百貨店再生への道 第10回

百貨店がネットや大量生産大量販売企業に対抗できる最大の武器は顧客からの「信用」があることです。商品を見ないで購入するネットでは商品が想像以上に粗悪やちゃちであっても「まあしょうがないか」と思いますが、百貨店で買う商品は百貨店に対する信用度が絶対で、消費者には安心感があるのです。ファッションに限らず「食品」も同様です。多少高くても安心で安全な食品はお年寄りでも若い人でも購買層はかなりあるはずです。それでも百貨店が売れないのはなぜでしょう。それは③の消費者が望むモノを提供していないことが最大の原因です。②の課題とも連動しますが、売上の効率化を追求するあまり、目先の売上確保のためにリスクを取り勝負に出ることより、前年データを基に安全な前年踏襲主義を採っているからです。しかも仕入れ先は百貨店問屋中心なのでどの百貨店も同質化してしまい、何処へ行っても、何時行っても前の年と代り映えのしない商品が店頭を飾ることになるのです。色・デザインのみならず昨今では着こなし方・コーディネートが消費者の大きな関心ごとにも関わらず、メーカー・ブランドごとに売れ筋を追求し残品を減らすために商品は同質化し、消費者の望むものと大きく乖離してしまうのです。消費者は百貨店バイヤーの何倍もの情報を収集し、何十倍もの商品をふるいにかけているのです。ここでも百貨店が選び提供する商品自体に絶対的信用を百貨店が保証するのではなく、仕入れ先がそのブランドの名に於いて保証しているにすぎません。特に食品は保存技術が進んだ事とメーカーが廃棄ロスを少なくするため体に良くない保存剤が大量に含まれているものが少なくありません。顧客は美味しそうと同時に、いやそれ以上に含有物に注意が向くのが現代なのです。百貨店のバイヤーは美味しい、美味しくないの前に顧客の健康を考え、保存剤や着色料などの有無はどうなのか、オーガニックか否か、国産か何処産か、などを最優先して確認すべきなのです。その上で旬のモノを有名産地で取れた証明を付けて販売すべきなのです。猫も杓子も「大間のマグロ」が良いからと言って冷凍ものを販売したのでは意味が無いのです。その代わり顧客に対し高い価格で販売できるのです。東京のみならず大阪や京都といった観光都市以外でも外国人に人気の街では知らない間にBIOあるいはビーガンレストランが大変多くなっています。しかし、百貨店内でBIOやビーガンレストランは1~2店程度しかありません。健康志向がこれ程強く一般化しているにも拘らず、取り入れがなされていないのは消費ニーズを読んでいないからなのです。未だに星幾つだとか、予約が取れない店だとかばかり追いかけて、「商品の本筋」を見ていないのです。最近の消費者が商材を選ぶ視点は昔と全く違うのですが、百貨店は残念ながら全く理解していません。大手メーカーはここ数年来のデフレに対抗するため価格優先で商品を造ってきました。消費者は良いものが安いことは良いことだとばかり、安いものにシフトしてきたかに見えましたが、実際は消費者は賢く、自分のライフスタイルに合った消費をし、今後は更にその傾向が強くなっていくのです。他人との同質化、流行への傾倒はどんどん減っていくことでしょう。

 

百貨店復権への道 第9回

百貨店で商品が売れなくなった理由はこれまで何度も①ネット販売対応の遅れ ②リスクを取らないMDの同質化③消費者ニーズ変化対応の遅れと指摘してきましたが、これらの理由に共通する課題は百貨店が自社独自の「商材」を持つ事を放棄した点にあります。

ネットの急速な拡大で何処でも何時でもモノが買えるようになりましたが、それはそれだけ消費者は自分の欲しいものに対して妥協がなくなったことを意味します。このことにいち早く気づいたSPAやメーカーは安価で流行を取り入れたネット販売向きのオリジナル商品を製造して、ネットでの新しい売り方や促進策を構築し、ブランドの特性を前面に打ち出し百貨店の顧客を奪っていきました。百貨店は愚かにもそんなSPAやメーカー商品を店内に導入し集客を図ろうとしましたが、駅ビルやファッションビルと根本的に異なる客層に受けるはずもなく、期待した売上や買い回りもなく百貨店の客単価を落とすだけの結果となっています。ネットで成功した企業は「安価だけど良質」なモノを返品自由で販売する一方、1点もののコレクター価格で販売するかデザイナーとのコラボで今しか買えない限定品であるとか、消費者の購買意欲を沸かせる商品を購買意欲が増す売り方で販売しています。消費者は何処でも売っているもの、何時でも買えるものより「これが欲しかった」と思える商品を探して購入しているのです。百貨店には残念ながらそう消費者に思って貰える商品が無く、何処でも売っている大手取引先の商品しか置いていません。そんな何処でも買える、またはメーカーのネットで買える商品では仕入れ先の在庫幅の奥行には到底勝てません。百貨店向きの商品が店頭で売れたとしても仕入れ先は自社ネットですぐさまフルサイズ・フルカラー展開してしまい、百貨店はあくまで展示場化してしまうからなのです。これが百貨店でモノが売れなくなった一番の理由で、顧客が百貨店が扱う商品自体に顧客が興味を示さなくなったからなのです。百貨店はそこでリスクを取り新人の商品を発掘するとか、小さなメーカーと協力してブランドを立ち上げるとか、かつてのように世界中からバイヤーが探すか、ラグジュアリーブランドとWネームのオリジナルを造るなど「百貨店でなければ売っていない商材」を持つしかないのです。「ここでしか買えない商品」を提供すべきなのです。百貨店は大量生産大量販売するメーカーのように多数の販売拠点は持ち得ません。ですから少ない店舗で売上が取れる商品を販売しなければなりません。決して安価で大量販売しなければ利益の出ない商材ではなく、こだわりの強い高級品になります。決して価格が先行してはいけません。ラクダのシャツの需要は一般では少ないけれどギフトの世界にはきちんとあるべきなのです。エルメスの別注は百貨店しか造れないのです。特に次の時代にヒットするであろう若手の商品を発掘、販売することは百貨店の大きな使命の一つであります。何処ででも、何時でも、誰でも買える商品を店頭にただ並べていたりネット上に載せても、商品自体が顧客の興味を特別に引くもので無い限り百貨店やそのネットには顧客は来ないのです。これが①と②の答えなのです。

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百貨店復権への道 第8回

過日、流石創造集団の黒崎社長と元伊勢丹社長の大西さんと3人で、コロナ禍後について話し合う機会がありました。その会話の中で黒崎さんから、『最近のコロナ後の話は全てどうやって以前の状態に戻すかという視点ばかりで、この禍をきっかけにどう新しい社会の仕組みや会社の在り方、働き方、取引先との在り方など進化させる議論の方向性になっていない』という話がありました。特に『百貨店は生産者と消費者の間に在り、中間搾取しているだけだから機能が便利なネットに顧客を奪われるのは当然』とも仰有っていました。正にそのとおりで、今回販売先が休業で売り先に困っている取引先に対し、何ら救済の手を差し伸べてはいません。取引先A社が潰れたらB社にすれば良いとばかり、何ら対策は取っていないのが現状です。ネットしか販売チャンネルが無くなると、我先にネットに雪崩れ込み、同じメーカーの商品があちらこちらで販売されています。当然取引先も自社でネット販売しているので、百貨店に利益を払ってまで競合するネット販売に売れ筋在庫を廻す筈もなく、百貨店が販売するネット商品は年々その売上を下げるのは誰が見ても明らかです。また、大西さんはこの話を受け、『コロナ禍前はモノが売れず、此からはコトよりだと言われ続けましたが、やはり売り方や役割の変革と同時にモノをもう一度見直す必要が有るのでは?』と言う提案がありました。こちらもごもっともで百貨店が扱うモノ自体を、そのグレードや品質、独占レベルなどあらゆる角度から再検討されるべきで、売れない商品をどんなに提案しても売れないのはモノ自体に問題があるからです。次回からはモノの観点から百貨店再生への道をさぐります。

百貨店復権への道 第7回

消費者がネットに求めるサービスは利便性とスピードです。百貨店もこれは見習わなくてはいけません。素早い在庫確認や配送、気楽な返品自由、圧倒的な品揃え、用途に沿った売り方(ばら売り・ヴィンテージ・再生など)などは至急導入されるべきでしょう。またファションショーなどの情報は同時性で、ショー開催中にモデルが着ている服が買える(注文できる)のは当たり前になっています。百貨店はこれらの利便性を越えねばなりません。ファッションショー展開中に同じ商品が店頭に並んでおり、気に入った物は試着ができるといったレベルは最低限特権として必要でしょう。ネットの持つ利便性とスピードをリアル店舗が凌駕することは決して難しいことではありません。前回述べた高級化と同時にスピードはこれからの価値観の中で絶対的重みを持ちます。欲しいものは1秒でも早く欲しく、誰もが持つ前に持っていることはその人のステータスにもなりうるのです。世界の距離はどんどん縮まり、人々の生活は24時間化していきます。夜は寝るためのものでなく、働いたり遊んだりするための有意義な時間帯へと変貌していきます。テレワークは当たり前になり、出社せずとも週1回のブランチ出社で十分となり、生活のコアタイムはますます薄まり、人々の時間に対する自由度はますます増えていくのです。月曜から水曜までは自宅でテレワーク、木曜日は休んで子供とグアムに泳ぎに行き、金曜日は午後からブランチ出社、土日は夫婦で札幌にスキーといった自分の価値観で生活を楽しむ人々(新富裕層)はますます増えていきます。この層を取り込まない手はありません。それには今までのMD、展開方法、接客方法、サービスでは太刀打ちできないのです。百貨店はネットが持つ全てのサービス機能は保持し、その上に店舗でしかできないサービスを加えるしか生き残る道はありません。百貨店がネット販売をすることは当たり前ですし、それも自前で行わなければ今までの顧客データは全てプラットフォーム企業に奪われ、百貨店自体が独自のリアルで無ければできないサービス&品揃えができなければ生き残ることはほぼ不可能なのです。

百貨店復権への道 第6回

では百貨店が提供する、あるいは百貨店に消費者が期待するサービスとは何なんでしょう?「必ず欲しいモノやコト」が手に入るという1点に尽きます。これは決して路面展開の高級ブランドが有るとか、ユニクロが店内にあるという事ではありません。プロの販売員が顧客を一目みるなり、好みや嗜好を見抜き、顧客自身ですら思いつかなかったニーズ、素敵なコーディネートや着こなし方、更にはTPOに合った靴バッグはもとよりアクセに化粧品の仕方まで提案できることを指します。顧客が望むものをいち早く見抜き、すべてにおいて完全に揃えることです。しかも外商が行っているように、完全なP to Pでなければなりません。顧客はここで販売員との会話と優雅な空間環境下での時間消費を楽しみ、結果としてモノがついてくるのです。そのためにはメーカー任せの消化仕入れなどに胡坐をかいていては成し得ません。バイヤーは現場の声、顧客自体をよく調べ、今年の流行を各顧客にどのように組み立てるか、販売員と徹底した当欄が行われるべきなのです。こうして仕入れられた商品は万人向きではなくA氏向けであったり、B氏向の発注内容が決まって行くのです。百貨店は万人向けから一定の層に向けたターゲットに舵を切る時期に来たのです。

百貨店はいわゆる高級路線に戻り、ユニクロやニトリとの同居をやめ、消費者が欲しいと思う高級品をセレクトし展開すべきなのです。売上はたぶん6割になりますが、最終利益率では5%と現在の3倍になるでしょう。しかも現在の大型店舗は不必要になり、自前展開できる面積は既存の4割程度(しかも食料品が2割程度占有)で十分でしょう。余ったスペースは「人々が集まる場所」という前提に新型の宴会型では無いレストラン&バー型のホテルであったり、公共施設として保育所、幼稚園、床屋に医者&歯医者、靴の修理に高級洗濯&染み抜き&かけはぎなどの修理屋を売るばっかりだった反省を込めて、一生使えるモノを売るのですから導入することも必要でしょう。また、ヘアーサロンに床屋、ネールサロンに個人旅行専門サロン、金融アドバイザーなどが常駐したら面白いかもしれません。個人的にはシャンパンバーや3つ星料亭・レストランが月替わりで入ったら最高でしょう。マスを相手にする時代は終わり、少数の新富裕層をメインターゲットにライフスタイル全般を扱う店舗に生まれ変わるべきです。

百貨店復権への道 第5回

百貨店がネットに対抗するためには①ネット特有の利便性を持ち、②百貨店でしか買えないPB商品を開発し ③消費者が望むリアル店舗でしか提供できないサービスを開発すること   が不可欠と話してきました。わざわざ店頭に来店してもらためには、店頭でしか得られないサービスや楽しい時間や空間を楽しめてこそ初めて可能であるのです。ネットの持つ利便性を超えるサービスです。

現状の百貨店サービスは顧客からすると過剰であったり、足らなかったり、ニーズと必ずしも合致しているとは言えません。それはひとえに顧客ターゲットを大衆に合わせ、万人向けのどうでもよいサービスをサービスとして提供しているからに他なりません。それでは高度なサービスとはいったいどのようなものなのでしょう。要は消費者目線での「どうして貰えたらうれしいか」という点に尽きます。確かに値引き販売やポイント付加はうれしいものです。でもこれは百貨店に多大な利益損失をもたらしています。本当はやめたいサービスの№1でしょう。しかし他社もやっているので自社だけやめたら他社に顧客を、売上を取られてしまうという脅迫観念から抜け出られていないのです。でも値引き販売を超えるサービスは存在しないのでしょうか?消費者は本当に値引きだけを求めているのでしょうか?

アウトレットに土日に行くと歩けないくらい盛況です。消費者はモノが安く買えることに期待をしていることは間違いありません。「欲しいものが安くなっている」という事はとても重要ですがそこでは「何か安くてよいものは無いかな?」という事で「決して欲しいものが決まっていて買いに行く」というわけではないのです。今の消費者は欲しいものが有った時は迷わず、その場でタイミングを失う事無く購入するので、アウトレットでの買い物とは「買い物」の意味が違うのです。

では百貨店が提供する、あるいは百貨店に消費者が期待するサービスとは何なんでしょう?「必ず欲しいモノやコト」が手に入るという1点に尽きます。これは決して路面展開の高級ブランドが有るとか、ユニクロが店内にあるという事ではありません。プロの販売員が顧客を一目みるなり、好みや嗜好を見抜き、顧客自身ですら思いつかなかったニーズ、素敵なコーディネートや着こなし方、更にはTPOに合った靴バッグはもとよりアクセに化粧品の仕方まで提案できることを指します。顧客が望むものをいち早く見抜き、すべてにおいて完全に揃えることです。しかも外商が行っているように、完全なP to Pでなければなりません。顧客はここで販売員との会話と優雅な空間環境下での時間消費を楽しみ、結果としてモノがついてくるのです。そのためにはメーカー任せの消化仕入れなどに胡坐をかいていては成し得ません。バイヤーは現場の声、顧客自体をよく調べ、今年の流行を各顧客にどのように組み立てるか、販売員と徹底した当欄が行われるべきなのです。こうして仕入れられた商品は万人向きではなくA氏向けであったり、B氏向の発注内容が決まって行くのです。百貨店は万人向けから一定の層に向けたターゲットに舵を切る時期に来たのです。

MD的には高級路線に戻り、ユニクロやニトリとの同居をやめ、「ここでしか買えない」「今しか買えない」という他所には無い圧倒的な存在感を感じさせる「一生もの」「最新最先端」などブランド名に頼らない「モノ/コト自体」で勝負できる商品群を揃え、そのうえで上記で述べたような究極のサービスが提供されることにのみ、生存を期待できるのです。入店客を限定するので売上はたぶん6割になりますが、最終利益率では5%と現在の3倍になるでしょう。しかも現在の大型店舗は不必要になり、自前展開できる面積は既存の4割程度(しかも食料品が2割程度占有)で十分でしょう。余ったスペースは「人々が集まる場所」という前提に新型の宴会型では無いレストラン&バー型のホテルであったり、公共施設として保育所、幼稚園、床屋に医者&歯医者、靴の修理に高級洗濯&染み抜き&かけはぎなどの修理屋を売るばっかりだった反省を込めて、一生使えるモノを売るのですから導入することも必要でしょう。また、ヘアーサロンに床屋、ネールサロンに個人旅行専門サロン、金融アドバイザーなどが常駐したら面白いかもしれません。個人的にはシャンパンバーや3つ星料亭・レストランが月替わりで入ったら最高でしょう。マスを相手にする時代は終わり、少数の新富裕層をメインターゲットにライフスタイル全般を扱う店舗に生まれ変わるべきです。

いつの時代も「顧客目線」で顧客が喜び、望むことをサービスとして提供すべきなのです。

 

 

 

 

 

 

百貨店復権への道 第4回

百貨店がネット販売に勝つためには、百貨店でしか販売していないオリジナルPB商品をメーカーと協力して開発する必要があることを前回お話ししましたが、それだけでは根本的な解決にはなりません。何が足らないのでしょう?

ネットの優位性とは時間と空間を超越してモノを買えるという事と何処にでも配送してもらえることにあります。更に定価ではなく安価であったり、販売終了品、ばら売り、ヴィンテージと更には絶版や絶品まであらゆる商品があらゆる販売形態で売られていることです。百貨店がネットに対抗できていないのはまさにこの「利便性」と「多様性」なのです。百貨店は24時間店舗を開けておくことはできませんし、限られた売場面積では展開できる商品の色・サイズ・型は限られてしまいます。在庫の取り寄せに至っては数日かかってしまい、共通在庫を持つネットの比ではありません。試着の問題についてもネットでは販売側が返品okを謳っているため、複数サイズを取り寄せ合わないものは簡単に返せるというサービスの前に百貨店は全く歯が立ちません。かような状況下では何処でも売っており何処でも買えるもので勝負しても意味がありませんが前回述べたようなPB商品だけではSKUで勝負にならず、売り場が作れません。売り場の全商品をネットで買えるようにするなどは根本的対策になるはずもなく、投資するだけ全くの無駄でしょう。

それ故、「モノを売る」だけでは無いリアルでなければ得られない消費者ニーズに対応することが重要です。そのニーズの最大のものは「サービス」です。現在の百貨店の基本接客である対面販売のレベルはまったく消費ニーズに対応できていません。商品知らず、コーディネート知らず、トレンド知らずの販売員は入金マシン化しており、消費者からみれば邪魔な存在以外の何物でもありません。消費者はモノの薀蓄・今年のトレンド・今年流のコーディネート・カラーリング・などの情報を欲しがっているのです。百貨店はどんなサービスをどんな形で新たに提供できるかを真剣に検討すべきです。そのためには徹底した顧客ニーズ調査を行うべきです。従来の既成概念に凝り固まった発想では意味がありません。優秀な販売員を確保するためには、ただ居るだけで収入になる時給制度ではなく、売上連動制の導入は待ったなしです。同時に販売員に徹底した商品情報・製品情報をはじめ、トレンドやコーディネート教育は直ぐにでも行われるべきですが、人事部は教育を放棄して久しく、誰がどのように販売員教育を行うか大きな問題です。よく外部の航空会社にお辞儀の訓練を依頼している企業がありますが、時代遅れです。消費者が望むサービスは「情報」だからです。

百貨店復権への道 第3回

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百貨店がネット販売の波に乗り遅れまいと必死で足掻いています。伊勢丹は店頭の全商品をネットで買えるようシステムを構築中とのことですが、既にメーカーにより何処のプラットフォームででも販売されているものを今更百貨店のホームページで販売してもわざわざ百貨店のネットに買いに来る人は少ないでしょう。何故ならネットの利点は展開の速さと価格の多様性(安さ)にあるからです。店頭商品をネットで買えるというだけでは今更の感が否めません。

リアル店舗がネットに対して優位性は無いのでしょうか、あるとしたらそれは何なんでしょうか?

プラットフォーム企業と百貨店の最大の差は「メーカー」との取組の差が挙げられます。現在では消化仕入中心でプラットフォーム企業と何ら変わる処はありませんが、現在百貨店はネットに取られた売上利益をカヴァーするためにメーカーとの取引率を上げ、ネットに取られた売上利益をカヴァーしようとしています。集客努力もせず一方的に取引条件だけを変えメーカーが本来取るべき利益を横取りしています。これでは百貨店に商品を廻すよりネットで販売した方が利益を確保し易くなってしまい、百貨店店頭には色・サイズが欠けた残品がストック場代わりに置かれているのが現状ですが、結果さらに店頭売上が下がるという悪循環に陥っているということすら認識できていません。

百貨店がネットに参戦するということは、自社ホーム頁に自社オリジナル商品を掲載すると言う事に他なりません。百貨店にはバイヤーが存在し、百貨店でしか買えない物を創ることができます。取引先と協力してオリジナル商品を造ることができるのです。百貨店の店頭とネットでしか買えないモノならば消費者は百貨店で買わざるを得ないのです。また、まだ日本で知られていない、或いは未だ未輸入品などを他に先駆けて発掘し、ネットで紹介することも有用な使い方だと思います。百貨店の組織力が無ければできない事をするべきなのです。このように百貨店が独自色を出したMDを構築しない限り、圧倒的品揃え量と価格帯を持つ他のプラットフォーム企業や、メーカーのホーム頁に勝つことはできないのです。しかしオリジナル商品=PBというと「安いが売残り、在庫の山」というイメージがあると思います。かつての百貨店PBで成功したものは皆無と言ってよいのですから。しかし、他店との差別化商品といった位置づけから、『百貨店の提案する「秀逸商品」で数を抑えて販売するもの=高額品』というポジショニングに変更できれば富裕層にとり興味を引く商品になること間違いありません。彼等はネットを見て店頭に買いに来るのです。

百貨店復権への道 第2回

急激に進化するネット・AI社会に全く対応できていない百貨店、何故こんなに遅れてしまったのでしょう。

ネット販売にいち早く対応した百貨店もありましたが(高島屋:日本初の自社モールでの化粧品販売及びオーダーシャツ販売)大多数の百貨店はネットを敵対視するだけでネットの本質を見ようとしませんでした。なんだかんだと自社に都合の良いように否定し、前向きに取り組もうとしなかったのは経営層の老害そのものと言えるでしょう。(参考:「お客様閉店です」繊研新聞社刊)

自社売場を排し、消化仕入に舵を切って楽な経営をしていた事も大きな要因になりました。ネットを自社で運営するためには基本的に在庫管理が徹底されねばなりませんが配送や返品対応機能など事業スキームの組み立てができなかったのです。取引先の機能を利用するにも百貨店側にそれを行える機能組織自体を廃止して所持していなかった事が理由です。通販を行っていた百貨店はネットへ転換が可能であったのですが、結局カタラグ通販をそのままネット展開しただけでは消費者の求めるスピードにはついて行けなかったのです。

今でも百貨店はネット販売にこだわり、ネット販売売上で100億とか200億とか叫んでいますがインフラ整備投資もせず、ネット専用の為に採用した社員も居らず、ただただ掲載点数を増やせば売上は向上するという、カタログ通販そのまま発想では永久に売上を伸ばすことは難しいでしょう。これからのネットは、如何に百貨店の強みをネット上に展開できるかという点に掛かってきますが、百貨店のネットに於ける強みとは何でしょう。それは楽天やZOZOTOWNと違って取引先メーカーと強力な長年にわたる信頼関係があるということに尽きます。

具体的にどんな取り組みがあるか、次回第3回で検討しましょう。

百貨店復権への道 第1回

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百貨店不振が叫ばれて久しいですが、未だその具体的対策が打てていません。

不振原因に、株価の低迷、販売チャンネルの多様化、消費者のモノ離れなど多々言われていますが、根本的な原因は、ネットを初めとする「技術革新による社会構造の劇的変化」とそれに伴う「社会生活の急劇な変化」にあると言えます。

これはネットやAIの急速な開発・展開により消費者の生活自体が大きく変わりつつあるという事です。従来の社会生活がネットなどの提供する「利便性」により根本から加速度的に変化し続け、最後には政治形態、国家という枠組みさえ変える規模になっているのです。消費者は知らず知らずのうちにその恩恵を生活の中に取り込み、今では無くてはならないものになっています。これは何も都会のお洒落な生活だけでなく、地方都市や過疎地帯の生活困難地域にとっても便利以上の恩恵が受けられる革命的な出来事なのです。

ネットも最初は「24時間・何処からでも・どんなものでも買える」というレベルでしたがAIの進化は今では車の自動運転、現金無しの社会、即日無人デリバリー、シェアーによる所有の不必要化、勤務時間・場所の自由化、などを可能化にし、あれよあれよという間に消費者の社会生活を変え続けているのです。

この変化に百貨店は「全く」と言ってよいほど対応できていません。百貨店はネット対策としてネット上に商品を載せたり自社ホームページで商品販売を行ったりしていますが、どれも「カタログ掲載の代わりにネットに載せた」レベルの展開でとても時代に対応しているとは言えず、現代のスピード感から判断すると2世紀くらい遅れた対応でしかありません。

何故こんなに遅れてしまったのでしょう。第2回はその原因を分析します。

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