再生なるか、百貨店?№1
百貨店はどうすれば再生できるのでしょうか。
MDの再構築、新しい売場展開策の確立、プロのバイヤー&販売員の育成、どれも早急に行わなければなりません。消費者の百貨店への興味をもう一度喚起するためには避けては通れない絶対条件です。しかしこれらだけでは十分ではありません。何故なら百貨店を脅かす要因である「ネットのサービスに対抗しうる」サービスが不可欠だからです。現在ネットが可能にしている「即日配送」や「商品検索機能」「多彩な決済機能」などは本来百貨店がなすべき機能だと思います。よく、「リアルとバーチャルは違う。リアルしか出来ない事をやればよい」という意見をよく聞きます。しかしそれは間違いです。ネットはリアルの数十倍から数百倍の商品量を持ち、文字通り「無いものは無い」という規模です。しかも遅くても翌日には配達してくれるのです。買った商品も気に入らなければ30日以内なら返品・取り換えも自由で、レシートが無ければ返品できない百貨店とは雲泥の差です。消費者はこの利便性を買っているのです。ですからリアルはネットができることは全て可能にした上で更にリアルでしか出来ない事をやるべきなのです。ネットに対抗するためには、店舗でしか買えない商品が、フルライン、フルサイズ、フルカラー揃っており、試着がきちんとできるというリアル店舗の強みはそのままに、検索機能の代わりにプロの販売員が消費者の好みを取り入れながら、今年の流行を確実に取り入れたコーディネートを提案でき、翌日には微妙な丈やサイズ修正を済ました商品が届けられる、というネットの利便性は全て取り入れたサービスが不可欠です。特にMD的には従来の単品集積ではネットに到底勝てませんし、ブランドショップ集積でも同様です。ネットに対抗しうるのはネットができない『ライフスタイル型MD集積』しかありません。一つのテイストで括られた『衣・食・住』全てを網羅したゾーン展開でしか無理なのです。ネットの検索機能はあくまで単品検索がベースなので消費者の希望する商品は探しますが、提案は出来ないのです。そしてこの「ライフスタイル型MDゾーン」を効果的に活用するためには販売員の大胆な能力開発が必要になってきます。ゾーン全体の商品に詳しいのは当然、どんな素敵なライフスタイルがあるのか説明すると同時に消費者にイメージ付けできなければならないからです。その為には徹底したプロ化教育が必要なのです。現在残念ながら『ライフスタイル型』売り場を成功させている百貨店はありません。それは百貨店が自主でMDを組まず、取引先ブランドショップを単に導入しているに過ぎないので、取引先は当然売れ筋商品を前面に出し、自ブランドのライフスタイル型ゾーンでの立位置や役割を理解していないため、ゾーン全体が同質化した商品で溢れてしまうのです。また、ライフスタイル全般を語れる販売員もいません。(百貨店自体の販売員がそもそもいません) サービス機能も未だネットに100年遅れている状態です。在庫管理に至っては全くできていないというレベルです。フェラーリと自転車くらいの差があるでしょう。
しかし、百貨店の消費者ニーズに対応できていない課題は見えてきました。次には「リアルしかできない」ことをどれだけ真剣かつ早急に構築するかです。それは『提案型』ゾーンであること、販売員がプロで新しく消費者個別に合った相談ができること、環境自体が楽しめ時間と空間を楽しめること、買い物という行動自体に新しい発見があること、そしてネットの持つサービス機能も持つことです。その為にはありとあらゆる百貨店機能の見直しが求められます。これから新店やリニューアルを予定している百貨店は、ブランドのAが良いとかBが良いとかいうレベルのMDではなく、もっと深いところに根差したMDを検討すべきです。