流と言われてきました。世界第二の経済大国へ成長し、日本の生産品は世界を席巻していたからです。それに比べ政治は腐敗しきった与党に無能な野党が万年青年のごとく青臭いカビの生えた教条主義とわいろで成り立っていたからです。現在我が国の製品で世界を席巻しているものは漫画とゲームしかありません。それすら中国や新興国のユニコーン企業には直ぐにも抜かれそうです。
日本の成長はひとえに国民の勤勉性や有能な官僚組織に支えられてきたものです。しかし今回のIT革命の進捗スピードはそれらの能力を遥に超えているのです。従来の延長線上の改革レベルでは到底世界の変化スピードに付いてゆけず、新しい技術を開発・運用するにはあまりにも過去の栄光に縋った前年踏襲主義で、所謂サラリーマン化した社会では到底改革スピードは周回遅れ以上の差が世界とできてしまっているのです。
日本の経営層がIT革命の本質を理解していないのは戦後の完全なガラパゴス的進化を是とし、今更革命的変化などに興味を持たず前年踏襲主義が最良とばかりに官僚はもちろん経済界全体を席巻しているからです。国境や時間の概念を根本から変えてしまったITの無限の可能性に気付けば今日のような対応で満足しているはずが在りません。
口先だけのDXではなく、急速に変化したマーケット状況や消費者ニーズ、ITを活用した全く新しい物流体制に生産技術、従来のマス対応ではなく完全な個対応の時代に自社がどうするべきか経営層が勉強すべきなのです。しかし経営層は未知のノウハウや今迄の経験が生かせないことに対しては否定から入ります。新技術をシステム部が提案してもITの何たるかすら理解していない経営層は、会議で「娘に聞いたが君が言っていることは未来はそうなるということで現在では無い」などと平気で言うのです。そして部下の意見を封じることで自身の存在意義が示されたと悦に入るのです。
まず経営層は日本型の年功序列型社会の総合職として経験を積んだだけで、専門分野を持たず、英語も喋れず、ましてや近年経営層で一番重要な要素と言われている「規範的判断力」不足に陥っている人が大部分であります。長年米国経済界が提唱した「企業は株主の為に存在する」という悪しき資本主義の「金儲け」しか見えない=「株主資本主義」の奴隷でしかないのです。
その米国経済界が株主資本主義からの決別を宣言し、「ステークホルダー資本主義」=従業員や地域社会などの利益を尊重した事業運営主義に取り組むと高らかに新時代の消費者のニーズを読んだ声明を日本の財界は全く無視したのでした。結果、世界は大きく環境問題を初めとするSDGsへ大きく舵をきったにも関わらず、我が国の経済界は口先だけのSDGsやDXを、その中身が何かも理解していないにもかかわらず騒いでいるのが現実です。
独逸では経営層の45%が、米国では62%が専門分野での博士号やMBAを取得しており、世界に目を向け日々自社の自社の存在意義と使命を考えています。日本ではたった6%しか専門領域に知識をもった経営層は存在していません。「お客様第一主義」を掲げる企業は多いですがほとんどが嘘です。どうやって顧客満足を得るかなど真剣に健闘している企業を私は知りません。
全ての日本衰退原因は企業の問題意識と情報収集の意識の差に表れているのです。それは企業のトップ達が如何に時代の変化を読めていないかによります。60代、70代が企業を引っ張っていける時代では無いのです。明治維新は20代、30代の若者達が時代を敏感に感じ取り、大局的に国の在り方を考えた結果成しえたものです。今回の技術革新はまさに令和維新と言えるレベルの変革を行わなければ生き残れないのです。その認識が果たしてどれだけの人々が持っているでしょうか。
今日、大手企業は急速に業績を回復し未曽有の利益を生んでいます。経団連としては何にもしなくても良かった、と胸をなで下ろしていることでしょう。しかし、パンデミックによる世界的規模の経済破綻が今後無いとは言えません。パンデミック以外でもIT機器普及による世界的規模でのハッキングテロやサイバーテロが世界経済にダメージを与える可能性は大きいものが在ります。それ以上に第3次世界大戦はサイバー戦争で、ロシアや北朝鮮はすでに実戦状態に入っていると言えます。自社のネット防衛は十分ですか?もはや企業のトップは他人任せにしては自社を守ることはできません。