百貨店復権への道 第7回
消費者がネットに求めるサービスは利便性とスピードです。百貨店もこれは見習わなくてはいけません。素早い在庫確認や配送、気楽な返品自由、圧倒的な品揃え、用途に沿った売り方(ばら売り・ヴィンテージ・再生など)などは至急導入されるべきでしょう。またファションショーなどの情報は同時性で、ショー開催中にモデルが着ている服が買える(注文できる)のは当たり前になっています。百貨店はこれらの利便性を越えねばなりません。ファッションショー展開中に同じ商品が店頭に並んでおり、気に入った物は試着ができるといったレベルは最低限特権として必要でしょう。ネットの持つ利便性とスピードをリアル店舗が凌駕することは決して難しいことではありません。前回述べた高級化と同時にスピードはこれからの価値観の中で絶対的重みを持ちます。欲しいものは1秒でも早く欲しく、誰もが持つ前に持っていることはその人のステータスにもなりうるのです。世界の距離はどんどん縮まり、人々の生活は24時間化していきます。夜は寝るためのものでなく、働いたり遊んだりするための有意義な時間帯へと変貌していきます。テレワークは当たり前になり、出社せずとも週1回のブランチ出社で十分となり、生活のコアタイムはますます薄まり、人々の時間に対する自由度はますます増えていくのです。月曜から水曜までは自宅でテレワーク、木曜日は休んで子供とグアムに泳ぎに行き、金曜日は午後からブランチ出社、土日は夫婦で札幌にスキーといった自分の価値観で生活を楽しむ人々(新富裕層)はますます増えていきます。この層を取り込まない手はありません。それには今までのMD、展開方法、接客方法、サービスでは太刀打ちできないのです。百貨店はネットが持つ全てのサービス機能は保持し、その上に店舗でしかできないサービスを加えるしか生き残る道はありません。百貨店がネット販売をすることは当たり前ですし、それも自前で行わなければ今までの顧客データは全てプラットフォーム企業に奪われ、百貨店自体が独自のリアルで無ければできないサービス&品揃えができなければ生き残ることはほぼ不可能なのです。