再生なるか、百貨店№2
現在百貨店は大丸や高島屋の不動産シフト成功に右へ倣えとばかりに、「売り場の賃貸化」へ急速に舵を切っています。自主で商品を買い取り、自社で販売していこうとした伊勢丹の大西社長がクーデターにより失脚してからというもの、どの百貨店も安易な『場所貸し屋』に成り下がろうとしています。取引先を脅かして値入率を下げさせるのが限界点にまで達した今日、商品も販売員も取引先負担ではこれ以上の商品利益率向上は望めません。その結果、より確実に利益を確定するために不確定要素の多い「販売業」から「テナント業」へシフトする流れが大きなうねりとなり始めているのです。しかし初めからディヴェロッパー業をおこなっている企業と百貨店からの転換では基本的に大きな要素が異なっているのです。それは抱える社員数です。因みに高島屋が運営する㈱東神開発は総員200名足らずで国内12か所海外2か所の業務をこなしています。取り扱い売上高で3,000億円、実売上高でも450億円は優に超える金額を叩き出しています。1店舗で数百名の社員がいる百貨店とは根本的な経費構造が違うのです。ですから単純にディバロッパー業に進出しても、社員数が減るわけではないので経費が削減するわけではありません。利益は簡単には出ないのです。百貨店は十年後を見据えて人員削減に入るでしょうが、それまで持ちこたえるか否かは判りません。所詮、ディベロッパー業への転換とは社員の首切り以外の何物でもありません。また、ディベロッパーに不可欠なフロアー全体および全館のMDを組めるマーチャンダイザーの育成も百貨店では未成熟です。各アイテムごとに分けられた百貨店のバイヤー達はライフスタイルに沿ったMD構築までは学んでいません。細かい小さな部分へ入っていくことは得意ですが、大きな全体の流れを見る訓練は受けてはいないのです。その為、外部のコーディネーターに頼ってみたり、商品を売ったこともない企画会社の言いなりにゾーンを構築してしまうのです。概して自社内で組み立てることは苦手です。唯一自社に優れたマーケティング部門を持っていた伊勢丹のみがマーチャンダイザーを育成できるでしょうが、大西社長なきあとの新体制では疑問符が付きます。
しかし、一番重要なことは、概して一等地に存立する店舗を場所貸しにして利益を稼ぐことは企業の本分ではありますが、それだけでは今までもあった駅ビルやファッションビルと同じで、文化としての消費をリードしていく存在ではありません。百貨店が独自の業態開発を指向せず、ただのディベロッパー業ではその存在意義が問われます。大丸がこの春開業したギンザ6はもはや百貨店とは言えず、事務所ビルに付随する商業ゾーンとしか言いようがないのです。