百貨店復権への道 第4回

百貨店がネット販売に勝つためには、百貨店でしか販売していないオリジナルPB商品をメーカーと協力して開発する必要があることを前回お話ししましたが、それだけでは根本的な解決にはなりません。何が足らないのでしょう?

ネットの優位性とは時間と空間を超越してモノを買えるという事と何処にでも配送してもらえることにあります。更に定価ではなく安価であったり、販売終了品、ばら売り、ヴィンテージと更には絶版や絶品まであらゆる商品があらゆる販売形態で売られていることです。百貨店がネットに対抗できていないのはまさにこの「利便性」と「多様性」なのです。百貨店は24時間店舗を開けておくことはできませんし、限られた売場面積では展開できる商品の色・サイズ・型は限られてしまいます。在庫の取り寄せに至っては数日かかってしまい、共通在庫を持つネットの比ではありません。試着の問題についてもネットでは販売側が返品okを謳っているため、複数サイズを取り寄せ合わないものは簡単に返せるというサービスの前に百貨店は全く歯が立ちません。かような状況下では何処でも売っており何処でも買えるもので勝負しても意味がありませんが前回述べたようなPB商品だけではSKUで勝負にならず、売り場が作れません。売り場の全商品をネットで買えるようにするなどは根本的対策になるはずもなく、投資するだけ全くの無駄でしょう。

それ故、「モノを売る」だけでは無いリアルでなければ得られない消費者ニーズに対応することが重要です。そのニーズの最大のものは「サービス」です。現在の百貨店の基本接客である対面販売のレベルはまったく消費ニーズに対応できていません。商品知らず、コーディネート知らず、トレンド知らずの販売員は入金マシン化しており、消費者からみれば邪魔な存在以外の何物でもありません。消費者はモノの薀蓄・今年のトレンド・今年流のコーディネート・カラーリング・などの情報を欲しがっているのです。百貨店はどんなサービスをどんな形で新たに提供できるかを真剣に検討すべきです。そのためには徹底した顧客ニーズ調査を行うべきです。従来の既成概念に凝り固まった発想では意味がありません。優秀な販売員を確保するためには、ただ居るだけで収入になる時給制度ではなく、売上連動制の導入は待ったなしです。同時に販売員に徹底した商品情報・製品情報をはじめ、トレンドやコーディネート教育は直ぐにでも行われるべきですが、人事部は教育を放棄して久しく、誰がどのように販売員教育を行うか大きな問題です。よく外部の航空会社にお辞儀の訓練を依頼している企業がありますが、時代遅れです。消費者が望むサービスは「情報」だからです。

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